第42回:ひとりの「困った!」の声から事業化へ
●日時:2021年5月18日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:31団体(運営11団体含む)
●参加人数:42名(運営スタッフ18名含む)
1. ひとりの「困った!」の声から事業化へ:吉川みつこ氏(NPO法人れんこん村のわくわくネットワーク 元理事)
○コーディネーター・萩原氏
吉川さんとこの会議がつながったきっかけは、4月に吉川さんがフェイスブックに「子ども を看病する親の相談窓口がない」と投稿したのを私が見たから。吉川さんとは環境活動など を通じた“ごみ仲間”だったが、もう一つの顔は愛西市の市会議員でもある。
〇自己紹介と事業紹介
・平成 9 年に立田村で計画された産廃処理施設の反対運動から、子育て中の母親の任意団 体としてスタートした。自分たちの地域を子どもたちに恥ずかしい地域にしたくないとい う思いで、危険も感じるぐらいだったが必死に活動した。ある程度、環境の面は解決できた あとで次はどうするかとなり、自然環境だけでなく、子どもたちのために自然環境、社会環境、体の中の環境=健康の「3 つの環境を守ろう」という活動を始めた。村の子育て支援センターの建設に独自案を出し、食を踏まえた子育てサロンを実現するなどした。
・活動を通して行政や議会の問題を感じ、みんなで議会でものを言おう、発言しようという流れになり、私が議員になった。私にとっては市民活動が根っこにあって、議員は課題達成 の手段。議員が市民活動をしているわけではない。
・平成 17 年、立田村が愛西市に合併し、私は同時にNPOも公的サービス担う時代が来ると 思い、NPO法人を立ち上げた。最初は30万円ぐらいしかお金の動かない小さなNPOだった が、ある会社の社宅を無償で借りられて事務所にして、いろんな助成金の申請などをし、厚生労働省の「緊急サポートネットワーク事業」などを実施できた。本来は市町村がやるべきだが手を出さない病気の子どもを預かる事業などをして、ノウハウを重ねた。愛西市のファミリーサポートセンター事業(ファミサポ)の公募にも応募し、実績を作ると、お隣の稲沢市や津島市からも委託の話が来た。
・「仕様書+横出し」と呼んでいるが、行政が出してくる仕様書以上のことをするのも NPO の役割。ファミサポでは養成講座を受けたコーディネーターが子どもたちの精神的な支援をし、医療的なアドバイスは 3 市 3 名の小児科の先生にしてもらっている。そうしたことは市の仕様書に一切ない。新しいことも委託事業のつながりの中から生まれる。
・児童館運営では、大人が作るイベントは最小限にして、子ども会議を開いて子どもたち自身にやることを決めてもらっている。体験型児童クラブでは、私が毎日手作りのおやつを出 している。他に自然探検隊や子ども食堂、居住支援センターも始めた。
・高齢者支援は、ファミサポでの、自分たちが年を取ったときにどうするかという具体的な 声から始まった。子どもも高齢者も地域の担い手。お客さんにせず、互いに助け合う。そう したみんなの声で活動が膨らんでいる。
〇コロナ禍での課題と工夫
・コロナで高齢者サロンは室内で行うのは厳しくなった。しかし昨年、2 カ月休んだときに 高齢者の認知症の進み具合や足腰の弱り具合が悲惨だった。だからその後は何がなんでも やり続けようと、週 3 回を週 2 回にしつつ、庭にテントを張って野外で開催している。始ま るときはコロナの注意点を張り出して、おばあちゃんたちが忘れないように何度も何度も 説明しながらやっている。 ・家族にコロナの感染者が出て孤立したときにどうするか。市の窓口は形だけで、寄り添う 窓口がなかった。そこでファミサポの会員に限って窓口を開いている。小児科の医師も積極 的に協力すると言ってくれているので、工夫しながらやっていきたい。
・サービスを利用した人数は、言葉は悪いが「上澄み」の人たち。本当に困っている人は来 てくれない。今の福祉、NPO 活動は本当に困っている人に届いているかを痛切に反省しつつ、 どうしたらいいかを日々考えている。ファミサポに登録するにも利用料がいる。市に補助制 度を作ってほしいと毎年、交渉するが実現しなかったので、今年度は独自の基金を作ろうと 動き始めた。
・居住支援では、愛西市では空き家がなかなか売れない。こうしたネットワークで情報交換 しながら解決できないかと思っている。
2. 質疑応答
〇レスキューストックヤード・浦野氏:中小企業などと連携した事例はあるか。コロナのワ クチン接種の申し込みを一緒にやっているのか。蟹江町の加藤建設さんが子ども向けの自 然観察教室をしているが、コラボはできるか。
→吉川氏:居住支援では不動産会社とコラボして空き家対策をしている。低所得者の家賃保 証の制度でも中小企業とコラボしているし、「サムライ市」では名古屋の商店街とも。加藤 建設さんはメールいただいているがまだコラボはできていない。 ワクチン接種支援はもうしている。議員としてワクチン接種計画の情報を得て、これはお年 寄りだけでは無理だと思い、サロンの中で予約代行をしている。
○県社協・渡邊氏:子ども食堂の拠点はどこか。小児科の先生はどう集めたか。職員の数、 給与は。行政と NPO が近くなることについてどう思うか。
→吉川氏:今日も津島の子ども食堂から報告があったが、ひとり親はなかなか連絡しない。 子ども食堂には本当に困っている人が来ているのか。子ども食堂を流行だけで終わらせてはいけない。例えば、コロナ禍でお弁当を配る際、コーポ(集合住宅)で中学生の自転車が 止まっているところに集中的にポスティングするなどの工夫をした。いま子ども食堂はお休み状態だが、再開するときはより有効な状態で動きたい。 小児科の先生は愛知県小児医師会にお願いしたり、理事を通したりしてお願いしている。病気を治すだけでなく、社会的な問題も取り組んでくれる。
職員は支援員を含めて 20 人ぐらい。みんな有給で、最低賃金は払い、余裕があればボーナ スも出している。無給ボランティアはいない。それなりにお金の動く活動が主になっている。 行政とNPOはしっかり対等の関係でつながってほしい。行政は現場のことが分かっていな い。NPO の人こそ議員になって、持っているノウハウを議会や行政に使ってほしい。形だけ やっていますというサービスが多すぎる。もっといいサービスのために、議員になる道を模 索してほしい。行政には税金がいっぱいたまる一方、NPO はお金がなく、ノウハウがあるの にいい活動ができないというのはもったいない。
○コーディネーター・鈴木氏:本当に困っている人の見極め、掘り起こしはどうしているか。 見えない苦労は。 →吉川氏:見極めは難しい。行政もいろんな課で情報を持っているので、しっかりつながらないといけない。しかし人事異動があるとつながりが壊れるので、毎年つながりが切れないような努力をしないといけない。 ファミサポは、コーディネーターが利用者と事前の打ち合わせをするときに家庭の事情などを何気なく聞く。言葉の上っ面を聞くのはやめようと徹底されている。その中で補助制度などがないとずっと苦しんできたが、NPO の基金で半額を支援するなどやっていきたい。 困っていないからサポートしないわけではない。子育てはリフレッシュもしないといけないので、そうした依頼も受けるが、深刻に困っている人をどう見極めるかという課題は永遠 のテーマで、努力し続けるしかない。
○コーディネーター・菊池氏:普通なら支援者と被支援者に分かれてしまうが、一緒に地域 を助け合っていくという考えが素晴らしい。その助け合いの中で新しい人材、ボランティア になってくれる人はどう見つけるのか。
→吉川氏:事務所は 30 代、40 代が担ってくれている。市のファミサポ以上に時間外や夜の お泊りもするので、そうした自主事業に登録してもらうことが、他のサービス利用の促しに もなっている。ファミサポには今 2,000 人ぐらい会員がいて、地域のために何かしたいとい う人は山ほどいる。そうした人たちに養成講座を通して出会えることが、新しい人材発掘の 大きなきっかけになっていて、うまく循環ができている。
○市社協・野川氏:空き家の有効活用の具体例や活用のポイントは。農業関係での協力や、 農地・空き家の有効活用、2 階建てであれば避難所として利用できるのではという提案もあ った。 →吉川氏:空き家の活用法は私も知りたい。グループホームなどいろんな法律を調べている が、愛西市ではあまりニーズがない。名古屋でひとり親や DV で困っている人などに使って もらえないか。こういったネットワークで情報をいただけるとうれしい。農地や空き家もあ る。解決に協力いただける方はぜひご連絡を。
3. 参加者紹介・イベント紹介、まとめ
〇コーディネーター・萩原氏:やっと「おたがいさま会議豊田」が始まる。6月3日に実行委員でキックオフ会議をする。豊田 JC がホームページ作りに予算を取ってくれた。本体と もリンクしていいもの作ろうと動いている。
4. 次回の予定
2020年5月25日(火)16時00分~17時00分
●テーマ:『コロナ禍のシングルマザーと子どもたちへの支援の現状』
●スピーカー:神(じん)朋代氏(株式会社リンクリンク 統括マネージャー)
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