第47回:よりそいホットライン

会議レポート

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●日時:2021年6月22日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(ZOOM)
●参加団体:25 団体(運営 9 団体含む)
●参加人数:33 名(運営スタッフ 14 名含む)

1. テーマ:コロナ禍におけるよりそいホットラインの事業と寄せられる声

■スピーカー紹介(コーディネーター・栗田)

社会的包括サポートセンターは、貧困とどう向き合っていくかと言う日本社会の課題に対して、様々な状況の中で 24 時間 365 日電話相談を受け付けている。そういった信念をもって活動をされている団体。 東日本大震災のときに、さらに困難を抱えた方への相談窓口も開設された関係で遠藤さんと知り合い、 その内実をいろいろと教えてくださった。一方で、コロナが震災とよく似ているというお話もお聞きし た。コロナが弱い立場の人をさらに追い詰めていると仮説は容易に立てることはできるがたが、先日発 表された社会的包括サポートセンターの取り組みの報告書でもそのことが書かれていたので、今日はそ のことを我々にお伝え頂きたい。おたがいさま会議の弱点は現場の生の声を拾えないところ。そういっ た話を今回はご紹介していただきたい。

■遠藤智子氏(一般社団法人 社会的 包摂サポートセンター 事務局長)

・「よりそいホットライン」を毎年刊行している
2020 年の若年層のインターネット調査の結果が書かれている。簡単に内容を説明すると、1人親家庭 の子ども達の暴力、生きづらさに直面していることが分かった。まだご覧になったことがない方には、 送料を負担していただくが、お送りすることは出来るので是非ご覧ください。

・コロナと震災は似ている
感染症、災害も平時から困難を抱える層にダメージを与える。平時からの相談だけではなく、今回のコロナは法律や制度や支援の枠組みがないところに影響が出ている、というのが私の認識。今回のコロ ナの相談の中で、若年女性にしわ寄せがいっていることがものすごく多かった。

・実施中の相談事業の説明
よりそいホットラインとは ・2011年度より国の補助事業(24H 365日 稼働)
  ・1日 3 万件、1年間で1千万件超える電話が寄せられる。
  ・連携団体は全国に 1900 団体、相談員は 1300 人
  ・東日本大震災を契機に発足した一般社団法人が運営

・電話相談/SNS相談
電話相談は、40代25% 40~50代が中心、男性は40代が著しく多い。今までの相談支援事業は電話の相談は、40 代以上で、電話というツールに慣れていて、人とのつながりがそこそこある方が相談に来ていた。

電話相談以外にもチャットやSNSでの相談も行っている。
  ・「困り事なんでもチャット相談も実施中」URL:htts://comarigoto/jp/
  ・「SNS 相談、DV 相談」:URL:htts://soudanplus.jp/
  ・内閣府「性暴力に関する SNS 相談支援促進調査研究事業」:URL:htts://curetime.jp/

SNS 相談の相談者は 20 代~30 代が中心。何かの支援につながっていない人からの相談、また、暴力 被害、緊急性の高い方や殺人の危険があるものなどが多い。日本で SNS 相談が多くなってきたのは 2018 年以降。コロナの時期は電話と SNS、両方の相談が使われた。

2020年度 コロナ禍に寄せられた相談の多くは、「仕事がない」「お金がない」の相談が大半を占め ていた。そんな中で、相談者の年代が 10 歳ほど低下していると感じ取れた。電話での相談は 40 代が多 いが、SNS、ネットを使っての相談が増えたことにより、相談者の全体の年齢が低下したように感じて いる。また、今回のコロナでは、外国人の相談、若年層の生活困窮、非正規の女性の相談が増加した。 その中でも風俗的な仕事についている若年層からの生活困窮の相談が増加している。コロナの影響で風 俗的な仕事をしていて苦しい方や、生きづらい方も相談をしてくるような形に代わってきた。

ただ、私見だが、相談窓口の限界を感じている。今のコロナ禍では、お金、食べ物、住む場所などの 即効性のある支援が一番求められていると感じている。今まで私たちが考えていた支援と、相談者から 求められている支援がズレてきている。

また、コロナ禍での特徴として、ステイホーム、解雇が DV を増加させた。そんな中でいい兆しとし て、特別給付金の部分がある。世帯で特別給付金がもらえても、生活や教育費にお金を入れてもらえな いという状況に陥ってはじめて、現在の自分の状況が正しいのか?との疑問や、自分が被害を受けてい るのでは?と感じ、相談すべき案件なんだと自覚をするケースが増えてきている。

相談から見える性暴力被害として、交際相手からの経済的搾取、風俗で働かせてその収入を搾取する ようなこと、それと身内からの性暴力、こうしたものが常態化している。

今日皆さんと共有したいのは、一般的な困窮者支援という意味では、目先の何かを提供できなけれ ば、相談が成立しにくくなっていること。そして性暴力、DVが激化していること。このことを皆で考 えていきたい。

■坂井あずみ氏(よりそいホットライン コーディネーター)

「よりそいホットライン」としては、3 つのステージをイメージして相談を受けている。
  ・24 時間 365 日のホットラインのフリーダイヤルで相談をキャッチ
  ・必要な社会資源につなげていく
  ・必要な地域連携関係を構築していく
3 つの段階で相談者の生活を改善するイメージで支援を行っている。

1 段階目のフリーダイヤルでは生活困窮の相談、女性、若年層からの相談が増えている。コロナ以前からもあったが、障がい者のケアをする側の孤立の相談も増えている。また、過去の心の傷(震災、性被害、抑圧環境)、PTSD のような症状をお持ち方が、心の傷がえぐられて、日常生活に支障が出ている との相談も増えている。

2 段階目の「つなぎ」のケースでは、自傷、他害の相談も増えている。子どもが家にいるから何もで きない、学校は何もしてくれない等のイライラが、家庭内での弱者である子どもに向いてしまうといっ た相談もあった。私が担当する東京では、昨年 56 件の「つなぎ」があったが、今年は 96 件に増加し た。現在も 10 件/月の数で推移をしている。

3 段階目の地域連携関係を構築していく部分では、私の担当する東京においては、10 年間で 400 弱の ケースができた。そのほとんどの方が、地域連携が出来て、相談のニーズが薄くなり、終結をする形が 多い。だが、昨今はいったん終結したケースも、もう一度話を聞いてほしいという電話も増えた。例え ば、障がいを持っている方で、事業所、デイサービスに通っているが、コロナの関係で通う頻度が減っ たり、仲の良い方がコロナで来ない、そういった不安から体調不良につながったりして、話を再度聞い てほしいとのケースも増えてきている。

コロナによっていい変化が出ている子ども達もいるので、そういった観点も持っておきたい。例え ば、コロナの影響で児童は学校に行かなくてもよい免罪符を得た。コロナ以前から不登校気味だった児 童は、大手を振って学校に行かなくてもよい機会を得て、学校に行かない期間で心身をリセットし、学 校に通い始めることができたケースも出てきている。

2. ディスカッション、質問・感想など

○清流の国ぎふ女性防災士会・伊藤氏:声を出す場所を本人が知っている場合は抜け出せるが、知っていても声を出せない場合、どうしたらそ うした負のスパイラル(例えば:家の中で DV 受ける➡家から逃げる➡教育が止まる➡風俗)から抜けだせるのか?

→遠藤氏(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター):相談を受けている人間の年齢層が高い、当事者 の方との年齢の乖離がある場合があるので、相談を受ける方と同世代の方を相談員として置く必要が ある。また、若年層の相談者はネットで生きているので、ネットの上での相談が必要。その人たちが今 生きている場所に行かないと、生の声を聴けない。相談に来てほしいといってチラシを撒いていてはダ メ。例えば、岐阜であれば岐阜の有名人にツイッター等で相談が受けられることを拡散してもらうと、 一発で本人達に会える。一人の困窮者に会ったときに、その一人の手を離さない、そういう覚悟さえあ れば十分だと考える。

〇日本福祉大学・菊池氏:今の社会は知縁に頼れないからこそ、電話での相談や SNS の相談が件数に表れ ていると感じた。一方、国の政策では地域の福祉力を活用していこうという動きもある。そのようなな かで、これら問題について NPO 等、地域に期待することは何か?

→坂井氏(よりそいホットライン コーディネーター):今まで出会った NPO の方々は生活に入っていこ うとする方が多かった。この人のためにという思いを持っている方が多い。そんな中で地域に期待する ことは、行政と上手く連携してほしい、民間と行政の垣根を超えたことをしていく事で、当事者のニー ズにあった支援ができていくのではないかと考える。

〇コーディネーター・小池: 1.坂井さんは東京担当で、愛知県は別の方が担当しているのか? 2.電話の相談は都会、田舎等人口比が関係するのか?何か相談の傾向はあるのか?

→遠藤氏(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター):電話での相談は都市部からが多い傾向がある。昔からよりそいホットラインが知られている地域から の相談は多いが、そうでない地域からの相談は少ない。そういう意味で、包括サポートセンターの代表 がいる岩手からの相談が一番多い。

→坂井氏(よりそいホットライン コーディネーター):地域と都市部と相談の数は地域によって異なる。また、問題の中身が異なってくる。都市、田舎ならで はの傾向はある。例えば、東京での隣人(薄い壁紙で仕切られて隣人)の騒音問題と、田舎のお隣さん (徒歩で何分も掛かるところに住んでいる隣人)の騒音問題を例にとっても質が異なる。そういった部 分でも地域性がある。その為、全国にセンターを持ち、各エリアにコーディネーターがいる。その地域 を知っていることによって、より深い支援が出来ると考えている。 また、最初の質問の回答として、愛知県内にはセンターがない。最寄りのセンターが継続支援を行って いる。愛知のつながりの中で人脈を作り、そういった方々に相談をつなげ支援をしている。 「よりそいホットライン」には専門ラインがある。愛知県ではセクシャルマイノリティ、女性の為、外 国人の専門ラインはあるが、一般のホットラインがないので、担い手を募集している。

〇災害ボランティアコーディネーターなごや・椿氏: 地域でよりそい支援をするにはどんな方法があるのか?

→坂井氏(よりそいホットライン コーディネーター):直接支援の部分では、2 番目のステージのつなぎで支援を行う。その方法としては、まず電話で情報を 聞く、そして電話では情報がなかなか得られない方については、面談を重ねて、本当に困っていること を聞けるような関係性を作っていく。最終的なゴールは、困りごとを解決する事。困りごとを解決する ために、NPO、行政につなげていく。ただ、一人の方が複合的に問題を持っているケースもある。生 活保護、子育て、障がい等の問題を複合的に抱えている方もいるので、そういったニーズを引き出し、 コーディネートしていくのが、第 3 ステージになる。

〇コーディネーター・栗田:先ほどのお話で 1 日 3 万件、1 年で 1 千万件の電話相談があるとのことだったが、これがコロナ禍でど のように変化したのか?また、これだけ件数があると、実際にやり切れるのか?

→遠藤氏(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター):3 万件の中で何回もかけてくる方もおられるので、実際の人数は日々変化している。電話対応が出来る 人員も限りがあるので、全部は処理出来ていない。本当に全部を対応しようとしたら、今の人員の 10 倍の人数が必要になると思う。ただ、それは現実的ではないので、最終的には 24 時間の電話のサービ スを地方自治体レベルでやる必要があるか、無いかの判断になってくると思う。もしも、1 つの県にこ の窓口が 1 つあったとしたら、全国で 47 本の窓口が開設される。47 本あれば、すべてをつなぐことは 可能だと考える(ただし東京は除く)。また、支援をしてく中で 24 時間の体制は必要。もっと多くの場所でやる必要があると感じている。また、相談がしにくいとの話も先ほどあったが、相談がしにくいで はなく、相談をしなくてはいけない事柄なのだと理解させることが重要。今の若年層はそういった傾向 が強い。「これって誰かに話してもなんともならないじゃん」という意識がある。そう言う意味で、誰 かに話せばどうにかなるという宣伝活動も重要。相談が来なくても、相談できる窓口が開かれている状 況も重要と考える。窓口が出来た後、しばらくして相談者が、ここに相談をしてもいいんだと気が付 く。そういった観点から、ニッチな困りごとを相談する窓口を開設するのも一つの手だと考える。自分 の困りごとに名前がついていないので、どこに相談をしていいのか困っている方がいる。そういった方 に向け、相談窓口の名称を細かくすることにより、気づきを促すのも有効だと考える。

3. まとめ・感想

遠藤氏(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター):コロナで札幌のすすき野で札幌市男女共同参画センター中心となり、若い女性の為に 1 月に 2 回ほど 食料や日用品を提供数活動が開始された。そこで感じたのは、まず物を提供する。そこから、相談支援に 立ち戻る道を考えることも必要ではと感じた。また、来年に向け、「よりそいホットライン」愛知の人材 も募集しているので、よろしくお願いしたい。

坂井氏(よりそいホットライン コーディネーター):愛知の若年女子の相談をどうしようと悩んでいるケースもある。そういった事が出来る方、メンバーも募集している。是非、よろしくお願いしたい。

4. その他(お知らせなど)

○種村:事務局:先週のおたがいさま会議時に中日新聞の取材が入ったので、間もなく掲載される予定 →6 月 26 日の夕刊にて掲載された。

https://www.facebook.com/groups/otagaisama.aichi/posts/486739639058306

次回の予定
2021年7月6日(火)16時00分~17時00分
発表者:丸山政子氏(子育て支援の NPO まめっこ)
※詳細は決まり次第お知らせします。

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