第73回:コロナ禍におけるNGOの課題と名古屋NGOセンターの取り組み

会議レポート

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●日時:2022年2月1日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:27 団体(運営 10 団体含む)
●参加人数:40 名(運営スタッフ 18 名含む)

1.情報提供

〇杉本氏(白木蓮鍼灸)
・ボランティア参加している水俣病・東海の会が、3 月 6 日にソーネおおぞねで水俣病の風化防止と甘夏販売拡大を目的としたイベントを開催するため、ご参加ください。甘夏はわっぱの会の中にある「みなまたみかんの会」が販売している。無農薬で美味しいのでお試しいただきたい。

〇志知氏(G-net)
・「ふるさと兼業」というプラットフォームを使って、副業・兼業人材を会社や団体に仲介しているNPO。今回、社会課題を解決したい非営利団体対象に、兼業副業プロボノ人材活用支援プログラムを立ち上げた。マッチングやサイト利用、プロジェクト設計などにかかる費用は、本プログラムスポンサーの Yogibo がだしてくれる。プロボノ限定での募集といったことも可能なため、取り組みたい事業などが あれば応募いただきたい。詳細については 2 月 15 日にオンライン説明会を実施。
兼業副業プロボノ人材活用支援プログラム

〇朝倉氏(金城学院大学)
・前回会議で紹介した学生たちによるビニール傘袋削減のためのエコ傘袋製作について、クラウドフア ンディングに 230 名が協力してくださり、製品化が可能になった。

〇浜田氏(RSY)
・RSY が実行委員で関わる Voicefrom3.11 プロジェクトでは、東日本大震災から 10 年で被災者や支援者の声を集めてきた。その集大成として 2 月 11 日にオンライン企画「ここからの集い」を実施する。
Voicefrom3.11 ホームページ

2.話題提供

■テーマ
『コロナ禍における NGO の課題と名古屋 NGO センターの取り組み』
(村山佳江氏:NPO 法人名古屋 NGO センター事務局)

〇自己紹介・団体紹介
・外務省から NGO 相談員の委嘱を受けており、NPO 主催のセミナーや大学での講義、NGO・NPO からの組織運営や事業運営についての出張相談等に無料で対応。利用したい方はご相談ください。

・私自身、名古屋 NGO センターに関わって約 20 年経つ。この間、様々な団体に関わっており、海外の現 地視察に行く機会もあった。2019 年には、パナソニックの NPO/NGO サポートファンドを活用し、イカオ・アコの組織強化としてフィリピンを視察訪問。イカオ・アコは、ネグロス島でマングローブ植林などの環境保全をしている団体。現地スタッフと一緒に、組織課題や運営方法についてのワークショップをするなどした。2017年には、ホープ・インターナショナル開発機構のエチオピア事業を現地視察。山の上に住む住民たちの水へのアクセスを容易にするための簡易水道設置事業を視察した。

・名古屋 NGO センターは、41 団体が加盟するネットワーク組織。愛知・岐阜・三重に所在し、教育や環 境、人権、平和活動などをテーマとして、国境を越えて活動する団体が多く加盟。組織に関わる人数 としては約 200 人。「組織強化」「人材育成」「政策提言」の3つの柱で活動している。「組織強化」事 業では、NGO の初めてのオンライン活動サポート事業を実施しており、今年度は3団体の支援を行っ た。「人材育成」事業では、NGO スタッフになりたい人のための研修(N たま研修)を実施。多くの研 修修了生が NGO・NPO スタッフとして活躍している。「政策提言」事業は、全国の NGO との連携による 調査・提言活動などを実施。令和2年度には、外務省による NGO 向けの調査を関西 NGO 協議会が実施 しており、その協力をした。今回はその調査結果から抜粋して、NGO・NPO の現状をお伝えする。

・Nたま研修は、座学やフィールドワーク、インターンで構成されている半年間の研修で、参加費は一 人 10 万円弱。コロナ禍により昨年度は中止したが、今年度は再開し、14名参加している。そのうち2名は広島県や大阪府と遠方であったが、オンラインの内容が多いため参加いただけた。Nたま研修 は、NGO について学ぶと同時に仲間づくりが大きな目的であるが、コロナ禍でオンライン中心のため 難しい部分がある。通常であれば参加者が交流するための飲み会などの場も設けているが、今回はで きなかった。ただ、コロナが落ち着いた頃に、1泊 2 日の高山研修を実施できたため、そこで打ち解けることができた。Nたま研修は、7 月下旬に入学式のため、4~6 月は広報活動を頑張っている。N た まウェブサイトへのアクセス件数は、コロナ禍前と比較して2倍近くになっており、皆さんコロナ禍 で様々な情報を探していることがわかる。今年度で18期生となるが、修了生は NPO・NGO 以外に企業 など多様な場で活躍しており、この地域に様々な人材を輩出している。Nたま研修は、2018 年度まで は外務省補助金により実施していたが、2019 年度から補助金が受けられなくなった。しかし、Nたま継続の声は高く、団体としても事業を継続したいということで、参加費収入だけでなく自己財源とし て寄付(Nたまサポーター)を広く呼びかけている。今年度は、目標 190 万円のところ現在約 63 万円 と、まだまだ不足している状況で、3 月末まで寄付の募集を継続していく。

〇コロナ禍における NGO の取り組みと課題

・外務省が全国のネットワーク NGO の協力を通じ、2020 年 10 月に NGO にアンケートを実施した。その報告書「新型コロナウイルス感染症拡大に対する日本の国際協力 NGO の対応戦略」から抜粋し紹介する。報告書はダウンロード可能(http://kansaingo.net/kncnews/seisaku/20210407.html)。

・アンケートは全国から 147 団体の回答があった。団体の多くが事業実施系で 82.3%、その他には政策 提言・開発教育系が 8.8%、ネットワークが 5.4%である。回答団体の約半分が東京にある団体で、愛知 は 2 番目に多く 14 団体が回答している。愛知県は全国の中でも国際協力 NGO が比較的多い地域であ る。活動地域は、多くの団体が日本を含めたアジア圏で活動。予算規模は様々であるが、今月のおた がいさま会議で登壇する団体でみてみると、アジア車いす交流センター(WAFCA)は約 4,000 万円、ア イキャンは約 1 億 5,000 万円、ニカラグアの会は 1,000 万円未満である。海外の有給職員がゼロ人と いう団体は 46.3%とかなり多くあり、日本の有給職員は 5 人未満が 37.4%と多い。名古屋 NGO センターも有給職員は 4 人である。

・コロナに対する NGO の国内外での活動について、上位 3 位は国内外とも同じ内容で、1 位が物資の提供、2 位が研修の実施・情報提供、3 位が生活困窮者保護・相談である。4 位については、国内活動は 医療従事者による治療、海外活動は受益者への現金提供となっている。活動資金については、国内活 動では 1 位が無指定自己資金であるが、海外活動となると 1 位が指定寄付金となっている。海外活動の場合、まずは 2 位の無指定自己資金でスタートさせておき、同時並行で指定寄付金も集め、その資金を導入していっていると推測されるが、日本国内での活動の場合はそれが難しい現状にあるとアンケート結果をみて感じた。

・コロナに対する NGO の国内災害支援については、国内災害支援を実施した団体が 54 団体(36.7%)であった。そのうち「直接現地に入って実施」が14.9%、「以前から間接実施で現地パートナー団体と一 緒に実施」が 38.9%、「以前は直接実施だったが、コロナ禍のため間接実施」が 22.2%、「実施希望であるがコロナ禍でできない」が 24.1%となっている。

・NGO の日ごろの海外事業の実施方式は、NGO データブック 2016 によると、「自団体が現地で実施(海 外の団体を自団体が現地法人として持っていることも含む)」が 49.2%、「自団体と現地 NGO のパート ナシップ型」が 37.7%、「現地 NGO が実施」13.1%である。コロナ禍による海外での活動影響としては、 「全海外の事業を停止した」「一部を停止した」という団体が多い一方で、「基本的に事業継続」が 39.2% もあることに驚いた。

・海外駐在員の平時の派遣状況は、「駐在型」「出張型」「派遣なし」が 3 分の1ずつを占める。コロナ禍で「駐在型」の派遣状況をみてみると、殆どが帰国を余儀なくされ、継続的に駐在したのは僅か4団体のみであった。また、現在の駐在員派遣状況は 52.8%になっており、回復してきている。一方で短期出張者の派遣は 4.2%に留まっており、派遣できていない団体が多い。その理由としては、現地に行くと隔離期間がとられてしまうため、安易に現地に行くことが難しいことがある。職員ではなくボランティアベースの団体は、会社の長期休暇を利用して現地入りすることが多いが、そういった方々が現地に行けない状況になっている。

・アンケート調査結果から、関西 NGO 協議会を中心とする実施者たちが、全国の国際協力 NGO が考える 事業・経営方針の大幅な変化の方向性として以下の 5 つのキーワードを掲げている。

1 経営の現地化:「影響を受けた地域や当事者により近いところにいるアクターへの資源と権限の移 行」を意味する「現地化」の重要性は、以前から国際協力セクターにおいて認識されてきたところである。

2 日本と海外のシームレス化:COVID-19 により、日本国内において脆弱な人々が更に脆弱になる中、 日本の NGO が国内外で活動する傾向は強化され、数年以内に一般化していくと見られる。

3 コレクティブ・インパクト:「オープン・イノベーション」の考え方を組織内で浸透させ、その上 で、組織が持つ固有の価値(強み)を組織内外のステークホルダーが理解できるように言語化(形式知化)すること、セクターを超えたネットワークを積極的に構築し、自身の持つ固有の価値を伝 えておくことが必要と言える。

4 幅広い支持の獲得:拡大以前においても、日本の NGO セクターは年間収入 10 億円を境に、大規模 団体は順調に成長し、小規模団体は成長が鈍化する「二極化(K 字型)」の傾向が見られていた。その中で発生した COVID-19 により、多くの NGO は、2020 年度以降少なくても数年間は、減収を見込んでいる。落ち込んだ収入を改善するためには、既存の支援者への丁寧なコミュニケーションに加え、自主事業や寄付収入確保への新しい取り組みを行うこと、そして財務の安定性にも目を向けることが大切である。

5 組織と経営のアップデート:日本事務局では、「現地化」を促進していく中で、日本事務局の海外 事業担当に求められる専門性はこれまでになく高まるため、適切な人材確保が大きな課題となる。 適材適所で組織に参加してもらうためには、多様な人材で構成されるデータベースを組織が構築しておく必要がある。

・名古屋NGOセンターでは、2020 年11月号「会報さんぐりあ」で、コロナ禍に立ち向かう NGO と題して各団体から現状を伺った。イカオ・アコからは「日本人スタッフが全て引き上げ、現地スタッフに頼っている。住民への米配布事業はできた。スタディツアー中止の打撃が大きい」というコメントが寄せられた。スタディツアーは、NGO の資金調達と人材確保の大きな柱でもあるため、中止が現在そして来年度も続いていくとかなり厳しいと感じる。アジア保健研修所(AHI)もスタディツアーは中止し、来年度も難しいという予測をしている。国際研修もオンラインに切り替えており、現地との交流の目途が立たず、NGOとしては苦境になっていくと思われる。名古屋 NGO センターとしても、どのようにサポートできるか考えていかないといけない。
(※会報さんぐりあ122号 https://nangoc.org/wp-content/uploads/2022/01/sangria_122.pdf)

・名古屋 NGO センターの今後の予定としては、2 月 6 日に JICA・NGO 連携による多文化共生シンポジウ ム「海外ルーツの市民とともにある日本社会」を開催、2月12日に N たま研修修了式、オンライン支 援として 3 月 13 日にチェルノブイリ救援・中部 30 周年記念講演会をサポートする。詳しくは、名古屋 NGO センターのホームページ(https://nangoc.org/)で案内をしている。

3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

〇野川氏(名古屋市社協):N たま修了生の活躍の場はどう広げているのか。コロナ禍によってプラスの面があれば教えて欲しい。今後のポストコロナでの名古屋 NGO センターの展望を教えて欲しい。
→村山氏:N たま研修の後半で本人が何をしたいか個別に聞いて団体紹介をしている。プラス面として は、オンライン化によって事業経費が抑えられ、遠方参加も可能になったこと。今後の展望は難しい質問で組織内では議論ができていないが、来年度以降の N たまをどうするかは話し合っている。

〇根岸氏(こども NPO):海外現地への短期派遣が 4%もできているのはどうしてか知りたい。
→村山氏:短期派遣のため通常の出張と同じようなイメージ。1 週間から短期間の出張が可能だったのが 4%程度であった。

〇近藤氏(WAFCA):NGO がコロナ禍で国内災害支援をする際の影響について、具体的に教えて欲しい。
→村山氏:災害救援については、事業の実施形式に関する問いであったため、具体的な影響までは不明。コロナ禍の中で、被災した熊本現地に他県(主に東京)の NGO が入って支援を実施したというのが「直 接実施」の14.9%。「以前から間接実施」38.9%と「今回は間接実施」22.2%は、コロナの影響で東京のNGOが地域に入っていくことが難しい時期もあり、熊本の NPO や自治体と連携して間接的に資金や物 資を提供したということである。

〇大石氏(トヨタ自動車):N たま研修の参加費が 10 万円でも 14 人も集まっている。どのように告知を 工夫しているのか。
→村山氏:N たま研修を 18 年続けてきており、修了生が勧めてくれるのが非常にありがたい。口コミで 「受けてよかった」「こんな影響や出会いがあった」と紹介してくれる。それが集客力になっている。

〇菊池氏(日本福祉大学):海外に行くスタディツアーは、現地とのつなぎ役などの引き継ぎが大変なのでは。ノウハウの蓄積が途中でなくなってしまうのではと気になっている。
→村山氏:大手の団体はノウハウを文章化してストックしていると思う。しかし、予算規模が 1,000 万 ~5,000 万円くらいの団体の場合は、個人の蓄積やネットワークが大きいと思われる。海外事業の引き継ぎについては、次回以降の発表者に答えてもらえればと思う。

〇濱野氏(日本福祉協議機構):一番困っていることは何か。今後の海外情勢の展望として、早くてどのくらいから回復していくと考えられているか教えて欲しい。
→村山氏:名古屋 NGO センターとしては、主力事業の N たまをどう続けるか、資金的な面が大きな課題。また、スタディツアーを実施できていない団体が多数あるため、サポートができればと思うが、日本のように簡単ではなく、現地の電波や電気事情、現地に日本人駐在員がいない団体は調整が難しかったり、個々の団体の現状に左右される。オンラインでのスタディツアーも勧めたりもしているが、団体からは「そう簡単ではない」という返答もあって難しい。海外情勢の展望としては、昨年も「来年 度はスタディツアーを実施できるかな」と言っていたが、結局は難しい状況になっている。また、受け入れ側は実施可能となっても、学生が参加しようと思ってくれるか、学生を送りだす大学側からの 許可がおりるかという問題もあり、数年は元に戻らない可能性も考えられ、大打撃を心配している。

4.次回の予定

■日時:2022年2月8日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『ウィズ/アフターコロナの国際協力 NGO ~現状と今後の課題』
■ゲスト:熊澤友紀子氏(認定 NPO 法人アジア車いす交流センター(WAFCA)事務局長)

■日時:2022年2月15日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『コロナ禍におけるアプローチと、オンラインを活用した取り組み』
■ゲスト:西坂幸氏(認定NPO法人アイキャン フィリピン・国内担当)

■日時:2022年2月22日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『初めてのオンライン活動とそのサポート』
■ゲスト:八木巌氏(NPO法人名古屋NGOセンター 代表理事)
    伊藤幸慶氏(ニカラグアの会 事務局長)

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