第68回:小規模多機能型居宅介護施設とケアマネージャーのコロナ禍の奮闘
●日時:2021年12月14日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:19 団体(運営 7 団体含む)
●参加人数:27 名(運営スタッフ 12 名含む)
1.情報共有
〇坂本氏(名古屋市民活動推進センター)
□Youtube 動画が完成したので紹介する。NPO の応援動画、下記の URL からアクセス可能。
http://www.n-vnpo.city.nagoya.jp/ouen2021/index.html 名古屋おもてなし武将隊~NPO漫遊の旅~
【12 月 1 日(水)から 31 日(金)までの期間限定公開!】
〇小池氏(よだか総研)
□「NPOのビジネス志向と倫理」研究会第4回 抑圧の三重構造
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfIRcaJuCa_nYC_8t_tJV9sF7JbsTLWGxxmKTYK2gAyNbltF A/viewform
2.話題提供
■テーマ
『小規模多機能型居宅介護施設とケアマネージャーのコロナ禍の奮闘』
(水野千惠子氏:NPO 法人かくれんぼ理事長)
□特定非営利活動法人かくれんぼ団体紹介
・設立年月日:平成14年8月22日
・企業理念:等 生(とうせい)
すべての人が、その人らしい生活を送るために。かくれんぼは、高齢者も障害者も子どもも健常者もすべての人が同じ人として均等にあたりまえの生活ができるような社会の実現をめざします。
・社是
〇私たちは、明日の 100 人よりも今日の 1 人を助けます。
〇私たちは、一人ひとりを大切にし、その人らしく生き抜くお手伝いをします。
〇私たちは、地域の中で信頼され、NPO活動により地域の発展に貢献します。
〇私たちは、感謝のこころを持ち続けます。
〇私たちは、常に向上心を持ち続けます。
上記の理念を設立同時のスタッフと話し合い、活動を 20 年続けている。
□かくれんぼ団体紹介
設立当初は定員 10 人のデイサービスでスタートした。その後ご利用者様の声から、訪問介護、ケアマネ、認知症のデイサービス等、利用者様のニーズに応えながら事業展開をしてきた。20 年間、ニ ーズに応えてやってきて、現在は 22 事業所を展開している
□法人としてのコロナ対応
〇法人としての取り組み
・PCR 検査
・ワクチン接種
・感染症対応研修 ・陽性者が出た時のレッドゾーンの確保、動線の確認 ・他施設への応援
・社宅の準備
〇職員への協力要請
・体調管理票
・早めの PCR 検査協力
・体調不良時等の自宅待機
・外出・会食の自粛
・上記の対応に加え、社員には事業所利用の時に濃厚接触者または接触者になった場合は、休業を要請し、その場合は 6 割の給与保証は行うと約束を行った。おかげさまで、法人内施設での感染拡大 はなかった。
□コロナ禍での在宅福祉の現状
・いろんな問題がある、というのは思った。例えばデイサービスを利用された方がいた。その方は元気でなんの問題もなかったが、夕方にその利用者様のご家族が熱発をし、コロナの可能性があると 連絡があった。その方には帰宅をしてもらい、施設にいた利用者様、スタッフ全員に PCR 検査を実施してもらった。確実に全員の陰性が証明されるまで、デイサービスを一週間ほど休止した。
・濃厚接触者になると、訪問介護のヘルパー事業所も「行きません」と断られる事業所がある。しか し、独居の利用者様は食べなくてはいけないので、そういった方はかくれんぼのスタッフで対応を した。
・行政に対して感じたことは、看護士、特別養護老人ホーム、グループホーム等泊りの施設に対して は、ワクチン接種はとても速かったが、通いの小規模多機能、デイサービス、在宅支援をしているスタッフに対してはワクチン接種の対応が遅かった。最も社会の中を動き回ってるスタッフ達が早 くワクチンを打てないっていうことに、とてもジレンマを感じた。
・デイサービスを休んで在宅で静養してくださいという利用者さんには、家族に仕事を休んでもらう しかなくなる。そうすると仕事を休むのも大変、認知症があるけど一人で自宅で過ごしてもらうし かない状態、そういった負の連鎖がたくさん生まれてくることを今回とても感じた。
・介護職スタッフたちは、日頃からお世話させてもらっているので少しでも力になって助けたいと思 うのはもちろんだが、幼稚園、小学校に通っている自分の家族に感染したら困る。まして、おじい ちゃんおばあちゃんも一緒に住んでるから困る、というスタッフもいた。
□小規模多機能型居宅介護とは
・今かくれんぼで一番力を入れてるのは、在宅支援の小規模多機能。 ・小規模多機能とは、在宅と施設の中間で柔軟な対応が出来、「通い(通所)」 「訪問」 「泊まり」の
組み合わせが出来る。登録制なので、登録すると通うこともできるし、通いに行きたくないので、 自宅に掃除、洗濯に来て、買い物に行ってほしいというのもできるし、家族がいない時は泊まりも 対応可能という、利用者様にとっては大変便利なサービス。私は利用者さんが便利な分、スタッフはとても大変と考えている。
〇水野大氏:小規模多機能かくれんぼケアマネージャー
□コロナ禍における小規模多機能型居宅介護での対応事例 A様
【年齢・性別】 70歳、男性
【身体状況】 要介護5、左片麻痺、歩行困難
【家族構成】 3人暮らし(本人A・妻B・三女C)
【利用状況】 『小規模多機能 惠』を31日/月(毎日利用) 8時に迎え、昼食・夕食後19時半以降に送り
8/30 17:00 妻B様より「同居の三女Cが感染症疑い」との連絡が惠に入る
8/31 8:30 「通所」を停止(サービス停止) ※本人A様と妻B様にPCR検査を依頼 ⇒夕方 妻 B 様より「同居の三女 C の PCR 検査結果が陽性だった」との連絡が惠に入る
9/1 全職員に PCR 検査実施。パート等接触者は出勤停止。正職員のみで勤務
9/3 A 様に訪問医をつける
9/6 訪問医がA様の入院先を終日探すも受け入れ病院なし
9/8 川名病院へ入院(介護タクシー利用)
9/9 スタッフに陽性者が出なかったため「通所サービス」再開
その後 A 様は 10 月にほかの病院に転院をし、12 月からかくれんぼの小規模多機能の利用を再開した。
□上記の中で苦労したこと
・利用者家族に陽性が出た後のスタッフへの PCR 検査 ・スタッフへのマニュアル・感染症対策の周知
・スタッフの勤務調整
・利用者への通所停止、訪問調整と訪問対応、感染症対策の実施
・家族様との連絡や調整
・夜勤調整
・陽性利用者と家族様への対応(訪問医をつける。家族・本人の PCR 検査や病院の手配など) ・経過記録(利用者との接触や時系列など)
□今後の課題と展望
・コロナ対応ができるように介護職の感染症の病気に対する知識・技術等の教育、訓練
・コロナ発生時の応援体制、連絡体制、応援する人・現場でケアする人・他の利用者を安全にケアする方法等
・陰圧室の設置 ⇒名古屋市の助成があり現在準備中
2.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など
〇野川氏(名古屋市社協):感想については本当に大変苦労されたという事を皆さんが発言していて、 なぜ医療関係者だけフォーカスされて介護・福祉関係者は置き去りになっていたのか、ということに 対するいろんな不満などを共有した。その中で水野さんに質問させてもらったこととして、スタッフの方のメンタルサポートの話があり、どんなことに配慮されたかということを聞かせてもらった。普段は職員旅行とか飲み会等で結びつきもできているところだったが、コロナ禍でできなくなったので、 管理者とスタッフとの面談をきちんとやろうという方針を立てて、それを丁寧に実施し、職員の声を 聞いてスタッフの家族の健康にも配慮した。また、感染予防のための消毒液などを入れたポシェット などを各スタッフに配布したりすることによって、離職者が減ったということの話を聞かせて頂いた。
〇関口(フリージャーナリスト): 介護・福祉関係者が色々と後回しされてしまう状況というのは、 非常に疑問があるというような言葉がありました。僕も同じように思って、これから 3 回目のワクチンの接種が始まっていますが、その対応がどうなるのか、情報があれば教えていただきたいと思う。 また、かくれんぼさんが、21 施設くらいでだいぶ大所帯になっているとお聞きし、どんなご苦労、ま たどんな工夫をされてきたのかを教えてほしい。
→〇水野千惠子氏(NPO 法人かくれんぼ理事長):大きくなったという自覚はあまりないが、利用者 とか高齢者障害者の方のニーズに応えたいという強い気持ちをずっと持ち続けて、こんなに事業所 が増えたっていうのが正直なところ。あともう一点、法人設立は女性 3 人と立ち上げたのだが、周 りの人たちにとても恵まれてやってきた。私に関わってくださった人たちはみんな本当に理解して くださって協力してくださっている。私は、財産は人だと思ってる。ワクチン接種の 3 回目につい ては、名古屋市からは具体的な通達は無い。
〇浜田氏(レスキューストックヤード):スタッフに対するメンタルケアの話があったが、利用者の ご家族にも配慮をされたと思うので、その部分の話も聞かせてほしい。また、事業所を休止されたと きに、当事者ではない利用者様へはどのように説明をされたのか教えてほしい。
→〇水野大氏(小規模多機能かくれんぼケアマネージャー):コロナが 1 次・2 次と出てた時に法 人としての対応も事前に配っておいた。こういう風になったら通所は止めます、こうなったらショ ート止めます、というのは事前に配っていて、今回その上で、利用者の家族さんから陽性者が出た ので、手紙出していた通り止めますとお話をした。ただ、事業所は止めたが、止めた後もご家族様、 ご本人様に毎日電話したり、買い物へ行き、食べ物だけ届けたりとかそういう支援をさせて頂いて いた。また、通所を止めているときも、いついつから開所します等の情報も通達し、ご家族、ご本 人に不安が無いように対応をしていた。苦情等が来ないように、一手先を読んで対応をしていた。
〇浜田氏(レスキューストックヤード):先を読むという意味では、陰圧室の設置も補助を受けられ てつくると伺った。先を読む中で、もしお金がかかることがあれば、その財源を確保する部分につい て何か心がけているところはあるか。
→〇水野大氏(小規模多機能かくれんぼケアマネージャー):名古屋介護ネット、愛知県、厚労省 のホームページ等は毎日のように見ているので、それに対する補助金だったり助成金の申請は、会 社、事業所の負担が少なくなるように気を配っている。
〇杉本氏(白木蓮):小規模多機能という言葉を最近聞いて知ったのだが、その中に何を含めるのか というのはそれぞれ違うような気がしていて、定義はあるのか教えてほしい。また、かくれんぼさん と同じように、通所、入所、訪問の形が多いのかを教えてほしい。また、小規模多機能が主流になっ ているのかもお聞きしたい
→〇水野千惠子氏(NPO 法人かくれんぼ理事長):小規模多機能が社会的に増えてきているかとい うと、決して増えてはいない。原因は色々あるが、ケアマネージャーが抱え込んでしまう文化や、 居宅介護支援事業所からケアマネが離れるということも理由としてある。小規模多機能はケアマネ がいるので、居宅のケアマネさんが利用者さんを手放されないといけないとかの問題もある。また、 名古屋市で小規模多機能事業所を 100 箇所目指しましょうって言っているが、今 83 箇所くらいでなかなか伸び悩んでる。私は伸び悩む原因のもう一つには、先ほど申し上げたように小規模多機能 は柔軟に対応できるので利用者さんにとっては便利だが、スタッフはとっても大変。相手が便利な 分だけ、こっちは柔軟に対応しないといけないのでその分負荷がかかってきて大変ということ。そ れから介護保険の財源が苦しくなって 1 割負担から、2 割、3 割負担へと変化し、高所得者の人は 3 割負担になった。小規模多機能は 1 か月いくらという制度。1 か月 1 割負担だった時に 3 万円だ った人が、高所得者だと 9 万円になる。そうすると、結構高くなったので介護の利用を控える人も 出てきている。いろんな影響があって小規模多機能は伸び悩んでるが、いざ使うと便利で、使えば 使っただけ 1 か月包括だからいいよね、ということになり、困難な人が来るという風になる。また、 認知症はあるは、介護度は高いは、お金がないなどの三拍子揃ったような人が、コロナが明けてか らとても多いと感じている。少し論点がずれたが、小規模多機能は重度の人がより便利。軽度の人 は自活が半分できれば、介護保険を使うのを、少なくしながらデイサービスに入っていけばいいと いう風潮である。介護保険制度が悪い方向に進んでいるとは思わないが、行政が制度の狭間にいる 人々を救えていないように感じている。介護保険の隙間で大変な人がいる。例えば生活保護は嫌だ けど年金が 1 カ月 6 万の方もおられる。その人たちは、生活保護者より苦しい生活だったり、認知 症はあるし、介護保険払えない方もいる。そういった方々を救えていないので、行政にはもっときちんとしてほしい。
〇小池氏(よだか総研):おたがいさま会議はもともと災害救援・緊急支援をやる団体が中心になっ て立ち上げた。コロナというのが一つ災害ではあるが、それに加えて自然災害が起きた時に、かくれんぼさんとか、その受益者の方々、当事者の方々がどういう風になってしまうのか?どのような支援 が必要になるのか?逆に、こういうことが出来るのかもしれないなど、どんなことでも構わないので、 災害に関してお話をお聞かせください。
→〇水野千惠子氏(NPO 法人かくれんぼ理事長):どんな災害が来るかはわからないが、その時に勤 務表とか、リーダーがどうとか管理者がどうとかは言っていられないと思う。その時、その場にい た人たちが、リーダーシップが取れないと動けないと思う。また、災害の時はスタッフが出勤でき ない場合も大いにある。私は前の水害の時ちょうど宿直をやっていた。その時は、地域の人も施設 に避難をしていた。元気な人も支援が必要な人も、地域の人が多くいたので、その時に私は、スタ ッフがマネジメントの出来る人材かどうかが大事だと思った。そういう時は地域の元気な人に手伝 ってもらわないといけない。食事の準備なのか、下の世話なのか、それら指揮をするリーダーが絶 対必要。その様なマネジメント能力を育ててくことは、常日頃から必要だというふうに感じている。
3.次回の予定
■日 時:2021年12月21日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『生きた甲斐ある人生のために!要介護等改善と傷みの再分配』
■ゲスト:木全伸夫氏(株式会社夢耕 代表取締役)
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