第75回:コロナ禍におけるアプローチと、オンラインを活用した取り組み

会議レポート

Pocket

●日時:2022 年 2 月 15 日(火)16 時 00 分~17 時 00 分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:19 団体(運営 8 団体含む)
●参加人数:28 名(運営スタッフ 16 名含む)

1.情報提供

〇種村氏(RSY):愛知県障害児の地域生活を保障する連絡会 (よかネットあいち)からのアンケート の協力依頼が来またので、ご協力をお願いします。
「愛知県 新型コロナ禍での障がいのある人の生活実態調査」のお願い
<対象者> 愛知県在住、障がいのある人
<集約期間> 2022 年 2 月11 日~28 日
詳しくはリンク先をご参照ください。

〇坂本氏(名古屋市市民活動推進センター):「SDGs で協働しよう!」オンライン交流イベントを開催 します!
日時:令和 4 年 2 月 25 日(金)13:00~15:00
場所:オンライン(Zoom)
内容:(予定)
・セミナー「NPO と企業の協働」
・SDGsアクションピッチ ・オンライン交流会
詳しくはリンク先をご参照ください。

〇小池氏(よだか総研): 第 16 回全国若者・ひきこもり協同実践交流会が開催されます。
日時:令和 4 年 2 月 23 日(水)10:00~16:00
場所:オンライン(Zoom)
詳しくはリンク先をご参照ください。

2.話題提供

■『コロナ禍におけるアプローチと、オンラインを活用した取り組み』
西坂幸氏(認定 NPO 法人アイキャン フィリピン・国内担当)

〇自己紹介・団体紹介

設立:1994 年 4 月 1 日
本部:愛知県名古屋市中区大須
代表者:代表理事 鈴木真帆
職員数:約 30 名(日本勤務スタッフ 10 名、事業地駐在日本人スタッフ 3 名、現地スタッフ 17 名)
設立背景:フィリピンを訪れた一人の会社員が、子どもたちの置かれた現状を目の当たりにし、「何かできることがあるはず」と、友人と集めた 5 万円をもとに 1994 年に設立。「ICAN」という名称には、「できることから始めよう」という想いが込められている。

〇主な活動国と活動内容

1.フィリピン共和国:紛争地、スラム、辺境で生きる子どもたちの生活・教育環境の改善や自立に向けた取り組み
2.ジブチ共和国:難民キャンプの運営、子どもの保護
3.日本国内:SDGs 推進活動、フェアトレード商品の販売・啓発活動、開発教育活動

認定 NPO 法人アイキャンでは、活動をしていく中で【人びとの「ために」ではなく、人々と「ともに」】と考えている。与えるだけの活動ではなく、そこに住む人々とともに生活が向上し続けるシス テムを作り上げる目的で上記の言葉を重要視している。

〇フィリピンの貧困問題

フィリピンでは経済発展が著しい印象があると思うが、商業ビルエリアなどを少し離れると、トタン 屋根をつぎはぎしたような家が立ち並んでいる。そういった場所で暮らしている方も存在している。 経済発展が著しい一方、経済発展に取り残されている人々も多くいて、経済格差が広がっているのが 現状。

〇路上の子どもたち

・フィリピン全土で約 25 万人と言われているが、出生登録がなく、統計上の数字にすら表れない子どもも多数存在する。データでは出てきていないが、政府関係者によるとコロナ禍で路上生活者の子どもたちが増加しているとも言われている。

・危険と隣り合わせの生活をしている。空腹、家庭内暴力、育児放棄、差別や偏見の辛さを忘れるため、薬物に手を染める子どもも少なくない。路上の子どもたちの半数以上は薬物を使用したことがあると も言われている。原因として、食事代よりも薬物のほうが安価に手に入り、空腹をごまかせ、つらい 気持ちを忘れることができるために薬物に手を出す子どもが少なくないと言われている。

・教育の機会も不足している。貧しさから教育よりも働くことが優先され、学校へ通えていない子ども も多い。また、学校に通えても授業に必要な教科書や制服が買えず、退学する子どもも多く、貧困の 連鎖につながってしまっている現状がある。

〇路上の子どもたちへの ICAN の支援方法

・路上の若者:カリエカフェ(元路上の子どもたちで運営されている共同組合)の運営を路上の若者と一緒に運営している。安全に安定してお金を稼いで生活することや、ここで職業体験、経験積み新しいところに就職できるよう支援を行っている。

・家族と一緒暮らしている子ども:路上教育を行い、ライフスキルの向上であったり、子どもたち自身に「学校に通いたい」「安全に暮らしたい」「毎日ご飯食べたい」「自分も変わりたい」と思ってもらえるような教育支援を行っている。

・身寄りがいない子どもたち:子どもの家(ICAN が運営している養護施設)で、子どもの保護、子どもの育成=能力開発、子どもの将来設計などを行っている。

〇ごみ処分場周辺の人びと

・ICAN では 2 か所のごみ処分場の人々とかかわっている。1つ目はトンド、2 つ目はパヤタス。今回はパヤタスの例を紹介する。

・パヤタスはもともとフィリピン最大のごみ処分場があった地域。換金できるごみを拾って、ジャンクショップで換金し生計を立てていた。しかし、得る収入は法定最低賃金の 1/4 程度。その為、1 日 3食とれず、極度の栄養失調の状態にあることが少なくない。また、劣悪な衛生環境が住民に深刻な健康被害をもたらしている。

・2000 年にゴミ山が崩落する事故も起きており、300 名以上の住人が犠牲になった。そのころから、住民たちから、ゴミ山に頼らず生計を立てていきたいとの声が上がり、ICAN は生計向上事業の一環として、住民を対象に裁縫技術の訓練に着手をした。その後、住民が技術を学び、現在は ICAN のフェ アトレード生産のパートナー団体として活動を行っている。

〇コロナ禍の活動

・2020 年 3 月以降、世界的にも非常に厳格な外出禁止令や公共交通機関の停止などの措置が施行された。ロックダウン中は、18 歳未満の子どもたちは完全に外出は禁止になり、外にいるのが見つかると役員にどこかに連れていかれてしまうため、路上の子どもたちはおびえて暮らしていた。

・路上での物売りや物乞いで収入を得ていた路上の子ども、ゴミの廃品回収を生業にしていたゴミ処分場付近の住民は、完全に収入を断たれ、満足に食事を取ることもできずに生命維持が困難な状態に。

・フェアトレード生産者も、日本からのスタディツアー参加者による商品購入やイベント出店等の注文が途絶えて収入を失い、活動を継続することが厳しくなった。

・フィリピンでは 2020 年 3 月以降学校での対面授業が禁止され約 2 年、子どもたちはオンラインと自宅でのプリント学習のみによる授業を受けており、中には継続困難となった子どももいる。 〇現地での活動とアプローチ

・2020 年度(緊急救援期)
2020 年 4 月から、食料・物資配布等の支援を行ったが、不安が多くあった。感染症にかかわる事業 を行ったこともなかったし、コロナに関する正しい情報がなかった状況で、住民、スタッフの安全性 をどこまで保つことが出来るのか、万が一スタッフが感染したらどうしよう等の葛藤はあった。しか し、現地スタッフの「やらなくてはならない」との強い思いを受け、感染対策を講じた上で実施を決 定した。 クラウドファンディングも行った。コロナ禍で注文がなくなったフェアトレード団体に対して、商品 を販売する機会と提供すると同時に、クラウドファンディングで現地の方を応援しようと募集を募っ た。多くの方から応援を頂くことが出来た。 政府提言も同時に行った。路上の子どもたちは、出征登録もされたいない方も多く、社会保障も受け れない方が多くいたので、子どもの声、現状を纏め、政府関係者へ提言を行った。

・2021 年度(コロナ後に向けて)
NGO からの救援物資の提供から脱却して、地域での自立を促す活動が重要になると考え、コミュニ ティパントリーを現地組織主体で行う形を取った。これまでは ICAN が主体となっていたが、支援の 現地化の方向性を目指し、ICAN は側面的な支援な支援に切り替えいった。今回主体になってくれた のは、元路上の子どもたちで設立された共同組合。その組織が現地のニーズ、必要な介入を特定して、活動を行ってくれた。

こういった活動は様々な方の支援、応援があったからだと感じている。個人の方の寄付、企業からの 助成金、そういったものが無ければ、活動は難しかったと感じている。余談だが、日本国内で困って いる子どもたちを支援する助成金等は見受けられるが、海外の子どもを対象とした助成金はなかなか 見当たらず、ICAN の活動とも合致するもの少なく、見つけるのに苦労をした印象を受けた。

〇オンラインを活用した国際理解教育活動

1)フェアトレード
・対面でのイベント中止で出展機会を失う
・文化祭中止、人数制限により販売が伸び悩む
2)スタディツアー
・現地で五感を使って感じ、学ぶ機会の喪失
・事業収益がなくなることでの打撃

〇オンライン販売の導入

・対面イベントの中止、文化祭の中止により、販売機会が減少したことから、オンライン販売を開始し、インターン生によるフェアトレード事業の運営を行った。オンラインショップの開設で新規購入者が 若干だが増加した。
オンラインショップ「Kaya ko」 https://kaya-ko.stores.jp/

〇スタディツアーのオンライン実施

・もともと 2020 年 2 月にスタディツアーを実施する予定だったが、万が一を考え、オンラインでのスタディツアーを実施する方向に舵取りをした。ただ、2020 年は現地スタッフ、事業地の人々の安全の 確保等の問題もあり、2021 年から本格的に動き出した。まず、オンラインで何ができるか、動画やパ ワーポイントの作成、予算設定、そういった事を一から開始した。その後、中継で事業地の地域散策、 家庭訪問を行い、住民、路上の子どもへのインタビューや質疑応答を実施した。ICAN の事業地はマ ニラ首都圏で、電波がある程度安定しているのでインタビュー等は現地スタッフのスマートフォンを 活用、費用を抑えることができた。

・苦労したことは、費用をかけることができず、動画の撮影、編集も自分たちで行ったので、時間的な コストがかかったと感じている。また、予算設定では、動画の無料コンテンツが増えている中で、参 加費を募ってどこまで収益を上げることが出来るのか等の課題があった。

・スタディツアーをオンラインで開催して、「現在コロナ禍で現地に行けないもどかしさがありました が、オンラインで現地の方々とリアルタイムでつながることができてとても貴重な機会だった。」「リ アルタイムで実際の生活や、生きた言葉を交わせてとてもよかった。現場の空気感を感じられた。コ ロナでオンラインが多くなったが、悪いことではないと思った。」「オンライン越しだが、質問やゲー ムなどを通してまるで本当に一緒にいるかのような交流をすることができた。また、リアルタイムだ からこそネットでは知り得ないことをたくさん知ることができた。」といった、リアルタイムで繋が れた事に対する感想が多く寄せられた。

・コロナ禍で活動をする中で、特にスタディツアーについては、オンラインが気軽で便利なツールであ り、多方面でオンラインを活用する希望が増えてくるのではと予測している。スタディツアーは実際 の現地で感じることも多いが、現地に行けなくても、オンラインで現地を感じることが出来ることも 今回分かったので、現地とオンラインの両立が必要になってくると感じている。ただ、現地でオンラ インに対応する人手が足りるのかという不安は持っている。

・スタディツアーについては、アクシデントがつきものだが、今後はより一層安全管理に力を入れてい く必要があると感じている。IACN スタッフはもちろんのこと、ツアー参加者自身の安全管理の意識 を高めていく必要があると感じている。

・フィリピンは 2022 年 2 月 10 日より観光者受け入れが開始され、渡航できる状態になっているが、スタディツアー再開に向けては安全管理とどのタイミングでどのようにツアーを実施するか今後議論 が必要だと感じている。

3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

〇野川氏(名古屋市社協): スタディツアーを頻繁に実施してはどうでしょうか?また、資金面の確保方法として、現地の状況がわかる映画等を上映して、寄付を募る方法はどうでしょうか?発表の中で紹介をされた「子どもの家」等の施設系の今の状況を教えてください。

→〇西坂氏:色々なアドバイスありがとうございます。スタディツアーは頻繁に実施したいが、人員の問題等で頻繁に実施できない状況。出来るように頑張っていきたいと思っている。 「子どもの家」はずっと運営をさせてもらっている。子どもたちの家なので、コロナ禍でも関係な く運営している。ただ、ロックダウンの影響で公共交通機関が使えなくなったときは、寮母さんが 出勤できなくなったりし、泊まり込みでスタッフに対応してもらったこともあった。

〇小野恵氏:ツアーにかかるお金は一人あたりいくらぐらいかかりますか?

→〇西坂氏:4 泊 5 日(航空券は自己調達)で 7 万 4 千円を徴収している。7 万 4 千の中には、ホテル代、食事代、引率費が含まれている。

〇浦野氏(RSY):スタディツアーの金額を聞いて、かなり安いと感じたが、スタッフの確保と資金繰りはどのように行われているのか?また、路上生活をしている子どもたちの親御さんはどのような生活をされているのか?

→〇西坂氏:スタッフの確保については、助成金で賄えるかどうかが大きな課題となる。助成金でスタッフの人件費が賄えないと、自己資金(寄付)の中から出さないといけないので、助成金の中で賄 えるギリギリの人数で実施をしている。資金繰りに関しても、フィリピンの抱える貧困の問題は普 遍的な課題ということで、災害等の緊急救援に比べると大きな金額の助成金は取得しにくい状態。 なので、フィリピンの路上の子どもたち支援は、ほぼ自己資金(寄付)で運営をしている。身寄り のない子どもたちをどんどん受け入れていきたいが、資金の面で苦労をしている。2 月より新たに 子どもの家の里親制度のようなものを開始しており、より多くの方に関心を持っていただき運営を 継続していきたいと考えている。
子どもの家ファミリープログラム

路上の子どもたちの親御さんの件については、家族も路上生活者のケース、親も薬物を使用してい るケース、家族が罪を犯して逮捕されているケース、家族と死別しているケース、育児放棄されて いるケースなどがある。

〇浜田氏(RSY):Youtube を活用して、資金を集められましたか?また、発表時に西坂さんから動画の 編集等に苦労をしたとの話を伺った、好生館プロジェクトという団体がそういった事を得意としてい るので、何かコラボが出来るのではないか?

→〇西坂氏:Youtube のチャンネルは持っているが、アップはほとんどできていない。できたとしても 撮影、編集のクオリティが全く良くないので見て頂く機会につながっていない。過去、助成金でプ ロの方に動画を作製してもらったものはとてもいい動画になっているが、それ以外ではうまく活用 できていない状態。そういったスキルがある人材がいない状態なので、コラボ等が出来るのであれ ば、ありがたい話だと感じた。

〇中川氏(好生館プロジェクト):動画のプロフェッショナルと紹介されたが、メイン事業はインターン 生の紹介とインターシップのサポートを行っている。今回はデンソーの「ハートフルまつり」の動画制作の一環で、インターン生がこの NPO おたがいさま会議に参加させてもらっている。動画撮影・編集に強いインターン生を紹介し、コラボをすることは可能だと思う。

〇西坂氏:本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました。コロナ禍の活動を振り返ってみて、自分でも気づくことが多くあったし、色々なアドバイスも頂けた。いろんな団体と連携することででき ることが増えていくと感じたので、この繋がりを大切に、今後の活動に繋げていきたい。本日はあり がとうございました。

4.今後の予定

■開催日時:3 月 1 日(火)16:00-17:00
■テーマ:『東日本大震災から 11 年 伝えたい!ふくしまの今』
■ゲスト:東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)福島担当 北村育美氏

■開催日時:3 月 8 日(火)16:00-17:00
■テーマ:『東日本大震災から 11 年 伝えたい!広域避難者の今』
■ゲスト:愛知県被災者支援センター 森本佳奈氏、今井田正一氏

■開催日時:3 月 15 日(火)16:00-17:00
■テーマ:『被災地の現状~東日本大震災から 11 年目の岩手・宮城では~』
■ゲスト:NPO 法人いわて連携復興センター 地域コーディネーター 富田 愛氏
ウィル・サポート/JCN 宮城担当等 三浦隆一氏

■開催日時:3 月 22 日(火)16:00-17:00
■テーマ:『子どもの声からつくる未来のかたち~宮城県石巻市の実践から』
■ゲスト:一般社団法人 Smart Supply Vision 清水葉月氏
日和幼稚園遺族の会 西城 楓音 (さいじょうかざね)氏(現在 19 歳)

会議レポート