第69回:生きた甲斐ある人生のために!要介護等改善と傷みの再分配
●日時:2021年12月21日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:16 団体(運営 8 団体含む)
●参加人数:23 名(運営スタッフ 13 名含む)
1.情報提供
◯藤井氏(名古屋市健康福祉局健康増進課精神保健係長)
・心のサポーター養成研修名古屋を 2 月に開催をさせていただく。その共有のご協力をお願いしたい。
・心のサポーター養成健診名古屋は、厚生労働省が令和 3 年度から実施している心のサポーター養成事業の一環として、今年度モデル地域の一つとなった名古屋市が、厚生労働省と一緒に開催をするもの。 心のサポーター養成事業は、国が日本こころアクションとして地域におけるメンタルヘルスや精神疾 患についての啓発を進め、精神疾患の予防や、早期介入に繋げることを目的とした取り組み。
・こころサポーターとは、メンタルヘルスや精神疾患についての正しい知識を持ち、身近な方や職場の 同僚など、心の不調に悩む方やその家族に対して、できる範囲で手助けをする方。令和 3 年度は、名 古屋市でこの養成研修を 2 回開催する予定。第 1 回は、チラシに記載がある通り北生涯学習センター を会場として令和 4 年 2 月 5 日土曜 10 時から、第 2 回は名古屋市高齢者就業支援センターを会場と して同じく 2 月 19 日土曜 10 時から開催を予定している。定員は各回 20 名合計で 40 名。
・研修は、座学とワークを組み合わせたプログラムを予定しており「こころのピンチとこころの病気は どう違う?」「こころの病気の現状」「こころの病気に気づく方法」「こころのサポーター」の4つのス テップ、聞き方ワークなどといった内容となっている。申し込み期限は令和 4 年 1 月 28 日金曜日で、 受講料も無料。地域で福祉活動に取り組んでおられる方など、精神保健的な課題のある方やこころの 不調に悩む方と接する機会のある方々に、ぜひご参加いただきたい。
2.話題提供
■テーマ
『生きた甲斐ある人生のために!要介護等改善と傷みの再分配』
(木全伸夫氏:株式会社夢幻 /株式会社夢耕/特定非営利活動法人ゆめはーと)
・我々の NPO ゆめはーとは、介護や福祉的支援が必要な方そしてその家族介護者の普段の生活に、不動産や通信や流通業という様々な産業を繋げて暮らしを便利に助け合おうというような NPO 活動をして いる。今日皆さんにお話をするテーマは、私自身の考えと今事業として実践していること、それがそ のまま NPO 法人ゆめはーとの理念にも繋がっているのでその部分のお話と、名古屋市で介護度を下げ て健康に健康寿命を延ばしましょうというような事業があり、それに入賞し選ばれたのでその報告をしたいと思う。
・「生きた甲斐ある人生のために!要介護等改善と傷みの再分配」というテーマでお話をさせていただ く。私は学生ボランティアあがりで 20 代前半からずっと学生ボランティアから地域ボランティアを している。私自身が幼少期から授業中にじっとしていられなくて、少し課題がある子どもだった。自 己判断であるがアスペルガーっぽいところがあったり注意障害があったと思うのだが、病名は特につ いていない。うちの息子は病名がついていて薬も飲んでいるのだが、とにかくそういうような状態で も誰かの役に立てるのではないかと常に思っていた。仕事として今、ケアマネージャーをして 19 年目になり、介護事業の分野では 24 年目になる。そこで常にイメージとして大事にしていることをまず前提として皆さんにお話をさせていただきたい。
・介護には自立支援という要素が大事であり、介護される本人が主役である。本人の理想の生活を実現していくために、例えばトイレの排泄が思うようにできない場合、排泄介助という具体的な行為、入浴で綺麗に洗えないというときに、入浴介助という具体的な行為がある。介助というものが介護の中に含まれているという意識を持っている。また障害を持つ人、障害と共に生きる人、まず人に焦点を 当てている。障害児という人がいるわけではなく、「特別なニーズがある子ども」と理解している。
・バルネラブルな環境というものをすごく意識をしており、例えば今日ご参加の皆さんのほとんどが、 条件環境が変化すると、思った通りに行動ができなくなって、誰かの助けを必要とするような状況に なる。スワヒリ語しか通用しない環境に 1 人だけ放り込まれて、パスポートがなくて、しかもものす ごい下痢でトイレを探している状況だとすると、ジェスチャーだけではなんともならないので、誰か に助けてもらう必要がある。つまり、我々は自分が今の状態のままでも、条件や環境が変わると社会 的弱者になり得る、と日常私は考えていて、私の周りの人たちもそれをイメージしている。
・私の母が 50 でガンになり 57 で亡くなった。介護を始めるきっかけは母がガンになったことで、それ まで商社で営業をやっていたが、ボランティアをしていたのが本業になり 20 代後半に介護業界に転 身することになった。母は最後自分で排泄ができなくなっておむつの生活になったが、自分の葬式に ついて、誰を呼ぶとかどんな曲をかけるだとか葬式のプロデュースを楽しみながらやっていた。母は、 人間は弱いから一生懸命生きるんだというようなことを言っていて、その時から私は、誰も彼もみな バルネラブルな状態から、やるかやらないか、頑張るか頑張らないかなのかなというように考えてい る。
・たとえ自分でできる日常生活動作が減ってしまっても、人間的には価値は変わらない、これは私自身 が自分に普段から言い聞かせていることである。障害をお持ちの方や要介護高齢者が、生きている甲 斐ある人生、今日 1 日の手応えを感じることができる日を作っていくのだという思いで、私の会社も そして NPO 法人ゆめはーともつくった。力を合わせて仲間たちと一緒にやっている。誰かの世話にな らないといけないような日常の中で、その状態のままで、誰かにありがとうと言われるような暮らし をつくるという目的で会社をつくっている。
・高齢者の介護と QOL についてお話ししたい。名古屋市の要介護度等改善事例公表事業において、応募 約 40 社の中から 10 社に選ばれて賞をいただき、名古屋介護ネットに公表されている、高齢者の生き がい支援や介護サービス事業所の意欲の向上、そして事業所間の情報共有という内容の事例 book に うちの会社を載せていただいた。
・経営している住宅型有料老人ホームに入居された利用者で、契約して出演料を払ってコマーシャルに 出ていただいてる寺田さんという方がおり、その方の事例を皆さんにご紹介をしたい。今日皆さんに 実名で紹介するのも承諾いただいている。
・我が社には複数こういった利用者がいて、守山区小幡を中心に、苗代スポットと小幡スポットに住宅 型有料老人ホーム、隣の小学校区にケアマネージャーの事務所などがあり、株式会社夢幻という会社 がケアマネージャー、訪問介護、訪問看護デイサービスなどやっていて、また夢耕という株式会社で 住宅型有料老人ホームをしている。
・寺田さんは愛知医大を退院され、喉頭ガンで咽頭全摘、気管切開された状態で、最初要介護 5 だった が、リハビリなどを重ねて要介護 2 まで改善した。当初は医療保険も家賃も払っておらず住んでいた 家はゴミ屋敷という大変な状況だったが、うちの住宅型有料型老人ホームに入居した。
・この写真はご本人のシェアルームの部屋だが、住宅型老人ホームに要介護度 5 で入居したのち、少し リハビリをしたら元気になったので、外出が自由にできるシェアルームに引っ越した。ここは 3LDK で 3 人の方がそれぞれ 6 畳一間を使うことができ、私がサブリースでお貸ししている。入居弱者の方の ためのところで名古屋市と相談しながら作った場所だが、高齢者ばかりで無認可託老所みたいなイメ ージを持たれるといけないと助言をいただき、障害者の方と非該当で低所得の方、またうちの株式会 社夢幻の社員も一緒に社員寮として住んだり、という形をとっている。今は特定技能外国人のネパー ル人の 20 代の若者と 60 代の日系ペルー人のヘルパーの正社員が一緒に暮らしているが、以前は日本 人の正社員の介護福祉士が住んでいたり、貯金したい人などが住んでいて、今はこの寺田さんに住んでもらっている。
・寺田さんは、自分なんかどうなってもいい…という自暴自棄な考えの方だったが、仕事を提供して雇 用契約を結び今は運転手の仕事をしている。借金は自分が働いたお金で全部返し、住宅型有料老人ホ ームに入っていて、具合が悪くなった方に自分で働いたお金で差し入れするまでになった。寺田さん には NPO 法人ゆめはーとのコマーシャルに出ていただいている。
・咽頭全摘して気管切開しておられるがガーゼ保護したりタオルを巻いたりするのが嫌いな方で、 COVID-19 が流行ってみなが注意している状況なのに、ルールを守らず近くのパチンコに行ったりす る。我々のこのビジネスモデル、閉じ込めない介護は非常に感染症に弱く、手洗いや手指消毒の積極 的な指導お願いに関してはかなり大変な思いをしている。そのような状況下にあって、ある程度元気 になると、利用者同士が喧嘩したりということがあるが、私は雇主であるので私の言うことは聞いて くれる。彼らのお金を一時的に立て替えたり様々な支援をしているので、何か揉め事があっても私が 出ていけば一応納得してもらえる。最期は私が葬式出すというようなこともしているので、一緒に暮 らしていく家族の代替としての機能はできているのではないか。
・傷みの再分配とは、傷みを分け、分かち合うということであり、その実現には仕組みを考え工夫をす ることが必要だが、現状なかなかできていない。私は名古屋の守山区で生まれ育ったので、自分の住 む地元でそういったまちづくりをしたいと考え、いろいろな法人の代表させていただいている。みな で協力していくという体制を作るには時間がかかり、うちの管理者もその場で判断する力を必要とさ れる。そういった体制がないとしわ寄せは一番弱いところにいってしまうので、継続的にその体制を 維持していかなければならない。そのためには、みんなが少しずつ傷みを分け合うことが必要。お互 いメリットだけを分け合うのではなくて、苦しいことやつらいこともそれぞれが少しずつ我慢しなけ ればならない。地域や社会にはそういったもの、傷みを分け合い再分配する機能といったものが元々 備わっていたはずで、特にこの感染症でみなが我慢をしなければならない状況の中で、意識的にその 我慢の再分配、傷みの再分配を意識していくことが必要であると考える。
→◯栗田氏(RSY):木全さんの事業の規模や対象を教えていただきたい。何人ぐらいのどういう方々 を対象にしているのか。困窮者なのか。
◯木全氏:特に誰という限定はしていないが、要介護高齢者が一番多い。それから精神疾患や知的障害 などの障害者。住宅型有料老人ホームは看取りができるように訪問看護を併設させているので要介護 高齢者、要介護 4 や 5 の方が多い。シェアルームは社員も同じ間取りで一緒に暮らすというモデルで やっており、なるべく高齢者で集めない方が良いと名古屋市の指導もいただいているので、非該当の 方も住める。私の中学の先輩で 50 代半ばの方も、知的障害の方だが一緒に暮らしている。認知系の障 害があっても住めるが、徘徊がある方はシェアルームに適さないと判断している。人数は住宅型有料 とシェアルームを全て足すと 40 人未満。
2.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など
○朝倉氏(金城学院大学):3 点お伺いしたい。
①NPO 法人ゆめはーとと株式会社夢耕の関係、経営戦略みたいなところを教えてほしい。
②看取りまでサポートするとのことで、権利擁護などいろいろなネットワークを相当つくっているのではないか。その辺についてもう少し詳しく教えてほしい。
③「傷みの再分配」という言葉、初めて聞く言葉だがとても素敵な言葉だと思った。スウェーデンの福祉は「悲しみの分かち合い」というものをイメージし、「私たちの家」というコンセプトで福祉国 家をつくっていったというところがあるが、それとすごく近い考え方ではないかと。そういう意味 で、木全氏は守山にしっかり根を下ろし、確実に事業展開をされている。今後の将来像、どのくら いまでにどのようなかたちで守山を変えていこうと思っているのか、教えてほしい。
→〇木全氏:
①考え方や理念に関しては同じような路線。株式会社夢幻という会社は 100 年後のこの街をつくるというのを企業の理念として、社員たちもそれぞれ自分の街があるかと思うんですけど、例えば理学療法士として自分の街をつくっていくとか。私の場合は名古屋市守山区小幡のあたりなんですね。 このあたりで安心して年がとれる、安心して車いすで生活できる環境をつくろうと。今日、12 月 21 日という日を頑張ると、100 年後の 12 月 21 日に繋がっていくっていう考え方。NPO からは固定給 をもらってない。働いた分をもらうという感じで、株式会社の夢幻や夢耕から固定給をもらってい て、副業というような位置づけである。
②権利擁護の関係について、例えば守山区の保護係からは、うちで通帳を管理してほしいと言われて いる。先ほどの話にあった寺田さんは健康保険を払っておらず、名古屋市に保険料を納めていくこ とが必要だった。その管理はうちで行った。人によっては別の NPO などの権利擁護を受けた状態で うちに来るケースもある。低所得の人ほど権利擁護的な財産管理は誰がコスト負担するのかという ところが大きな課題だと思うが、うちが行う場合と、外部の NPO が行う場合とがある。それから私 自身が社会福祉士として法定後見は何度も受任していて、これまで 4 人ぐらい見送っている。日本 社会福祉士会 権利擁護センター「ぱあとなあ」というところで研修を受けたり、「ぱあとなあ」で 権利擁護活動をしている仲間もいるので、そういったところで人は担保できている。
③自分がこの街にどういう貢献ができるのか、というのは常に問われて育ってきた。例えば保護士を してるとか、成年後見人、PTA 会長など、誰かが担わないといけないところを私が担当することで、 私も安心して誰かの世話になれるというような、バトンリレーのタイミングの中で、今はこれが自 分の責任だという感覚でいる。将来像としては、目の前のことを少しずつ解決しながら笑顔になる 人を増やしていくっていうのを、名古屋の守山区の小幡の辺りだけでやろうと。いざというときに 駆けつけたりするのがうちのビジネスモデルなので、あまり多角経営はできない。社員にそれを担 わせるのはブラックになってしまうので、私を含め役員が駆けつける。中には来てくれる熱い思い をもった社員もいるが、みんなにそれを強いるのは暴力でしかないので、皆でできる範囲のことを できる範囲でやっていく。そして、ちょっとしたおせっかいやちょっとした我慢というのがお互い にできる、介護を受ける側であっても誰かに協力できる、そういう世界観をシステム化して継続し ていくこと。私の仕事としては、主に何かあったときに新聞に載る係、悪いことがあったときは私 の名前が出る。それから、連帯保証人になって借金をして誰かにお金を貸すとか、病院への入院の 同意だとか、そういう意味で私の責任は重い。私は何人か人を殺している。救急搬送されて心臓マッサージを止めると亡くなってしまう、というときに、私に判断を聞いてくる。当方では無理な延 命処置をやめてほしいという意思表示を書面で受けているので、私がそれを伝えるとそのタイミン グでドクターが死亡確認をすることになる。私が駆けつけてそういう話をするときは、その方が亡 くなるタイミングだということで、結構うなされたりする。こういうことを、もうすこしやりやす いというか仕組みとして継続できるような環境をつくるのが私の将来像である。
〇星野氏(日本福祉協議機構):木全さんと同じグループになりいろいろお話を伺った。木全さんの発表 の中に、施設の利用者の方に送迎の仕事をしてもらって報酬を支払っている、という話があったが、 スタッフが働いて得た介護報酬から利用者さんに報酬を払うということについて、スタッフに対して その考え方を理解してもらうようフォローが必要だったというお話を伺った。どうしてもスタッフが、 ケアされる側の方から自分たちが助けてもらうということに 慣れていない。そういうところを木全さんが一人一人説得し柔軟にしていくというところで、助けられる側の方が次に人を助けていくとい う、その循環が木全さんのところではうまくできていると感じた。
→〇木全氏:ご紹介した寺田さんの事例のように、要介護状態や精神障害とか、障害者、知的障害の 方たちを雇用しているのは、夢耕という会社。一方、介護サービスを提供し、ケアマネや訪問介護 看護デイサービスなどの事業をやってるのは夢幻という会社で、分けてはいる。夢幻という会社は、 元々その教育事業から始まった会社で、介護や福祉や教育分野だけに特化しようと。一方、家賃を 徴収して食事提供をしたりする事業は夢耕で行っている。夢耕で利用者さんたちを雇用しているが、 場所という意味では、だいたい同じところでサービス提供とサービスを受けることが展開されてい る。スタッフが、そういう人たちに支えられているということに精神的に厳しい、あまり見たこと がないビジネスモデルだと思うし、辞めていく人もいる。精神疾患持ちの方が普通に介護の会社に 就職して仕事を休んでしまうと、一緒に働いてる人たちがフォローしなくてはならない。それと同 じようなことが毎日起こる。なので利用者さんではなく、スタッフのフォローが必要になってくる。 また夢耕の方で、老人ホームの仕事で掃除や洗濯などにも、障害をお持ちの方とか高齢者の方など が来るので、不満というか、スタッフたちの負担の大きさに関しては、相当なものだろうとは思っ ている。
〇小池氏(よだか総研):一方の法人で利用者として、もう一方の法人では雇用されていてスタッフをし ている、ということだと思うが、この二つはやっぱり分けないと実現できないものなのか。分けた方 がいろいろと都合がいいから分けたのか、分けた理由をもう少し聞きたい。
→〇木全氏:分けても分けなくても、スタッフの実際の負担の大きさとかは変わらない。分けなくて もやり方はあったと思う。ただ、敢えて分けてあるのは、介護福祉や教育事業として打ち出したは いいが、実際には介護とか福祉、人間の生活には線引きができない。そこをしっかり支えることが 必要。それについて正社員やアルバイトなど夢幻のメンバーだけでやりきれないところもあり、夢耕という会社に分けたという経緯がある。夢幻の介護サービスはもう本当に近いところ、隣接する 三つの小学校区でしか基本活動していない。一方夢耕の方は物販もするし、家財処分なども積極的 に行っている。愛知県外にも行くぐらいの事業になっているので、分けた方がわかりやすい。
〇野川氏(名古屋市社会福祉協議会):支えられる側、支える側、分け隔てなくっていうのが体現されて いて素晴らしいとグループで話をしていた。一つ教えてほしいのが、社員の方についてのお話、木全 さんのイズムというか、そういう気持ちを理解した社員を雇用して教育していかなければいけないの ではと感じた。精神障害の方、要介護高齢者の方も知的障害者の方もシェアハウス、住宅型有料で一 緒に住んで生活しているということについて、それぞれの方への対応とかノウハウとか知識をもった社員、理解してる社員でないといけない。そのあたりの木全さんの方針といいますか、気持ちの共有、 ノウハウを理解させる社員教育、といった面で木全さんが取り組んでいることを教えてほしい。
→〇木全氏:弱小の会社、零細企業なので、お恥ずかしい話、社内教育が完璧にできてるような会社ではない。ただ、社員に話をするときに、株式会社夢幻とか木全に雇われる、という考え方はしな いでくれと。例えば、介護の専門職だとか看護の専門職とか、リハビリの専門職としての矜持とい うものがあるはずで、ご自分の矜持に雇われてくれというような話はしている。私のやりたい専門 性のある仕事はこれだ、というものと、木全のやり方、NPO 法人ゆめはーとも含めた夢幻グループ のやり方に合うのなら一緒にやっていこうと、そういうお話をしているので、やめていかれる人は いますが、10 年以上在籍している人間が 20 人近くいるし、ありがたいと思っている。
〇小池氏(よだか総研):コロナプラス自然災害があったときに、こういったおたがいさま会議のネット ワークが役に立つのではないかという仮説がこの運営チームの方にはある。もし例えばこれから豪雨 とか風水害とかが起こったときに、木全さんの事業を行っている地域とか、その地域にいらっしゃる 利用者の方や当事者の方々、皆さんが居る場所だったりとかにどんな変化があるのか、そのとき木全 さんや皆さんはどのようなことに困ったり、もしくはこういうことならできるとか、何か自然災害の ときに想定していることがあれば教えてほしい。
→〇木全氏:地元にチーム守山という防災ボランティアがあり、僕は長く関わっている。また RSY で ボランティアコーディネーターの勉強もさせていただいた経験がある。防災分野は、例えば日本語 が苦手な方たち、外国籍にルーツを持つような方たちが、この守山の辺りに増えてきており、以前 は、例えば避難所はこちらです、という案内をいろんな言葉で訳してみたり、炊き出しにハラルの ものを考えるなど、支援するときにどうしたらいいのかということを考えていたが、今はむしろご 近所が頼りなので、助ける側としてすごく必要とされる。要介護高齢者も、避難弱者の人たちを知 的障害の方たちと一緒に助けたりとか、お年寄りや障害者の方たちを一緒に助ける側として捉え、 一緒にやっていくというイメージを強く持っている。それをまず広げていこうというのがNPOゆめ はーとの理念でもあり、助けてもらう側のままで誰かの笑顔のために働けるものがあるのでは、と いう考え方を広げるのが一つ、一番大きいことである。二つ目としては、地元の人との関わりで、 「おたがいさま」と言えるような場をつくる、関係性をつくるということがとても大事だと思って いる。うちの会社も、あちらこちらに行ったりせず、地元の地域のところを丁寧にやっていこうと いう考えで、そういう繋がりを継続的に持っていきたい。私はこの街の生まれであり、お墓も地元 にあるので、死んだ後もずっとこの土地の土になるという考え方でいる。そういう考え方を広げて いくような活動で、大規模自然災害に備えられるような地元をつくっていきたい。おそらくこれま で PTA 会長をやってきたことなどとも共通するところだと思うが、今後も実践していきたい。
〇栗田氏(RSY):熱いところはみんな同じだと思ってお話を聞いていた。結局のところ、木全さんの支 援やサービスを選ぶということが本人はできない。いろいろな社会福祉事業者がある中で、木全さん のとこに来てもらうために、ケアマネとの関係性とか、評判だとか、そういう広報や PR のようなもの を社会福祉事業者はあまりやらない、やりにくい面があると思う。入所するだけで 1000 万ぐらい払 った方を知っているが、そういう施設と木全さんのところとは全然違う。今後、我々はどのように施 設やサービスを選んでいけばいいのか。またこれからどんどん需要が増してくるわけだが、業界全体 として木全さんはどう考えているのか。
→〇木全氏:まず、うちだけのことで考えると広告は打たないし内覧会も1度もやったことがない。そのお金があれば社員に回したい。広告自体得意ではないし無料のとこしかやらない。ただ業界全体的なことで言えば、はっきり言いまして、医療から分かれた介護や福祉の分野、例えば、私は社会福祉介護士として仕事をしているが、これは元々看護師の分野から分かれたもの。私は、将来的 には医療の分野に飲み込まれるという意識をずっと持っている。その意識の中で、どのように自社 のアピールをしていくのか、これはみんなで考えながらやっていく必要があると思っている。もっ と言うと、市民の側に、地域の社会資源を上手に活用していくという視点が育っていないと思って いて、そこを大事に教育していきたい。市民教育というのか、自分の街にどのようなことを求め、 どのような将来像を描くのかという視点を育てていきたい。そのうち介護業界ではいくつか倒産し ていく方向になると思っており、それに備えていきたいと思っている。
〇栗田氏(RSY):医療に乗っ取られるという考えについてもう少し教えてほしい。
→〇木全氏:ソーシャルワーカーとしての自分の意識と、社会福祉分野の専門職であるという意識の 2 つがあって、ソーシャルワークというのは制度や国境を越える。でも社会福祉は国の国民に対する約束であるので、該当しない人たちもいる。制度上対象にならない人たちがどうしても出てくる。 役所も杓子定規なことを言うのが仕事ですから、役所の窓口はどうして応用がきかないのかと怒っ てもしょうがない。だからこそおたがいさま会議で取り組もうとしているご近所力、人と人の繋が りが大事になってくる。社会福祉の網の目から漏れる人がいて、そこを我々市民セクターが支えて いくというものを、時間をかけてつくっていくことがとても大事だと考える。
3.まとめ・最後に一言
〇木全氏:うちの会社では障害の就労分野を持っていない。その状況で、要介護高齢者がリハビリで元気になっても法的制度の枠組みで支援できない。ということで、彼らに月 5000 円でも稼げるような 仕事を募集している。私は働けるなら、要介護状態でも働いたっていいと思っている。人の役に立て るのにもったいない。彼らが面白いなと思えるような仕事があればと思っている。月に 5000 円を目 指していて、何かお仕事をいただけると大変ありがたい。普通に最低時給を取れるような仕事ができ る方たちではないので、どのようなやり方ができるかを話し合う場が欲しい。その中で、それぞれの 適性に合わせたところで、指示指導を雇う側の我々が考えるので、実際のお仕事を継続的にいただけ るような形を模索したい。実はここ 7 年ぐらい募集していてこれまで何度か失敗している。緩やかに ぬるくて継続性があるもの、そんなわがままを言ってるから駄目なんだというところもあるが、お年 寄りの方たちが生き甲斐のある人生のために社会に参画するってことを考えると、仕組みをつくって 工夫する必要がありますので、そういうことを話し合える場を求めている。
→〇小池氏(よだか総研):何かこういうことならできるのではということを思いついた方がいたら、ぜひ事務局なり木全さんなりにご連絡いただきたい。
4.次回の予定
■日 時:1月11日(火)16:00-17:00
■テーマ:『楽笑が描く地域共生社会のカタチ』
■ゲスト:小田泰久氏(社会福祉法人楽笑 理事長)
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