第29回:コロナ禍での避難所生活

会議レポート

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●日時:2021年1月19日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:31団体(運営9団体含む)
●参加人数:38名(運営スタッフ15名含む)

1.「新型コロナウイルス感染症拡大下での避難所生活」

■認定NPO法人レスキューストックヤード・常務理事 浦野愛

・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)「避難生活改善に関する専門委員会」は、過去の被災地で避難所運営を経験している6つの支援団体によって構成されている。RSYもそのメンバー。
・昨年5月に「新型コロナウイルス避難生活お役立ちサポートブック」を発行し、1月末に第3版を発行予定。本冊子の作成にあたり、感染症の専門家にも監修いただいている。
・コロナ禍では医療、看護、保健、福祉の専門職を含む外部支援が得られにくい。避難所の3密を避けるレイアウトの作り方、ライフラインの停止や物資不足でもできる衛生環境の整え方などを盛り込んでいる。
・コロナ禍では分散避難(避難所、ホテル、知人宅など)が大切になる。
・一方で、避難所への支援がさらに手薄になる懸念もあるため、従来型の避難所も環境を整えないといけない。コロナ以前の避難所は過密な状態。パーティションを立て、距離をとり、手指の消毒などが必要になる。
・小学校の体育館などが避難所になることが多く、不衛生でプライバシーが守られず、バリアフリー化されていないことが多い。コロナ以前から過酷な避難生活により心身の健康を害し、その後の生活再建に支障をきたす人も少なくない。
・高齢者の災害関連死が多い。障害や持病がある人ほど支援を求めず車中泊を選ぶことが多く、支援者側が避難先を把握しきれず、手遅れになるケースがある。避難所は行政職員や医療・福祉の専門職、他の避難者など多くの人の目が働くはずだが、亡くなる人が後を絶たない。周囲の人が気づき、対処できる人に繋ぐ「パイプ役」となり、早期に対処できることが望ましい。
・「避難所にいると何もやることがない」はどの避難所でも共通。トイレ・寝床・食事・衛生環境を整えるとともに、掃除・洗濯・調理・移動など、自分でできることは自分でやることで、「暮らしの感覚」を失わず、生きがいや活力を失わないようにする。
・環境を整えられる人、困ったときの相談先がわかる、連携先との調整ができる人の不足が課題
・こうした対策に加えて感染防止対策が必要。避難所にも、個人でマスクやスリッパ、体温計、アルコール消毒液かウエットティッシュ、レジ袋を持っていくことが大切。特にスリッパやレジ袋は感染防止にも有効。

・令和2年7月豪雨で被災した熊本県人吉市では、人吉スポーツパレスに835名が避難する事態となった。
・早期に段ボールベッド、マットやタオルケットが導入されるとともに、市役所で事前に避難所のコロナ対策について確認されていたためスムーズに受け入れができた。(検温、健康チェック、消毒など)
・福祉避難スペース(車いすユーザー)も設置された。
・換気は30分に1回を厚労省が推奨しているが、運営側の対応が難しく、1時間に1回行なっていた。炊き出しはすべて断った。業者に委託してパンや弁当を配達してもらった。
・複数の地区から避難していたため、避難者同士のコミュニティ形成が難しく、1日2回掃除の時間として避難者にモップ掛けや共用スペースの掃除を市役所職員からお願いした。
・避難所内にテレビを置き交流スペースを設けた。
・9月~12月の避難所運営は民間の警備会社に委託されていた。
・より小規模な避難所は外部からの支援が入らず、感染症対策も不十分であった。

★時期を見ながら避難者が自ら運営に参加できるようにするためのサポートが必要。
★感染症を事前に学んで対策しておくことで、避難所運営の初動に違いが出る。
★避難所は生活再建までの中継地点。住まいの情報提供や安心して相談できる場所が必要。
★感染予防とコミュニケーションの促進の両方が必要。

・ボランティアにはPCR検査や毎日の検温、健康チェックをしてもらった。人数を制限し、なるべく同じ人が出入りするようルール化した。
・避難所は土足禁止を基本とすることで、コロナ以外の感染症予防にもなる。
・ペットは被災地によって様々だが、ケージに入れたり、スペースを分けて同伴希望世帯をまとめたりした避難所もある。
・外部からの支援が入りづらいので、地元ボランティアが力を発揮できることが大切。
・問診表のような健康チェックリストを作り、受け入れ時に活用する。(お役立ちブックの中にもフォーマットあり)
・初期はパーティションなどがそろわないことも。あるもので代用する、人同士の距離をとれるレイアウトにする等の工夫が必要。

2.グループセッションでの意見・感想等(ブレークアウトセッション:全7グループ)

・清流の国ぎふ女性防災士会・伊藤氏:コロナ感染者でも無症状の方は自宅待機の方が多い。発災したら避難所ではどう受け入れたらよいのか。→浦野:熊本では避難所にはほとんど感染者、症状のある方は来なかった。南海トラフクラスの大規模災害となるとそうはいかないので、対策が必要とは思う。

・市民がつくる災害に強いまちづくりの集い・瀧川氏:コロナに関しては感染防止の知識があれば避難所ですべきことも見えてくると思う。避難所では手上げ方式で環境整備などしていけるといい。

・コーディネーター・土井:健康チェックリストはRSYさんが作ったもの?→浦野:厚生労働省の書式を参考に独自に作ったもの。高浜市では採用されている。)外国人向けに多言語化ができるとよい。

・コーディネーター・関口:受付での対応が重要。誰が、どう担うかをパターン化できれば。炊き出しを断るよりも、地元のお店や業者さんが提供してもいいのでは。→浦野:食中毒のリスクもあり、熊本では大変難しかった。行政もリスクをおそれてできないのでは)サポートブックの動画版を作っている。

・つなぐ子ども未来・小塚氏:愛知県の避難所マニュアルにも受け入れチェックリストがある。29ページにある。

・コーディネーター・根岸:児童館ではパーティションを借りて避難所にした場合のシミュレーションをしている。

・中日新聞・大森氏:分散避難のための避難所は足りていないのか?行政としてはどう考えているのだろう?→コーディネーター・栗田:行政も協定締結している企業などに避難所として社有スペースを使えないかと打診したが、よい返事をもらえたところはほとんどなかったようだ。仮にスペースはあっても、コロナ禍の受け入れには不安があるため、理解が進んでいないようだ。

3. おたがいさま会議@豊田について

・コーディネーター・萩原
おたがいさま会議@豊田を1/18に開催した。豊田市のJCのメンバー、豊田市役所の職員3名などが参加した。「おたがいさま」という感覚(経営者が多いので「助ける側」という意識が大きい)がまだ共有できていないが、時間をかけてやっていきたい。

4. 次回の予定

【災害とコロナ禍月間・第3弾】
日時:2021年1月26日(火)16時00分~17時00分
テーマ:コロナ禍にも役立つモノの活用
/認定NPO法人レスキューストックヤード・事務局長 浜田ゆう、事務局スタッフ 林大地

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