第83回:愛知県内に住むウクライナ避難民の現状と様子/ウクライナ避難民の受け入れと支援策について
●日時:2022年5月10日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:54 団体(運営 7 団体含む)
●参加人数:62 名(運営スタッフ名 54 名含む)
1.話題提供-1
■テーマ1:『愛知県内に住むウクライナ避難民の現状と様子』
吉村なる美氏(産業カウンセラー/元愛知県被災者支援センター職員)
〇スピーカーの紹介
・愛知県被災者支援センターで数年間、東日本大震災で非難された方を支援する仕事に従事。その間に「産業カウンセラー」の資格を取得し、現在、カウンセリングの仕事をしている。
・昭和区の防災ボランティアグループにも参加しており、福島の子どもたちのキャンプなどを運営している「一般社団法人aichikara」でも働いていた。
〇「つどいの場」の雰囲気について
・ウクライナ避難民の「つどいの場」に参加したので、その様子について共有する。名古屋市と名古屋国際センターが主催する「つどいの場」は、4月8日、15日、24日、27日の4日間開催され、明日5 月11日も開催される。私は、1回目を除く3回の「つどいの場」に参加し、4月27日は日本語教室の方に参加した。
・マスコミの取材に対して、メディアに映りたくない人は、壁際に席を用意するなどの配慮をし、通 訳は、日本在住のウクライナ人である日本ウクライナ文化協会の方々が行った。
・「つどいの場」の第1部は入管や役所からの説明で、第2部は隣りの会場で交流会が開かれた。交流 会の会場には相談ブースや行政手続き用のスペースが作られた。
・避難民のほとんどが、母子での避難なので「つどいの場」には子どもたちが一緒に来ることが多 い。最初は子供たちが動けるスペースがなかったが、お母さんたちがゆっくり交流したり、行政手 続き等ができるように子供用ブースをつくり、おもちゃも用意した。4月24日の休日には小学校の教員をしている知人がボランティアで5歳から6歳の子どもたちと一緒に遊んでくれた。
〇愛知県に避難した背景
・愛知県に避難した背景は大体以下3つに分かれる。
1家族がいるケース・・・姉妹・娘が日本人と結婚し、愛知県内に住んでいる。
2友達がいるケース・・・来日経験があるなど愛知県内に友達がいて、その方を頼って来た。
3SNSを通じて ・・・SNSで知り合った愛知県に住む日本人を頼って来た。
特に3のケースの場合、現在、私たちが知っている範囲では大丈夫と思うが、今後、愛知県に限らず 何らかの形でトラブルや被害につながるケースがあるのではと懸念している。
〇現在の生活について(「つどいの場」での聞き取りより)
<家探しについて>
・引っ越しが決まり、これから引っ越す。申請すれば、半年間は家賃が支給される。
<日本語教室について>
・日本語をとにかく勉強したいので教室を探している。名古屋国際センターにも日本語教室はあるが、遠い人は通えない。大府市では、国際交流協会の日本語教室に4人が参加している(年齢は12歳から年配の方まで幅広い)。
・特に若い人は、毎日日本語を勉強したいが名古屋に来るのは大変なので、できれば近いところで無料の日本語教室を探したいと言っていた。
<子どもたちの教育について>
・すでに通学中の小学生もいれば、年齢的には小学校生に当るが、言語の壁のため保育園に通っている子もいる。ウクライナの大学のオンライン授業を受けている人もいる。
<仕事探しについて>
・すでにアルバイトが決まった人もいる。ウクライナではWEB系の会社に勤めていた方で、時差の関係でオンラインで仕事を続けることができないという人もいる。
<治療について>
・特殊な例では、避難の時に骨折して数ヵ月放置し、今は車いすを使っている人が、今度手術をするということだった。
<家族との摩擦について>
・食生活の違いや子どもがいる生活への突然の変化、子ども同士の相性など、一緒に住む期間が長くなる中で徐々に摩擦が出てくるようだ。
・日本では薄切りのハムが多いが、ウクライナではハムは厚切りが基本。厚切りのハムが食べたいというと家族から「そんなの贅沢だ」と言われてしまったとのこと。経済的なこともあり、こうした些細な事の積み重ねが大きなストレスになりそうだと感じた。
<日本文化への戸惑い>
・ゴミの分別、水光熱費の高さ、交通費の高さなどについて戸惑う声を聴いた。特に交通費は、かなり高いと感じている。
■テーマ1の質疑等
〇織田氏(名古屋市市民活動推進センター)
・気になった点が 2 点あるのでお伺いしたい。
・1 つは身元保証人の関係。家族や友人がいるケースについては今までも聞いていたが、SNS で知り合ったというケースについて認識していなかったので、何件くらいあったのかをお聞きしたい。
→吉村氏
・今のところは 1 人。ただ、現地で会って知っていたという人もいたので、SNS を通じてウクライナで 会って、その後こちらに避難してきたケースもあるように思う。
〇織田氏(名古屋市市民活動推進センター)
・SNS だとウクライナ語ができる必要があると思うが、そういうパターンもこれから増えるかもしれないと思った。その場合、トラブルにつながることが心配。
・もう 1 点、名古屋国際センターには日本語教室があるが、交通費が高いという話があった。今後、オンラインでやる考えはあるのか?
→石川氏(名古屋市国際交流課)
・「つどいの場」での日本語教室も含めて、元々名古屋国際センターで実施している枠組みを少し広げてやっていくようなイメージですすめている。一昨年から、コロナ対策としてオンラインによる日本語教室を展開してる。今後、我々もニーズの把握に努めていきたいし、様々な可能性を探ってきたい。
→吉村氏
・大府市の国際交流協会では、既存の日本語教室に 4 人が参加しており、さらに要望を受けて平日に 1 回、不定期で教室を開催している。年配の人より若い人ほど、毎日学びたいという希望があるので志 學館大学の学生にお手伝いいただけないかと動き始めている。
〇大森氏(中日新聞)
・一般の県民として、お金・物資・精神面のサポートなど、どのような支援ができるのか?行政の支援 との関係で何が必要なのか?についてお聞きしたい。
→吉村氏
・40 人という限られた対象で「つどいの場」の中で聞いた範囲ではあるが、今の段階では、引っ越しを する人が多くなってきたと思っている。それに伴い、家具・家電の用意が必要と思うが、公にすると 集まり過ぎて大変な状況になることも懸念される。どういう方法ですすめるべきかについて、栗田さん(レスキューストックヤード)や石川さん(名古屋市国際交流課)たちと話をしているところ。
〇大森氏(中日新聞)
・支援の窓口は決まっているのか?名古屋市や愛知県が行っているのか?
→石川氏(名古屋市国際交流課)
・現時点では、(公表前のため)具体的は内容をお伝えできない。もう少し時間をいただきたい。
2.話題提供-2
■テーマ2:『ウクライナ避難民の受け入れと支援策について』
赤星有紀氏(名古屋出入国在留管理局 審査管理部門 在留支援担当 統括審査官)
〇避難民支援概要
・最初にウクライナ避難民に関する受け入れの概要を説明する。避難民の方は先ず、ウクライナまたは近隣諸国の日本大使館もしくは領事館で、日本行きの査証(ビザ)を取得していただき、このあと飛行機で日本に来ていただく。
・日本の空港では上陸手続きを行い、上陸許可後「短期滞在」の在留資格が与えられる。コロナ対策の待期期間を経て、身寄りのある人はそこへ、身寄りのない人は入管が用意した一時的な滞在施設に入ってもらう。ここでの生活支援もしている。
・在留資格についてだが、「短期滞在」の人は希望があれば「特定活動(1 年間)」という在留資格へ の変更を認めており、このことで就労も可能になる。
〇身寄りがない場合の支援
・空港における入国では通訳の提供や誘導の支援を行いその後、待機施設(検疫)ではコロナの検査を受けていただく。
・その後一時的な滞在施設に入っていただき、仕事の希望と仕事の支援を申し出ている自治体・企業等受け入れ団体とマッチングをして引き継いでいく。ただし、身寄りのない方が少ないこともあり、現 時点でマッチングの事例はない(滞在施設では、食事・生活費・医療費等の支給や通訳・行政手続き・ カウンセリング等の支援有)。
〇その他の支援
・本日(5 月 10 日)午前、法務大臣の会見でも発表したが、入管庁で支援の申し出について、集めた支援情報をウクライナの避難民につなげるサイトを昨日(5 月 9 日)付で入管庁のホームページに開設 した。避難民の方に ID とパスワードをお送りし、そのサイトを利用していただく。様々な支援の内容と避難民のニーズをマッチングするサイトになっている。
・この他にも 5 月に入ってから、避難民であることを証明するカードを順次発行している。銀行口座の 開設時などにこの証明書を使用していただくことを想定している。
・現在の避難民の人数については、少し前の情報だが 4 月 20 日時点で全国 670 人なので、現在は、800 人以上になっていると思われる。愛知県への避難民の人数については個別の数が出せないが、全国的 に見ても高い水準で県内各地に避難していると思われる。
・「特定活動(1 年)」は、住民基本台帳の対象となる在留資格になる。在留資格の変更を入管局で行 い、在留カードの発行を受けた後、市区町村の役場で住民登録をしていただくことで、住民票に記載 され住民サービスを受けることができるようになる。
■テーマ2の質疑等
〇大森氏(中日新聞)
・事実関係だけ確認させていただきたい。ウクライナ避難民は、これまでの難民に比べて大変恵まれた形で受け入れていると思うが、今回は異例の受け入れ方になるのか?
→赤星氏
・今回のウクライナ避難民への対応と日本で難民申請をしている他の地域の方々とで対応が違うのでは ないか?というご意見もあるとは思うが、今回のウクライナ避難民への対応は、未曽有の緊急措置で あるということを考慮している。人道危機に直面する事態に際し、連帯を示すために受け入れをすす めている。
〇大森氏(中日新聞)
・政府は、何らかの法的なスキームを出しているのか?入管の範囲内でやっているのか?また、法務省や政府からの政策決定や指示があって今回の対応になっているのか?
→赤星氏
・政府・内閣官房(内閣官房長官を長とする「ウクライナ避難対策連絡調整会議」)主導で動いている。
〇高橋氏(個人参加)
・私は個人で身元引受人になって、SNS を通じてウクライナ避難民の受け入れをすすめている。2家族の受け入れについて現在手続き中。
・赤星氏に質問だが、身元引受人のない人は現在何をしているのか?
→赤星氏
・身元引受人がいなくて一次滞在施設にいる人については、本人のニーズにもよるが、日本で仕事をする意思がある人は、希望に沿った仕事を入管局でマッチングできればと思っている。中には第 3 国へ の出国を希望している人もいると思うので、そういう人は、準備が整いしだい他国に行くことになる。
〇高橋氏(個人参加)
・1 ヵ月ほど前に身元引受人がいない人については、1 日 2,400 円の生活費を支給するという報道があ ったと思うが、すでに支給されているのか?
→赤星氏
・施設に直接かかわっている職員の話をまだ聞けていないので、詳細を把握していない。
〇高橋氏(個人参加)
・ポーランドに避難中の何組かの家族と SNS で知り合ったが、大使館にビザの申請に行くと身元引受人がいないとビザの発給ができないと言われるとのこと。身元引受人無しの入国も可能との報道もあったが、現状は、身元引受人が必要という理解でいいのか?
→赤星氏
・大使館での申請は、入管局ではなく外務省の所管になってしまう。そうした話も聞いてはいるが、入 管局は、日本に来てからを所管するので、入国前の手続きについては回答できない。日本で、在留資 格の変更をする際には、身元保証人について申請書と一緒に出していただくことになるが、身元保証 人がいないケースも出てくると思うので、その際には、申請予定の入管局に事前に相談して欲しい。
〇小笠原氏(コニカミノルタ)
・特に身寄りのない人の受け入れをする場合、言葉で困るシーンもあると思う。入管の手続きの中で、言葉で困るケースは発生するのか?また、その場合どのように対応しているのか教えて欲しい。
→赤星氏
・入管局ではウクライナ語の通訳を募集している。東京・四谷の外国人在留支援センター「FRESC/フレ スク」では、ウクライナ語通訳の対応を行っている。名古屋入管では、ニーズの高い言語ということ もありすぐに通訳を見つけることができない状況なので、手続の要望・質問がある場合、今のところ外国人在留支援センター「FRESC/フレスク」を紹介し、一般的な手続きについてご案内している。
〇小笠原氏(コニカミノルタ)
・やはり、他の言語に比べて、ウクライナ語の場合、言葉の問題で困ることが多いのか?
→赤星氏
・ロシア語が通じるのでロシア語で意思疎通を図るという話も聞くが、ロシア語での会話がメンタル面でどうなのかということもあり、ウクライナ語の方が好ましいのではと個人的には思っている。名古屋入管でも相談窓口を設けているが、事前に予約いただき、その後、通訳を探すように心がけている。
〇小笠原氏(コニカミノルタ)
・名古屋入管では、どのような時に一番困るのか?
→赤星氏
・名古屋入管に申請・相談に来る方はいるが、言葉が通じる同行者が一緒である。1 人で来るケースは ほとんど無いため今のところ、こういったシーンで困ったというような話は聞いていない。
・相談窓口では、通訳の確保がすぐにできないので、通訳が必要な場合は、確保できてから改めて相談日をご案内する形になる。
→吉村氏
・ウクライナ避難民の若い人は英語を話せる人も少しはいるが、年配の方はウクライナ語しか話せない。コミュニケーションをとるのは、かなり難しいと感じている。
〇織田氏(名古屋市市民活動推進センター)
・在留資格の変更で「特定活動」に変わった場合には住民登録ができるが、区役所の窓口でも通訳が必要と思う。入管から頂いた書類を(記入後)区役所に届ければ、そのまま区役所で処理できるような申請書類になっているのか?
→赤星氏
・市区町村における住民登録は、実際は転入届になるので転入届への記載が必要になる。これは市区町村ごとに様式が異なると思う。転入手続きに際して、通常外国人は 2 種類の住所(住民基本台帳法に 基づく住所と入管法に基づく住居地)を届ける必要があるが、在留カードがあれば、住居地の届け出を省略できる。
〇織田氏(名古屋市市民活動推進センター)
・区役所窓口に翻訳機はあるか?
→石川氏(名古屋市国際交流課)
・名古屋市内の区役所は全区で導入済み。一部の区では、ウクライナ語ではないが、通訳をつけている 場合がある。通訳の運用は各区役所に委ねられている。
〇吉村氏
・新聞かニュースで、身寄りのない避難民について引受人とのマッチングが、なかなか成立しないとい う情報を聞いた。こうした現状についてお聞きしたい。
→赤星氏
・報道によれば 30 人ぐらいが施設にいて、まだ1組も施設から出ていないとのことだが、何が課題で どのような理由でうまくいかないのかについては、まだ把握しきれていない。
〇吉村氏
・先ずはマッチングされるかどうかがポイントだと思う。私たちのやれることとして、高橋さんのように善意で動かれている人もいる。先ほど話した、SNS を通じて受け入れた家族の話を聞くと、受け入れ家族のストレス等の話もあるので、そうしたことに対するケアも必要と感じている。
→赤星氏
・先ほどのマッチングサイト(昨日開設)もあるので避難民の方がいらっしゃれば、積極的にご利用い ただき、合わせてサイトへの意見も聞かせて欲しい。
・ウクライナ避難民支援の担当官として各出張所や名古屋入管に職員を配置することになっており、私 が担当になっているので入管庁のホームページに記載の連絡先から赤星にご意見や問い合わせをいただきたい。
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