第65回:コロナによって様変わりした学習支援・居場所事業の実態
第65回 NPOおたがいさま会議 議事メモ
●日時:2021年11月9日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:26 団体(運営 8 団体含む)
●参加人数:33 名(運営スタッフ 13 名含む)
1.情報提供
○種村氏(RSY)
・NPO おたがいさま会議のコーディネーターでもある子ども NPO の根岸さんが中心となって、若者向けのおたがいさま会議を企画している。11 月 25 日の 16 時からの予定。参加者募集中なので皆さんの繋がりで興味がありそうな方がいたらぜひご紹介いただきたい。
おたがいさま会議ユース編のお知らせ
〇浜田氏(RSY)
・根岸さんが関わっておられたサステナビリティシンポジウムが 11 月 3 日に開催された。大学生チーム、高校生チーム、小・中学生チーム 8 校参加し、防災×SDGs というタイトルで、いろいろな提案が あった。今回その場に参加させてもらい、おたがいさま会議のことを紹介しつつ、11 月 25 日の若者 向けのユースのおたがいさま会議にも参加してほしいとアピールをした。
〇杉本氏(白木蓮鍼灸)
・6 月に化学物質過敏症という診断が下りて、7 月から自営業の鍼灸院を休んでいる。最近、全国組織の「カナリヤネットワーク全国」という団体がクラウドファンディングで立ち上がった。私自身は「化学物質過敏症あいち Re の会」の代表の藤井さんに、暮らしを楽にするための方法やどんなものを使 うといいかなどを教えてもらっている。名古屋では啓発ページが藤井さんの尽力でできたばかりで相談する窓口すらない。私のように気づかないうちに病気になっている人もいるかもしれない。
・病気の認知度や理解度が上がり、多くの方に理解してもらえると孤立しないで済む。自殺者も出てい る病気と聞いている。周りにそういう方がいたら、日本消費者連盟から冊子が発行されているし「あいち Re の会」のことを紹介していただけたらと思う。
2.話題提供
■テーマ『コロナによって様変わりした学習支援・居場所事業の実態』
(筒井孝治氏:NPO 法人瑞穂学習支援会 理事長、松井裕輝氏:同 副理事長)
〇理事長 筒井氏より
・今回は、このコロナ禍で、どれだけ学習支援や居場所事業が変わってきたか、どんなことが困ったのかについてお話したい。
・私自身は、いわゆる中卒と呼ばれる状況で社会に出て、現場仕事を長くしていたが、なかなか学ぶチャンスがないということにかなり困った経験がある。そして、学歴や学力がないせいで、正直つらい思いもたくさんしてきた。好きな人とも結婚できない、仕事も自分のやりたいことを選べるわけでも ない、など。
・そういう自分の境遇から、自分のような人を何とか救っていければと思い、この新しいグループを立 ち上げ運営している。学習支援として、通信制高校のキャンパスを運営するなど学習の場を設けてい たり、一宮では中学生などの無料の学習支援事業をやっていたり。他にも、子ども食堂の運営や、名 古屋では地域のパトロール活動を行っている。
〇副理事長 松井氏より
・カミングアウトをすると、私自身が ADHD という発達障害を持っている。今は 3 歳児健診で障害があるかどうかがわかるが、私が小さい頃の時代はわからなかった。学生時代を無気力な状態でずっと過ごしそのまま社会人になり、転職を 20 回ぐらい繰り返すような状態だった。
・ある時、当時の上司から「お前は絶対障害がある」と少し罵倒するような感じで言われ、そこではじ めて自分の障害に気づいた。最初はすごく落ち込んだが、その中で、周りのたくさんの方の助けによ って私自身すごく救われた経験をし、今後は、私自身の経験や感じたことなども踏まえながら、困っている子どもたちの支援をしたいということで瑞穂学習支援会に参画した。
〇瑞穂学習支援会の事業(松井氏)
・大きく分けて 4 つの事業を行っている。1 つ目、一番大きな母体としてやっているのが、通信制高校のキャンパスの運営。非行をしてしまった子とか、他の中学や高校では受け入れられなかった子たちが通う教室で、ゲームをしたり、みんなでおやつを配ったり、楽しく友達の家に遊びに来るような感 覚で来てもらえるキャンパスを心がけて運営している。
・理事長の筒井は、非行少年保護の経験から、非行少年の子たちの気持ちがよくわかる。一方、通信制 高校に通う子たちの中には発達障害の子たちも多くいて、私自身が瑞穂学習支援会とは別に、障害を 持つ方の就労支援の仕事もしていることから、発達障害の子たちの支援には私がメインで関わってい る。そういう特色を持ちながら、キャンパス運営をしている。
・2 つ目は子ども食堂の運営。はじめはそれほど大きくは行っていなかった。キャンパスに来る子たち の中には、ひとり親とか生活保護の家庭がとても多く、そうすると家では 1 人で食事をするとか、食 事自体もカップラーメンとか、そういうケースが非常に多い。こうした環境では本当に豊かな生活は 送れないということから、キャンパスの中でご飯を炊いたりおやつを配ったりということを始めた。 すると生徒やその友だちとかがたくさん来てくれるようになり、そこから子ども食堂が始まった。
・今後は、地域の方たちにもっと関わってもらうことが大事だと考えていて、今、柴田駅の近くにある 「ShibaTable(シバテーブル)」という施設と、和食の料理人の方や栄養士の方などと連携して協力を 得ながら、子ども食堂を地域の方たちに対して展開していきたい。そしてゆくゆくは、地域の人たち の居場所のようなかたちで、子ども食堂を運営していけたらというビジョンを思い描いている。
・3 つ目は、今はコロナ禍でできていないが夜回り活動。一時期話題になった夜回り先生のように、県 警から制服をもらったうえで、主には栄地区でゴミ拾いをしながら、明らかにこの時間歩いているに は年齢が若く見える子たちに対して声をかけることで、非行や性風俗に関わるような事件が起きない ように防止していくという活動を行っていた。
・最後、4 つ目の事業として農園活動。外で日光を浴びながら、作物を育てる喜びを感じてもらいたい。 実際に自分たちで作ったものを収穫して食べるとか、作る喜び、働く喜びを感じてもらいたいという ことで活動してきた。
〇コロナ禍での活動の変化(松井氏)
・こうした活動を展開してきたが、コロナによって大きく様変わりした。具体的には、まず通信制高校のキャンパス運営について、最初、特に緊急事態宣言が出たときはオンラインで授業を始めた。私たちは Zoom をよく使っているが、子どもたちは Zoom というものになじみがない。特に Zoom は最初に数字を入力したりしないといけないが、ここが難しいということで離脱した子たちが多かった。
・そこで私たちは、インスタグラムのインスタライブという機能を活用して、そこで話したものをコピ ーして子供たちが聞く、というかたちで授業を行っていた。このやり方で困ったのが、私たちから生 徒の子たちの顔が見えない。逆に生徒の子たちは、声が送れず、メッセージ機能で文字でしか送れな い。普段は子どもたちの表情とか、その様子を見てアドバイスをしたりフォローしたりするが、それ ができなくなってしまった。結果として、コメントを発せない、メッセージを送れない子たちが置き去りになってしまうこともあった。
・子どもたちも最初は学校に行かなくていいと少し喜んだ部分もあったと思う。しかし、家にずっと子どもがいることで、親御さんたちにだんだん鬱陶しいという気持ちが芽生えたりすることで、お互いにフラストレーションが溜まってしまうケースもあった。そうしたことから、まずは少人数から、なるべく多くの人数になり過ぎないように気を配りながら、少しずつオンラインからオフラインの授業 に徐々に移行していった。これが一番困ったところ。
・子ども食堂も、食品を扱うのでコロナの影響をものすごく大きく受けた。先ほど話した地域の方と連 携した子ども食堂については、居場所事業ということになると一番恐ろしいのがクラスターという問 題で、このクラスターが発生してしまうと大きな問題になってしまうので、そういったことがないよ う、前回はテイクアウト形式で子ども食堂を開催した。
・ほかにも、先ほど紹介した夜回りの活動は、それなりの人数で活動してきたので、非常事態宣言以降 は大人数にならないように配慮をし、開催もかなり回数を減らしている状態。今後は少しずつ再開し ていきたいという話をしている。
・それから農園の活動は、それほど大きな畑でやっているわけではないので、どうしても密になってし まうところがあり、現状は活動していない。以上がコロナによって大きく変わったところである。
〇通信制高校での困りごと(筒井氏)
・これまでの説明に付け加えて、さらに困っていることについて説明したい。先ほど紹介したオンライン授業、インスタライブを使ってやってみてもどうしても一方通行になってしまう。確かにオンライ ン授業というのは、とても優秀な面もあり、頭のいい子はオンラインでどんどん吸収し学力高めていける。しかし、どこかでつまずいている子や、サポートが必要な子たちに対して、このオンライン授 業というものはなかなか良い結果を出せなかった。
・そして先ほども紹介したが、家庭環境がかなり悪化した。普段家にいないと「どこにいるんだ」と言 っていたような親御さんでさえ、子どもがずっと家にいてゲームしているとか、ずっと愚痴や文句ば かり言うといったことが続いてしまうと、親御さんも子どももフラストレーションをぶつけ合ってし まい、大喧嘩になった事件もたくさんあった。
・それまでとても家庭環境が良かった家庭でも、公園とか外にも一緒に遊びに行けなかった時期があっ たと思うが、そういうときなどによくない状況に陥ってしまったケースも多く、やはり適度な距離感 というものが、家族でも、どんなに大事な人との関係でも必要だと思う。その子たちが学校に行き、 家から離れたところでいろんなことを学んでくる、アルバイトに行って様々なことを学んでくる、そ うして帰ってくるからこそ、家族と一緒にいて和気あいあいとできる。
・そういった環境がコロナ禍でうまくいかなくなる家庭が多かった。正直、最初はオンライン授業をや りたくなかった。うまくいく自信もなかった。実際オンラインにしてみて、1 ヶ月 2 ヶ月経つと家族 からかなりの数の連絡が入って、家にずっと子どもがいると喧嘩になってしまう、少しでもいいから早くオフライン授業を再開してほしい、と言われ続けていた。何とか 2 ヶ月ぐらいで少しずつ元に戻 していったという状況で、とてもつらかったし、また同じようなことが起きたときにはどのように対 処すべきか、いまだに困っているところである。
・それと同時に、うちの生徒はアルバイトをしている子がほとんどで、コロナの影響で正社員だった人 や派遣社員の人が解雇された結果、これまで高校生が働いていたアルバイトの職を、その人たちがど んどん取ってしまった。今でもその状況は続いていて、この間もうち女子生徒が 3 件のアルバイトに 応募したが、全部落ちてしまった。こういった現状がいまだにあって、つらいところだと思っている。
〇防犯活動での困りごと(筒井氏)
・防犯活動について、座り込んでいる子であるとか明らかにキョロキョロしている子とか、小学生ぐらいのはずなのに夜中 10 時ぐらいに栄にいるとか、そういう子たちに声をかけるのが我々の特徴的な活動だった。「どうしたの?」「今何やってるの?」とみんなで声をかけて、必要であれば他のグループに引き継いだり、ご家族に電話できるなら我々が電話をしてあげていた。
・活動は集団で行い、多いときには 30 人とか 40 人で活動していたので、コロナ禍でクラスターじゃな いのかと言われかねない。声をかけるのも飛沫が飛ばないようにといったことも気にしないといけな い。そうすると次第にこの防犯活動も縮小させるしかなく、何度も緊急事態宣言が出されたり、解除 されてもまん延防止措置が適用されたり、そうしたことにずっと振り回されてしまって結局数ヶ月間 活動できていないのが現状。
〇子ども食堂での困りごと(筒井氏)
・先ほどご紹介した子ども食堂、柴田駅の「ShibaTable」についても、不特定多数の人にチラシを配って、困っている子やおなかが空いている子に、気軽においで、集まって、というようなことを本当は一番やりたかった。
・そこは鶴舞図書館の協力を得て 300 冊ぐらいの本を借りて置いている場所で、食事を待っている間に読み聞かせなどをしてあげることもできる。どうしても家と学校だけの往復だと、その子が悩んでし まったときに相談できる場所がない場合が多い。もう一つや二つ相談できる場所があってもいいと思 っていて、そういった場所として本当はやりたかった。
・結局、参加者の中に 1 人でもコロナが発生したら連絡しないといけないことから、そうしても顔の見 える関係の人しか呼べなかった。先日開催した子ども食堂には 30 人ぐらいは来てくれたので、次回 はもう少し大きく開催する予定ではあるが、感染対策とか、どこまで声をかけていいのかとか、そういう点でいま困っている。
〇困りごとに対する改善対策(松井氏)
・私たちなりに改善対策をいろいろと考えている最中である。子ども食堂では、基本的には 1 人 1 個紙コップを使っていくとか、割り箸を共有するようなことはしないとか。あとはテーブルに 1 人生徒が来たらそこは必ず拭くようにとか、そういった基本的な対策はしている。
・通信制高校については、基本的には距離をとって、同時間帯に 10 人とか、多人数にならないように運営している。あとは先ほどの子ども食堂と同様に、アルコール消毒を必ずやっている。
・子ども食堂でも通信制高校でも、人数を制限したことで、生徒数が少ない分、生徒に比べて先生の数も大きくならないので、結果的に生徒と先生が密に関わる事ができたという副次的な効果も生まれた。
〇万が一のときには(筒井氏)
・先ほども紹介したが、コロナ禍だからこそ、オンライン授業とか少人数クラスにしてみたことで、実はより深く生徒と関われるようになった。今までは、生徒が 5 人いたら 5 人全員に十分に話ができるかというと難しいところがあった。今は先生 1 人に生徒 1 人か 2 人ぐらいしか対応してないので、密にフォローできるようになったのは逆に良い事だったと思っている。
・同時に、こうしたコロナとか災害のような大きなことが起きてしまうと、私たちだけのフォローでは難しい。私たちだけではもうどうにもお手上げ、ということが多いなということを痛感した。
・このおたがいさま会議のテーマでもあるが、万が一大きな災害が起きたときに、みんなで何できるの か。私たち、机と屋根さえあれば、どこでもきっと勉強を教えてあげることができる。今回のコロナ でも、もしかしたら大地震が起きた災害でも、学びの場所と人の集まれる場所というのは、なくしていくべきではないと思った。ずっと家に居たり、避難所とかにずっといると、みんながフラストレーションを溜めてしまって、どんどん悪い方向に連鎖していくと思う。
・万が一またコロナが再燃して似たような状況になったとしても、次はできる限りオンラインは控えて、もちろん怖いと感じる方などには配慮をして、できる限り居場所であるとか、学べる場所、安心して 出かけられる場所、またそこへ行けば何か困っていることを相談できる場所、何かそういった場所を 必ず作っていきたいと思いながら、今も活動している。
3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など
〇斎藤氏(市民活動推進センター):
・通信制とは普段は学校に通わず、たまに学校に行くものなのかと思っていたが、普段から顔を合わせているというようなお話だったので、コロナ前の本来の運営の仕方をお聞きしたい。また地域を広く 設定しているように感じたが、最初から広く設定していたのか。なぜそういう地域設定になったのか。
→〇筒井氏:
・通信制高校というと年間に何日かしか行かなくて、あとは家でレポートを作成して送る、というように想像される方がかなり多いと思うが、実は形態がかなり変わってきている。もちろん年に何日かしか行かなくても卒業できる仕組みもあるが、結局自分で自習して学習量も管理して進めていけ る子は通信制高校を選ぶ中でもごくわずかである。
・勉強が苦手で自分で勉強の管理ができない、学習のくせがついていない、そんな子が年に何回しか 行かない、また電話しても何も教えてくれない通信制高校に行ってしまうと、完全にミスマッチで 何年たっても卒業はできない。そして 1 年、2 年と経つうちに留年を繰り返してしまって結局辞め てしまうということが当たり前に起きている。
・今は通信制といっても、我々は週に 3 日までだが、週に 5 日通うコースを作っているところもある。 我々の場合は週に 1 回か 2 回通学する生徒がほとんどなのだが、そこで法的にやらなくてはいけな い課題を一緒に取り組んでいくというのが、我々の仕組みである。
・なぜ地域を広く設定しているのかということについては、最初は名古屋でこじんまりとやっていた。 元々は別の教育団体にいて、そこから引退するときに一部事業を譲渡してもらって、そこから始ま って名古屋と岐阜で小規模に運営していた。
・こういう活動をしていると、口コミなどで様々なところから問い合わせをいただくようになった。 他の通信制高校を全部見学したがしっくりこない。そういう方が我々の噂を聞いて連絡をくれて、 会いに行くと結構遠方の方が多かったりする。美濃加茂エリアでそういうお話があって、会いに行って話をしていると、確かにこの子は我々のやり方で進めていかないとうまくいかないと思えてき て、じゃあその地域でもやろうというように取り組んでいくと、どんどんエリアが増えてしまった。
・こうした経緯でエリアが増えているだけなのだが、対象の生徒が卒業するとそのエリアもなくなる。 また、生徒によっては自宅に訪問して家庭教師のような感じでやっていたり、特殊な例では、長期 入院していた子に対して、病院に 2 年ほど通って勉強を教えていたこともある。ちなみにこの子は 今、大学に行っていてうちでアルバイトをしている。
〇小池氏(よだか総研):
・それは相談に来た子に合わせて、場所を新しく増やしているという感じなのか。
→〇筒井氏:
・遠隔地でも、例えば役所などに相談すると、市の施設や、こういう良い場所があるなどと教えてくれたりするので、現場を見に行って生徒と話して、ではここでやろうとか、そこは遠いからやはり自宅で教えに来てほしいとなればそのような形で、生徒のニーズに合わせて行ってきた。
〇鈴木氏(デンソー):
・こういうコロナ禍だからこそ、学びとか人の集まる場を積極的に提供したいというお話を聞いて、すごく素敵な話だと感じた。また通信制高校としてどういう形態をとっているのかと聞いたところ、先ほどの話にもあったように、一人一人の学習能力に合わせた家庭教師のような寄り添い型の教育をさ れているとのことだった。スタッフの人数は、常勤 2 名非常勤 6 名、学生のボランティアがいるとの こと。そのボランティアの中には、学習だけでなくいろいろな面でサポートしたいと言ってくれてい る方が 5 名ほどいるとのこと。印象的だったのが、この通信制高校の卒業生が大学生になり、その子 が今教えに来てくれているという循環型の支援になっていてありがたいということと、今いる生徒が、 卒業生が大学生になってアルバイトで来てくれている姿を見て、目標やロールモデルを間近に感じる という利点があるということだった。
・コロナ禍だからこそ、密なフォロー、その子のためになるより良い支援をしていきたいという話があ ったが、それはどういったものかをお聞きしたい。
→〇筒井氏:
・私が考えている密なフォローとは人的なものと場所的なもの、この二つを密にしていきたい。コロナでいう密とは別の意味だが、人的にサポートできる人が多くいるという状況が密なサポートを可 能にする。うちではだいたい生徒 2 人ぐらいに対して 1 人、大学生か大人の職員かがしっかりつい て、学習をサポートしていける。そのあたりはこれからもより密なサポートをしていきたい。
・場所的なことでは、いつ来てもスタッフがいて、何か悩んだときはいつでも連絡できたり相談がで きたり、そういった場所をこれからもどんどん提供していきたい。今日も来る予定のなかった生徒 が来ていて、普通にフラッと来てバイトに行く前に少しおしゃべりをして、じゃあ行ってきます、 という感じで、気軽に来ていろんなことを話したりしてほしいと思っている。
・万が一何か大きな事件に巻き込まれているとか、何か大きな悩みがあったりすると、そういうとき にポロッと糸口を話してくれたりするので、向こうからの信号をいつでもキャッチできるように、 これからもっと密に居場所を提供していきたい。
→〇松井氏:
・密というのは、距離が近いということもちろん大事だが、常にいつでも声かけることができて、生徒の方からも発信ができるような体制があるということ。私たちは 30 歳を越えているので、生徒の中に話しにくさを感じている子もいると思う。そこに身近なロールモデルの先輩がいれば気軽に話すということもできる。
・また一方で大人のスタッフが経験を踏んだ上でできることは、先の見通し、例えばこのコロナの状 況で、アルバイトがなかなか見つからないとき、ハローワークでの仕事の探し方なんかを話していく。このように両方からその子に合わせたフォローをしていくことが、今求められている密なフォローということだと考えている。
〇杉本氏(白木蓮鍼灸): ・子ども食堂の体制についてお聞きしたい。「むすびえ」という団体のメルマガに、ファミリーマートの
新しい助成金について書かれていたが、そういうものは利用したいと思うのか。子ども食堂はどこも 手一杯で人手が足りないといわれているが、筒井さんたちはどうなのか。取り組んでいる事業が多い ので、子ども食堂はまた別な協力者がしっかりと柱となってやっているのか。
→〇筒井氏:
・子ども食堂はいま 2 つの主力がある。一つは岐阜駅の近くにうちの教室があり、そこで生徒やその友達、近所の子たちに定期的に食事を提供している。ちなみに、うちの生徒はだいたい毎日昼と夜ご飯が出る。朝も昼も食べずに 1 時ぐらいに教室にきて、ずっとお腹すいたと言っている子がとて も多い。生活が荒れていたり、親御さんと仲が悪かったり、朝起きれずに朝食がなく玄関に 200 円 だけ置いてある、というような子がたくさんいる。岐阜に私がいる間は私が食事を作っているが、 生徒はもちろん友人や知らない子が来ても、平等に食事を出している。岐阜は定期的に、地域の方に情報を発信する日があるので、それを利用して地域の方に子ども食堂に来てもらっている。
・名古屋は、先ほどからお話している「ShibaTable」とタッグを組んでやっている。場所を提供して もらい、私たちが人的なものや材料を提供していて、管理栄養士さんや主婦の方、パティシエの方 などがいろいろな方が協力してくれていて、地域に発信して子ども食堂を運営している。
・助成金についてはこれからよく調べようと思っていて、あとはいろいろなことに挑戦しようとして いる。今の名古屋の子ども食堂もできれば毎週やりたいので、人的にももっと必要でお金もやはり かかってくるので、今はおてらおやつクラブさんから結構寄付で食べ物をもらっているが、フード バンクさんとも相談させてもらっている。また名古屋の NPO 応援事業、ポスターに皆が投票して、 それに応じたお金が名古屋市から下りてくるという仕組みがあるが、それにも今回応募させていた だいていて、そこで頂けるお金はすべて子ども食堂に使おうと思っている。ファミリーマートさん の件は初耳だったのでぜひ調べてみようと思う。
→〇小池氏(よだか総研):
・名古屋市のセンターの 2 人から、 NPO 応援事業のリンクの案内があったのでこちらもご覧いただければと思う。
〇萩原氏(MYパワー): ・ここはおたがいさま会議という場なので、もし瑞穂学習支援会が自分たちの限界を感じていたり、こういう協力が外からあるといいなというようなことはないかと聞いたところ、一緒のグループだった 松井氏からは子ども食堂の経営に不特定多数の人に参加してほしいということを聞くことができた。 筒井さんからも何かあれば聞かせてほしい。
→〇筒井氏:
・まずは、確かに走り始めたばかりの子ども食堂はやはり人手不足の問題がある。食べ物の手配も今は無理やり準備したりしているので、ご興味ある方にはご協力いただきたい。これからコロナも落 ち着いてくると思うので、子ども食堂で小さいお子さんに読み聞かせをしてみたいとか、料理なら 自信があるからお手伝いしたいとか、そういった方がいれば協力をお願いしたい。
・また居場所事業や学習支援事業でも万年人手不足で、おかげさまで生徒の数は確かに右肩上がりだ 7/8が、その分スタッフをもっと増やしていきたいし、今回のコロナ禍で密なフォローをすればするほ ど赤字になっていく。手伝ってくれる方や我々の活動に興味のある方、アドバイスしてくれる方が いると助かる。いろんな方の意見やアドバイスを伺いたい。
→〇萩原氏(MYパワー):
・筒井さんも松井さんも元々困っていた側の人で、生徒さんたちも手伝っているというところを見ていると、支援する側される側というのではなく循環型になっていて、すごく理想的な形だと感じた。事業の性質上大きくは多分できないと思うが、この形は本当に維持してほしいと思って聞いていた。
〇小池氏(よだか総研):
・最後に恒例になっている質問をさせていただきたい。おたがいさま会議は、こういった繋がりを作っておくと例えばコロナ禍+自然災害のような、より大きな何か波があったときにうまく機能するネッ トワークが作れるのではという思いも込めて開催している。もしこの後大きな自然災害などがあった ときに、瑞穂学習支援会の取り組みとしてどのように動くのか、何が起きると思っているのか、どんなことでも構わないので、災害が起こった時のイメージについてお話をうかがいたい。
→〇筒井氏:
・自然災害が起こったり今のコロナみたいな状況であっても、学びの場所、人が集まれる場所をなくすべきではないと、今回すごく痛感したので、もし大災害が起き建物が壊れてしまって、学ぶ場所やみんなが集まる場所、相談できる場所がなくなったとしたら、最悪公園でもいいからやろうかなと思っています。屋根がなくても晴れていれば勉強もできるしみんなの相談だって受けることができるし、みんなでボール一つあればコミュニケーションをとることもできると思っている。そ ういうことがあったときは私多分旗降ってそういうことをやっているので、お困りの方がいたらぜひ私のところに送っていただいて、逆にこちらがお願いすることも多くあると思うので、皆で協力し合えば災害でも乗り越えられると信じている。私は理想主義者だと自覚はしているが。
4.まとめ
〇松井氏:
・私たちの活動もまだ始まったばかりで、本当に経験豊富な皆さんの質問やさまざまな視点に触れて、私自身も楽しかったし、いろいろと意見をいただけると嬉しい。今後ともぜひよろしくお願いしたい。本日はありがとうございました。
〇筒井氏: ・私としては、いろんな方と連携できるタイミングをずっと逃してきたと感じており、皆さんからいろいろな意見やアドバイスいただけたら、今自分たちだけでもがいているより、もっとよい活動にして いけると感じている。先ほどご指摘いただいたように、支援する側、される側が双方向でというお話 はまさにその通りで、私自身も今すごく楽しい。以前の自分と比べると天と地ぐらいの差があると思 っている。関心を持っていただいた方にはぜひご連絡いただきたい。本日はありがとうございました。
5.次回の予定
■日時:2021年11月16日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:『地域と連携した学習支援(高浜市学習等支援事業の事例)』
■ゲスト:城取洋二氏(NPO 法人アスクネット)
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