第43回:シングルマザーと子どもたちへの支援の現状
●日時:2021年5月25日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:36団体(運営10団体含む)
●参加人数:49名(運営スタッフ15名含む)
1. 5月企画「地域の課題に取り組む」:コロナ禍のシングルマザーと子どもたちへの支援の現状
■神朋代氏/株式会社リンクリンク 統括マネージャー
〇自己紹介
結婚で東京から愛知県春日井市に嫁いだが、免許もなく徒歩圏内に最寄り駅もない孤独からのスタートだった。初めての出産育児で産後うつになり、上手くいかない絶望感で暴力も振るわれるようになった。当時は好きで結婚し、好きで遠くに引越したため、心配をかけたくないことから東京にいる親にも相談できず耐えていた。自由にできるお金もない中、ハンドメイドに出会い、ハンドメイド作家として子どもを背負ってイベントに参加し、売り上げを自分のお小遣いとして生計を立てた。母親のリフレッシュが大切と痛感し、子連れのヨガサークルも立ち上げるなどした。しかし当時は母親がリフレッシュすることに、世間になかなか理解してもらえず、場所を借りるのにも苦労した。母親になっても学ぶことの大切さを知り、地域の中にある課題を見つけて行動することが得意だと気付いた。地域を巻き込んだ子育てをテーマに、ママと地域と企業と行政がつながる5千人規模の「ママの文化祭」イベントを開催。子どもたちの故郷をよりよい町にするために「NPO法人あいちかすがいっこ」を設立し、市と「子はかすがい、子育ては春日井」宣言をした。その一方で家庭内暴力と借金は悪化しており、5年前に離婚。子育て支援をしていたが、母子家庭の現状を知らず、自分自身が困窮世帯であることにも気づいておらず、離婚したことからいろんな制度を学んだ。誰にも相談できず、表の自分と本来の自分の生活苦のギャップに耐えつつ何とか綱渡りしていた。そこから抜け出すきっかけがリンクリンクとの出会いだった。
○シングルマザーの現状
ひとり親世帯の約86%が母子世帯で、その数は30年前と比べて1.5倍に増加。母子家庭の年収は、子育て中の一般家庭の3分の1程度と少ない。日本の貧困線は122万円であるが、母子家庭の半分がこの貧困線より下にいる。日本の母子家庭の8割以上は働いているにも関わらず貧困であるという現状。世界の男女平等ランキングでも日本は120位と低く、世界最悪の男女格差がある中でシングルマザーは働いている。親が貧困だと子どもも貧困になる。母親が忙しくて子どもの学習をみられず、習い事や塾の支払いや送迎も難しいことから、学力にも差が生じる。習い事をすることが普通である中、それができないことが子どもの心理面にも影響。リンクリンクは「シングルマザーの子どもたちに夢と希望の未来を!」という理念を掲げ2016年に設立。相談にくる母親は、離婚前のプレシングルマザーが多い。家を借りるにも働いていないと借りられず、住所がないと行政支援も受けられないという「母子の負のスパイラル」がある。離婚前の母親は、離婚調停をしている場合は行政支援が受けられたり、DV被害者の場合はDV支援が受けられるが、そこに当てはまらず専業主婦でキャリアも止まっている母親の場合は、社会復帰からのスタートが必要。無職で貯金がない母親も多く、住宅を借りる時に保証会社が通らなかったり、実家に頼れる親もなく緊急連絡先がない方もいる。若い未婚のシングルマザーの場合、10代の時には親からの虐待で自宅に居場所がなく、繁華街で暮らす中で出会った男性と望まない妊娠をし、そのパートナーの男性にも逃げられ、中絶もできずに子どもを産む決断をした母親もいるが、そういう人への支援はなかなか行き届いていない現状がある。何とかこの負のスパイラルから抜け出す支援が必要。
○リンクリンクの支援活動「シングルマザーによるシングルマザーの自立支援」
リンクリンクの活動は、住まいの提供、仕事の紹介、チャイルドケアの3つの柱がある。シングルマザーの子どもたちの生活の安心安全の向上には、シングルマザーの経済的自立が必須。相談支援は多岐にわたっており、居住支援、行政との懸け橋支援、学ぶ場所の支援、就業支援、子どもの学習支援や食事支援、離婚時には弁護士等の専門家紹介支援をする一方で、離婚回避が子どもの貧困をなくす一歩であるため復縁支援もとても大事にしている。
・住まいの提供:シングルマザー専用ハウスとして桑名市に母子専用アパートをオープンしている。
・チャイルドケア:愛知大学学生で教員をめざしている学生サークルのボランティアによる学習支援。
・仕事の紹介:人材紹介の免許を持って実施。シングルマザー雇用に積極的な企業をホームページに掲載(https://job.parklink.net)しているが、コロナ禍の影響で求人情報が減った。おたがいさま会議に関わる団体の皆さんの中で、シングルマザーの求人募集をしてもいいというところがあれば、積極的にお願いしたい。シングルマザーの殆どが非正規雇用で正社員は少ない中、緊急事態宣言によって飲食業で働いている人日とは時短営業となることで給与も減り、またそこに対する補償もない。
お母さんたちには経済的自立と精神的自立が大切と考えており、決意と覚悟がシングルマザーには必要であるとプレシングルマザーのお母さんたちに伝えている。私たちはシングルマザー困窮経験者でもあるため、「自立が大事。子どものために頑張るしかない」と、厳しいことをお母さんたちに言うこともある。伴走支援だけでなく、一歩前に進む応援を大切にしている。
リンクリンクはシングルマザー支援の会社と思われているが、シングルマザーの子どもたちを支援するために必要なことして母親の自立支援をしている。子どもたちへの支援活動としては、当事者として子どもたちに誕生日ケーキを買ってあげられなかったという経験から、集まった支援金を使って母子家庭のお子さんに誕生日ケーキを送っている。様々な大人が関わるきっかけにもするため、ケーキ屋さんに協力していただき、ケーキを直接手渡ししてもらうことも大切にしている。夏休みの子どもの宿題に思い出を作文で書く必要があるが、母子家庭では夏の思い出づくりが大変であるため、スポンサー企業や大学生の協力によってバーベキュー大会も実施。子どもの中にはDV経験から男性を怖がる子もいるため、学生やスポンサー企業の男性など、様々な大人と関わる機会になれば、と企画している。冬にはクリスマス会も開催。たくさんの人との美味しいご飯とケーキ、そしてプレゼンをもらう経験から、クリスマスが寂しい思い出でなく楽しいものになるようにしている。しかしコロナ禍によって昨年度のイベントは全て中止となった。今年は何とか実施したく、皆さんからイベントを開催するためのよい知恵をいただきたい。
コロナ禍で何ができるか検討し、子どもたちに直接的に経済支援をすることを大切にした「子どもおこづかい基金」を設立し、これからスタートする。夏休みは給食がないためご飯を食べられない子どもがいたり、母親の頑張っている姿を見て我慢している子もいることから、夏休みと冬休みに何に使ってもいいというお小遣いを子どもたちに渡したいと考えている。コロナ禍でのもう一つの新しい取組みとして、建設会社と不動産会社とリンクリンクが連携し、困窮世帯の住居提供支援事業を立ち上げ、5月19にキックオフイベントを実施した。中日新聞と中部経済新聞に掲載され、問合せも入ってきている。住所がないと生活保護などの行政支援や公営住宅の申請もできないため、まずは住まいを借りられるように初期費用をゼロ円にしたり、家賃を相場より安く提供している。賃貸物件を借りられるように仕事の紹介もしているが、キャリアが止まっている状態だといきなり正社員は難しいため、ママ専門の派遣会社に協力いただいている。コロナ禍によって生活保護受給者やDV被害者も増えており、結局子どもたちが被害者になっている現状がある。このように困っている人がいることを共有し、それぞれの強みを活かして皆で助け合える社会にしていく必要がある。コロナ禍によって明日のご飯がないシングルマザーもいて、子どもの体重が減っている。昨年は休校によって給食がなくなったのは残酷だった。本当に困った世帯を救える制度がなかなかないのが現状。リンクリンクに相談にくる母親は、生活保護を受けたくない人が殆どである。過去の事例では生活保護を一時的に受けても、皆さんそこから抜け出せているため、上手く制度を使っていいということを伝えながら、今の困窮から抜け出す応援をしている。
2. 意見交換・質問・感想等
○リンクリンクの広報について、シングルマザーはどうやって情報を得ているか知りたい。
→神氏:口コミが一番。インターネットやSNS検索が多い。本当は行政窓口などにリーフレットを置いて欲しいため、配架が可能な市町村等があればリンクリンクに連絡をいただきたい。
○なぜ株式会社として活動しているのか。
→神氏:ソーシャルビジネスコンテストで優勝したことがスタート。そのミッションとして株式会社を立ち上げることになった。非営利型の株式会社として、必要経費を除いた利益は社会に還元している。
○MYパワーは豊田の中山間地で地域の課題解決をしている会社。中山間地域には空家もあり、コストをさげて暮らせる可能性があるのでは。何人かでシェアハウスに住みつつ、ナーシングホームで高齢者ケアなどの就労できる場所が田舎に作れないかと考えている人たちもいる。都市部で住居や職に困っている人が移住して暮らす可能性はあるか。
→神氏:可能性はあるとは思うが、仕事の内容にもよる。キャリアがある母親は在宅ワークもできるが、パソコンができない人もいる。車を持っていないため、通勤や何かあった時に病院に行けなかったりすることも。また、もし職場で上手くいかなかった場合に、住居と職の両方なくすリスクをどうするかも課題。一方で看護師になるために名古屋だとコストがかかるため、地方に引っ越したシングルマザーのケースがある。虐待を受ける可能性から、どこでもいいから遠くに離れたいという人もいる。母子アパートがある桑名市では、子どもがのびのびと自然の中で暮らしている事例もある。
○メディアとして、「おこづかい基金」を記事にできそう。実施方法や対象者などの詳細を知りたい。実際に困っている状況がわかる事例も取り上げたく、代表して取材を受けてくれる子もいるといい。
→神氏:6月中旬にプレスリリース予定。子ども一人につき夏休み1万5千円、冬休み5千円を支援予定。お金の勉強のためのマネーセミナーにもつなげたく、対象は小学校高学年から高校生、特に働きたくても働けない年代、思春期で親との関わりが難しい年代、頑張る母親の姿を見て母親に言いたいが我慢している子どもへの経済的支援をしていきたいと考えている。夏休み前には募集して実施予定。
○厚労省発表によると国際結婚の離婚率は日本人同士の2倍。特にフィリピン人シングルマザーの貧困率が高い。名古屋市内での外国人相談内容の第一位は離婚問題。一方で支援先も増えているため、支援先の情報を提供することや、つなぎ先の紹介が可能。
→神氏:外国人の場合、言語の問題もあるためぜひ支援団体を紹介いただきたい。
○フルタイム雇用の求人はあまりないが、委託事業などを踏まえて期間限定で少しでもという人がいればNPO業界からの求人も可能ではと思う。
→神氏:既にキャリアがある人で副業したいというニーズもある。リンクリンクではメールマガジンで情報を届けているため、そこに求人情報を流すことも可能。NPOで働くことでキャリアアップにつながる機会になるとありがたい。
○しげんさいせいネット(http://shigen-saisei.net)などで、食材を企業や個人レベルでリンクリンクにつながる仕組みができるといい。
○社協にコロナ貸付相談が多く入る中で、母子家庭からの相談も多くあり、リンクリンクの案内ができるといい。リーフレットを社協にも置かせてもらいたい。
○リンクリンクに対して企業や団体、個人レベルでできる支援を教えて欲しい。
→神氏:ホームページの「支援をする」ページ(https://parklink.net/sponsor)で紹介している。企業はスポンサー、個人はマンスリーサポーターを募集中。イベント時のボランティアはメールマガジンで募集している。「子どもおこづかい基金」の展開も試行錯誤中であるため知恵を貸してくれる方も募集中。
○栗田:バーベキュー大会などでは、例えば災害救援NPOであるRSYからは防災キャンプ、デンソーからはプリウス車中泊体験など、おたがいさま会議でつながった様々なジャンルのメンバーと連携して開催することで、子どもたちに様々な大人に会ってもらう機会とすることも考えられる。
〇本日のまとめ/神氏:シングルマザー当事者として、娘が小学校に入学する1週間前までランドセルを買ってあげられなかった経験がある。困窮者には就学支援制度はあるが、入学するための支援は入学後の6月に入るため間に合わない。今の制度では本当に困っている人に届かない部分がある。いい情報を母親に発信していくためのコラムページもつくったため、各団体それぞれの強みを活かした情報をいただけると嬉しい。地方への居住も含め、コストを抑えて子育てが安心してできる町を増やしていけるといい。今後も情報共有しながら皆さんとつながっていくことが、子どもの未来の笑顔につながると信じている。
〇リンクリンクさんよりお知らせいただいた動画・掲載記事リンク:
■5月19日 Livequality(リブクオリティ)キックオフイベントの録画を公開しました。是非こちらをご覧ください。
0:02:20~ 岡本よりLivEQualityのご紹介
0:19:43~ リンクリンク様ご紹介
0:29:00~ マメカバ不動産ご紹介
0:34:00~ パネルディスカッション
■中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/256402?rct=aichi
■中部経済新聞
■毎日新聞
3. 次回の予定
【月間テーマ:地域の課題に取り組む】2021年6月1日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:「いのちに優しい地域を目指して」被災者の歩んだ10年と未来への取り組み
■ゲスト:五十嵐浩子氏/NPO法人すえひろ
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません