第38回:ポストCOVID-19の社会経済動向と能動型非営利組織への期待

会議レポート

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●日時:2021年4月6日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:27団体(運営9団体含む)
●参加人数:39名(運営スタッフ16団体含む)

1. 4月企画「コロナ禍の1年の振り返り」
ポストCOVID-19の社会経済動向と能動型非営利組織への期待

●日本福祉協議機構 濱野さん
今後のコロナ禍の後の動きを考えたい。小竹先生は生きるウィキペディアだと思い、小竹先生をご紹介しました。

●小竹暢隆さん(元・名古屋工業大学大学院 社会工学専攻 教授)

 はじめにトレンドですが、COVID-19は稀にみるレベルでグローバルなインパクトを与えていると言う事は皆さんご承知のとおり。新型コロナウイルスと名づけられているが、一般の風邪や、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」、「中東呼吸器症候群(MERS)」もコロナウイルスです。これらを含めた7種類目のコロナウイルスという事で「新型コロナウイルス」と名づけられています。

 特定領域では不可逆的な変化をもたらし、またデジタライゼーションのいっそうの加速が平行して起こっています。これに伴い、ビジネス・エコシステム(社会生態系)が変容しています。

 P.F.Druckerは『すでに起こった未来』(1994年発行)という書籍の中で、「既に起こった未来は体系的に見つけることができる。調べるべきは、⒈人口構造、⒉知識、⒊他の産業・他の国・他の市場、⒋企業の内部の5つにある」と述べています。

ウイルスに関してはCarl.Zimmer著『プラネット・ウイルス』(2013年発行)が出ており、「地球は元々ウイルス地球である、何かの人為的な著しい行為が加わってパンデミック化する」と述べられています。それから多田富雄著『免疫の意味論』(1993年発行)では「〝非自己〟から〝自己〟を区別して、固体のアイデンティティを決定する免疫であると。そして臓器移植、アレルギー、エイズなどの社会問題との関わりのなかで〝自己〟の成立、崩壊の後をたどり、固体の生命を問う」という内容になっています。

疾病の社会史を振り返ってみると、元はペストが一番のパンデミックの代表的なものです。中央アジアの風土病だったペストがモンゴル帝国の発展によって世界の国々に拡大したという背景がある。その後百年戦争(1337/39-1453)とペストが中世を終わらせ、ルネッサンスと大航海を生み出し、宗教改革、30年戦争(1618-1648)へと発展したと位置づけられています。G.Boccaccio著『デカメロン』はペストから逃れ、ある邸宅に引き篭もったFirenzeの男女10人が10日間それぞれ一夜一話ずつ退屈しのぎの話をするという内容です。

Albert Camus著『ペスト(La Peste)』(1947年発行)は昨年も売れ行きが良かったそうだが、アルジェリア・オラン市をペストが襲い、苦境の中、団結する民衆を描き、無慈悲な運命と人間の関係性から問題提起しています。こちらはペストの事を述べているが、ナチスドイツ占領下のヨーロッパでの出来事の暗喩であると位置づけられます。

ペスト菌の発見は1894年。ここで初めて何が原因か解明されました。少し遡りますが、日本では、1735年に天然痘が流行。それから、開拓した田畑は自分の物になるという墾田永年私財法が1743年に出来た。その後祈願をする意味で東大寺創建・盧遮那仏が建立された。その後、朝鮮出兵(文禄の役1592-93年・慶長の役1597-98年)で梅毒が日本にもたらされた。1822年にオランダ商人が清(中国)を経由し、長崎に。長崎を経由し西日本にコレラが蔓延しました。また1858年に、ペリー艦隊が江戸に来た際コレラをもたらし、この影響で歌川広重や本因坊秀策等が亡くなっている。20世紀最初のパンデミックは第一次世界大戦に関わって1918年から1920年頃にスペイン風邪がたいへん流行しました。ペストの大流行は14世紀ですが、2500万人から7500万人が亡くなったと推定されており、世界最大のパンデミックでした。現在の新型コロナウイルスは世界死者数285万人、感染者数1億3000万人、国内死者数1万人弱、感染者数49万人です。こちらは原因が分かっているが、まだ対処法(ワクチン)がどれだけいきわたるかによって収まるかどうかにかかってくるかもしれません。

 新型コロナウイルスの感染拡大以前より、『Open Source Investigator』(Digital Hunter)という動きがあります。これは公開情報から全てを暴き出すジャーナリズムです。例えばウクライナの航空機撃墜、マレーシアの航空機撃墜の際、Digital Hunterと呼ばれる人たちが、どこが撃墜したのかという情報を暴き出していきました。Blue Dot(カナダ)やジョンズ・ホプキンス大学の大学院生Ensheng Dong、Bellingcat,NYT visual investigation teamなどが有名です。

 世界保健機構(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)に先駆けてCOVID-19の集団感染を予測したカナダの健康モニタリングプラットフォーム「Blue Dot」は、同システムAIによる機械学習を用いて65カ国の報道や航空会社のデータ、動物疾病の発生報告を分析し、2019年12月末時点でコロナウイルスの感染拡大を警告しています。これらはStart-upや機関に属さない個人が大きな成果を挙げていると言えます。

S&Pグローバル1200指数の変化もマクロ的な意味で見て取れます。2020年頃の落ち込みが見られますが、最近ではこれを上回って成長している様子が見て取れます。IMF世界経済の見通しでは、GDPが日本は昨年が-5.1%、今年は3.1%に対し、アメリカは昨年が-3.5%、今年5.1%、中国は昨年が2.3%、今年は8.1%の成長が見込まれています。日本はまだ昨年を取り返せない状況で2年がかりで経済を取り返す予測がされています。

地域でも様々な予測がされており、愛知中小企業家同友会の景況調査が定期的に行われています。現在では1117社が回答していますが、1994年よりデータがあり、会員企業の業況判断の歴史が示されています。

コロナ禍の状況としては前年度との売り上げ比で製造業の中小企業の落ち込みが著しく見て取れます。ただしこの中でも70%以上など一部売り上げを伸ばしている企業がある事も事実です。新分野への展開や事業転換の取り組みの実施についても5分の1から4分の1の会社が取り組んでいますが、こちらは経済産業省が「事業再構築補助金」として予算額1兆円規模と今までにない予算規模の補助金があったことが影響しています。

この地方の取り組みの一つとして、株式会社ドングルズのオンラインロボット工作教室を紹介します。元は名古屋市や岐阜市、横浜市、仙台市などで、行政や企業から助成金や補助金を得て、リアルで教室を開催していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いリアルな活動を行うことができなくなり、昨年前半よりオンライン開催をしています。面白い事に企画実施場所は名古屋ですが、参加者は名古屋市内だけでなく仙台市や岐阜、横浜の子どもたちも参加しています。教師も非常に熱心に指導に当たり企画終了後にはくたくたになるほどリアル開催とは異なるたいへんな様子が受けて取れました。

また別の事例として、オペラ歌手の取り組みを紹介します。以前はドイツで活動していた川村典子さんという方がこれまでのスキルを活かし、スイス式発声法の一般社団法人Supraleitung Methode Japanを作りつつある中コロナが発生。コロナを機会にオンラインの国際コンクール(第一回バーゼル国際声楽コンクール)を企画。リアル開催ですと、専門家謝金や会場の用意が必要ですが、オンラインでは低コストで開催できます。現在1次審査が終わり2次審査に入っているところです。

COVID-19下の様々な変化、ポストCOVID-19期に想定される変化としては、安定調達の重要性、国内生産への回帰と新たな意味でのローカライゼーションが注目されるでしょう。そして非対面でのウェイトの高まり、製造・物流・販売・医療・教育等様々な領域で無人、タッチレス、ウイルスフリー、キャッシュレスが進展するでしょう。系列病院間での遠隔医療の取り組みも行われています。それから政府機関の変容(関与の有り方)、安心・安全を提供する役割があらためて認識されたものの、機能不全や非効率も露呈してきています。またビジネスやライフスタイルの変容も注目される事です。顕在化した無駄な業務の廃止、リモートあるいはテレワークの常態化を含めたような働き方が浸透してきています。新しい働き方の認識と受容という事でリモートワーク、テレワークなど非対面作業の増大によるコミュニティ、パラレルワークの浸透、関連してデジタルリテラシーの改善が行われてきています。

健康意識、安心・安全に対する感度向上してきています。健康関連食品や生成関連商品への関心、セキュリティへの関心の高まりがあります。環境意識への高まりもあり、SDGs、地産地消、再生可能エネルギーへの注目が高まってきている。ローカルアイデンティティの気づき、地域への回帰が起こっています。ローカルな価値の再認識、地域コミュニティへの帰属がこれから益々進むでしょう。これらは一気にこうなるという事ではなく重点がそこに移動するという意味です。

分散型社会、分散型(再生可能エネルギー)についてですが、在宅需要やテレワークで家庭電力消費が増大し、再生可能エネルギーへの関心が高まっています。地産地消型エネルギーシステム(DER)は省エネの推進や再エネの普及拡大、エネルギーシステムの強靭化に貢献する取り組みです。再生可能エネルギーの中で最もウェイトが高いのは太陽光発電になります。太陽光発電におけるPPA(Power Purchase Agreement)モデル、第三者が電力需要家の敷地や屋根等を借り受けて太陽光パネルを設置し、発電した電力を需要家に供給するモデルです。オリックスや中部電力、バローなどがありますが、数日前にオリックスが製造業の屋根に直接太陽光パネルを設置し電力会社を通さずに電力を供給するという動きも新聞に掲載されていました。それから農地の上に太陽光パネルを設置する営農発電、ソーラーシェアリングもこれから進んでいくであろうと思われます。

飯田哲也氏の論文(2020年)によると、2009年から2019年の10年間で風力発電は7割コストが下がり、太陽光発電のコストもほぼ10分の1になっています。そして今後10年ほどで数百兆円規模の化石燃料市場の崩壊が起きると言われています(Bond,Fulton氏論文2019年)。EV車も約2000台(2008年)から200万台(2018年)へと10年で1000倍に販売量が増えています(Internati9onnal Energy Agency 2019)。これに反比例してリチウムイオン電池のコストも4分の1に下がっています(Bucher et al.2018)。今後10年でガソリン車とディーゼル車は世界で一台も売れなくなるというスタンフォード大学の報告が紹介されています。

そうした中でこの地域では、千種区にあるトルネード型風力発電に時々ご一緒しているが、割りと小型の物の設置が増えていくのではないかと予測されます。日本では大型風力発電は全て撤退している。発電機の多くもデンマークやドイツ製です。

 マイクロツーリズムに少し触れます。『地球の歩き方(東京)』(2020年9月初版)は4万7000部も売れています。従来同シリーズは外国に行く為のものだったが、本書は東京都内や東京近郊の方が購入していると言われています。歴史的素材も様々有り、『江戸名所図会』は、江戸時代に読まれていたものが現代版として出版され読み直されています。同様のものが名古屋にも有り、『尾張名所図会』が過去ありましたが、こちらも現代版として出版されています。地域産業政策研究センター (監修)の『秘められた名古屋―訪ねてみたいこんな遺産』もなかなか面白い書籍です。

マイクロツーリズムの一つの取り組みとして「大ナゴヤツアーズ」というプロジェクトが行われています。(名古屋市から車で2時間県内の体験プログラムツアー)こちらは大ナゴヤ・ユニバーシティー・ネットワークという事でローカル・イニシアティブに相当するものです。一人でも参加可能で現地集合現地解散が前提。観光ツアーとして地域の隠された資源を組み合わせる事で成りなっています。

中小企業の取り組みとしてはエイベックス㈱があります。元はアイシン・エィ・ダブリュ株式会社(現株式会社アイシン)含むトランスミッション関係の部品を作っている会社です。アイシン系の商品は電気自動車が普及すれば殆ど売り上げがなくなる可能性があるとの危機感を持ち、ずいぶん前になるが女性従業員を名古屋工業大学大学院に入学させ「産業観光」をテーマに1年間学ばせ、インバウンド対象の工場見学事業『インバウンド』を立ち上げました。当時は年間収入500万円ほどの売り上げだったが、直近では3000万円の収入がありました。(※昨年度は収入なし)2008年より32か国から来訪、累計2万人以上を受け入れています。中国・韓国のみならず、ドイツ・イタリア・スリランカ・中東などからも来訪がありました。また製造業者の訪問だけではなくその他業種からの訪問もあります。こちらは第11回産業観光まちづくり大賞金賞を受賞、地域資源の価値を連携で高め、桑名・三重発信で「産業観光クラスター」を形成しています。

また桑名市内の様々な業種で桑名市産業観光まちづくり協会を編成。こちらのHPをエイベックス(株)が作成しています。製造業やサンジルシ、小学校など市内の様々な場所を回るツアーが行われている。

NPOの機能を振り返ってみると、1975年のThe Filer Commission Reportでは、1.新しいアイデアやプロセスを先駆けて実行に移す2.(陳腐化した公共部門の制作に対し)研究して公共政策を開発3.マイノリティやローカルな利害に眼が届かない対象に対して援助4.憲法上政府が供給し得ないサービスを供給(典型が宗教)5.政府を監視する6.市場を監視する7.公共部門と民間部門の官民パートナーシップを構築(例:地域の再開発、過疎地の振興など)8.対外援助を提供、政府がなしえない国際協力・国際交流(国交のない国など様々な国でNPO、NGOが行う活動)、9.市民参加や他者を重んずる生活態度を促進(利他的主義の態度を育成)、をNPOの機能としてFiler.H.Fは位置づけています。

ではこれを読み解き、能動型NPOの暫定的な要件と市民起業家について考えてみます。

1.使命が限定されており、特定のことに専門化し、それに関わることは何でもする、フレキシブルな構造を有する様々な連帯組織を織りなすネットワーク型組織、2.組織化手法の民主性、市民の自治能力を高める事によって、自分の目的を達成するという形の組織化、3.資金調達において事業活動を活用する(成長資金は自分が得る利益のみ)、利益が得られるということは、交換において相手の共感を引き出しているということ。NPOは当然受益者からお金が取れない場合、全額回収する事が難しい場合もあるが、「交換において相手の共感」というのはバックヤードにいる例えば行政や企業なども共感に当てはまる。4.専従スタッフの職業的力量・キャリアを育成する機関、ネットワーク・コーディネーションの力が試される。アメリカの昔のアンケートで、「何故NPOで働くのか」という問に対し、NPOの事をやりたいというよりそこで職業的力量を身につけたいという回答も多かったと聞いています。

いずれにしても営利と非営利の共鳴接近であり、営利企業はNPOから学び、NPOは営利企業から学ぶという事が成り立ちます。

「市民起業家」とは、社会変革に担い手であり、社会の課題を事業により解決する人のことです。社会問題を認識し、社会変革を起こす為に起業家的手法を採る、あるいは起業家精神を持った人たちと定義されています。社会の埋もれたリソース(人材・組織・技術等)を発見したり、異なるセクターや異分野を繋ぐインテグレーターでもあると考えられます。この人たちは会社を起こしている人に限らず、行政の中にいても良いし、大学の中や大企業の中にいても良いです。

まとめますと、COVID-19下、グローバリゼーションやデジタライゼーションの新時代には新たな制約条件が生成するが、それは新しい機会を意味します。営利部門、非営利部門、公益部門をつなぐ持続可能なビジネス・エコシステムを発展させること、その為に健全で有能なエージェント(ローカル・イニシアティブ)の育成が重要、この場合のエージェントは代理すると言うことだけでなく主体・イニシアティブであるという事も含みます。埋もれた資源(人材・組織・社会関係資本等)を発掘し、開発、支援する事が重要。イノベーションは弱いつながりから生まれること、草の根そして辺境から生まれることが多い、コミュニティの編成替え、座標軸をずらす(読み替える)ことも重要です。製造業なども観光の素材となりえます。あらためてプロシューマー(A.トフラーが1980年に言った言葉)の時代になっていると考えています。(エネルギーの地産地消、電気ユーザーが発電事業者など)

参考URL:

・大ナゴヤツアーズ https://dai-nagoyatours.jp/

・一般社団法人Supraleitung  Methode  Japan https://www.supraleitungmethodejapan.com/

・オンラインロボット教室の様子 http://humanware.or.jp/2020/06/27/%E3%83%89%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88%E5%B7%A5%E4%BD%9C%E6%95%99%E5%AE%A4%EF%BC%88%E3%82%B3%E3%83%B3/

2. グループセッションでの意見・感想等(ブレイクアウトセッション全5グループ)

●大森さん・中日新聞:プロシューマーとは何でしょうか?また企業とNPOが非常に影響・接近しているとのお話しだったが、最近若い起業家だと社会課題を掲げ起業している方もいるが、NPOとは何か先生のお考えを伺いたい。

⇒プロシューマーとは、生産する人と消費者が一緒になるという事です。生産する人が消費者でもある、地産地消もその一つかと思います。2番目のご質問は、NPOの形式で終わってしまうと出口がみえなくなる恐れがあると思います。NPOにもNPO法人や社会福祉法人や一般社団法人など色々な形があります。その組織にこだわりすぎるのではなく、それ以前に営利企業であっても社会貢献型の企業であったり、ヒューメイン(人道的な)という言葉が最近ありますが、これを企業がやる事もあります。どのような形をとるのが良いのか、場合によってはNPO法人がやりにくいという事もあるだろう。もっと良いやり方があるかもしれません。NPOの場合税金が免除されるという事はある。それでいくと信用金庫もNPOに分類できるが、某信用金庫を見てみると営利法人と殆ど替わらないと感じる事もある。その為、あまり組織の形態そのものにとらわれるのはどうかとも思います。

●濱野さん・日本福祉協議機構:海外の社会課題を解決するNPOは寄付金が潤沢な印象ですが、日本においてもその可能性はあるのか?その手段は創造できるのか、海外と日本の差は何か?

⇒アメリカ、ヨーロッパでも状況は異なりますが、非営利組織においてはアメリカが非常に先進的です。1889年にアンドリュー・カーネギーが『The Gospel of Wealth and Other Timely Essays』(和題:富の福音)という論文を書いており、1894年には寄付を免税するという法律が出来ています。

 日本はNPO基本法ができたのが1998年で100年の差があります。その間アメリカでは多くの財団が出来ているが、日本においては日本財団が大きいですが、それ以外の財団はとても小さいです。ストック経済が成り立っていない為助成金額も非常に小さいわけです。そんな中寄付という形態で運営していくのは、日本では難しいのではと個人的には感じます。「免税」とういう仕組みを使って日本で寄付を集める事は日本ではまだまだ難しいですし、財務省の主税局がそれに反対をしているとも聞いています。

●荻原さん・コーディネーター:「日本で寄付文化が育つか」という濱野さんのお話ですが、40年前に自身が市民運動を始めた際、日本には寄付文化はないだろうから事業型で収入を生まなければと考えていたが、始めてみて日本にも寄付文化は根付いていると感じています。お寺や神社のお祭りはそれで成り立っていると思います。ただNPOには残念ながらそれだけの期待がないだけではないでしょうか。小竹先生のおっしゃるストック経済の仕組みはあったほうが良いと感じますが、待ってもいられない。

⇒補足させていただくと、NPOに対する信用が蓄積されていないという社会背景があるかと思いますが、「人はどういう時に寄付をするのか」考えてみると、例えば大学も寄付で成り立っています。ハーバード大学は4兆円ほどの寄付財産をもっています。日本では数百億円程度でしょうか。以前大学の活性化を議論した事がありますが、産学連携等先端的な技術に寄付が集まるのではと議論をしていたところ、参加していた方より、「あなた自身が死ぬ時、何に寄付をしますか?」と問いかけられ、自分は大学への寄付でも先端的技術ではなく、大学図書館に寄付したいと思いました。このようにモチベーション・意識のマーケティングを上手くすれば変化を生む可能性もあると思います。意識の共同体・ネットワークを作っていく事も時間はかかるが必要ではないでしょうか。

●関口さん・フリージャーナリスト:今回、レベルが高いと感じる方と、内容が濃く学びが多かったという意見がでました。スライド資料で、製造業が厳しいというご説明がありましたが、印象として製造業がトヨタさん等のがんばりもあり持ち直しているような印象があるのですが、こちらの今後の見通し含む業種別の今後の見通しをお聞かせいただきたい。

⇒見通す事は非常に難しい。愛知中小企業家同友会のアンケート結果としてはお話ししたとおりということです。同友会はトヨタ系以外の企業も含む4000社ほどが入っており、トヨタ系以外の中小企業も多い。そのうち400社が製造業と聞いています。トヨタ系はほんの一部です。その他の中小企業はこの統計から見る限り恵まれていないのではないかと言う印象です。詳しい中身は事務局に聞いてみないと分からない点も多いため私が予測を述べる事はできません。

愛知中小企業家同友会のホームページでももっと詳しい統計を見ることができるので、ご参照下さい。

愛知中小企業家同友会の2月のデータhttps://www.douyukai.or.jp/dor/2021/03/dor-14354.html

3. 次回の予定

【おたがいさま会議 2021年4月のご案内】

■4/13(火)16-17時
『おたがいさま会議の1年をふりかえる』
スピーカー:おたがいさま会議コーディネーター・事務局

■4/27(火)15-17時 ※通常より1時間長く予定しています
『ポストコロナ時代の市民活動の戦略を探る おたがいさま会議ver.』
スピーカー:松原明氏(元・認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 代表理事)

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