第67回:NPO 法人ぷらっとほーむの成り立ちと現状

会議レポート

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●日時:2021年12月7日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:18 団体(運営 8 団体含む)
●参加人数:24 名(運営スタッフ 14 名含む)

1.話題提供

■テーマ『「NPO 法人ぷらっとほーむ」の成り立ちと現状』
(糸柳元英氏:認定 NPO 法人ぷらっとほーむ 理事長)

〇団体の成り立ち

・「ぷらっとほーむ」という団体名は、安心して乗れる電車が来るプラットホームのように、困った人が相談に来ることで問題解決につながっていくような場所であるようにと初代理事長が名付けた。

・当団体は、民生委員としての活動や問題意識からスタートしており、高齢者福祉をテーマにしている。 2000 年に介護保険制度がスタートしたことにより、高齢者が高齢者施設に入所する際の身元保証が課題となった。介護保険制度以前は、行政が必要と思えば行政措置で高齢者は施設に入ってもらうこと ができた。しかし、幅広く展開しないと高齢化社会では維持できないと、施設入所は本人と施設の契約で成り立たせ、経済的保障に介護保険を使うという仕組みができた。ただし、一人暮らしの高齢者 の場合、身元保証人を求められると難しい場合があり、そのことを民生委員に相談することで、民生 委員が暫定的に身元保証を受けるというケースがでてきた。民生委員が受けた場合、任期終了や定年で続けられなくなることがあるため、入所者はどれくらい長く入所できるかわからず、非常に不安定 になってしまう。そのため、もう少し安定した継続的な組織が必要であると、民生委員たちが集まっ て NPO 法人を設立し、法人が身元保証をする仕組みを作ったことが当団体の始まりである。2006 年 2月に愛知県知事の認証を受け、2015 年 7 月に名古屋市で認定 NPO の認定を受けている。

・当団体は、地域住民が地域福祉を推進するという考え方で集まっていることが特色である。原点はボ ランティア活動であるが、継続性を保つためには手当を出すことも必要であると、活動手当のある支援員(有償ボランティア)としている。利用したい人は利用会員として契約し、一定の支払いもしていただくという体制。民生委員は、地域の推薦で行政が委嘱をしているが、福祉の知識や経験は関係ない。当団体の支援員も、知識や経験は問わず、気持ちとして寄り添うボランティア精神があればいいため、様々な人が集まっている。助けられるのは高齢者であるが、助ける人も元気な高齢者(アクティブシニア)であり、高齢者同士の互助組織という考え方で進めてきている。

〇団体の活動について

・基本的な活動は、身元保証に関する相談対応である。単身者の方や、家族と疎遠で本人に何かあった時に誰もすぐに駆けつけることができない方のため、身元保証人になって欲しいという依頼が一番多い。困って相談に来る人は、当団体を直接訪ねて来る人のほか、病院や施設で身元保証人がいないことを相談すると、名古屋市内には身元保証組織が約 20 団体あるため、ワーカーや区役所担当者から信頼できる団体ということで紹介してもらい、当団体に連絡が入るということもある。

・緊急事態時の駆けつけ対応としては、施設入所中に病気やケガなどによって救急車で運ばれて入院と なった際、入院手続きが必要となるため、当団体に連絡が入って担当支援員が駆けつけることになる。また、入院や入所する場合に、行政としては身元保証人を求めてはならないとは言っているが、実情としては病院や施設は困ってしまうため、お金の支払いに関する保証をして欲しいということがあり、 実際は身元保証の対応をしているという現実がある。

・当団体を利用いただくには、本人と契約をするため、認知症が進んでいる人の場合は契約能力の有無 や、金銭管理能力が問われるケースもある。法的制度としては、成年後見制度を適用することになる が、スムーズにいくとは限らない。そのため、当団体としては、ある程度の幅をもって契約をしてい る。本人が自分の名前や生年月日を言えないと問題であるが、ある程度自分の現状を認識しており、 話をして通じるのであれば契約をしてきた。しかし、契約段階ではよくても、その後に認知度が進むと分からなくなってくることもあることが問題としてある。

・その他、病院受診や買い物に付き添ったり、官庁などでの手続きを行うといった活動もあるが、様々 な要求が本人や施設からでてくるため、それらに悩みながらも支援をしている現状である。

・現在は超高齢社会であり、私も支援員をするようになってから様々な実態を知ることになった。例え ば、ゴミ屋敷の独居高齢者にどう対応するか。当団体だけでは対応できないため、行政と連携し、行 政からの要請ということで、まずはゴミ屋敷の高齢者には施設へ入所していただき、それから家を片 づけたりすることもあった。認知症の重たいケースの場合、当団体では支援しきれないため、成年後 見というかたちで後見人を家庭裁判所で選別してもらう。成年後見では、弁護士や司法書士、行政書 士など法律の専門家がなることが多いが、その人たちが買い物支援や病院等の付き添いまでは難しい ため、後見人になった人から本人の身の回りのお世話(身上監護)を当法人に依頼されるケースも多 くある。団体として成年後見人になることはあまり多くない。本人が持っている資産がある一定額を 超えていると監督人がついたり、後見人のための信託制度を適用するようにという指導があるため、 団体として成年後見制度を維持していくということにはあまりならない。成年後見制度ができた当初 は、家族が成年後見人になることが多かったが、後見人となった家族が勝手に財産を使ってしまった りするなどのトラブルのもととなった。そのため、今では法律家が後見人になることが多くなり、そ の下請けのようなかたちで当団体のような団体が、身上監護の委託を受けるという構図ができていっ た。

〇団体の現状と課題

・当団体と契約をして支援員がお世話をしている利用会員は、過去には 650 人を超えた時期もあったが、支援員不足でやりきれなくなって不満がでてきたり、同じような団体も増えてきたこともあって、現在では 500 人程度となっている。施設入所の身元保証が 70%と圧倒的に多く、在宅が 20%、その他は一時的に医療機関に入っている等である。

・当団体では、名古屋市内全域をカバーするため、本部を含めて事務所が 4 ヶ所あるが、人数の差もあ れば、必ずしも必要なところに事務所が設置できているわけではなく、支援員などの人の確保が大変 な状況である。団体設立から 16 年が経過し、当初からの支援員は同じように年を重ねて、支援される 側にまわることもある。また、家族内で介護や支援が必要な人がでてくると、そちらの対応で活動が できなくなる人もいる。当初の団体のねらいとしては、高齢者同士の互助組織ではあったが、団体と しての体制が揺らいできている状況もある。超高齢社会を乗り切るために、元気な高齢者が助けを必 要としている高齢者を支援するというコンセプトはよかったと思うが、実際の運営で生かしきれているかというと、難しい問題がいくつかある。

・遺言で財産を当団体に寄付してくれる遺贈を大きな額で受け取ることがあるため、ありがたいことに 赤字を補填してもらっている。500 人規模の活動で、計上収益が約1億 5000 万円、寄付収入が 6000万円程度あることで何とかやっていけているが、それもだんだん厳しくなってきている。

・以前に身元保証団体の不祥事があり、国としても消費者団体の問題や消費者被害であると、あり方を めぐる議論もあった。ただし、もともと身元保証団体を所管する行政組織がないため、厚生労働省も 手が回らず、消費者団体として考えるのも違うということで、新しいものを作っていくということに はならなかった。しかし、全国の約 100 団体対象に実態調査が行われ、小さい団体から全国展開している団体など、様々な実情がみられた。不祥事を起こしたのは、全国展開していた団体で、職員の費 用を賄えなくなり、預かったお金を使いこんでしまい、団体自体も破産してしまった。また、身元保証のお金を取りすぎているのではと裁判になった団体もある。そういったことも踏まえつつ、当団体としても社会的に身元保証活動を継続する中で、誰にでも説明できる内容にしておく必要があると思って実施しているが、実際には難しい部分もあり苦労している。

・コロナ禍に関しては、高齢者施設内でコロナ感染があると大変なことになるため、施設側のガードが固く、団体への依頼が来なくなっている。身元保証はしているが、支援員が外から来るとコロナ感染の心配があるため、面会も厳しく制限されている。そのため、利用会員は欲求不満になっていると思う。そして、利用会員に対する展開がないため、支援員の仕事があまり生じず、そのことを支援員が悩むということも少しある。当団体では、利用会員が亡くなった際の葬儀関係の対応もしているが、 コロナ感染で亡くなった方の場合、葬儀の仕方も当初はかなり厳しかった。

・高齢化社会がどんどん進んでいる中、このような身元保証する活動が、将来的にも可能かどうか心配 である。お金があって金銭負担ができる人に対しては人員確保ができるが、お金を準備できない人に は厳しい状況となっていく。家族力が劣ってきており、以前は娘や息子など子どもが困っていたが、 最近では頼れる親族がおらず、本人と関係が希薄な甥や姪から相談を受けるケースも多くなってきて いる。その場合も、当団体でできることの相談や施設の紹介などもしっかり行うが、家族力の低下を カバーしないといけない問題が増えてきている現実がある。

2.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

〇鈴木氏(デンソー):
コロナ禍でスタッフも集まりにくいのでは。スタッフ同士の横のつながりをどうつくっているか、連携や交流で気を付けていることがあれば知りたい。

→糸柳氏:
スタッフは 50 人強いる。特定の区にクラスターが発生した時期は、その地区の事務所に行くなといった偏見もあり苦労した。スタッフ同士の連携は、事務所単位では密にしないとやっていけないが、別地区の事務所とのつながりは乏しく、全体で助け合うということにはなっていない。事務所同士の応援体制が課題。普段は自分の担当で個別に動いているため、交流する余裕がなくチーム力 が発揮できないことが多い。担当支援員が動けない場合は、緊急で他のスタッフが代行することはあるが、相手の状況や顔がわからない場合もあって大変。

〇麻生氏:
団体の存在を知らない人もいるのでは。病院や施設から紹介されるケース以外に、一般への広報はどのようにしているか。

→糸柳氏:
困った家族がインターネットで身元保証団体を検索するといくつかでてくるため、そこから 団体ホームページを見て直接依頼が入る場合や、会報を関係各所向 けに年4回作成し配布しているため、それを見て来る場合もある。介護や高齢者問題を相談する行政窓口や地域包括支援センターなどで団体情報を聞いてくる人も多い。一般にはなかなか知られておら ず、自分の親族が身元保証関係で困って必要な時に初めて知ったというケースが多い。

〇小池氏(よだか総研):
スタッフはどう集めているか。コロナ禍で高齢者のボランティアの場合、外にでたくないという声もあるのでは。ボランティア意欲はどうなっているか。

→糸柳氏:
ある事務所では、辞めたいというスタッフが多くでており、運営に困る状況になった。しかし、新聞の折り込み広告を地区に配布することで、たくさんではないが新たに登録される人もでてき ている。パート等の仕事をしている人もいて、フルタイムで活動できる人はなかなかおらず、寄せ集めであるため、人を上手に配置していくコーディネーターが足りないと力になっていかない。人員の振り分けや応援体制を考えていかないといけないと思っている。

〇浜田(RSY):
家族力が落ちてきていること、甥姪に負担がいくケースが増えて難しくなってきている近年の変化を知りたい。

→糸柳氏:
統計的には不明であるが、経験として甥や姪といった人からの相談電話をとることが増えてきている。親族と言われても、甥姪にとっては遠い親族であり、おじさんやおばさんの困った状況も その時になって初めて知らされ、そこで「親族だから何とかして欲しい」と言われても、簡単には応じられない。まずはどうしてそんな状況になったか、そして対策も知る必要があり、基礎的な知識や 今の仕組みを知らないととても対応できない。甥姪がそういったことに詳しくなっていくと強い家族 力にはなっていくが、他の人の分もその人たちに集中していくなど、辛い立場になっていく場合もある。私自身もこの仕事をしていなければ、知らなかった状況であると思う。認知症は多くの人が知っており、身近に経験した人もいると思う。しかし、多くのケースを経験すると、こんなに種類がある のかというくらい多様な症状や行動がでてくるため、振り回される。そういったことについて、社会全体が認識を改めなければいけない。認知症の勉強会なども実施されているが、実際に直接体験した時には、知識として知るのとはずいぶん違うと私自身感じているところである。

〇田岡氏:
在宅ケアマネージャーをしており、日々様々な人の担当をしている。ぷらっとほーむの活動 は身近な問題であるため、今回参加させていただいた。おたがいさま会議は、異業種の交流というこ とで、今後もまた参加したいと感じた。

〇栗田(RSY):
初めて聞くことが多く、社会課題の盲点だと改めて認識した。ますます進む超高齢社会の中、世の中にこうした支援活動が必要だという認識が我々の中に欠けており、反省すべき点が多々あると感じた。

■まとめ

〇糸柳氏:
ゴミ屋敷の問題としては、家主が施設などどこかに行ってしまって放置されている家屋がたくさんある。そういった課題を何とかしようとする活動も一部では生まれてきている。資源を活かしていけるように、何かできるとよいと思う。NPO の活動は多様である。様々な活動が求めあい呼応し、 様々なかたちの助けあいとなり、日本の超高齢社会がモデルケースになっていくとよい。NPO の活動だけではいけないが、切り開いていけるといいと思う。

3.次回の予定

■日時:2021年12月14日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『かくれんぼ団体紹介~法人としてのコロナ対応~』
■ゲスト:
水野千惠子氏(NPO法人かくれんぼ 理事長)
水野大氏(小規模多機能型かくれんぼ ケアマネージャー)

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