第55回:包括的な支援体制の構築について
●日時:2021 年 8 月 24 日(火)16 時 00 分~17 時 00 分
●場所:WEB 会議(Zoom)
●参加団体:41 団体(運営 11 団体含む)
●参加人数:47 名(運営スタッフ 15 名含む)
1.情報提供
○鈴木氏(デンソー)
本日からデンソースポーツ部門 橋本氏が参加する。
デンソーの女子ソフトボール部の事務局を担当。デンソーにはソフトボールだけではなく、バレー、バスケ、また卓球、陸上からボート部といったスポーツ部が存在している。こういった会議に参加させてもらい情報共有を元に、社会貢献においてデンソースポーツがどのようにかかわれるのか、どういったニーズがあるのかを確認し、デンソーの活動に繋げていきたい。また、情報を聞くだけではなく情報も発信していきたい。
〇鈴木氏(豊田 JC)
今週金曜(8/27)に豊田青年会議所の例会が行われる。おたがいさま会議のような取り組み・仕組みの重要性を話し合う。豊田市の副市長も参加予定。WEB でパネルディスカッションも行う。見るだけの参加も可能。YOUTUBE でも配信予定。
〇種村氏(レスキューストックヤード)
1.昨日の案内の中で小塚様の肩書が間違っていたのでお詫びと訂正をさせていただく。
誤:ダブルケアパートナー
正:つなぐ子ども未来
2.よりそいホットラインの案内
6/22 にご登壇を頂いた、社会的包摂サポートセンターからのご案内。「よりそいホットライン」という 24 時間電話相談を行われているところで、こちらの相談員を愛知県内で募集するとのこと。ご関心ある方はぜひ情報共有をお願いしたい。
【よりそいホットライン相談員応募フォーム】
https://form.kintoneapp.com/public/form/show/670df60f4f12e3753f795832615656aad9b58e7e4272
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〇根岸氏(こども NPO)
イベント案内
こどもの権利条約フォーラム in 東海「こども基本法と子どもの権利条約」を 8 月 29 日に開催をす
る。今日の話題にある地域での包括的な仕組みが進み国の施策や法律が整備された。その中でも子ども分野を盛り立てていく予定だが、法整備が整わないと難しいところもある。現在は、子ども庁の創設や、子ども基本法の制定など、大きな流れがあるが、政治知的なプロパガンダに利用されてしまう危険性もあり賛否両論あるものの、東京と名古屋でそういった事に振り回されないようにすそ野のを広げようと、集会やプレスリリースの実施や、国会議員などを通じていろいろな方に声を届けている。今の流れや基本法を知ってもらうことも大切と考え、フォーラムを開催することになった。ご興味のある方は是非ご参加ください。
2. 話題提供『地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制の構築について』
名古屋市では、複合的な課題や制度の狭間の問題等を抱え必要な支援が行き届いていてない世帯に対して、対象別・分野別の既存の枠組みを超えた包括的な支援体制を構築するため、令和 4 年度から市内 4 区で重層的支援体制整備事業のモデル実施がはじまります。包括的な支援体制の構築には、断らない相談支援とともに、多様な主体との連携協働によるつながりづくりや参加の支援、土台となる地域づくりが不可欠です。
今回は、モデル実施に先立って令和元年度から取り組んでいる南区社協での調査業務の結果等をご報告させていただきながら、誰ひとり取り残さない地域共生社会に向けて皆さんと意見交換ができれば幸いです。
■スピーカー紹介
〇野川氏(名古屋市社協)
コロナ禍の様々な課題の提供をしていて、5 月には豊田市で重層的支援体制整備事業を受託しているP-beans の栗本さんにお話を頂いた。そして、名古屋市では来年度から重層的支援体制整備事業が始まるので、本日はその話を名古屋市社会福祉協議会の染野さんからしていただく。
また、その重層的支援体制整備事業の実施に向けて、令和元年度から地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制構築のための調査業務を南区社協で実施しており、その取り組みについて南区社会福祉協議会の馬場さんからお話をしていただく。
〇染野氏(名古屋市社会福祉協議会)
◆経緯
まず、これまでの重層的支援体制整備の経緯をご紹介すると、国の法整備が整ってきて、名古屋市での取り組みも進んだという経緯がある。
平成 29 年に改正社会福祉法が可決・成立し、市町村の包括的な相談支援体制の構築が努力義務化されたことが契機になっている。ただ、その前に日本福祉大学の原田先生が座長になられた、地域力強化の検討会が国で開かれ、それを受けて法改正が行われた形になっている。また、原田先生の検討会以前にも日本一億総活躍プランがあり、その中で地域共生社会に向けた取り組みが、言われるようになってきた経緯もある。
平成 30 年度には、名古屋市では包括的支援や重層的な支援の必要性を議論していたが、机上ではわからないことは多い為、南区で調査業務を行いながら、何が制度の狭間になっているのか、関係機関が連携するのにどのようなことが問題になっているのか、を 1 つのエリアを通じて具体的に調査を行った。
また、国の方でも宮本太郎先生が座長の地域共生社会の推進検討会が開催された。ここでは多機関の協働や課題解決のアプローチだけではなく、今困っている人たちと伴走し、つながり続けるようなアプローチなども必要という検討結果が出た。それを受けて改正社会福祉法が可決され、重層的支援体制整備の創設に繋がった。
名古屋市では上記を受けて、「なごやか地域福祉 2020」の中で、包括的支援に関する事項を盛り込ん
で、令和4年度から 4 区でのモデル実施に結びついていった。それに合わせてなごやか地域福祉の地域福祉計画、理念や方向性だけではなく、この重層的な支援体制整備事業を今後名古屋の中できちんと実施をしていきたいということもあり、今実施計画の策定にも着手をし、取り組みを進めている最中である。
4年度からは 4 区で始まるが、名古屋の中では5年度また 4 区、その次は 8 区、令和 6 年度までにこの重層的支援体制整備事業を全市展開していこうというのが方向性としてはある。
◆事業の目的
現在、各関係機関の相談支援というのはスキルが上がっていている。例えば、高齢の分野では「いきいき支援センター」などに相談をすれば高齢の分野だけの問題は解決ができるような状況になっている。ただ、高齢の分野でも制度の狭間に陥っている問題や、8050 問題のような複合的な課題を抱えている場合など、必要な支援まで行き届いていない世帯が多くある。関係機関の中でもそういった支援について、悩まれて、どのように支援するのかが課題になっているようなところもある。そういったところの対象別とか分野別の既存の枠組みを超えた、重層的で包括的な支援を行っていく必要がある。その為に必要な項目としては、「相談支援」「参加支援」「地域づくりの支援」。それを一体的に実施していこうというのがこの重層的支援体制整備事業の目的になっている。
相談支援も 3 つに分けられ、1 つが『包括的相談支援』で、各分野の相談支援機関が一義的な窓口として属性や世代を問わず包括的に相談を受け止められるように支援をしていく事と、他分野の相談など、当該の相談支援機関では問題解決できない場合に、適切な相談支援機関と連携を図りながら支援を行っていくのが、包括的相談支援の形。
2 つ目が『多機関協働』で、関係機関の中核を補い、コーディネートしていく。
3 つ目が『アウトリーチ等を通じた継続的支援』で、関わる機関が不明確だったり、制度の狭間に陥ってしまうようなケースはどうしてもあるので、ケースに対してアウトリーチをして、きちんとそのつながりを作っていったり、支援に結びつけていくようなそういった取り組みをやっていくのがアウトリーチ等の通じた継続的な支援という形。
上記の 3 つを行いながら、相談支援の強化をしていくのが大きな目的の一つ。
「参加支援」では、単に相談支援の強化をするだけではなく、また制度につなぐだけではなく、インフォーマルな支援とか、その人の状況に合ったソーシャルサポートネットワーク、その方に合った人間関係や支援の繋がりとかがきちんと上手くいくように参加支援の取り組みも合わせてやっていきましょうというのが、この重層的支援体制整備事業の大きなポイント。
「地域づくり支援」では、こういった取り組みを進めていくのに土台になるのは地域であるので、地域づくりを併せて進めていこうというのがこの事業の内容になっている。
ただ、上記は国が示している内容なので、地域毎にどこに力を入れて取り組んでいくかは、その地域の状況を見ながら考える必要があるので、今回南区で調査させて頂いた内容を具体的について聞いてもらうと、皆さん方もイメージしていただきやすくなると考えている。
〇馬場氏(名古屋市南区社会福祉協議会):名古屋市南区での取り組み
◆実施状況報告
南区の概要:名古屋市の南側。東海市と隣接している。人口は 13 万人強。地域性としては、名古屋市の中でも下町的地域でアットホームな雰囲気で人情味もあり、地域のつながりも強い。また、伊勢湾台風の被害もあった地域で支援を受けた経験もあり、感謝、寄付の文化が根付いていると地域だと思っている。
調査業務の概要:課題が多様化複雑化している中で既存の縦割りの各分野のみの対応では解決が困難な制度の狭間の問題、8050 問題のような複合的な課題を有するような世帯が増えてきている。そういった世帯に対してどのように世帯全体を包み込むように、全体を網羅するような相談支援体制を作るかということを調査しようというもの。
実施機関:社会福祉法人名古屋市南区社会福祉協議会
期間:平成 31 年 4 月 1 日~令和 4 年 3 月 31 日(3 年間)
職員体制:2 名※いずれも専任
◆実施内容
1.ニーズの把握:
制度の狭間の問題、複合的な課題、支援拒否等によって支援につながらない、又は解決が難しいケースの内容や件数を把握する。
2.地域福祉活動者との連携による課題の把握・解決の仕組みづくり:住民相談窓口等に訪問し、ニーズの把握を行うとともに、住民相談窓口等の「課題発見」と「つなぎ」の機能について検証する。
3.相談支援包括化ネットワークの構築:
複合的な課題等に対して、役割分担や支援方法を検討する「支援会議」を開催する等、関係機関の連携による包括的な相談支援体制のあり方について検討する。調査と言いながらも実際にケース対応をしながら、他機関共同のコーディネートを行い、検証して参りましたので実質モデル事業のような位置付けで実施してきた。
具体的には、行政や関係機関から相談を受けたり、あるいはご本人や家族からの直接相談を受けてきた。ただ、この重層とか包括的支援につながってくるような世帯というのが、なかなかご自身では SOSが出せない世帯も多いので、そういった方々については地域の中でいかに早く発見をして繋いでいただくか、地域からの掘り起こしが大事でそこも拾っていくということが必要。私ども社協としては私が CSW(コミュニティーソーシャルワーカー)として配置され、プラスで各学区に職員が張り付いているので、地域の学区担当がそれぞれのエリアから掘り起こしをしていくということでニーズ把握をしていた。
実際に把握したニーズについては、例えば課題が複合的で分野が跨るようなケースについては、支援会議を開催して各分野の専門職員、専門機関を招集して役割分担とか支援方針を検討して行く。あるいはどこの分野にも属さない内容のケースについては、私どもが直接関わりながら、伴走支援を行い、まずは関わっていく、つながりをつくっていく。その中でも特に地域と連携をしながらその方を支えていくというようなイメージ。最終的にずっと私どもが抱え続けるということではなくて、地域につなぎ戻していく、受け皿となる社会資源につないでいく、ということを目標としている。そういったところが、先ほどの説明にあった「参加支援」の部分に当たるかなと考えている。
◆当調査結果
昨年度までに合計 70 件強のケースに対応。重層的支援につながってくるケースというのは、終結が見込めない方や長くかかってしまう方が多い。現在でもそのうちの 30 件ほどはずっと継続している。長い方だと 3 年ずっと関わっている方もいる。
相談受付ルートにつきまして下記のような状況。
・本人・親族 17 件
・地域住民(※) 17 件 (※)地域住民⇒学区役員、民生委員、地域福祉推進協議会、近隣住民、大家等
・区役所福祉課 7 件
・区役所民生子ども課(保護係) 2 件
・区役所地域力推進室 2 件
・保健センター 1 件
・市役所 2 件
・いきいき支援センター 8 件
・障害者基幹相談支援センター 1 件
・仕事・暮らし自立サポートセンター 2 件
・子ども・若者総合相談センター 1 件
・地域生活定着支援センター 1 件
・病院 3 件
・児童館 2 件
・福祉事業者 5 件
本人やその親族から直接声があがることは少ないということを先ほど申し上げたが、実は 17 件もあった。理由は明確で、コロナで急増したということ。コロナになる以前は 2 件ほどしかなかったのが1 年間で急増した。やはり経済的に困窮して何か支援を求めたが、どこにも繋がらなくてということで、私どもに支援を求めてきたというケースが多かった。また、地域住民からのつながりによる受付も多かった。やはりその学区の役員さん、民生委員さんであるとか近隣の方や大家さんとか、そういった方々から相談を受けたということ。
◆ケース分類
・8050 等複合的な課題 19 件
・経済的困窮 17 件 ※コロナで急増
・引きこもり 4 件
・精神疾患(疑い含む) 11 件
・認知症 1 件
・アルコール性疾患 2 件
・不良堆積物 2 件
・近隣トラブル 3 件
・住居(失った、失う恐れ) 4 件
・子育て中の親子 4 件
・権利擁護 1 件
・その他 3 件
※主たる課題や状況で計上。実際には複数の生活課題が絡み合っているケース多数。
分類をしてみると、なかなか一つに括れないのだが、複合的な課題は 8050 問題だったり、親と子どもの世帯で両方とも課題を抱えているようなケースが非常に多かった。また、経済的困窮についてもコロナで急増してかなり件数が上がっている。
コロナ禍で私どもも貸付業も行っているが、生活福祉資金の貸し付けだけでは明らかに生活が立ち行かない、お金を貸すだけでは難しく、その後も関わり続けていくようなケースもいくつかあった。上記件数は単純にケースを一件一件挙げただけで、これらが複合的に関わっているような課題も幾つかある。
◆調査を通して出てきた生活課題
1 子が就労等をしておらず引きこもり状態で経済的に自立していない 27 件
2 必要と思われる支援や関りを拒否し、適切な介護等が受けられていない 54 件
3 精神疾患や知的障がいが疑われるが病識がなく適切な支援につながらない 46 件
4 地域とのトラブルがある(迷惑行為、ごみ屋敷等) 25 件
5 生活課題があるが制度等が該当せず解決につながらない 29 件
6 経済面で生活に支障が生じているが生活保護等の公的な制度に該当しない 45 件
7 生活保護世帯であるが、金銭管理等ができず生活に支障が生じている 7 件
8 親の介護と子育てを同時に行っており、負担や孤立を感じる 1 件
9 外国籍で日本に馴染めず、またはコミュニケーションがとれず孤立や生活課題あり 2 件
上記課題に対して、過去 1 年間に上記のようなケースがどれぐらいあるのか、南区の関係機関にアンケート調査を行った結果が下側の件数。
上記をさらに分析していくと、1 つの世帯で複合して問題がある実態が分かってきた。
「2 支援拒否」 と 「3 精神疾患や知的障がいの疑い」 19 件
「1 子の引きこもり」 と 「2 支援拒否」 13 件
「1 この引きこもり」 と 「3 精神疾患や知的障がいの疑い」 12 件
「3 精神疾患や知的障がいの疑い」 と 「4 地域とのトラブル」 12 件
「5 制度が該当しない」 と 「6 経済面で生活に支障」 12 件
上記のような複合的なニーズが世帯にはあり、対応していく必要があると考えている。
◆実際のケース紹介
・70 代の高次脳機能障害の父、40 代統合失調症の子を含む生活困窮世帯
・うつ病で働けず困窮、持ち家だが遺産相続で係争中、家がごみ屋敷、猫の多頭飼育のある 50 代
・長期の引きこもりにより関節が拘縮し歩行不可となった 20 代
・廃墟のような家に住む親子(子は知的障がい)
・親が急死し取り残された引きこもりの 40 代の子
・環境局と協働したごみ屋敷ケースを片付けたりするようなケースもたくさん
こういった状況を見ていくと、制度の狭間ということをよく言われるが、例えば下記のケースが宙に浮いてしまうと考えられる。
- 中高年の引きこもり 特に 40 代(就職氷河期世代)~64 歳。
- 精神疾患等の疑い 病識なく支援を求めていない。
- 支援拒否で接触できない 訪問しても居留守?支援のとっかかりがない。
- 65 歳未満で生活課題あり うつ病やアルコール依存等で経済的にも困窮。
- 8050 ケースの「50」 親の支援をしても結局子へはアプローチしきれない。
上記を解決するために課題解決型の支援と伴走型の支援とは両輪で組み合わせることが重要。
・課題解決型
→各種制度や公的サービスへのつなぎや本人の生活課題に直接対応
→本人の抱える課題や必要な対応が明らかな場合には、特に有効
伴走型:つながり続けることを目指すアプローチ
→本人と支援者が継続的につながり関わるための相談支援(手続的給付)を重視
→生きづらさの背景が明らかでない場合や、8050 問題など課題が複合化した場合等に、特に有効
この 2 つはどちらか一方だけでもダメで、使い分けや組み合わせが重要と言われている。私どももずっと伴走し続けながらやっている方も見えますし、とにかくつながりながら、どこかで然るべきところにつないで解決を目指していくというように切り替わる方も中にはいる。
粘り強く両方のアプローチを使いながら支援をしていくということが大事かなと思っている。
◆「参加支援」のための「場」と「仕組み」づくり
先ほど話題にあがった参加支援について、少しわかりづらいかもしれないが、出口戦略みたいなイメージに捉えていただけるとよい。
実際に地域にはいろんな社会資源があると思う。地域の中には、住民のみなさんが開いているサロンや子ども食堂があったり、障害精神のある方だと地域活動支援センターがあったり、そのほか就労継続の支援や、 NPO がやられているようなフリースペースなど、様々な場があると思います。そういった既存のものを利用していくというのが第一になるかなと思うが、それが身近にタイムリーにあるかと言うと、なかなかそれが見いだせないような状況がある。特に精神障害の疑いのある方などは、非常にセンシティブで、例えば精神疾患を持っている方は他の人を見て自分の居場所かどうかというのをすごく敏感に察知する方も多い。
また、自立の意志を持っている方がまだしも、自立する意欲が無かったり、自立する意欲がなくて自分では主体的にアクセスができない方もたくさん見えるので、そういった方々をいかにその参加の場につなげていくかということが今後は必要かなと感じている。
私どもとして必要と考えている機能としては、とにかく「場」です。既存の資源をいかに活用していくのか。加えてご本人さんの興味関心ごとを見極めながらオーダーメイドにプログラムを作ったり、あるいはプログラムがないような場合にも柔軟に対応できる「場」をいかに作っていくのかが重要だと感じている。ただ、これは私どもだけではできないし皆様方と協力しながら作っていく必要があると思っている。
「場」につなぐための仕組みとしては、例えば自宅から出れない方がおられれば、まずは自宅から始められるようなメニューを作って、段階的にスモールステップを踏んでいくような仕組みや、「場」につなぐための交通費を支給するような仕組みを作るかとか、そういったもののいろんな組み合わせがあると思うので、そういった仕組みを作っていく必要がある。
地域住民や企業・団体・NPO 等の参加・協力(ヒト・モノ・カネ・バショ)が、こういった仕組みに対して今後ますます必要になるのではと感じている。
◆参加支援(伴走支援)の事例
〇世帯概要:50 代男性。アルコールの過剰摂取によるウェルニッケ脳症で入退院を繰り返している。妹の家に転がり込む形で同居。妹は「兄は何を言っても聞かない」と話し対応に疲弊。本人は無収入、妹も収入に余裕がなく経済的に困窮。本人退院時に「また仕事がしたい」と話し、以降は断酒。〇対応状況:振る先がなく、いきいきが対応していたが、退院カンファで「仕事がしたい」と話したことから、いきいき、くらサポ、社協を交えて自宅面談。くらサポとしては今の健康状態でいきなりの就労支援は難しく、歩ける体力がつけば再相談となる。社協としては就労支援につながるまで、近所の散歩や公共交通機関の利用への同行を継続し体力と自信をつけていく方向で週 1 回外出同行。一方自治会内でトラブルがある世帯であることが判明し学区担当者を通じて地域と協議の場を設定。
〇CSW としての動き・ポイント:
・就労支援の入り口にも行きつかない方への寄り添い支援。
・「やってはいけない」ことはない(法やコンプラに触れること以外)。自由な発想で支援方法を検討。
◆上記事例における支援プラン
〇介入前の状態
・1 日 1 回、近くの薬局まで買い物(食料)。
・通常徒歩 2 分のところを 10 分かかる。
・主体性なし。こちらの問いかけに一言二言答える程度。
〇仕組み
・自立支援に資する活動にかかる交通費支援
・自宅でできる袋詰め作業を依頼。
・寄付でもらったゴーヤを一緒に育てる
〇介入後の本人の心境変化(開始 4 カ月半後)
・自信がついてきた
・日の光が気持ちいい
・こんなに歩けると思わなかった
・春は瑞穂公園まで歩いて桜が見たい
◆調査事業から見えてきた課題と必要な機能
・必要な機能としては、アウトリーチを中心とした制度の狭間へとにかく直接対応していくような機能、職員が必要。
・他機関協働の中核を担うようなコーディネート業務を担う職員が必要。
・参加支援の部分で多様な受け皿や、仕組みを作っていく機能も必要。
・こういった活動は地域づくりと一体的に行っていく必要があると言っておりますので、いかにその地域の方々と連携をしながら、我が事として一緒になって展開をしていく必要がある。
上記 4 つの機能を担えるような職員を各区に配置して、これらの機能を果たしていく事を、 調査業務の結論として位置づけ、それが今後の名古屋市の重層的支援体制整備事業の柱になっていくと考えている。
3.ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など
○萩原氏(マイパワー)
・具体的な事例を聞けば聞くほど、これをどこまで支援していくのか、その持続的な支援の体制づくりは大変だという話が話題に上がった。
・地域の情報収集の部分で、受け付けるルート等のデータを見てると NPO が見えなかった。そこで、この重層的支援体制整備事業と NPO との関係で、成果と課題のなどがあれば情報提供を頂けますか?
→〇染野氏(名古屋市社会福祉協議会)
・この課題は凄く広い範囲になってくると思うし、専門的に関わっていく分野もすごく多くなってくると思っている。例えば引きこもりの支援にしてもそうだと思う。僕たちも寄り添っていくように努力ができるが、具体的な専門知識とか支援ができないこともあると思うので、そういったときに当事者の団体さんや NPO の団体さんとやっぱりきちんと連携をしていきたいと思っている。これまでは守秘義務の問題とか色々あったが、今回のこの取り組みとしては重層的な支援会議の中で、一定の守秘義務が課せられるので、そういった関係者の皆さん方と支援の方向性を話し合ったりするようなことも出来る状況になっているので、色々な団体さんと連携していきたい。言い方が悪いかもしれないが、寄ってたかってどう支援するかというのが、多分この重層や包括的な支援のポイントだと思うので、そういったところでご協力いただけると、ありがたい。
○鈴木氏(デンソー)
・ブレイクアウトルームで染野さんと一緒になり、そこで質問をして回答をもらったので、みなさんに共有したい。
・南区で 2 名の配置と聞いて少ないと感じたが。
・CSW として複合支援の方に入られるコーディネーターの方を今後どのように育成するのか?
→〇染野氏(名古屋市社会福祉協議会)
・南区で 130 件の課題がある中で、熟練された CSW の方でも 1 人あたり 30 件の案件が精一杯だということで、最低でも約 4 名以上は一つの区に必要。今後は一つの区に 4 名は配置されていく方向性ではないかと考えているとのこと。
・当事者の個人の支援も大事だが、地域の中でどう支援していくのかという観点からその人にフォーカスを当てていく。個別の支援と地域の支援を一体的に進めていけるような、そういった見方ができるような職員の育成がなされている。
〇根岸氏(こども NPO)
・扱っているテーマが重くて広くて、社協がやらないといけないことなのかとまで思ってしまう、という意見が出た。馬場氏も同じグループにいて福祉のコアを広げていって、16 区に広げていきたいなっていう風におっしゃっていて、ある意味、防災と同じような側面があるというようなお話をしていただいた。
4.次回の予定
■日時:2021 年 9 月 7 日(火)16 時 00 分~17 時 00 分
■テーマ: 東海地域に暮らす難民への新型コロナウイルスの影響
■ゲスト:羽田野真帆氏(特定非営利活動法人 名古屋難民支援室)
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