第46回:日本NPOセンター&全国社会福祉協議会

会議レポート

Pocket

●日時:2021年6月15日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(ZOOM)
●参加団体:34 団体(運営 11 団体含む)
●参加人数:46(運営スタッフ 17 名含む)

1. 情報提供

○名古屋市市民活動推進センター・坂本氏

名古屋市防災危機管理局で災害救助用備蓄物資 3 品目(ビスケット:830 箱、アルファ化米 3 種:180 箱、飲料水:6,800 箱)の有効活用を考えている。生活困窮者支援等をしている名古屋市内の活動団体ま たは名古屋市民に届けられる団体に対し、市から提供できるため、検討をお願いしたい。8 月~12 月ま での1月毎、希望の月に配送可能。希望する団体は、6 月 22 日までに希望物品と数量、いつ頃欲しいか をメールで連絡いただきたい。 →セカンドハーベスト名古屋が本日欠席のため、事務局から伝えて円滑にマッチングが進むようにする。

2. 話題提供:6 月企画「地域の課題に取り組む」

■スピーカー紹介(コーディネーター・栗田)

おたがさま会議の取り組みは、考えながら歩みを進めてきたが、他にどのような事例があるのか、周辺 や全国との比較ができていない。全国的な中間支援組織である全国社会福祉協議会と日本 NPO センター が、各地域での先行事例をサイト中心に紹介されており、参考となる取り組みを教えていただく。

■テーマ1:『「未来の豊かな“つながり”のための全国アクション」について~コロナ禍でもつながりを 絶やさず、豊かな地域共生社会づくりの活動を進めるために』
(千葉和成氏/全国社会福祉協議会 全国ボランティア・市民活動振興センター)

2020 年初頭からのコロナ禍により、地域の様々な活動がストップしてしまった。コロナへの恐怖を感じ、特に高齢者を中心に地域での活動ができなくなり、4 月に緊急事態宣言が発出してからゴールデンウ イーク頃は、どんな取り組みをしていけばいいか、全国ボランティア・市民活動振興センターとしても悩 んでいた。日常、地域で誰かとつながり、支えたり支えられたりということが当たり前にされていたこと の大切さに改めて気づいた。一方で、皆さんが歯を食いしばりながらもつながりを絶やさないために工 夫しながら活動している状況があり、それを全国的に共有し、活動者を応援していけるようにするため、 「未来の豊かな“つながり”のための全国アクション(以下、「全国アクション」)」をスタートした。様々 な工夫を凝らした各地域での活動を、幅広くオンラインで紹介し交流することで、全国の活動者や団体 の後押しをしている。

「全国アクション」は、2020 年 5 月に 11 団体(さわやか福祉財団、生活困窮者自立支援全国ネット ワーク、全国コミュニティライフサポートセンター、全国社会福祉協議会、全国社会福祉法人経営者協議 会、全国民生委員児童委員連合会、中央共同募金会、日本 NPO センター、日本生活協同組合連合会、 日本ボランティアコーディネーター協会、「広がれボランティアの輪」連絡会議)が主唱団体となり呼び

かけをした。11 団体のうち 6 団体が「広がれボランティアの輪」連絡会議の構成団体。この連絡会議は、 27 年前に創設され、全国的なボランティア・市民活動を推進する 55 団体によるゆるやかな協働ネット ワークである。参加する各団体の活動を尊重しつつ、社会へ発信していく提言や、ボランティア・市民活 動を進める人々の交流を図る全国フォーラムの開催、関係省庁との懇談会などを行っている。阪神・淡路 大震災でのボランティア活動支援、その後の NPO 法制定、2001 年ボランティア国際年など、その時々 のボランティア・市民活動の取り組みをネットワークで応援してきた。今回の「全国アクション」も、こ の「広がれボランティアの輪」に参加する団体が中心となり作り上げてきている。つまり、日ごろからネ ットワークをつなぎ活動していることが、災害時や今回のコロナ禍での動きに活かされている。

「全国アクション」は、2020 年 5 月にプレスリリースし、趣意書を作成し取り組み宣言をした。翌月 に開設したホームページ(https://tunagari-action.jp)には、生活困窮や地域福祉等に関わっている主唱 団体の代表からの応援メッセージを掲載。そして、各地域で取り組まれている活動事例も掲載しており、 現在は 170 事例が紹介されている。キーワード検索も可能であるため、ぜひご覧いただきたい。全県の 取組みを紹介しており、毎月数例ずつアップしていっている。当初は、子どもがお便りやメッセージを書 いて高齢者に届けたり、マスクを作って配布することで地域とつながっていくという取り組みが多かっ た。もともと取り組まれていた子ども食堂やフードパントリーなどは、コロナ禍の活動にあわせてアウ トリーチ型の活動等も地域で取り組まれ、そこでつながった方々に対して社協が相談支援を持ち掛け、 必要であれば相談機関につなげるなど、支援の紹介をするといったことも行われている。見守りや安否 確認の支援を、地域の民生委員がつないでいる事例もある。ホームページには実践動画の掲載も最近ス タートし、住民の活動事例の紹介や、生活協同組合がフードドライブを通じて地域とつながる取り組み など、幅広く紹介している。また、オンラインサロンも開催しており、地域の実践者の方々による情報交 換の場を提供している。昨年は「ブレイクアウトルームとは?」という声もあったが、オンラインサロン の場を通じて少しずつ慣れていき、スキルを高めていただいている。

今回のコロナ禍による「全国アクション」の取り組みで、改めてネットワークの大切さに気付いた。「広 がれボランティアの輪」連絡会議が活動を進めてきた母体としてあり、既に顔に見える関係があったか らこそ、スムーズに取り組むことができた。一方で、おたがいさま会議の皆さんは、地域で様々な取り組 みを進めており、課題解決のためのマッチングを重視しているが、我々はそこまでできていない。我々が できるのは、地域の取り組みを紹介し、そこでのノウハウを知ってもらうところまで。地域で困りごとを 抱える方の支援に取り組まれるのは、その地域で活動している皆さんであり、そこのネットワークであ る。そういった意味でも、おたがいさま会議がこれから担う役割は大きいと感じている。

「全国アクション」を通じて、全国の取り組み事例を寄せていただき勉強させてもらっている。その中 で、社協が中心となり取り組んだものを事例集にまとめ、6 月下旬に有料で発行予定。全社協「地域福祉・ ボランティア情報ネットワーク(https://www.zcwvc.net)」にて案内予定のため、ご覧いただきたい。

■テーマ2:『「新型コロナウイルス」NPO支援組織社会連帯(CIS) の取り組みと、NPOの状況の概観』
(吉田健治氏/認定 NPO 法人 日本 NPO センター事務局長)

日本 NPO センターは、全国の NPO が活動しやすいような社会環境を作るため、NPO 支援者のネットワークを軸に活動している中間支援組織。企業と NPO のつなぎ役の機能も果たしている。 コロナ感染が広がった約 1 年前、各地の NPO 支援センターで、同じような質問を受けていることがわかり、NPO 支援組織が情報提供や相談対応したり、提言を打ち出していく際に共有していけるプラット フォームとして立ち上げたのが「NPO 支援組織社会連帯」ネットワークである。活動としては、NPO へ の情報提供、オンライン総会の仕方なども含めた相談対応、政策提言やそのベースとなる実態把握のた めのアンケート調査などを想定していた。実際は地域ごとに実践されていることがあったため、ウェブ サイト(https://stopcovid19-for-npo.jp)での情報提供が中心的な活動となっている。サイトには、給付 金や助成金などのお金に関する情報や、活動再開時に役立つ様々な分野のガイドライン情報、各団体が 実施している様々な調査や提言等を集めて情報提供している。最近では、利用者からコロナ感染者がで た団体が紹介している対応事例の情報も掲載するなど、様々な情報を扱っている。

NPO 支援センターの活動は、NPO の経営状況や新たな地域課題を調査し可視化すること。そして一 方的な情報発信だけでなく、各地の NPO 同士が課題に対して実施している創意工夫をフラットに意見交 換できる場も設定している。政策提言は、全国レベルだけでなく自治体へ対する提言も多く、給付金関係 では自治体によっては非営利組織が対象から外れていることもあり、加えてもらえるような働きかけを することもあった。その他にも、法人維持に関する相談対応や、資金・物資の調達支援、オンライン化し たい団体への研修実施、感染対策のガイドライン策定支援なども行っていた。愛知からはボランタリー ネイバーズの青木氏が NPO 支援センターに参加してくれている。

昨年 8 月に全国の NPO に対し、コロナ禍での影響を尋ねるアンケート調査を実施した。事業の中止や 縮小などの影響がでているとの回答が多くあり、「イベントがキャンセルになった」「人が集う会ができ ない」という声や、国際協力 NGO の場合は「海外渡航ができず現地支援やスタディツアーができない」、 作業所等の場合は「利用者が減っている」という声が聞こえていた。公民館等で活動していた団体は、場 所の閉鎖で利用できなくなり、現在はワクチン接種会場になるため活動できないという声もある。一方 で、「相談が増えた」「今まで必要なかった消毒等対策に追われた」など、業務が増えたという声もあり、 影響の出方が様々である。活動ニーズが増え、これまで以上に忙しくなっている団体もあれば、事業を控 えている団体もある。ニーズ増で事業拡大する団体に対しては、ヒトやお金のリソース確保に関する支 援をしたり、ニーズ増は感じているが活動自粛している団体には、感染対策ガイドラインやオンライン 化対応の支援をしたり、各団体の状況によって必要な支援もかわるため、それぞれに対応する支援を実 施している。支援策の活用状況としては、持続化給付金や家賃支援補助金など政府系の助成金を使った ところは以外と少なかった。事業収入が中心かつ固定費がかかっている団体は政府系の助成金を活用し ているが、NPO はもっと多様で、事務所を持っておらず固定費がかからなかったり、ボランティアのみ で運営して人件費が必要ないところはデータとしてはあまり現れてこない。ひとまず活動を控えている という状況の団体もあり、ボランティア活動は時間が経つとモチベーションが低下してしまう。そのま ま不活発になり自然消滅してしまう可能性もあり、大阪ボランティア協会の「自発性は揮発性」という表 現があるが、ボランティアの熱をどう保温するかも課題である。

活動を工夫している事例として、集まってサークル活動をしていた子育て支援団体が個別訪問に切り 替えたり、公民館等で高齢者サロンをしている団体がつながりを絶やさないようにニュースレターを通 じて手紙のやり取りをしていたり、歌声サロンは歌うと飛沫が飛ぶため打楽器に切り替えたり、自然学 校などはオンラインセミナーや家族単位の受入にしたりするなどしている。対面をオンラインやニュー スレターに、屋内対面を屋外対面に、集合型対面を個別型対面(子ども食堂を戸外での弁当配布にする) に、単独でやっていたことを連携して実施する(商品販売の低下から複数団体が協力するマルシェの開催)など、自粛するだけでなく様々な工夫が見られている。

現在、各地の NPO 支援センターが現場団体の状況をどのように見ているかを把握するアンケートを実施している。コロナ禍前と比較して、経営悪化しているという感覚の団体がやはり多いが、一方で活発化 している団体も一定数あるという感覚を NPO 支援センターは持っている。また、コロナ禍を機に活動を 始めるという設立相談が NPO 支援センターに入っているという声もある。NPO は現在、活動の変容期 にある。オンラインを取り入れた事業運営は、今後、コロナに関係なく求められていくと思う。全国の NPO とつながり、ノウハウの情報交換をするなど、オンラインだからこそできることがもっとある。NPO 法人は減少方向ではあるが、NPO への注目度は高まっており、その期待へどう応えるか。内閣官房の孤独・孤立対策サイト(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodoku_koritsu_taisaku)のトップページにも NPO への期待があげられている。新たな取り組みとして、オンラインのプロジェクトが生まれたり、分 野を超えたノウハウ共有や連携、企業と NPO の連携、地域内の属性を超えた多様な連携をどう作り出していくか。今後、コロナが落ち着いた後も含めて、転換期に入っていると感じている。

3. ブレイクアウトルームでのディスカッションを終えての質問・感想など

○デンソー・鈴木氏:「ボランティア活動の自発性は揮発性」という言葉が面白く、ボランティア熱をどう保温していくか、モチベーションを維持していくための好事例を知りたい。また、「全国アクション」 で紹介されている個別事例とつないでいただくようなコーディネートが可能か教えて欲しい。中間支 援団体だからこその困りごとや、企業が行っている社会貢献をまとめたものがあれば教えて欲しい。

→吉田氏:ボランティア熱の維持については、少しずつでも活動の機会やオンライン交流の場を定期的 に持つことが大切だと感じる。企業からはオンラインボランティアの相談を多くいただいているが、 NPO 側のプログラムや活動づくりの力がすごく求められる領域で、業務を切り分けてかつ楽しい活動 にしていかないといけないという課題がある。中間支援団体の困りごととしては、公的施設を運営して いる団体は、行政方針に振り回され、NPO の活動する場を守れないことに悩んでいる団体も多かった。 ただ、最近では緊急事態宣言が発出されても感染予防対策しながら場を開けることが増えている。

→千葉氏:全国の社協が抱える課題として、これまで活動を頑張っていた方々がモチベーションを保て ないことへの働きかけができていない。一方で、次世代育成のような子ども・子育て支援や学生など、 社協でなく NPO 等が関わっている方々の活動は結構活発であるため、そういったところとどうネット ワークを組んでいくか、中間支援組織としての社協の役割でもあると考える。

○名古屋市社協・野川氏:厳しい状況の中、どのような条件が整うと継続・発展的な活動につながるか。 →吉田氏:現場のニーズを掴むこと、対象者の環境や状況を捉えておくこと、自粛するしかないと終わら せないこと、他の NPO や機関と一緒に取り組む視点を持つことが大切。そういった創意工夫や考え続けている団体が上手く活動を継続している印象がある。 ○日本福祉大学・菊池氏:社協の地域福祉活動と NPO の市民活動は、微妙にすれ違っているところがあると思うが、それに対する上手い連携や関係性についてどう考えられているか。

→千葉氏:長年の課題である。顔を合わせて話をし、お互いに何を考えているか日常的に話していかない と埋まらないと思う。「広がれボランティアの輪」連絡会議は、その一つを担っており、社協ボラセン にとって協働の試金石となっている。そこで多様な団体の様々な思いや考えに対し、社協としてどういう考え方で臨み連携していけるか、常に考える場を持つことが一つの方向性だと思う。

→吉田氏:各地を見ていて、結局は人であり属人的であると思う。また、NPO と社協以外にも、様々な 活動が増えているため、他の世界をもっと見る必要があると感じる。

○MY パワー・萩原氏:おたがいさま会議は中間支援組織の動きではないが、どう見られているか。

→吉田氏:このような地元 NPO が情報交換をする場は大事である。NPO 支援センターが各地でどんど ん仕掛けていくといいとも思うが、そうでないといけないわけでもない。分野や立場を超えて共通の問 題意識の有無を共有する場があることが大事であり、そこから生まれることもあると感じている。逆に 我々が、おたがいさま会議でどんなことをされているか、しっかりキャッチするアンテナを立てないといけないという反省も感じた。

→千葉氏:こういった場をもたないと先には進めない。何をやっていくかという議論は、顔の見える関係性から深まっていく。社協は地域から声を聞く機会は多いが、NPO など目的をもった方々との活動の 共有がなかなかできていない。担いきれていないところに対し、人間関係やネットワークのつながりの 中で声をかけていただくことも大切だと感じる。

4. その他(お知らせなど)

○RSY・浦野:JVOAD と RSY で一緒に作成した「新型コロナウイルス感染症避難生活お役立ちサポートブック(第 4 版)」の勉強会を3回実施予定。おたがいさま会議に参加されている皆さんにもぜひ参加して欲しい。詳細は次回会議のお知らせの際に、募集案内も載せさせていただく。 ○コーディネーター・小池:6 月 17 日(木)18:00~19:00、第 1 回「おたがたさま会議とよた」が開催 される。豊田市にて外国籍の子どもへの日本語教育や地域との関りづくりを行っている NPO トルシーダ・代表の伊東氏をゲストに招きお話いただく。ぜひご参加ください。

5. 次回の予定

【月間テーマ:地域の課題に取り組む】
2021 年 6 月 22 日(火)16 時 00 分~17 時 00 分
■テーマ:コロナ禍でよりそいホットラインに寄せられた声(仮)
■ゲスト: /
遠藤智子氏(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター 事務局長)
坂井あずみ氏(よりそいホットライン コーディネーター)

会議レポート