第30回:コロナ禍におけるモノの活用
●日時:2021年1月26日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:30団体(運営7団体含む)
●参加人数:37名(運営スタッフ12名含む)
1.災害とコロナ禍月間・第3弾
課題提起「コロナ禍におけるモノの活用」
●認定NPO法人レスキューストックヤード(RSY)・事務局長 浜田ゆう、事務局スタッフ 林大地
NPOおたがいさま会議では、のわみ相談所をはじめ様々な団体とのマッチングが生まれた。今回はそのまとめをご報告したい。
先におたがいさま会議開始以前の活動をご紹介する。2020年4月緊急事態宣言の発出を受け、災害用備蓄品として保管していたマスクやアルコール消毒液などを、RSY会員や福祉ニーズに対応している方、当事者、行政、医療機関、民間団体に緊急的にお届けした。具体的には、不織布マスク約40,000枚・N95マスク(医療用)約33,000枚・手指消毒ジェル約50本・除菌スプレー約40本・ペーパータオル約70個をお届けした。
おたがいさま会議が開始した当初は、会議に参加いただいた、のわみ相談所や徳林寺、ささしまサポートセンターへ対象者の生活状況や使い勝手などを踏まえて調整を行い、お届けした。企業から申し出のあった家電や防寒着なども繋ぐことができた。ささしまサポートセンターと調整する中では、物資の保管場所が限られていることから、週に1度の炊き出し健康相談で必要な分だけをお届けする方法を取った。特にタオルや新品の下着類は、洗濯環境がない野宿者の方々には消耗品になってしまうため、定期的に届ける必要がある。最近では、ボランティアが活動前に必要な物資を取りに来て、代わりに届けてくれるような関係性もできてきた。その後も、小幡緑地冒険遊び場の会 つなしょを通じて、外国人学生が通う専門学校に生理用品や文房具を届けたり、越冬支援では炊き出しの使い捨て容器や備蓄食、エアマットをお届けした。これまで述べ24か所に提供している。
普段、災害用備蓄品は、大口町にある倉庫で保管している。提供者から物資を預かる機能の他に、ボランティアの作業スペースにもなっている。この取り組みの基礎となるのが、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(通称:支援P)で、中央共同募金会・全国社会福祉協議会・経団連1%クラブ・NPOにより構成されており、2004年新潟県中越地震から活動している。当法人の栗田が幹事を務める。
「ひと・もの・資金」の3本柱で活動している。「ひと」は、被災地の災害ボランティアセンター(以下、災害VC)やその運営を行う社協をサポートする人材派遣。「もの」は、1%クラブ会員企業から寄せられた物資のパック化(うるうるパック)、災害VCで必要な備品調達。「資金」は、災害VCの運営資金や中長期的な被災地主体の復興プロジェクトに関わる費用サポートである。
うるうるパックは、生活に必要な日用品をパック化したもので、地元自治会や民生委員らが被災者のもとを訪問する際のコミュニケーションツールとして、活用されている。手土産を持っていくことで、玄関が開かれやすくなり、住民との会話のきっかけにもなる。中身は、食器用洗剤やタオルなどの日用品とメッセージカードを袋に詰めている。この日用品は、経団連1%クラブの会員企業から寄贈いただいたもの。企業との手続きを中央共同募金会が対応することで損金算入が可能になり、企業が寄贈しやすい仕組みになっている。メッセージカードには「どれだけの月日が経とうとも、被災されたみなさまのことを変わらず応援したい」という気持ちを込めて、地元社協と支援Pの連名でその都度作成している。RSYは、東日本大震災で仮設住宅への大規模移転が行われたことを機に、2014年度から受託している。当時は、岩手・宮城・福島県の21市町村に約21,000パックを、仮設住宅や在宅避難者訪問、サロン活動などで活用いただいた。現在までに延べ17道府県79市町村へ約5,100パックを送り出している。ここには、述べ1,200人ものボランティアが関わってくださっている。依頼した地元社協からは、支援が出来ていなかった在宅避難者への訪問のきっかけや、みなし仮設から新たに移転した住民の不信感を無くすことができたという声が聞かれた。受け取った被災者からは、発災から時間が経過しても気に掛けてくれることへの感謝や、前向きな気持ちになれたという声が聞かれた。
災害発生から1~3か月後に現地から依頼が入ることが多いが、今年度はコロナの影響により、令和2年7月豪雨で被災した熊本・山形県は、発災から4か月後に依頼があった。2019年の台風19号で被災した長野県からは、2020年1月に予定していた個別訪問がコロナ禍により、半年遅れの実施となるなど、復興途中にある被災地にも影響が表れている。なお企業からの寄贈は、今年度1社のみのため、これまでの災害で寄贈された物資で補っている状況。
令和2年7月豪雨では、RSYでもこれまで行ってきた被災地へのスタッフ派遣が難しくなっているため、熊本地震で出会った支援者を通じて「おたがいさまパック」を約435パックお届けした。避難所から仮設住宅に移転する時期に合わせた訪問や住まいの相談会などで活用いただいた。中身は、生活用品やエコバックなど、これまでの被災地で聞かれた「あったらよい物、役立った物」を盛り込んでいる。合わせて、第2弾の申込チラシも同封することで、名古屋と直接繋がるきっかけづくりになればと考えた。「被災地のために何かしたい」という方々の思いを形にする工夫として、必要な物資リストを掲載したチラシを作成し、募集を行った。企業だけでなく、個人の方からも多くご協力いただいた。なお、被災地への輸送費や現地から要望のあった暖房器具などの購入は、アイチョイスからの寄付を充てさせていただいた。
NPOおたがいさま会議でのマッチングは、物資の提供以外に、過去の会議に参加されたエスコーラ・ネクター(ブラジル人学校)がJICA中部による日本語教育支援の可能性も模索しており、今後も様々なマッチングが生まれてほしい。
2.グループセッションでの意見・感想等(ブレークアウトセッション:全6グループ)
・物資支援は部分的に聞いたことはあったが、全体像を聞くことで理解が深まった。
・おたがいさまパックは、被災者が本当に望むものを届けられたのか、実際に第2弾の申込も少なかったことから、見直す必要があるように感じた。
・社員で感染予防のビニールガウンを作成し、名古屋市社協やAJU自立の家にお渡ししたが、数が余っているため、活用してもらえるところがあれば教えてほしい。うるうるパックの送り先の選定基準(特に広域災害の場合)を知りたい。
・トヨタ自動車 社会貢献推進部共生社会推進室共生グループ主幹 窪田:コロナの影響で搬出した物資は、倉庫全体の保管数の何割程度か。これまで、災害時のみの対応だったのが、コロナが長期化していることにより、常時対応している状態。従来の仕組みを拡充することと、維持費との兼ね合いが難しいと感じた。
→レスキューストックヤード・栗田:感染予防ガウンは、備蓄用に是非いただきたい。送付先は改めてお知らせしたい。うるうるパックの送付先は、地元の社協が災害VCの運営を行う中で、様々なニーズを収集している。東日本大震災では、仮設住宅の他に在宅避難者への支援が行き届いていなかったことが分かり、その方々も含めた「みんなで復興まちづくりをしていきたい」とうるうるパックを活用いただいた。各市町村社協のお考えをもとに、対象者と数量を調整いただくことで、現地の事情に合わせた対応を行ってきた。
一方で、おたがいさまパックは熊本地震で繋がった地元支援者とこまめに相談し、顔の見える範囲の中でお渡しいただいている。あくまでも現地のニーズに応える形で送らないと、余りが出たり、扱いに困ってしまうため、配慮が必要。
コロナの影響で搬出した物資は、全体の2割程度。マスクや日用品など需要が高いものは少し残して、8割減となっている。年間で月に1回のペースで、物資の問い合わせをいただくため、ありがたくお受けしている。募集をかけ、物資を積極的に集める方法も考えられるが、コーディネートする人件費や維持費にも限りがあるため、状況を見ながら対応していきたい。
・支援側も物資支援に関するノウハウを学ぶ必要があり、おたがいさま会議などの場で勉強会ができたら、より被災者のニーズに沿った支援のあり方を考えていけるのではと思った。
・おたがいさまパックは、物を届けることも大切だが、人とのふれあいや繋がりをつくる活動は、NPOらしい良い取り組みだと思った。
・中日新聞・大森氏:うるうるパックなどを手渡しする活動は素晴らしいと感じたが、コロナ禍で被災者と触れ合うことが難しくなっている中でもできる取り組みはあるだろうか。
→レスキューストックヤード・栗田:うるうるパックは、地域の方が持っていくコミュニケーションツール。ご挨拶回りでも、なかなか玄関を開けられないお宅もあり、お土産が開けていただけるきっかけになることも少なくない。うるうるパックなどの外部支援は今後も続けるが、主体は地元であり、地元で触れ合い・支え合う方針はコロナ禍であっても変わりない。ただ、RSYが東日本大震災で支援を継続している七ヶ浜町の拠点では、マスク配布や住民参加型の川柳募集など少しでも関りが途絶えないような取り組みを行う中で、町民が感染を恐れるあまり回覧板を回すことも難しい時期があった。この2週間前には南相馬市で、コロナの影響により訪問員が訪問できなかったことで、孤独死が発見されている。リスクが高いのは、どちらなのか。スタッフでも協議を重ね、出来る範囲で、使い捨て手袋を着用し配布した。
・災害救援ボランティア(大口町)・川橋氏:大口町倉庫でうるうるパックの発送作業などお手伝いしている。今年はコロナの影響で活動が制限される中、被災地のために活動することができた。パック化は内職仕事がメインのため、今回のように送り先の被災された方々のお顔が見えると、私たちも喜びになり、双方向の繋がりを感じられるため、有難い。モチベーションの維持にもなっている。
・みどり災害ボランティアネットワーク・和多氏:被災地とコーディネートする中で苦労されていることがあれば聞きたい。
→名古屋市社協・野川氏:災害時には、全国社会福祉協議会の職員のブロック派遣が行われる。私も昨年度7月に栃木県に派遣された。災害VCの運営サポートがメインになっており、物資支援までは出来ていない状況。RSYなど被災地支援を行う団体の取り組みや募集情報を市内16区の社協やボランティアに広報する、後方支援が多い。
3. 情報提供
●「おたがいさま会議とよた」について/コーディネーター・萩原、豊田青年会議所・鈴木氏
先日、豊田青年会議所や豊田市、電力会社らと「おたがいさま会議とよた」を立ち上げた。豊田市では、SDGs国際会議が開催予定。その一枠で、おたがいさま会議とよたや、その生みの親であるNPOおたがいさま会議についても紹介予定。詳細は決まり次第、ご案内する。
SDGs国際会議 日時:3月6日(土)13:30~17:50 ※オンライン会議
詳細:https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1041303/1041483.html
●避難生活お役立ちサポートブックの改定について/レスキューストックヤード・浦野
改定版は2月中に公開予定。合わせて研修会を実施予定のため、ぜひご参加いただきたい。申込方法は、後日ご案内予定。
新型コロナウイルス感染症避難生活お役立ちサポートブック(第3版)研修会
日時:2021年3月7日(日)13:00~16:00 オンライン講座
4.2月企画「コロナ禍の企業とNPO」のご案内
開催日 | タイトル | ゲスト |
2月2日 | コロナ禍における事業継続と社会貢献 | 生活協同組合 コープあいち 稲川孝光氏 |
2月9日 | コロナ禍におけるトヨタ系企業の役割 | 株式会社デンソー 総務部 ソーシャルリレーション室 社会貢献推進課 鈴木治男氏 トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部共生社会推進室共生グループ主幹 窪田博樹氏 |
2月16日 | マスコミから見たコロナ禍のNPO | 中日新聞 大森雅弥氏 |
企画者:コーディネーター・フリージャーナリスト/関口
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