第44回:いのちに優しい地域を目指して〜被災者の歩んだ10年と未来への取り組み〜
●日時:2021年6月1日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB 会議(ZOOM)
●参加団体:31 団体(運営 10 団体含む)
●参加人数:41 名(運営スタッフ 16 団体含む)
1.情報共有
■荻原喜之さん
■おたがいさま会議とよた 日程
おたがいさま会議とよたの今後の日程が固まってきましたのでお知らせをします。
・6月3日木曜日午後6時より『おたがいさま会議とよたプレミーティング』:基本は実行委員会となります。後ほど進行案をお送りします。その後隔週の木曜日午後6時より定期開催の予定です。
・8月27日金曜日午後6時~8時 『豊田青年会議所8月公開例会』:豊田市太田市長に参加いただく 予定です。
2. 6 月企画「地域の課題に取り組む」:いのちに優しい地域を目指して〜被災者の歩んだ10年と未来への取り組み〜
■スピーカー:五十嵐浩子氏(NPO 法人すえひろ)
「いつも」と「もしも」を分けることなくフェーズフリーな避難所の仕組みを作りたい。 COVID-19 の影響で、有事の際の避難方法は分散避難が推奨され、 避難所の設置なども新しい生活様式に対応 するようになってきました。 今まで疑問に思われなかった避難所の在り方を良い方向に転換し、命 に優しいまちを目指します。
福島県浪江町出身です。海からは離れていたので津波の影響はありませんでしたが、福島第一原子力 発電所の事故の影響で、福島県内の避難所を 5 か所まわり、2011 年 5 月に岐阜県高山市に。3 人の子どもを育てるシングルマザー。
本日は防災啓発をしている NPO 法人すえひろの立場で参加しています。災害ボランティアコーディネ ーターとしての活動もしております。そのほか、動物愛護団体アニマルレスキュー飛騨に所属して活動 しています。
NPO法人すえひろは、飛騨・高山地域に避難してきた被災者と、防災に興味のある人たちを巻き込ん で活動している団体。アニマルレスキュー飛騨は、ペットを連れて避難したとき全国各地の動物愛護団
体に助けていただいた経験があり、その恩返しとして保護猫シェルターなどの活動を高山市で行ってい ます。
活動にあたって、今ある「当たり前」が辛く大変なものならば、次世代のためにも変えていくべき!! と思っています。大変だった同じ思いをしてほしくない…まずは「避難所生活を変えていきたい!!」
自分の経験として、子どもを連れて、認知症の祖母を連れて、ペットを連れての避難生活は大変でし た。きっと私と同じ思いをする人がいるはず。そのほか、災害弱者と呼ばれる、外国人、障がいを持った 方、妊婦さんなど避難所での生活が不自由だろうという人がたくさんいらっしゃいます。
現在、コロナ禍で「分散避難」ということが呼びかけられていて、外国人の方だったらここ、乳幼児を 連れた方ならここ、というように何か所かを指定しておく。そうすることで、避難する側も支援する側も いつでもそこに行けるような「フェーズフリー」な避難所をつくれるのではないか。
現状は、天候が悪くなるのがわかっていながら避難所が開いてないので避難できない、ということが起 こっていて、今日は雨が降りそうだから避難所に行こう、と気軽にいける避難所があってもいいのではと思います。日常時のフェーズと非常時のフェーズを分けるのではなく、日常時も非常時も役にたつ「フ ェーズフリー」という考え方。福祉避難所も、日ごろから利用している施設を必要な支援ごとの避難所として指定しておくことで災害が起こる前から利用できるのではないでしょうか。課題はたくさんあって、 行政、企業・NPO・社会福祉協議会の三者連携が必要だし、これから勉強していかないといけない。医療だけでは助けることができない。不安を覚えることなく安全なうちに避難できる場所をつくっていきたい。これが、いま私が取り組みたい地域の課題です。
■質問:RSY 栗田さん
今日のお話は五十嵐さんのご経験を踏まえて、こういう社会であるべきというメッセージとして受け止めさせていただいた。そのうえで、話しにくいかもしれないが、原発避難であること、お子さんや認知症のお母さまを連れての避難でしかも5か所も避難されてこられたことなど、大変つらい思いをされてこられたと思い、そのご苦労されたことについて教えてほしいです。それから全国に4万人避難者がい るとされている。NPO法人すえひろさんは避難されてきた方の団体とうかがっていますが、現在の高山の生活にはなれましたか、戻りたくても戻れないなど、避難者としての今の心境をお聞かせしてほしいです。また、五十嵐さんはまちづくりスポットでの人と人とをつなぐ、コーディネーターとしての活動もされていますが、このコロナ禍において困った点についてお聞かせいただきたい。
■五十嵐さん
まず一つ目、避難生活の大変さというところは、語り出せばきりがないが、自分の家族が無事だった、そして一緒に行動できていたことでつらいということはなく、それよりも周りの方の状況、それぞれ被災の状況が違う中で、情報がないため、心境が分からず、声がかけづらかった。また震災に関する様々な情報が錯綜する中で、自分として何を正しいと判断しなくてはいけないか、考えて行動した。それが現在の自分の行動にも役立っていて、誰かが何かを言ったではなく、それを自分ごとに置き換えることを意識して行動しています。決めるのは自分、そういう話を中学生の防災教室でも話していいます。
二つ目、福島には戻れるなら戻りたいと思いますが、複雑な気持ちがあります。あのとき情報が隠されていて、いまも隠されているのではないか、いろいろと疑ってしまって帰っても本当に安心できるのか。疑心暗鬼になっている。一方で福島に帰って復興、まちづくりに取り組んでいる人もいて、それは正解、不正解ではなく、それぞれの考え方、生き方なんだなと、そういうふうに思えるようになりました。高山での暮らしも、食文化や自然豊かな生活を楽しんでいます。
三つ目、まちスポでの活動について、もともと人と人をつなぐことが得意でそういう活動をしていたが、コロナ禍でできなくなってしまった。その中で、あれができない、これができない、ではなく、なにができるだろう?という発想で、アンケートを取るなどして困りごとをみつけて、地域のためになにができるだろうと考え、ひたすら取り組んでいる。高山は広いので、情報をとるのもオンラインを活用している。できないことを探すより、できることを探すというのが私の性分にもあっていて、楽しく取り組んでいます。
■質問:中日新聞 大森さん
自分は飛騨の出身で地域のことよくわかっているつもり。田舎であり保守的。住民の、NPO や市民活動への理解があまりなくご苦労されているのではないか。また、そういう田舎でも NPO の活動は必要と 思われますか?
■五十嵐さん
NPO 法人というと怪しいと思われていると感じるときもあるが、高山は市民の方がやりたいことをや れている地域だと感じている。なので、先ほど紹介した「フェーズフリー」の避難所も、私が一から作る のではなく、現在活動している団体と協力すれば実現できるのではないかと思っている。それぞれの地区で NPO が強いところ、地縁組織が強いところいろいろあるので、そうした団体のできること、できな いことを見ながら補いあっていけばよいのでは、と思っています。
■質問:デンソー 鈴木さん
災害発生時の連携、「フェーズフリー」の考え方を三者連携で実現させていかないといけない、というお話に共感する。その中で、五十嵐さんの所属する団体やそのメンバーの方々は、三者連携にあたってど のような役割を果たされるのでしょうか。
■五十嵐さん
まちスポとしては災害ボランティアコーディネーターとしての役割を担うが、自分たちだけで全部や るのではなく、地域の団体と協働していきたい。例えば子育てに関する問題は、それが得意な団体につな げていくとか。そして災害時にスムーズにつなげられるように、平時から楽しくつながる工夫をしてい ます。また NPO すえひろとしては、災害発生前に平時から備えていくことを伝える、防災啓発の役割を 果たしています。6月11日に「福祉避難所について考えてみよう」というシンポジウムをオンラインで 開催します。アニマルレスキュー飛騨では、犬・猫の殺処分をゼロにしないといけないが、すべての犬・ 猫を保護する、ということは行政ではまだ実現できていないので、行政ができていないところを NPO として担っていきたいと考えています。
※6 月 11 日シンポジウムの紹介
https://www.facebook.com/hirokoigarashi1122/posts/2937457443203091
3. グループセッションでの意見・感想等(ブレイクアウトセッション全 8 グループ)
■進行役 小池
フェーズフリーの避難所のコンセプト、とても良いと思いました。これを実現するには、行政だけ全部やり切るのは難しいと思っていて、実現されるとしたときの、行政、企業、NPOの役割分担の具体的なイメージあれば教えていただきたいです。
■五十嵐さん
まずは自助力をあげていくことが大切で、市民の方が、生き延びること、そこに避難するという選択を 迷わずするということが大事だと思います。行政側で、物資がない、人がいないなどの理由で避難所に指 定しない施設があったりする。例えばそこに避難する人がいるとわかっているなら指定避難所じゃなく てもそこに物資を送るなどの取り組みがあってもいいのではないか。指定避難所まで遠くて避難しにく い場合などもあるし、分散避難の推奨とか、車中泊する方などが増えたりすると、行政が避難者の情報を 集めるのが困難になり結果として支援が行き届かなくなるのではと思っています。自助的に避難する場 所を事前にきめておいて、実際に避難されたら行政が物資を届ける、という仕組みを構築できればうま くいくのではないかと思っています。
■SIIF
戸田さん
フェーズフリーの避難所づくりはとても共感しています。避難所にどんな人が来るか、また来る方の背景とかもわかり、ニーズもわかりやくなってとても良いと思います。それを実現するためには何が課題 になっているか教えていただけますか。
■五十嵐さん
課題のあぶり出しがまだ途中の段階ではあるが、例えば自分の力でいけない時に誰が支援するか、とか 突発的な災害、地震とかが起こった時にどこまで支援をするのかをかちっと決めてしまうと、それに縛 られて動き出せなくなるという心配がある。
地域の方々がどこまで自力で避難できるのか、どこにどういう方がいるのかとあぶり出している段階。 日ごろどういう団体がどういう方を支援しているかを把握していくと、どういう団体が有事の際にどう いう動きをするのか見えてきてはいるが、ではその避難所の場所はどうするとか、その運営管理はどう するとか、平時の際の管理はだれがどうするとか、そういう課題があると思っています。
■ジャーナリスト 関口さん
原発事故の際の情報の大切さについてお話いただいていたかと思います。このコロナ禍でいろんな情報が乱れ飛んだと思いますが、情報の見極めや取捨選択などで意識されたことを教えてほしいです。
■五十嵐さん
原発事故、震災のときのことを思い出しました。物がなくなったり、常識が変わったり、偏見や差別な ど、まさに福島のときと同じだと思いました。目に見えない敵と戦う、と考えると勝たないといけないと 思ってしまうので、戦うのではなく、まず情報を集め、情報を集めるといいことも悪いことも出てくるので、それを出し合い、お互いどう思うかを話し合って、一人ひとりが信じたいと思うことを挙げていって それを否定しない、ということが大事だと思います。
■防災ママかきつばた 高木
先月、福祉避難所のガイドラインが改訂されました。福祉避難所に殺到されないよう、利用対象者を市町村が事前に決めて伝える新制度の受け止め方、施設側にもよると思いますが、普段利用している施設 が避難所になっていく、福祉避難所というものがどういうものであるかということが広まっていくのではと思っています。
※福祉避難所の確保・運営ガイドライン http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/r3_guideline.html
※Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/bce28e6301f5d0e905e810989c68f29c40b0da3e
■萩原さん
平時の準備が大切だと思います。原発、被災地へ支援にいった方が集まったので、その話をしました。地域に分断ができて、つながりをつくろうということでこの活動をしている。原発、コロナ、震災も一緒 だなと思いました。
■日本福祉大学 菊池さん
福島の問題は難しく話すのがタブーとされていた。福島の中でもレイヤーがあって、地域によっても事情が違うなど。そういう状況で、遠くに避難した時に話しづらさであったり、それによって受け入れても らえなかったり、といったことがあってのではないか。また、五十嵐さんは高山に来られて地域の中に入っていかれたという印象だがどうやって地域にフェードインしていったのか、そのコツなどをお聞きしたいと思います。
■五十嵐さん
高山に移住したときは、いじめなどがあると言われていた時でした。でも移住したときに、周りの方は理解してくださっていて、あたたかい方ばかりでした。地域の溶け込み方ですが、被災体験を話してほし いと依頼されて、話したことで、地域の方に共感していただいたんですが、なんとなく他人事でした。他 人事で終わってしまっては、自分と同じ思いをする人がたくさん出てしまうと思い、防災の話に転換し てこういうふうに取り組みましょうと自分事にしてもらえるように心がけてお話ししました。その行動 が、地域に溶け込めた理由だと思います。
■菊池さん
もう一つ、高山に来るまで何か所か探したということでしたが、受け入れてもらえるかという要因が大きかったのでしょうか。
■五十嵐さん
福島県内で避難所や親戚宅、借上民宿など5か所を転々とした。原発避難者は、原発から安全なところへ避難しているので、避難先の人たちは普通の暮らしをしている。そうすると、学校再開したいけど、あるいは民宿が営業再開したいけど、この避難者いつまでここにいるんだろうという雰囲気になってくる。 長期的な避難を考えると、やっておくべきことはたくさんあると感じています。
■名古屋市社協 野川さん
グループワークでは五十嵐さんと同じグループだったのでそのお話の内容の紹介です。まず、どのようにして高山の地域でネットワークを広げたのか、ということが話題にあがり、その内容については先ほどの質問のとおり。また、社協との連携についてどのようにされているのか、という質問に対して、困りごとがあれば社協に相談に行くなど良い連携ができていて、社協と行政とNPO がバラバラにならないよ うに相談しながら連携している、というお話もありました。それから、子どもたちへ防災を伝えるポイン トについてお聞きしたところ、写真などをたくさん使って、お子さんの目線にたってお話をしているとおっしゃっていました。
■RSY 浦野さん
まちスポの活動で、コロナ対策でのアンケート調査について、どんなニーズがあったのか、また動いた団体さんについて、こういうことに気を付けようといった共通ルールや想いについて教えてほしいです。
■五十嵐さん
まちスポは、コロナ対策プロジェクトということで動き出した経緯があります。官民連携で、医療従事 者を支えようというクラウドファンディングを行い、医療機関に貢献することができました。また普段 まちスポに関わってくださっている団体さんに対して、オンラインやツールの活用の仕方をレクチャー したりしました。まだまだすべての団体さんの課題に対応できているわけではないが、一緒に考えなが ら取り組んでいます。
※飛騨地域医療支援プロジェクト https://camp-fire.jp/projects/view/280628
■五十嵐さんから質問
ペットの同行避難、同伴避難という2つの言葉があるが、市民の方はどのくらいご存知でしょうか。
■小笠原さん
私どもが取り組んでいるのはあくまで同行避難。ペットの同行避難できる避難所を増やしています。ペ ット専門家の方から学んでいます。鳴き声、においなどペットに理解のない方からの軋轢も感じます。避 難所訓練等で市民の理解を進めていくことが大事だと思っています。
■伊藤さん
ペットの同行避難をメインに取り扱う HUG を行っている団体がいます。関や各務原で既に取り組ま れています。ペットを含む HUG を使うのも良いかと思います。
■五十嵐さんから、今日の感想
最後に、皆さんのお話が聞けて私自身勉強になりました。また質問をいただいたことで、これとこれは解決していかないといけないなどといった課題解決の道筋も見えてきました。災害が起きてしまった後の動きだしとか、何をつながないといけないとかについては、今後もこのおたがいさま会議で勉強させていただいて、子どもたちにとって住みやすい、命に優しい地域づくりを目指してこれからも頑張っていきたいと思います。ありがとうございます。
4. 次回の予定
【おたがいさま会議 今後の開催予定】
6 月のおたがいさま会議開催予定日
■ 6月8日(火)16-17時
■ 6月15日(火)16-17時
■ 6月22日(火)16-17時
※詳細は決まりましたらお知らせさせて頂きます。
★その他
五十嵐さん Facebookページ
https://www.facebook.com/hirokoigarashi1122
特定非営利活動法人まちづくりスポット 代表理事 竹内ゆみ子(たけうち ゆみこ)さん(高山市)
https://gifujo.pref.gifu.lg.jp/message/2018/07/post-203.html
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