第66回:地域と連携した学習支援(高浜市学習等支援事業の事例)
●日時:2021年11月16日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:20 団体(運営 8 団体含む)
●参加人数:26 名(運営スタッフ 13 名含む)
1.情報共有
〇坂本氏(名古屋市市民活動推進センター:)
■オンラインセミナー:SDGs でつなぐ NPO と企業のゴール
・SDGs(持続可能な開発目標)は、国連で採択された国際社会共通の“みんなが幸せに生きる未来のための目標”。社会課題に取り組んでいる NPO は、いわば社会課題の専門家。NPO の活動をより多くの 人や企業等と協働することで、 社会課題解決に向けた新たな可能性を見出すことを目的に、本セミ ナーでは、企業と NPO の協働事例をもとにトークセッションや交流会を行い、1月には、協働に向け たワークショップを開始する。名古屋市SDGs 推進プラットフォームの活用等、わたしたちとステップアップをしていきませんか?
・日時:2021 年 12 月 8 日(水)14:00~17:00 ★オンライン開催(ZOOM ウェビナー)
※名古屋市市民活動推進センターでの参加を希望の方はご相談ください
■ぼらマッチ出展団体紹介動画
・ボランティアを募集している団体とボランティアをしたい方のマッチングイベント
・日時:2021年12月4日(土)13:00~16:30 ※12:30~受付
・場所:愛知大学名古屋キャンパス講義棟5階・9階 名古屋市中村区平池町4-60-6
〇横田氏(RSY)
■令和 3 年 8 月の大雨で被災した佐賀県の方々に暖かな冬を届けたい
・被災した方々に暖房器具を届けるキャンペーン。是非ご協力をお願いしたい。
2.話題提供
■テーマ:『地域と連携した学習支援(高浜市学習等支援事業の事例)』
(城取洋二氏:NPO 法人アスクネット)
〇アスクネットの活動
・「キャリア教育コーディネーター」 として活動を行っている。学校と地域をつなぐコーディネーターの役割。学校現場に社会人講師と呼ばれる地域の方たちであったり、高校生・大学生などを地域にイ ンターンシップとして送り出していって、そこで子供たちがどう生きるかについて学んでいくキャリ ア教育というプログラム支援を行っているのが主な活動。
〇高浜市の概況
・名古屋市から南東へ 25 kmに位置する面積 13.11 km²(東西 4.2 km、南北 5.5 km)で、人口は 5 万人規模の比較的コンパクトな街。特徴としては他市に比べて外国人人口率、世帯率が非常に高い。産業としては瓦の町で、第 2 次産業の就業人口比率が非常に高い地域。
・市内に小学校 5 校、中学校 2 校、県立高校 1 校がある。福祉サービスの主要な関係機関を三河高浜駅前の「いきいき広場」に集約し、ここで学習支援も行っている。市内 5 つの小学校区に住民互助型活動組織「まちづくり協議会」を設置。
〇高浜市学習等支援事業のねらい
・子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されること のないよう、支援が必要な生徒に対して、自ら将来を描く ことができるようなプログラムを実施する。平成 27 年 7 月 25 日より、 高浜市学習 等支援事業「ステップ」を開始(事業主体:愛知県高浜市(福祉部)、運営主体:特定非営利活動法人 アスクネット)
〇「ステップ」の由来
・学習支援をしていくにあたって、様々な家庭的な背景を抱えて、それが壁になっている子どもたちが、その壁を階段にしてくれるといいなと、その階段を自分の足で歩んでいって将来で進んでほしいなという思いでステップという名前をつけた。
・また、学習をしていくにあたって、貧困状態を階段にして乗り越えるために何が必要だろうと考え、一つは色々な団体さんと同じく、基礎学力を含めた学習の支援と、もう一つは普段アスクネットが取り組んでいる、キャリア教育的な視点で、色々な人達、多様な地域の人達との関係性を作るということが、子どもたちの自立に大きな意味合いがあると考え、関係性作りをもう一つの軸に設定した。
〇学習支援と関係作りについて
・特に、関係性作りに関しては、体験活動や生徒自身のキャリアを考えるイベントを実施し、生徒の将来を描くことができるように支援する。また、様々な大人や地域と関わるイベントを実施し、多様な価値観を持つ大人や地域との関係性を創出することを意識して実施をしている
〇運営体制のイメージ
・事業主体として高浜市、運営としてはアスクネット、あとは運営を一緒に活動してくれる大学生や高校生のボランティア、また連携先として学校や地域の方たちとの連携をしているというのが、高浜市の学習支援の特徴。
〇アスクネットが学習支援に取り組む意義
・色々な所と繋がり合いながら、子どもたちを育んでいくこういったことが必要になると考え、学習支援に関しては「教育と福祉の連携」を目指して取り組んでいる。
1 「キャリア教育=生きる力の育成」の要素を組み込む ⇒子どもたちの自立を目指した学習支援
2 地域連携をコーディネート ⇒地域資源と連携した学習支援
〇これまでの歩み
・2015 年度、高浜市学習等支援事業「ステップ」開始した(※中学 1 年生~3 年生対象)。「学習」だけで貧困の連鎖を断ち切れるのか?がテーマになった。その為、キャリア教育的な支援というのを、初年度から高浜市とも協力しながら組み込んでいった。
・2016 年度、「ステップ」の対象者を高校生まで拡大した。これは事業の大きな目的である貧困の連鎖を断ち切っていくっていうことに対して、中学校を卒業したらそこを減らせるとかというと、なかなかそうではないことが大きく、例えば高校に行った後、中退であったり、その後の離職も含めて、一 定期間の見守りはやはり必要なのではないか、接点を持っておくべきではないかということで対象を 高校生まで拡大した。
・また、小学生学習支援事業「あすたか」開始した(※小学 4 年生~6 年生のひとり親家庭対象)。小学生で居場所がない子たちはいないのかなということで小 4 から 6 年生までに関して同様の事業を展開してきた。
・2017 年度、南部まちづくり協議会による子ども食堂「すこやかサテディ」との 連携(毎月第 2・第 4土曜日、16 時~19 時)
・2018 年度、「あすたか」を「ステップ」に事業統合し、小学 4 年生~6 年生「ステップ・ジュニア」、中学 1 年生~高校 3 年生「ステップ」に対して一貫した支援を行う体制を整えた。また、卒業した生徒に関してもその後どうなったのかについての追跡調査も開始した。
〇高浜市学習等支援事業の概要
・小学校、中学校、高校と支援を行い、支えられる側から支える側へ、というような循環も目指しながら事業展開をしている。また、地域との連携として、子供食堂に関するような支援基金等も一緒に作りながら地域の方が参画できるような仕組みもつくって展開している。
〇「ステップ」概要
・「ステップ・ジュニア」(小学生の部)
対象者:小学 4 年~6 年生
開催日時:木曜日16時~18時30分、第1・3・5土曜日9時~11時30分、第2・4土曜日13時30 分~16 時(※長期休暇中は火・木・土の週 3 回)
学習支援ボランティア:主に市内高校生(高浜高校、ステップ生徒)・地域住民
実施回数:年間 86 回 ※休校 20 回(新型コロナウイルス・台風)
・「ステップ」(中・高校生の部)
対象者:中学 1 年~高校 3 年生 ※定時制 4 年生、高校中退者含む
開催日時:【高校生】土曜日 9 時~11 時 30 分 【中学生】土曜日 13 時 30 分~16 時(※長期休暇中は 火・木・土の週 3 回)
学習支援ボラン ティア:主に県内の大学生・社会人(ステップ・ジュニアのボランティアに参加し ている高校生も教わる側として参加している)
実施回数:年間 51 回 ※休校 11 回(新型コロナウイルス・台風)
〇新型コロナウイルス対応
・現在の感染対策として、分散実施を行っている。高校生⇒午前実施(9 時~11 時 30 分)、中学生⇒午
後実施(13 時 30 分~16 時)、小学生⇒これまで通りで対応。また、昼食支援も行っているので、昼食 時間も分散を行っている。高校生⇒前半(11 時 30 分~12 時 30 分)、中学生⇒後半(12 時 30 分~13 時 30 分)、小学生⇒前半、または後半(日程による)。
〇「教育と福祉」の連携について
・教育と福祉を連携させていくということが非常に大きなこの学習支援ではポイントと考えている。学習支援事業は福祉部が事業主体として、自治体が多い。福祉部が動くと、ケースワーカーから生活保護受給世帯等に対して個別訪問をして利用を促すことが大きな強みと考える。
・また、教育分野については、教育委員会を含め学校は、不登校の情報であったり、支援が必要な世帯、 就学援助に関して必要な方は、教育委員会が情報をたくさん持っていることがあるので、こちらからのアプローチは、子供たちにとって非常に大きな学習支援につながる要素だと感じている。
・ただ、福祉部と教育委員会が上手く連携をしていくのは難しい部分もあるので、高浜市に関しては、子ども健全育成支援員という方が福祉部の中に役割を持って所属し、福祉部と教育委員会をつなぐパイプ役を担っている。
〇行政、学校との連携
・ステップと高浜市で、毎月 1 回の定例ミーティングを行い、児童生徒の出席状況と様子の報告、運営に関する意見交換などを行っている。ステップと学校については、通信の発行(小学生は毎月、中高生は隔月)をしたり、学校見学、学習支援教室の授業見学、合同研修会などをしている。高浜市と学 校については、対象者への参加促進(年度初めの校長会で依頼し、必要な家庭への参加促進)を行っ てもらったり、児童生徒の情報共有のやり取りを行っている。
〇地域との連携
・月 1 回程度、職業や生き方などについての社会人講座を実施したり、図書館と連携をして毎月約 30 冊の本の貸し出しを行っている。また昼食支援も行っており(地元の約 15 団体が支援に協力)、その中で、準備、食事、片付けを生徒と一緒に行い、家庭教育を補うことを行っている。
〇地域連携の仕組み作り
・「子ども貧困対策会議」の設置し、関係または専門の方が入っていただきながら定期的な学習支援等の情報交換、意見交換を年 1、2 回行なっている。
〇こども食堂支援基金の概要
・循環させていく、地域の方と連携していく、という目的も含めて支援基金を作り、寄付を受け取れる場所を作っている。協議会を設置し、市民の方または団体からのお金や物品の寄付を受け取って、食事支援や、子ども食堂を実施している団体への金銭的支援、食材支援を行っている。非常に多くの方から支援頂いており、現状、資金的にも事業運営ができる状態になっており、また、食材もたくさん 寄付をいただいていることから、新たに購入するものも非常に少なく運営ができている。
〇チャレンジサポーター(ボランティア)の活動
・大学生を中心に活動をしてくれている。大学生自身にも、この場で活躍し、成長に結び付けてもらえるようお願いしている。関わる人全員が「学びあい」「成長」できる場にしたいと考えて、相互に学び合える形を意識しながら運営を行っている。
〇学習支援の役割
・学習支援=多様な課題解決のための「場」と考えている。様々な状況に置かれている子どもたちの貧困問題の解決の場として、様々な支援内容があり、そのための地域資源がたくさんあり、連携先がたくさんある。それらをミックスしながら課題解決していくための場所が学習支援なのかなと考えてい る。学習はきっかけ・手段でしかないと思っており、そこに来てくれた子どもたちが、その場で様々 な力、能力を獲得して、自立してくれることを目指している。
2.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など
○杉本氏(白木蓮)
Q1:外国ルーツの子達が来ているのか?
Q2:子ども食堂の部分で、どういった企業から寄付を貰っているのか?
→城取氏(アスクネット)
A1:外国ルーツの方も来ている。ただ、悩みながら行っている部分でもある。アスクネット自体は、 その分野について専門性が高くないので、外国ルーツの方の支援は、学習支援全体の場では正直難しいと感じている。その為、アスクネットで助成金申請をし、外国ルーツの方向けの学習支援を追加で 週 1 日行っている。地域で、専門性がある団体が立ち上がって来たので、そことの連携を強めていく予定。
A2:子ども食堂については、具体的な企業名はあげれないが、JC、ロータリークラブ、個人からも寄 付を貰ったりしている。食材については、JA や個人から寄付を貰っている。また高浜市の行政の方が、こまめに地域と連携体制を築いているので、クリスマスの時は、子どもたちにケーキを寄付して 頂けたり、夏はジュースなどをケースで寄付してくれる酒屋さんなどがあり、本当にいろんな方にこの活動を知って頂き、協力して頂いている。本当にここは、行政の方たちの地道な活動が大きいかなというふうに私自身は感じている。
〇鈴木氏(デンソー)
Q:卒業生の方が改めて支援の循環として社会に役に立っていくような形をサポートしていくという話の中で、卒業生の方々が、大学生になった時、あるいは社会出た時に、どういった支援をしたいと 考えているのか等、事例があれば教えてください。
→城取氏(アスクネット)
A:この活動を 7 年やっているので、当時の中学 2・3 年生の子たちが大学生になっていて、何人かがボランティアで戻ってきて実際に活動をしてくれています。外国籍の学習支援にも、元々支援を受けていた子が大学生になって関わってくれています。そういった繋がりは出来ています。その他に、離職しそうなときに戻ってきてくれたりとか、中退してしまった方が戻ってきてくれて、そこから市の方と一緒にハローワークつないだりして就職の支援に繋げた事例もあります。
〇浦野氏(RSY)
Q1:行政からの委託事業との事だが、委託に至るまでの経緯、苦労話、上手くいった要因を教えてほしい。
Q2:スタッフ人数はどれくらいか?また、スタッフ確保の工夫、苦労等があれば教えてほしい。
Q3:子どもの自立を何によって判断していくのか?
→城取氏(アスクネット)
A1:ご縁があったのが一番大きい。もともと高浜市がこの事業を立ち上げる時にアスクネットを知ってもらっていたのと、アスクネットと高浜市で同じ課題感を持っていた。また、市としても立ち上げの段階で人材が揃っていたというのは正直あると思う。当時の福祉部の中心だった職員の皆さんが非常に熱心に動いている。この事業に理解があったこと加えて、当時人事交流で厚生労働省から出向で来ていた方がいて、その方の仕組み作りが非常に上手だった。制度設計についてもその方が厚生労働 省に具体的に問い合わせながら作ってくれていた。さらに、子供健全育成支援員が非常に地域に関して顔も広く、ネットワークのある方が入っていた。そこに私たちがたまたま加わった。いろんなピースが重なったという、意図的な部分と偶然的な部分の両方の側面があったと感じている。
A2:スタッフは 10 名弱で回している。アスクネットとして関わっているので、当団体のいろんな職員が関わっていて、安定はしている。また、地域の方にも数名入っていただいていて、子どもたちの顔がわかる、地域の子育てに詳しい方たちにも意図的に入っていただいているので、それも重要なポイントと感じている。
A3:私自身のまだ課題として一つあるのが、この事業の成果をどう図るかというところが定まり切ってないところが、事業業全体の課題としてあります。就職したからいい、3 年離職しなかったらいい、 早く離職したら次に進めるなどいろんな可能性があると感じている。その為、回答として、「これ」 というものは、現在はない。ただ、離職をするにしても次につなげる力、立ち直る力が一つポイントだと考えている。
〇野川氏(名古屋市社協)
Q:対象になる子どもたちに、どのようにステップとステップ・ジュニアについて説明しているのか?
→城取氏(アスクネット)
A:ひとり親家庭、生活保護の世帯といった現状を子どもたち自身も理解をして、だからここに来ている。
〇小池(よだか総研)
Q1:委託事業ということで、来年急に競争入札になるなど、条件が変わることはあるのか?
Q2:コロナ禍ということで普段とは違う状況で活動されていると思うが、さらに自然災害が起こったら 活動の現場や当事者の子ども達、その家庭などはどうなってしまうと考えているか?
→城取氏(アスクネット)
A1:委託に関してはその通り。だからこそ日々考えながら活動を行っている。しかし、長く私たちが やることだけが良いこととは全く思っていない。これが地域に移行していったり、別の強みを持っている団体に移行していくフェーズに入るというのは、それが子どもたちにとっていい流れであれば自然な流れかなと思っている。であるから、私たちと高浜市とで、ビジョンであったり、私たちが出来ること、やりたいことの意見をすり合わせていくことが丁寧に出来ていると感じている。それを話せていれば、別のビジョンを持った団体さんに移行することも、もしかしたら自然の流れでできるのか ももしれないと私自身は思っている。
A2:災害に関しては、学習支援自体が支援の政策の一つという側面があるので、これ以上何か災害が 起こった時に心配なこととして、いわゆる困窮世帯の子どもたちと接していながら感じるのは、地域 で孤立しがちな世帯・家庭が多いということ。なので、この学習支援の中で地域とのつながりを持っていてくれれば、災害が起こった時に顔が見える人に頼れるとか、何か困ったときに誰かと協力をす るということを学んでくれれば、力を発揮してくれる子どもたちになってくれるのかなと感じている。 地域の担い手になって欲しいという思いを描いているので、何かあった時に、もしかしたら彼らが誰 かとつながりながら、その困難を乗り越えるために力を発揮する一員になってほしい。または、とに かく孤立せずに、その災害の中で地域の一員として活動するところまででもいいので、そうなってほ しいと思っている。
3.感想
〇筒井氏(NPO 法人瑞穂学習支援会):
・私たちのような、小さい団体が各々で努力していくことも大事で、でも大きいグループが大きな枠でいろんな子どもたちを救っていって、そこから取り残された子どもたちを私たちが救っていけることが出来れば、きっとこの世の中がもっとよくなっていくと感じた。
〇城取氏(アスクネット)
・色々とご意見いただきありがとうございます。そんなに上手くいっていることばかりではなく苦労もあり、高浜市の方と一緒に考えながらやっている発展途上の取り組みである。皆さんと今回こういうご縁を頂けたので、この続きの話とか、子どもたちの現状とかそういったことも含めて、皆さんと連携、意見交換しながら、いろんな地域で、いろんな人たちが活動できるようになっていくと嬉しいな と思っており、またいろいろ勉強させていただきたいと思っている。本日はありがとうございました。
4.次回の予定
■日時:2021年12月7日(火)16時00分~17時00分
■テーマ: 「NPO 法人ぷらっとほーむ」の成り立ちと現状
■ゲスト:糸柳元英氏(NPO法人ぷらっとほーむ 理事長)
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