マッチング事例レポート2:多文化共生✕国際協力

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 NPOおたがいさま会議では2020年11月、「多文化共生月間」として多文化共生に取り組む各団体の状況やコロナ禍の課題を共有しました。その会議にJICA(国際協力機構)中部センター地域連携アドバイザーの小川登志夫さんが参加。これをきっかけにJICA中部と愛知県内2つの多文化共生団体との連携が始まりました。

■豊田市のブラジル人学校に海外協力隊員

 1つは、豊田市のブラジル人学校「エスコーラ・ネクター」。日本に働きに来たブラジル人が、子どもたちに母国の言葉や文化を教える場を作ろうと1990年代に始まった活動です。現在はブラジル政府認可校としてポルトガル語での教育をベースにしながら、日本語もしっかりと教え、外国をルーツとする子どもたちが日本社会で孤立しない「居場所づくり」の役割を果たしています。

 しかし、コロナ禍で在日ブラジル人の置かれた環境や、学校の経営環境はますます厳しくなりました。その一方、世界的な流行拡大の影響により、海外で活動していたJICA海外協力隊員は日本に帰国しなければならない事態となりました。そこで、開発途上国でも日本語教師として活動し、一時帰国している愛知県内の協力隊員経験者に呼び掛け、エスコーラ・ネクターの子どもたちに日本語を教えてもらうことにしたのです。

■「夢」持ってもらえるような授業工夫

 2020年12月から、男女3人の隊員経験者が授業内容や役割分担を話し合い、週に2回、中高生のクラスで日本語の授業を担当し始めました。そのうちの1人、松村月音(つきね)さんはブラジルで1年間の協力隊活動をして同年3月に帰国。エスコーラ・ネクターでは現地での経験を生かして日本語を教えつつ、子どもたちに「自己肯定感」を持ってもらったり、将来に夢を描いてもらえたりするよう、キャリア教育などを組み合わせたカリキュラムを工夫しています。

 緊急事態宣言でオンライン授業となることも続きましたが、自ら教材を作るなどして生徒たちに指導。校長の西クレオニセさんは「生徒たちのモチベーションが上がり、教室が明るくなった」と喜んでいます。

 この活動は「SONHO(ソーニョ=ポルトガル語で「夢」)プロジェクト」と名付けられ、JICA中部もサポート。海外だけでなく、日本国内での社会貢献を深める事業となっています。

■外国人材の「相棒」養成にパンフやセミナー

もう1つの団体は、高浜市を拠点とする公益社団法人「トレイディングケア」。2016年から外国人材と受け入れ地域のサポートに取り組んでいます。そのカギとなるのが「仲間」や「相棒」を意味する「バディ」。来日する外国人介護実習生らが日本で円滑に生活できるよう、地域でサポートするボランティアスタッフのことです。

トレイディングケアはJICA中部の協力で2021年2月、バディ活動を紹介するパンフレット「今日から私もバディさん」を発行。関係先に配布するとともに、これを教材にした「バディ・セミナー初級編」を5月から6月にかけて、オンラインで3回開きました。

 セミナーは全国各地から参加者が集まるほど好評で、今後の継続、発展も考えられています。トレイディングケア代表の新美純子さんは「JICA中部さんとの連携で、私たちではできない全国的なバディの周知が進みました。次は私たちも地域社会に裾野を広げるような取り組みを進めていきたい」と話しています。

パンフレット「今日から私もバディさん」は下記URLから閲覧できます。
https://tradingcare.or.jp/images/interview-lecturer-requests/buddy-leaflet.pdf

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