第84回:あいち・なごやウクライナ避難者支援ネットワークについて

会議レポート

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●日時:2022年5月24日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:45 団体(運営 10 団体含む)
●参加人数:55 名(運営スタッフ 14 名含む)

1.情報提供

〇近藤氏(WAFCA:特定非営利活動法人 アジア車いす交流センター)
6/18 にチャリティー映画祭を開催する。スぺイン映画でタイトルは「誰もが愛しいチャンピオン」。 映画の鑑賞後、プロ選手のトークイベントも開催予定。チケット代が子供たちの車いす代になるイベン トである。
申し込みは下記 URL からお願いしたい。
https://wafca.jp/report/index37.html
開催場所:刈谷総合センター

2.話題提供

■テーマ:『あいち・なごやウクライナ避難者支援ネットワークについて』
認定NPO法人レスキューストックヤード 代表理事 栗田暢之氏

今回ウクライナ避難民の発表をさせて頂くが、もともとレスキューは災害救援のNPOの為、今回のよう な避難者支援のノウハウがあるわけではなく、これから紹介する方々のご尽力により支えられてい る。

〇これまでの経緯
・2月24日にロシアによる侵攻開始
・3月8日には岸田総理より日本への避難民受け入れ開始の表明があり、関係省庁から支援メニューが現在も提示されつつある。その中で特徴的なのが、在留資格について「短期滞在」から就労可能な 「特定活動(1年)」への変更許可申請について受け付けを開始すること。ただ、この在留資格については申請の壁が非常に高いのに、何故ウクライナの人々だけという議論もある。 また、ポケトーク(通訳機)の配布も開始され、本当に言葉の問題が大きいのだなと感じる。その 他にも、FRESCヘルプデスク(電話相談)の開設、ハローワークでの就労相談・支援、国民健康保 険・保育・学校・日本語教育等も自治体で対応を開始した。国がこういった事を号令をかけて行ったことが特徴的だと感じている。
・3月11日には、愛知県内有志による「ウクライナミーティング」が開始された。毎週水曜日に、それぞれが持てる情報を共有したり、NPO法人日本ウクライナ文化協会(JUCA)の悩み・相談ごとに対応している。
・4月8日には、名古屋市・(公財)名古屋国際センター(NIC)による「名古屋ウクライナ避難民支援実行委員会」が開設された。「つどいの場」を開催(4月8日から6回開催)したり、市民から寄付金 を募り給付金(10万円/1人・県内避難者)、光熱水費一時金(10万円/1世帯・県内避難者)、市営 住宅入居支援金(10万円/1戸)を交付した。また、生活支援(地下鉄等の無料乗車券、公共施設の 無料招待券等)も行った。さらに名古屋市へ支援に関する問い合わせたが多かった為、「ウクライ ナ難民支援登録」を開始した。レスキューストックヤードが名古屋市から委託を受け、物資提供や ボランティア等の調整を行っている。
・4月15日には、日本財団が総額500億円の支援を表明し、日本への渡航費:上限30万円/1人、生活 費:1名につき100万円/年(最長3年間の予定)、住環境整備費:1戸につき50万円を行っている。
・5月11日には、JUCA新事務所をレスキューストックヤード内に設置し、「あいち・なごやウクライナ 避難者支援ネットワーク」設立した。その中では、「ウクライナミーティング」の継続、JUCAや名 古屋市・愛知県との情報共有の必要性を感じている。また、現に支援されていたり、支援を検討し ている県内の団体・個人等による情報共有の場の設置が必要だと考えているので、準備が整い次 第、お知らせする。

〇NPO法人日本ウクライナ文化協会(JUCA) http://jp-ua.org/
日本ウクライナ文化協会は日本、ウクライナ両国民に対して、文化・科学・教育の分野に関する事 業を行い、両国民の相互理解に係る問題の改善や解決を図り、両国の友情を築くことの増進に寄与することを目的として2018年2月7日認証を受けた団体。元々はワールドフェスティバル、ウクライナ料理教室などを行い、地域の方々と交流を行っていた が、こういった地道な文化交流の活動から状況は一変。じっくり話す間もないほど、連日超多忙が続いている。

〇あいち・なごやウクライナ避難者支援ネットワーク
◇機能
• NPO法人日本ウクライナ文化協会(JUCA)と連携した避難者のニーズの把握
• 「名古屋ウクライナ避難民支援実行委員会」(名古屋市・(公財)名古屋国際センター)の支援 登録と連携したシーズの調整窓口、広汎な市民・企業・各種団体などからの支援の申し出に 対する受け入れ窓口・調整(短期的な支援ではなく長期的な支援体制を整えるために官民で協力して 行っている)
• 上記をもとにした避難者に対する支援全般(避難者と信頼関係を醸成した上で、個別訪問や 交流相談会を実施したり、地域ごとに相談体制を確立させるなどして、一人ひとりのいのちと 暮らしを支える支援を行う)
• 今般のウクライナ情勢による避難民・難民に加え、それ以外の深刻な紛争、戦争地域出身者等、そ の本国の情勢から、保護や人道上の配慮を要する方たちへの支援の拡大や改善を追求する。 ◇コアメンバー(敬称略・50音順) 神田すみれ(多文化ソーシャルワーカー・愛知県立大学多文化共生研究所客員共同研究員)/ 栗田暢之(認定NPO法人レスキューストックヤード)/土井佳彦(NPO法人多文化共生リソースセ ンター東海)/戸村京子(NPO法人チェルノブイリ救援・中部)/羽田野真帆・中川季紀(NPO法人 名古屋難民支援室)/向井忍(NPO法人地域と協同の研究センター・元コープあいち職員)/吉村なる美(産業カウンセラー・元愛知県被災者支援センター職員)

〇様々な支援の状況
ブラザー工業株式会社様からは複合機を寄贈、近藤産興様からは事務用品、ラック、子供たちの遊ぶスペース用の遊具等を寄贈、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス (PPIH)様からは避難民のためのベッド、ソファー、自転車等の企業支援を行ってもらってい る。必要な物品もレスキューストックヤードの事務所に保管し、必要な方に配布している。 ただ、現在は物品の保管場所として使っているスペースも、応接室セットなどを置いて、じっくり話 を聞くスペースにする必要があるのでは?とも考えている。

〇現在の状況
5月6日時点で、23家族44名の方々が名古屋市・東海市・大府市・長久手市・犬山市・安城市ほか7市に 避難してきている。現在(5月24日時点)では27家族に増えているとの情報もあり、滞在先の市も増え ていく。そういった情報がJUCAさんに集まるので、JUCAさんを重要なパートナーとし、名古屋市とレ スキューストックヤードも連携をしながら、大きなネットワークを作り、おたがいさま会議に参加し ている方々にもご協力を頂きながら支援を広げていこうと考えている。 住居、暮らし(食・モノなど)、お金、仕事、教育、コミュニティ、言語など、課題は山積である。 何より、同胞が殺され、まちが破壊された怒りや恐怖、そしていつ母国に戻れるのか、まったく見通 せない不安を抱えた方々です。とにかくいのちを守るために遥々来られたものの、右も左もわから ず、言語も文化も異なる新たな土地での暮らしは相当過酷です。こうした方々へのケアは必須だと言 えます。息の長い支援となるよう、多くの方々のご参画をお待ちしている。 皆様のご理解・ご協力をよろしくお願いしたい。 名古屋市が募金を集めて本人達に届いている素晴らしい支援もある。そして日本ウクライナ文化協会 も資金が必要。一方でネットワークも構築していくには、それを支えるボランティアさんも必要。継 続するには誰かが頑張ればいいのではなく、多くの方に支えて頂く必要があると考えており、当ネットワークの活動を支えるためのボランティアや寄付金にもご協力をお願いしたい。

●事務局
認定NPO法人レスキューストックヤード(RSY)
〒461-0001 名古屋市東区泉1-13-34 名建協2階
TEL:052-253-7550 FAX:052-253-7552
E-mail:info@rsy-nagoya.com
ネットワーク専用口座:郵便振替00810-7-215694
口座名義:レスキューストックヤード
(ゆうちょ銀行以外の金融機関からのお振込み)
ゆうちょ銀行(金融機関コード:9900)
〇八九(ゼロハチキュウ)店(店番:089)
当座0215694
口座名義:レスキューストックヤード

〇石川氏(名古屋市国際交流課)
名古屋国際実行センターで、5月から募金活動を開始し、名古屋市(及び愛知県下の市町)に来られた 方に支給していくことを行い、5月に入ってからレスキューストックヤードなどの協力を得て、ウクラ イナの皆様の支援をさせて頂く発表をした(名古屋ウクライナ避難民支援登録)。

〇波多野氏(名古屋難民支援室)
ウクライナ以外の難民の方の視点で見ると、支援に差があるのは事実である。ただ、それはマイナス な事だけではなく、これを機に他の難民の方の支援の水準を上げていくきっかけにしていければと思 っている。それがウクライナの方々へ関わることへの目標の一つだと思っている。ウクライナの方々は、メディアを通じて、どういった状況かはわかっていたり、自国の政府からの迫害ではないので大 使館からの支援もあって、自国の政府から迫害を受けて大使館とも断絶をされている方々とは異なる 状況もある。ウクライナの関連ではロシア関係の方など、自国から保護を受けられない方たちに支援 を行っていければと考えている。何か情報があったり、ウクライナのネットワークの中で、この方は 支援するのが難しいのではないか?等があれば是非お声がけいただきたい。

〇土井氏(多文化共生リソースセンター)
NPOおたがいさま会議の下地がなかったとしたら、今回の活動はスタートしていたのか?ということを 質問したい。

→栗田氏(RSY):
おたがいさま会議で地盤があったからできたのだと思っている。

→土井氏(多文化共生リソースセンター):
私も同じように、2年間のこの場があったからこそ、官民 連携、地域分野を超えて、みんなが問題意識をもって考えられていると感じている。それぞれの立場 で出来る事、出来ない事はあるが、それぞれの力を持ち寄っている。今回はウクライナの問題に集中 しているが、今後、他の分野がテーマになっても皆の力が集約できると思っている。

→栗田氏(RSY):
ハローワークの状況、多文化共生の窓口でどのような事が起こっているかをご紹介 頂きたい。

→土井氏(多文化共生リソースセンター):
先ほどの40数名の方々は一人一人ニーズも違うし、状況 も異なる。就学年齢のお子さんだと、どうやって学校に馴染んでいくか、若い年齢の方だと、通訳が いない中での、仕事探しや、就職した後の職場でのやり取りの支援。中には60代以上の方もおられ今 から日本語を覚えて仕事というより、どのように落ち着いた生活を送るのかが必要になる。避難民と いう特性上、落ち着いたら本国に帰りたいという希望の方もおられる。一方、過去の避難民の状況か ら考えると、生活していくうちに、子供が出来たり、結婚をしたりと定住という可能性も出てくる、 先ほど、栗田さんが仰ったように長期的な支援の形が必要になると考えている。この地域は、東日本 大震災の東北の避難者を10数年にわたり、受け入れてきた地域だから上記の事も出来ると考えている ので、その都度皆様にご相談をさせて頂きたい。

〇種村(RSY):
日本ウクライナ文化協会さんが、RSYの事務所にいるので、ここに来れば相談が出来 る体制と物資を受け取ってもらえる仕組を作った。ウクライナ文化協会の方がいる日は、避難者が誰も来ない日はない状態が5月中旬から続いている。頻繁に来られる方もいれば、つどいの場がある日に 来る方もおられる。ただ、最初からこれが欲しい、これに困ったという方はおらず、何回か顔を合わ せているうちに、アイロンが欲しいなどの要望が出てきて、日常的に服にきちっとアイロンをかける 文化があることが解った。避難者の方の事を理解しながらお互いに学び合っている。 また、支援をされたい方のお申し出を受けて、必要とされている支援があったら、確実に繋げる事も5 月12日からオンラインフォームで行っている。個人50件、企業・団体13件という申込がありとても心 強いと感じたが、この地域で支援を必要とされている方は50名程で、1回の支援に必要な量は実は多くなかったりする。そういった事もあるので、支援が必要なタイミングで支援者側にお声がけをさせて頂いて、繋げていく事を行っている。それはモノだけに限らず、学習、日本語のサポートもつなげて いる。

3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

〇鈴木氏(デンソー):
おたがいさま会議という母体があったからこそ、いろんな方々の支援が出来 る体制ができて良かったという話があった中で、ウクライナが長期化しそうな中で、伴走していく皆 様が息切れをしない様に、皆で支えていけるといいねという話が出た。 名古屋市へも支援をしたいとの応募がある。例えば、文化交流、言葉の支援、心のケア。そういった 声が一般の市民の方から届くこともあり、一人一人の小さな力と、おたがいさま会議のような輪の連 携した力を組み合わせていけば、ウクライナの方も名古屋に来てよかったなと思われることになると いう話も出た。 質問:避難民の方で、戦争の関係で男性が出国できないとの話も聞いた。男性がいないご家族でご苦 労されている点などはないのか?をお聞きしたい。

→石川氏(名古屋市国際交流課):
名古屋市の話にはなるが、名古屋市に避難されている方は、もと もと名古屋に知り合い・身内がいて避難している状況。男性がいる場合もあるが、ウクライナはネッ トがつながるので、家族や学校とオンラインで繋がっているとの話は聞いたことがある。

〇野川氏(名古屋市社協):
こうした取り組みが出来ているのは県被災者支援センターの経験が生き ているからだと思っている。おたがいさま会議のおかげで身近にとらえることができた。レスキューストックヤードの場所が当事者の方に知ってもらっていることが大きいとの話があった。その中で、 言葉が馴染みのない国なのでなかなか通訳がいないのではないかとの話も上がった。それに対しては レスキューストックヤードが委託で受けている支援登録者の中にも通訳を希望される方が一部いるとの話も聞いた。 今後、レスキューストックヤードと同じビル内で日本語教室の開催も考えている中で、子供を預かっ てくれるボランティアの方も募集している。それに対して、子供町ネット、社協のボランティアが協 力できるのではとの話も上がった。

〇関口氏(フリージャーナリスト):
登壇者の波多野さんからの情報で、東京でオンラインの日本語教 室を行っている NPO がある。
下記 URL 参照 http://www.kodomo-nihongo.com/info/news/20220406.html
WAFCA の近藤さんが自分たちの活動として、タイ・インドネシアの方向けにオンラインの日本語教室を 行ってきたので、上記の話が出てきた。レスキューストックヤードと同じビル内でも日本語教室を行う とのことだが、オンラインも上手く活用出来ればと考えている。

〇玉手氏(ここのケアまごころ):
神戸にウクライナ語・ロシア語・日本語を話せる方がいて、その方 が日本語教室を始めている。

〇土井氏(多文化共生リソースセンター):
玉手さんより、母子の精神的ケアも行っているので、ニー ズがあればサポートをしていただく可能性があるとの事。岡崎の方からウクライナの避難民の方の支援 がどこに行けば出来るのかとの質問があったので、事務局の方、ご案内をお願いします。 今回の受け入れをきっかけに他の国の避難民の方々の受け入れ態勢を充実していく必要があるとの話 もあった。コニカミノルタさんからは、実際にこういったところで支援が必要なのだなと感じた。

→種村氏(RSY):避難者の方々も、その都度必要な支援が変わってくる。また、日本ウクライナ文化協会さんもそこのニーズを引き出すことに力を入れている。そこからニーズが見えてきたら是非、支援の お声がけをさせて頂きたい。名古屋市の支援フォームにこんなことが出来ますと記入していただくもの がある。そこに入力いただくと、レスキューストックヤードだけではなく日本ウクライナ文化協会も確 認でき、支援が必要な方に繋げる事が出来るので、是非ご活用ください。

■ウクライナ避難民を支援するための支援の申し出は 以下より受け付けています。
個人向け https://forms.gle/cnewKZjv9UaABzQu7
企業団体向け https://forms.gle/fcpWoYcbeGzfhmRe8

→岡田氏(コニカミノルタ):
コニカミノルタ多言語サービス「KOTOBAL(コトバル)」の担当をしている。https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2022/0419-01-01.html
ウクライナのニュースが出た段階ではウクライナ語は対応していなかったが、人道支援の観点から、機 械通訳のみにはなるが、ウクライナ語の対応も開始した。新聞や NHK でも紹介をしていただき、様々な 方から問い合わせがあった。実際にウクライナの方がいる地域からは、すでにお申込みを頂いているが、 今後、避難民を受けいれるかもしれない地域の方からもお問い合わせをいただいている。今回、おたがいさま会議に参加させて頂き、現状がよくわかった。短期だけではなく、中長期の支援が必要だと感じ た。

〇萩原氏(マイパワー):
名古屋テレビの話では、日本ウクライナ文化協会は取材もままならないぐらい忙しい。今は家族の取材をしていて、戦争のトラウマは東日本の経験が役に立った。日本に来てからは、入学時期の違い、仕事の問題などが山積みで社会の在り方が問われると感じている。

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