第31回:コロナ禍における事業継続と社会貢献(コープあいち)
●日時:2021年2月2日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:31団体(運営8団体含む)
●参加人数:36名(運営スタッフ11名含む)
1. 2月テーマ「コロナ禍の企業とNPO」について
■企画説明/コーディネーター・関口
今月は、企業とNPOの関係をテーマに企画している(全3回)。第1・2弾ゲストは、誰もが知る企業の方々で、おたがいさま会議を通じて出会っている。企画の打ち合わせではそれぞれに悩み、模索されている状況が伝わってきた。NPOが企業を頼るような一方通行的な関係をイメージしがちだが、ここに限らず、企業とNPOが「おたがいさまの関係」を築いていく可能性を、今回の企画を通じて考えていきたい。第3弾は数十年来、NPO業界を取材し、新聞記者時代の大先輩でもある大森氏に、コロナ禍のNPOの動向とNPOおたがいさま会議をテーマにお話しいただく。
2. 課題提起「コロナ禍における事業継続と社会貢献」
■生活協同組合 コープあいち・稲川孝光氏
生活協同組合(以下、生協)は、一人ひとりがお金を出し合って組合員となり、商品の購入やサービスの利用、組合員が主人公となり運営することができる仕組み。コープあいちは2010年に名古屋勤労市民生協(めいきん生協)と東三河生協が合併して、現在に至る。会員51万6000人が利用。主な事業としては、宅配・店舗・夕食宅配、共済、生活サービス、モーニングコープなどを行っている。
【新型コロナウイルス対応(生協全体の取り組み)】
宅配事業では利用人数が大幅にアップし、物流の限界を超えて計画欠品や事前に案内のない欠品が発生した。店舗事業では、レジでの飛散防止シート設置や営業時間の短縮、分散しての来店を呼びかけた。福祉事業では、10の基本ケアの「換気をする」が有効に働いたものの、利用控えや新規相談が減少した。組合員活動では、人が集まる企画の中止や施設の貸出しを休止したため、自宅でできる取り組みを充実させた。
【課題と対策】
商品の欠品や抽選については、商品調達と物流の見直しが必要となった。利用を待機していただくこともあり、新車両の補充やコースの増設などの対策を取った。欠品商品の情報が見つからない・分かりにくいといった声も聞かれ、改善した。
組合員活動では、インターネットの積極的活用や自宅でできる取り組みの工夫など、ウィズコロナの中でどのように活動を広げていくかが課題となっている。職員の働き方についても、オンライン・テレワーク・フレックスタイム制など柔軟な働き方に移行しているが、物流や店舗などが主のため、対象となる職員は限られてしまう。
【コープ宅配】
以前は、共同購入(ご近所さんや職場などのグループで購入し、指定された場所にお届け)がほとんどだったが、現在は個別購入(個人宅の玄関先までお届け)が主流となっているため、宅配への期待が高まり、注文が最大で前年比150%越に急増。20~30代の利用が増えている。商品をセットする集品センターでも対応できる限界を超えたため、広報部局などからも応援に来てもらい対処する事態となった。欠品でお届けできなかったお詫びと現状報告の案内配布、問い合わせへの対応に追われたが、組合員から配達担当者への感謝や励ましの手紙が多数寄せられ、大変励みになった。
【店舗】
愛知県内の全18店舗で、利用者・職員の感染拡大防止対策として、レジでのソーシャルディスタンスや、営業時間の短縮、レジガードの設置、手袋着用でのレジ作業、釣り銭トレーの使用などに取り組んでいる。
【福祉】
感染防止対策を第一に事業継続が行えるよう取り組んだ。介護施設でのクラスター発生やステイホームなどから利用の控え、介護認定数の減少などもあり、利用者人数は減少傾向。一方で、現場の職員は一人ひとりの知恵と工夫を行いながら、利用者に感染させない・自らも感染しないという緊張と不安の中で業務にあたっている。利用者や地域の方々から、マスクの寄付やあたたかい言葉掛けが支えになっている。万が一のために、利用者サービスのトリアージを勧めている。コロナ禍だからこそ、困りごと等も把握できるよう利用者アンケートを実施し、昨年以上のご意見を頂いた。生協10の基本ケアは、利用者が自分でできることは自分で行う自立支援の考え方で、換気をする、床に足を付けて座る、トイレに座る、あたたかい食事をする、家庭浴に入るなどを重視し取り組んでいる。
【組合員活動での新型コロナウイルス対応】
組合員活動のうち、学習会や自主企画は休止し、組合員が集まり協議する定例会に限り開催している。活動ガイドラインを新たに作成し、定例会で提案があった学習会を組合員限定で行い、活動が途切れないよう心掛けた。オンラインで開催する定例会のガイドラインも作成。現在も子育てひろば(14箇所)、ふれあいひろば(15箇所)、子ども食堂(2か所)、各種学習会などの組合員による自主企画の休止が続いており、本来ならもっと幅広く取り組みたいところだが、辛い状況が続いている。
【上半期の取り組み】
お家で取り組めることとして、平和川柳・ぬりえを募集し、多数の応募をいただいた。ピース・アクションINヒロシマは、オンラインでパブリックビューイングを開催。食育の取り組みとして、おうちで食習慣チェックのチラシを作成し、723名に体験いただいた。同じ参加者を対象に変化を図るため、1-2月にも実施予定。
令和2年7月豪雨の災害支援募金を組合員向けに行い、1,700万円を義援金として被災された方へ届けた。コロナ禍の取り組みとして、赤い羽根共同募金の福祉活動応援キャンペーンへの参加、組合員から集めた不要な布マスクを福祉関係に寄付するなど行った。
【下半期の取り組み】
ユニセフの街頭募金は中止し、コープ宅配でお年玉募金を実施。NPO法人アイキャンに、書き損じはがき収集への協力を呼びかけ、今年は募金も行った。
【地域まちづくり】
3市(犬山市、日進市、田原市)と子育て支援に関わる協定を締結し、食育講座の実施や子育てに役立つ食品・日用品のプレゼントを行うなど、各市と連携して取り組んでいる。
豊明市と新型コロナウイルス感染症対策緊急生活支援事業に関する協定を締結(まごころサポート便)。
まごころサポート便は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、生活が困窮したと想定される約1000世帯へ食料品・日用品(約5000円分を2コースから選択)を月に1回お届けする取り組み。豊明市からの要請(費用は豊明市負担)を受け、受注から配達まで全てコープあいちで行う。豊明市社会福祉協議会とも連携し、生活に関わる情報発信などをフォローしている。
その他にも、配達中に高齢者等の異変に気付いた場合に行政等に通知する仕組みとして、地域見守り協定を35自治体と結んでいる。また、災害時における応急生活物資の供給に協力する災害支援協定を52自治体と結び、行政・地域の方々と一緒に防災訓練に取り組んでいる。
新型コロナウイルス感染予防に努め、事業継続を最優先に取り組んでいきたい。地域の一員として、まちづくりに貢献したいと考え、SDGsに関わる課題にも事業や組合員活動を通して取り組んでいる。今後も社会意義のあるコープあいちの取り組みを広げていきたい。
3. グループセッションでの意見・感想等(ブレイクアウトルーム:全6グループ)
・飲食店などは客足が遠のき、食品が余っている状況もある。コロナ禍で新たに仕入れた商品があれば教えてほしい。(コーディネーター・関口)
→新たな商品を仕入れることはなく、これまで扱ってきた商品をなるべく不足させないよう注意した。マスクなどの衛生用品の欠品は組合員にご迷惑をかけてしまった。(コープあいち・稲川氏)
→普段から膨大な量の商品を扱っているため、難しい部分かもしれないが、市場で余った商品を不足している人に届けるなど柔軟な仕組みがあると理想だと感じた。(コーディネーター・関口)
・子ども食堂や子育て広場に関わる組合員とは、どのような方々なのか。
→事前に登録した組合員5~6人が運営している。その費用や交通費などはコープあいちで補助している。(コープあいち・稲川氏)
・サービスのトリアージについて、詳しくお聞きしたい。
→部署が違うため詳しくお伝えできないが、コロナなどの状況によって、サービスが提供できないことがあるため、あらかじめ優先順位をつけておく方法。(コープあいち・稲川氏)
・多彩な活動で素晴らしい、これからも宅配が伸びるのではと感じた。
・運動性と経済性が両立していて、NPOが学ぶべき部分が多いと感じた。
・名古屋市の配食サービスは、手から手に直接届け、不在の時にはその方の家族に連絡する(倒れているかもしれないため)という取り組みがある。生協さんの見守りサービスではどのような対応をされているのか。
→生協の見守り協定は、玄関先にお届けすることが多い。過去の事例では、配達から1週間経っても荷物がそのままだったため、本人に声掛けをすると反応があった。それでも心配だったため、地域包括支援センターに繋ぐと、すでに把握されていたものの、福祉サービスを望んでいない方だった。だた今回の一件もあり、地域包括支援センターの訪問が行われている。
・様々な協定を締結されているが、生協、行政のどちらから働きかけているのか。
→災害協定は当初なかなか進まなかったが、徐々に広がっている印象。お互いの共通認識もあり、自然な流れで締結に至ることが多い。
・フードロスについての取り組みを聞いてみたい。
→セカンドハーベスト名古屋に寄付している。生協としてもフードドライブの取り組みを進めたり、
食品残渣を豚の飼育肥料にするなど、無駄にしないよう努めている。
・組合員の中で、コロナ禍で通常より支払いが遅れるなど、経済的に疲弊しているご家庭があれば、差し支えのない範囲で教えてほしい。また、別件で豊田市の農家の方々と話した際に、レストランなどに出荷している農家が相当な打撃を受けていることが分かった。生協で生産者に向けた対策があれば教えてほしい。(コーディネーター・萩原)
→相談センターを各所に設けており、事業継続や家庭、子どもの引きこもりなど、くらしの相談が寄せられ、各部署や専門家と連携し対応している。JAなどを通じ、膨大な出荷量に対応できる規模の農家との契約がほとんどで、一部では地場産の商品を取り入れている店もある。特に野菜は価格変動が激しく、不足する場合は全国の生協と調整するなどの対策を行っている。
4. 次回の予定
日時:2020年2月9日(火)16時00分~17時00分
テーマ:コロナ禍におけるトヨタ系企業の役割
ゲスト:
窪田博樹氏/トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部共生社会推進室共生グループ 主幹
鈴木治男氏/株式会社デンソー 総務部 ソーシャルリレーション室 社会貢献推進課
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