第63回:循環型共⽣社会を⽬指した現状と取り組み

会議レポート

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●⽇時:2021 年 10 ⽉ 26 ⽇(⽕)16 時 00 分〜17 時 00 分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:23 団体(運営 10 団体含む)
●参加⼈数:27 名(運営スタッフ 14 名含む)

1.情報提供

〇横⽥⽒(レスキュースックヤード):10 ⽉ 29 ⽇(⾦)に、栗⽥が共同代表も務めている「震災がつなぐ全国ネットワーク」が、令和 3 年 8 ⽉豪⾬⽀援中間報告会を開催する。震つな会員も活動している佐賀県各地での⽀援活動について、地元⽀援者の⽅を招いて現状をお伺いしながら、今後どのように被災地を応援していけるかということを、皆様と考える機会としたい。夜の 7 時から 1 時間半ほど、配信⽅法は Zoom。
https://www.facebook.com/events/2997511137127604?ref=newsfeed

〇浜⽥⽒(レスキュースックヤード):11 ⽉ 14 ⽇(⽇)に「つなぎ舎」という防災⼈材交流シンポジウムが開催される。東⽇本⼤震災の語り部の⽅のお話を聞き、名古屋で震災に備えるにはどうしたらいいかを考えるパネルディスカッションがある。参加無料で、事前申し込み不要。場所は⼤府にある愛知健康プラザ。当⽇、実際に会場にお越しいただくか、同時配信する YouTube をご覧いただきたい。

〇坂本⽒(名古屋市市⺠活動推進センター):参加 NPO の⽅に、⾃分たちが活動する理由について書いてもらったエッセイをまとめた冊⼦「わたしが活動する理由」を制作するとともに、これをつかったフォトエッセイコンテストを開催している。「NPO 応援寄附⾦」という名古屋市のふるさと納税で寄せられた寄付⾦の⼀部を、コンテスト形式で上位の団体に活動資⾦として配布するというもの。ぜひ読んでいただいて、応援したい NPO に投票いただきたい。
http://www.n-vnpo.city.nagoya.jp/ouen2021/

2.話題提供

〇テーマ:『循環型共⽣社会を⽬指した現状と取り組み』
(濵野 剣⽒:⼀般社団法⼈⽇本福祉協議機構 代表理事)

・循環型共⽣社会、多分皆さんも聞かれたことがあると思う。どのように共⽣をしていくか、またその共⽣の中でどのように循環させていくかということをテーマに、当団体はここ数年、そこを⽬指して活動している。その報告と、なぜそう思うようになったか経緯をお伝えできればと思う。

・我々の組織としての福祉業界のスタートは、⾮⾏更⽣とひきこもり⽀援だった。⾮⾏更⽣については少年院出⾝者の⾝請⼈や刑務所出所者の⽣活補助を⾏っていた。引きこもり対象者の受け⽫としては共同⽣活の場や住環境の整備、仕事の紹介という、福祉の中でも⾮常に課題として⼤きなところ、改善が難しい分野を弊社として始めた。

・ではなぜ今の業態に変わったか、変化のきっかけとしては、まずは地域の⽅々からの要望で、⾼齢者福祉を始めた。今から 14 年前、⼩規模な⾼齢者福祉事業所がちょうどでき始めたぐらいで、地域として⾜りていなかった時代に、⺠⽣委員の⽅からやらないかという声をいただいたのがきっかけ。

・もう⼀つ、なぜ障がい者福祉を始めたかについては、⾮⾏更⽣・ひきこもりの改善率の低さがある。美談が多く語られてはいるが、少年院出院者の再犯率は⾮常に⾼く、本当に更⽣できる確率は、当事者の性質や周囲の環境の価値観などもあり、15 もしくは 10 パーセントを切るぐらいというのが現状。またその労⼒を考えると、⽀援するのに 1 ⼈では無理で、3 ⼈体制ぐらいで⽀援をしていかないと改善には⾄らない。そこで、引きこもり・⾮⾏を未然に防ぐためには何が必要か、ということを課題として考えるようになった。

・実は、少年院に⼊所した児童・⻘年たちは、障がい者である可能性が⾮常に⾼いと⾔われている。今でこそ対処法も確⽴されてきたが、10 年前はそういうレベルになく軽度の知的障がいに対する対応や医療的な取り組みなども、わかってはいるけどどうしたらいいかという現状だった。

・そういうこともあり、障がい児が⾮⾏に⾛る傾向が⾼いなら、そこを防いでいくのが良いのではないかということで、まず福祉サービスとしてのショートステイを始めた。これは緊急宿泊先で、例えば保護者が病気になったり、親⼦間でのトラブルがあった場合など、すぐに預かることができて、いろんなことを指導できるところ。加えて、障がい児⽀援も始めた。

・こうした業態変化からのさらなる広がりについて、いろんな⽅から、すごく精⼒的に広げたよね、という⾔葉をよくいただくが実は違っていて、対象者と密接に関わっていく中で、家庭内の問題であったりとか⽀援制度からこぼれる事案がかなりあった。それを埋めていこうとすると、先ほど紹介したショートステイでは⼗分でないとか、10 年やっているうちに、対象者の⽅の成⻑とともに、必要な⽀援が拡⼤していった。

・例えば、⼩学 5 年⽣で預かった⼦が、いつの間にか就職時期になり、就職先としていいところがないかという課題などもでてきた。当事者や親御さんから相談を受けて、では作ろうということで、体制や資⾦が先にというよりは、まずは対象者の要望に応えていくことを優先してできてきた経緯がある。

・そんな中で、組織拡⼤にあたっての課題は⾮常にあった。福祉業界の課題として、社会性、教育環境、⽬的意識の3つが⽋如している。もちろん、⽋如といっても全く 0 ではない。ただし、私が福祉業界へ他業種から参⼊したときに、福祉業界には、基本的な社会通念とちょっと違う部分があって、意識や考え⽅が違うところがあるということに気がついた。

・まず社会性の⽋如。⼀般的な企業や団体で働く中で、いろいろな社会⼈としてのマナーやルールがあると思うが、そういうものが意外と⽋けていることが多かった。

・2 番⽬に教育環境の⽋如。これもいまだに問題だと思っているが、福祉業界⾃体がスタッフというものを「⼈⼯」と⾒ているケースが多い。例えば送迎の⼈が欲しいとか⼊浴介助が欲しいとかいう場合に、どうしても「⼈⼯」で⼈を⾒てしまっていて、初めからからそこだけ覚えてすぐに戦⼒としてやってもらおうとか、そういうスタンスのところが⼤きい。⼀般の企業であれば、新卒⽣が 3 か⽉とか半年とか教育期間があったりするが、福祉業界では全く⾏われないところも多い。

・3 番⽬が⽬的意識の⽋如。私がこの組織を⽴ち上げる前に働きに⾏ったところなど、⽇々のルーティンワークをこなすだけになって⽬的を⾒失っている⼈が多かった。これも実際に体験したことだが、⼊社した⽇に「お前はどっちの派閥に⼊るんだ」と問われたこともある。私としては、他業種から夢と希望を持って福祉業界に⼊ったら、これはどういうことだという率直な気持ちがあった。

・これが実は、福祉業界の⼈材不⾜の中で良くないパターンで、新卒⽣が福祉に希望をもって業界に⼊ってきて、⼈間関係の問題や、将来が⾒えなくなってしまうことから、3 年から 5 年で退職する⼈が⾮常に多い。ここをきちんと業界⾃体が変えていかないと、福祉従事者の充実というのは難しいし、減っていくだけだと思っている。

・弊社としてもここが課題だと思って、いろんな社会課題がある中で、組織や業態を広げていこうとしたときに、ここを改善していかなければ次に進めないと感じていた。現状、そこを打破した教育をしてきて、今年が 14 期⽬になるが、分社化や分業、事業部の運⽤により 6 組織、27 施設、6 事業所がうちのグループとして存在している。それぞれある程度独⽴した考え⽅を持っており、それぞれの社会課題を解決するべく事業を⾏っている。

・その中に例えば、⽇本国際財団というものがあるが、現在法⼈化をしている。また来年 2 ⽉にクリニックを開設し、その後申請して医療法⼈化しようという計画がある。それからケースフォーミュレーション協会という団体がもうすぐ⽴ち上がる予定。そのほかの組織も含めて、⼀つ⼀つ⾒ていくとそれぞれ何の役割があるのかわかりにくいと思うかもしれないが、それぞれに⼀つずつ社会課題がその背景にはある。

・まず、本体としての⽇本福祉機構には、福祉業界の課題改善という課題がある。福祉従事者の処遇改善であったり教育の問題であったり、いろんなことが含まれている。

・それから先ほどご紹介した⽇本国際財団は何のためにつくったかというと、貧困国⽀援をしている。これは実は団体設⽴時ぐらいから⾏っており、カンボジア・タイ・ミャンマーへの⽀援、具体的には、ただお⾦を渡すだけではなく、カンボジアの事例では、現地の⼩学校に出向いていき、現地の先⽣⽅に、障がい児の対応、少し難しい⾃閉症傾向の⼦たちへの対応⽅法のレクチャーなどを⾏っている。

・次に、技能実習⽣の環境改善へ向けて、技能実習⽣管理組合をつくっている。あと 2 ヶ⽉でできる予定。皆さんもお聞きになっていると思うが、技能実習⽣の環境、例えば仕事の内容であったり、労働環境だったりが、あまりにも約束と違うケースがあるというのが社会問題になっている。実際にカンボジア⽀援をやっている中で、相談がかなり来ていた。が、会社とトラブルが起こっている中で、何の⽴場もない私たちが話に⾏っても、⼀切話が通じなかった。ですが、この管理組合を⾃社で持つことで実習⽣たちの異動がさせられます。それにより帰国する必要もないですし、きちんとしたスムーズな変更、異動できるということを⽬指してやっております。

・続いて農業法⼈。これはアペロファームという法⼈を設⽴して活動しているが、もともとオーガニック農業に取り組んでいる⽅がいて、その流れで農業⼈材の確保やフードロス問題に取り組むために、農業法⼈を設⽴した経緯がある。これも会社として強制的にやるのではなく、社内にやはりこの課題に取り組みたいというスタッフがいて、そのスタッフありき、課題ありきで⾏っている。

・それから先ほどご紹介した医療法⼈。薬物治療問題というと重たそうな課題に聞こえるが、我々が障がい児を⾒ていく中で、精神障がいを持っている⽅も多い。その中で、向精神薬などの影響でむしろ状況が悪くなっている児童をたくさん⾒てきた。この課題はなかなか解決へ向けては広がっていかない。ただ、最近 30 代や 40 代の若いドクターの中には、薬だけの治療というのにかなり疑問を持っている⽅もいて、そういう⽅々と医療連携を⾏うチームもできたので、そこを核にして医療法⼈を作っていき、児童たちに対して薬を使わずにケアしていく、改善させていくという道を作りたい。

・実際のところ、アメリカや韓国、⽇本では薬を使うんですけれども、ヨーロッパ、イギリスとかフランス辺りでは、10 年ぐらい前に向精神薬の使⽤が従前の 3 分の 1 以下に抑えられました。要は使っても直らないと。瞬間的な改善であり、それが本当の治療にはならないということで、ヨーロッパでは減らしていく⽅向にある。ただしこれについては、なかなか社会的にも世間的にも相当向かい⾵が強いので、少しずつ進めていければと思っている。

・次に、ケースフォーミュレーション協会について。これは重層的⽀援という取り組みが厚労省から出されていて、社協さんなどもこれから取り組みを始めると思うが、それに加えて、先ほどお話ししたドクター達とは実は協定を結んでいて、このケースフォーミュレーション協会というものをつくります。これは、医療も福祉も同等の⽴場になり、1 ⼈の対象者に対して、家族やその環境、もっと⾔えば学校などに対して、全⽅位で⽀援をしていこうという試みです。

・弊社で半年ぐらい前から実証をしていて、ドクターの介⼊が⾮常に効果を上げている。また看護師の介⼊もしている。これを⼀つのケースとして、もともとこれを提唱している厚労省のドクターを知っていて、その⽅たちと協定を結んで進めていこうと考えている。

・そして、引きこもりと児童⽀援として e スポーツ協会をつくっている。e スポーツに関しては、どこかに⼊所させようとか、授業料のようなお⾦を取って取り組もうというのが今の⽇本の流れであるが、我々の取り組みはそれとは少しずれている。もともと引きこもりのアウトリーチというのは、なかなか難しいのが現状。これについては労働局からも依頼が来ていて、⼀歩⽬の対応としてゲームを使った取り組みをしていこうという試みが始まっている。

・基本的に今の児童たちは、ゲームをやる確率がかなり⾼い。そこで気をつけなければいけないのは、ゲームばかりやって体を壊すケースがあること。我々としては、ここにも医療の⽅に⼊っていただいている。時代の流れとしておそらく e スポーツやゲームというものは⽌められないと思っている。ならば⼀般的なスポーツや、あるいは将棋のように、きちんとした組織体系が必要で、また⽅法や⼿段というのを提唱していく必要がある。単純に⾔うと、プロ野球選⼿になりたいからといって、24 時間練習しても体を壊すだけだが、e スポーツだと意外と 24 時間できてしまうケースもある。それをきちんとデータ化し、本当にプロを⽬指すならどういうことが必要かを突き詰めたうえで強化につなげていく必要がある。

・加えて紹介したいのが、ギフテッド協会というものをつくっている。これは今、厚労省が異才教育ということをやっと⾔い出していて、アメリカにはタレンテッドという考え⽅があるが、例えば⽇本で⾔うと藤井聡太さんのような⽅、ああいう児童たちの才能を伸ばす教育をしていきたい。ただしまだまだギフテッドという概念が⽇本では薄いので、もう少し教育現場への落とし込みであるとか、もっと⾔えば、保護者の⽅がどうしてもうちの⼦変わっている、で終わってしまうケースが多いので、もう少し、1 ⼈ 1 ⼈の才能をよくみて、成⻑と将来を考えるという取り組みを⾏っていきたい。

・それに付随して、来年 4 ⽉なんですけども、名⼯⼤の中に研究所を作りまして、⼀緒にこのギフテッドのインキュベーションを⾏うことが決まっている。

・そして最後の課題として、障がい者雇⽤の継続率を上げるという課題に取り組むため、愛知労働局や様々な有志の団体と⼀般社団法⼈を設⽴している。国は、障がい者雇⽤率を上げろと⾔うが、マッチングだけでは継続雇⽤にはつながらない。本質的な継続雇⽤を推進するとともに、ある程度選択できるマッチングをするために、労働局と⼀緒になってこの団体を⽴ち上げた。

・以上が我々の取り組みであるが、これの何が循環型かと⾔うと、弊社で 5 年ぐらい取り組んで実証できていると考えているのが、福祉として、囲い込みをせずに、選択肢の枠を広げながら、適切な⽀援が必要だということ。それは、住環境の整備であるとか、適切な賃⾦を⽀払うとか、経済的な⾃⽴を促すことで、⽀援をされる⽴場から、⽀援を⾏う⽴場へ変化していくということである。障がい者の⽅は⽀援されるばかりの⽴場の⽅が多いが、この⾃⽴によって社会参加したという⾃信がついて、社会の役に⽴ちたいという⾃発的な思いが出てくるようになる。

・この裏返しとして、年⾦や⽣活保護で⽣活されてる⽅がかなり多いが、実は紐解いていくとそこに劣等感が結構ある。なので伴⾛しながらその劣等感を取り除いてあげることが必要だと感じている。我々が関わっている当事者の⽅は、社会参加したことで⾃信を持って、次は社会課題に対して⾃発的な⾏動ができている。ただし、⾏動と⾔っても⾃分から探してきてというのはなかなか難しいので、いろいろな情報を我々が探してきて提⽰してあげる。その中から選んで、ぜひこれをやりたい、役に⽴ちたいと⾔ってくれるとき、それはある意味すごく純粋な思いであると思っている。そういう意味で、⽀援される側からする側への循環型の共⽣社会を実現したいと思っている。

・そこへ⽴ちはだかるのが、障がい者に対する皆様の意識の障壁だと思っている。関わりがないことがお互いの歩み寄りへの⼀番の難しさだと思っている。弊社としても、来年度には e スポーツのカフェであるとか、グランピング施設、グラノーラのバルクショップなどを順次開所していって、ダウン症の⼦たちが店頭に⽴ってあいさつや声がけをするとか、お⾦の受け渡しをするとか、そういった⽇々の時間の共有によって少しずつ解消していくことが⼀番ではないかと思い、活動している。

・どちらかというと、障がい者というと何か⽀援する、されるばかりと思われがちで、そういう意味では⽀援する側にも問題がある。⾃⽴ということを考えずに、⽀援⾏為で満⾜するという⽀援者側のマイナス⾯もある。当事者⼀⼈⼀⼈の能⼒であったり、希望であったり、いろんなことを確認した上で伴⾛し、変な⾔い⽅をすれば、⼿を出さない⽀援をするということが⼀番必要な考え⽅である。とにかく共有する時間を増やすことで、循環型に向かえると感じている。

・例えば、猫カフェというのも来年度作ろうと思っている。これは殺処分の問題、殺処分をゼロにするという社会課題に対して、障がい当事者の⽅々もそれは納得いかないという声を上げてくてれいて、それなら⾃分も頑張りたいという発⾔もあったりして、今⾏動しているところである。

・駆け⾜で話してしまったが、多くの⽅から、お⾦があったから福祉できたんじゃないか、ということをよく⾔われる。団体を⽴ち上げたとき、資⾦は 20 万しかなかった。当初の理事を含めて 3 ⼈、最初の頃は給料が 10 万を超えることはなく、そういう状況の中で必死にやってきた。正直⾔って、社会福祉を⾏う中で苦しすぎて、利益に⾛りたくなるときもあった。けれども、やはりそこで必死に⽴ち⽌まって、何が必要かということだけをやってきた結果で今があると思っている。

・経営が上⼿いとか⾔われることもあるが、全くそうは思っていない。単純に社会課題がどこにあって、それをどう改善するのか。スタッフに改善できる⼈を集めればできる、という考え⽅。⾮常にシンプルな構造でうちの組織では出来上がってると思う。

・トップダウン的なところもあるとは思う。課題としては、マネージャー職の⼈間はある程度組織の全体像が⾒えていたり、新⼊社員までもが何がしたいか⾃分で決められたり、もっと⾔えばこういうことをやりたいからこれだけ予算をくれとか、そういうことが⾔える組織に、私はしたいと思っている。

3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

〇鈴⽊⽒(デンソー):グループでいろいろな意⾒があった。障がい者福祉施設の社会性の⽋如、モラルの⽋如というお話があったが、具体的にどういったことがあるのかという点が⼀つ。それから、災害ボランティアセンターでの現場において、⽀援することで満⾜してしまって、⽀援する⽴場と⽀援される⽴場のコーディネートができてないと感じる部分があると考えさせられてという意⾒が⼀つ。加えて、先⽇中⽇新聞で拝⾒した、⽇本福祉機構が特別⽀援学校で「マインクラフト」というゲームをつかっていろんな⽀援をされているという記事を拝⾒したので、その内容を教えていただきたい。

→〇濵野⽒:まず「マインクラフト」について、学校教育の現場では、ICT 教育の必要性がいつも⾔われているが、端末だけ届いて、それをどう使えばいいのかが課題であった。何をしたらいいのか先⽣⽅も悩んでいて、さらに養護学校では、軽度の知的障がいがある⼦たちが本当に使えるのかという疑問もあった。実は我々は、ゲームを使って、まさにこの「マインクラフト」を使っての教育というものを 8 年ぐらい前から取り組んでいた経緯があって、それなら学校と⼀緒にやってみようと。基本的に先⽣たちはいつも⽣徒に向かって「集中しなさい」「こうしなさい」と指導してきたが、この「マインクラフト」を使ったプログラム理解の教育においては、どちらかというと「ちょっと休憩しよう」と⾔葉を発することが多くなっていた。先⽣たちからは教育の原点に帰ったという⾔葉が聞かれ、指導⽅法において、強制的ではない教育、環境構築を再考しようというきっかけになった。これは天⽩養護学校での取り組みだったが、教育委員会からの評価も⾼く、今後、授業の中にカリキュラムとして取り⼊れていきたいという話も出ている。
それから、障がい者福祉の現場での社会的モラルの件、簡単なことで⾔えば、体調を崩して休むときに連絡を⼊れない⼈が多いとか、福祉業界は⼈の⼊れ替わりがものすごく多いが、本当に電話1 本、メール 1 本で「今⽇⾏きません」「辞めます」とか、そういうことが結構な頻度で起きている。⼀般的な企業や団体に勤めている⽅だと、最低限の配慮や気遣い、⾔い⽅とかがあると思うが、例えば同僚たちとチームを組んで仕事を進めていかないといけないとき、⾔うべきことを黙っているのはよくないけれども、感情的になっていいかというとそうではなくて、チームを壊してしまうほど配慮ができない⼈が福祉の現場には⾮常に多かった。⾃分としてはモラルや社会的通念の⽋如と捉えていて、そうならないように、新卒採⽤の職員とか、今年から⾼卒の新卒も採⽤しているが、そこを我々としては丁寧に教えている。

〇野川⽒(名古屋市社会福祉協議会):課題に対して順番に取り組んでいくというのが、職員の⽅にとっても⾮常に働きがいのある組織なのではないか、というようなことや、⼤規模で福祉に取り組んでいるのが素晴らしいという感想が多くあった。また、どうやってスタッフの⼈材を確保してるんだろうか、という話題もあがったのでそれについて教えていただきたい。さらに、ひきこもり⽀援にあたって、以前と⽐較して現状何か引きこもりに関して課題の変化を感じているかお聞きしたい。

→〇濵野⽒:まず⼈材確保について、基本的には求⼈に関する経費は会社としてかなり使っている。テレビ CM で有名な求⼈サイトなどはもちろん、関東地⽅にしか出ない特殊な求⼈媒体を使ってみたり、いろんな意識を持った⼈向けに少し変わった求⼈などを⾏ったり。とにかく福祉は⼈材がすべてだと思っており、求⼈に⼀番⼒を⼊れているというのは団体設⽴時から何も変わっていない。また最近は新聞に取り上げていただく機会も増えてきて、新しい事をやる中で、遠⽅から問い合わせが⼊って結果として⼊社してくれる⼈が増えてきていて、戦⼒として⾮常に頼もしく思っている。
もう⼀つ引きこもり問題について。10 年前と⽐較して、ひきこもりの質が変わったというよりは、ある意味 8050 問題ではないが、ひきこもり期間が 10 年間追加された⼈が多くなった。改善されたケースは少ないので、この 10 年の蓄積が症状をさらに重たいものにしているし、改善にむけて困難な壁を作ってしまった。なので、どちらかというと、内容よりも引きこもりの度合いが強くなってしまった。ひきこもり⾃体が社会問題化し、今は増加の⼀途をたどっている。特に不登校の⼦たちとか、予備軍のような⼦どもはものすごい数になっている。実は、その保護者が問題に感じていないケースもあり、学校の中で何かしら理由があるなら、いじめがあるとかそういう問題があるなら理解もできるが、⽀援をしていると朝眠たいだけで不登校とかそういうことが意外と多い。ネットサーフィンやってます、ゲーム 3 時までやってます、では朝起きれるわけがない。これは放っておくと親御さんの軽さが事態を深刻にしていくので、どこかで⻭⽌めしていきたいと思っている。

〇関⼝⽒(フリージャーナリスト):濵野さんのお話は、福祉や教育といった分野の問題と、これだけ⼤きく多様な組織をどうやってマネジメントしているのかという組織論的なものと、両⾯で⾮常に興味深い。⾃分はどうしても後者、組織論的なところに関⼼を持ってしまう。どうやってそれぞれの法⼈や団体の情報を共有し、濵野さん⾃⾝が⽬を⾏き届かせているかお聞かせ願いたい。

→〇濵野⽒:何か⾮常にもっともらしくお話ししてしまったが、組織として⾃⽴しているかというと、まだそうでない部分もある。どちらかといえば組織ごとに⾃⾛することを主体としている感じ。当然、それぞれ組織や部署から報告や相談があるが、重い課題に踏み込むときの判断であったりとか、予算をつけてほしいとか、そういうことが実際は多い。あるいは、組織内で⾃分たちが⾒つけた課題に対してどう改善していけばいいか、とか。現在スタッフはトータルで 330〜340 ⼈ぐらいいるが、各組織においては⼈⼿が⾜りない、ということは多々ある。そうすると興味が湧くように他組織の職員に周知して⼈員を募るケースもある。思いを持った⼈間が集まってどう動かしていこうか、という形になっている。組織における分業という⾯でいうと、福祉業界の構造的な給料上限の問題がある。この上限が上がる傾向はもう 10 年以上全くなく、むしろ下がってるのが現状。そうすると同じことを続けているだけでは給料の頭打ちが⾒えてくる。なので今、⾔い⽅が難しいが、社内副業というか、職員がやりたいことにいろいろと関わることによって、それぞれの組織から給料をもらうということを社内で推奨している。私は楽な⽅がいいのでこれだけやりますでもいいし、私はもっと稼ぎたいとか、いろんなことがやりたいという職員だと2つ3つ重なって仕事をしている者もいる。そこはもう⾃主性に任せている。管理という意味では、本当の管理をしているのかな、という感覚が正直なところだが、いまのところ統制は取れてはいるのかなと思っている。⼀般的な組織論的な管理体制が敷かれてはいない。どちらかというとティール組織的なものを⽬指してやってきたところがある。

〇⼩池⽒(よだか総研):恒例になっている質問を、濵野さんには形を変えてお聞きしたい。毎回ゲストの⽅に、震災が起きたときに皆さんどうされますかと聞いている。濵野さんの場合、⼀つ⼀つの福祉事業所として、ということももちろんあるが、それよりも、濵野さんが今まで培われてきた事業を通じてのネットワークだとか、⼈間的な、あるいは社会的な繋がりとかがあって、このおたがいさま会議もそうだけれど、⼤きな災害があったときに、そうしたネットワークや繋がりを活かして、どういうことが必要になるとか、どういうことをしようとか、すでになにか考えていることがあるか。もしくは組織全体で何かこういうことをするぞと決まっていることがあればお聞きしたい。

→〇濵野⽒:まず組織として決まり事はある。震災時、⾮常連絡網がセクションごとに全部できている。その確認の後に、次は利⽤者。⼊所者の家族であり当事者の安全性を確保するのが⼤事。そしてその後に、以前からも熊本のときであったり被災地⽀援を⾏っているが、社内で募り、物資や⼈⼿の問題を解決するため、社内で⼈員を募りチーム編成をして現地に⾶ぶということも⾏っていきたい。ただし、実際起こってみると、本当に体験はしてないので、スタッフ⾃⾝もパニックになるのは必須だろうし、施設ごとの⾮常訓練もやってはいるが本当に機能するかというのは、正直⼼配に思っている。

→〇浜⽥⽒(レスキュースックヤード):濵野さんが多⾓的にいろんなことをされているので、1 つ 1つの事業所の BCP というよりは、災害が起きても、全体としてどれだけ早く復旧できるか、事業がストップしている時間を短くできるか、というところが鍵になってくる。けれども、トップダウンとかピラミッド型の管理をしていないというところが、もしかしたらすごくうまく働くのではないか。そういう組織であれば、⾃分たちが今何をすべきかということをいつも考えているということ。誰かから何か⾔われたから動くとか、⾔われるまで待っているということではなく。平常時からそう考えて動いているというのは、⾮常時にも⼗分に⼒を発揮するのではないかと思いながら聞いていた。

〇浜⽥⽒(レスキュースックヤード):同じ組織に所属している星野⽒のコメントを聞いてみたい。濵野⽒が語られたところを、別の視点というか、何か付け加えることがあったらお聞かせいただきたい。

→〇星野⽒(⽇本福祉機構):私も 5 年前から⽇本福祉機構にお世話になっているが、代表の濵野のスピード感に必死に⾷らいついてる。今⽇の濵野の話も、全部伝えきれてないというのが本当のところ。濵野という⼈間は、噛めば噛むほど味が出る。密に話していくと、本当にいろんなことやアイディアを発してくれる。ぜひ皆さんにも興味を持っていただけたら嬉しい。それと質問がひとつ。現在、豊⽥JCの鈴⽊さんから⽇本福祉機構に軽作業の仕事をいただいている。企業とその福祉事業所が関わる⽅法というのは何か他にあるのか、お聞かせいただきたい。

→〇濵野⽒:私は、企業側において、実ではなくてイメージが先⾏してしまっていると思っている。これは企業だけじゃなくて⼀般の⽅のそう。そこでまず接点を持つことが必要だと思っている。多分どちらにもニーズはあって、企業側も仕事の切り出しがきちんとできれば助かる部分もあるし、障がい者側もそこで雇⽤であったり労働が⽣まれるのは望んでいることで、やはり⼀番⼤事なことは接点をもつことかなと。特に難しいことは必要なく、本当に挨拶からでもいいと思う。⾒ればお互いを理解できるので。接点さえ⽣まれれば、あとは⾃動的に進んでいくのではないかと思っている。企業側でも障がい者側でも、その接点を作る場所といいますか、機会の構築が⾮常に必要なことだと思っている。

4.まとめ

〇濵野⽒:本⽇はご清聴頂きありがとうございました。私の説明が皆様にご理解いただけたかどうか⼼配だが、社会課題の解決に取り組むことというのは、いろんな⼒を合わせればできることだと思うし、その実現がこのおたがいさま会議だと思う。何かしら皆さんと⼒を合わせてやっていきたいと思っているので、今後ともよろしくお願いします。

5.次回の予定

■⽇時:2021 年 11 ⽉ 2 ⽇(⽕)16 時 00 分〜17 時 00 分
■テーマ:『困難を抱えた⼦どもたちの現状』
■ゲスト:
・渋⾕幸靖⽒(特定⾮営利活動法⼈陽和・理事⻑)
・林百々⼦⽒(同・事務局⻑)

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