第27回:貧困問題に参加する、貧困を生み出さないために
●日時:2020年12月22日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:23団体(運営7団体含む)
●参加人数:25名(運営スタッフ12名含む)
1.「貧困を考える月間」第3弾情報提供
今回は、ささしまサポートセンターの活動に参加したNPOおたがいさま会議コアメンバーや事務局から、当日の様子や感想を共有し、貧困問題について意見交換する。
■体験談①/レスキューストックヤード・浜田
ささしまサポートセンターが毎週木曜に若宮大通高架下で実施しているホームレス状態の方への炊き出し相談支援に2回参加した。8月は足のトラブルを抱えている方が多かった印象。11月は着込んでいて肌は見せず、相談内容も見えにくかったが、ぼそぼそと相談していた様子から、心の問題が多かったのではと感じた。相談しているのは同じ人が多いようで、社会との関わりが難しい中でも、炊き出し会場に来て相談できる人が来ている様子。そのため、ベテランスタッフは初参加の人に対して積極的に声掛けしていたことが印象的であった。また、このような支援情報をキャッチできずに来られない人も多いのではとも感じた。ささしまサポートセンターの他に、路上生活者へ炊出し配布をしている東岡牧さんの活動にも同行したが、そちらは炊き出し会場に来られる状況ではない行動範囲の方々であった。炊き出しに来られる人は、コンタクトが途切れずにサポートできる可能性が高い人という印象を持った。
■体験談②/コーディネーター・小池
12月10日、炊き出しに来た人へヒアリングする活動に同行した。全120人程度の参加者のうち、10人程度の方からヒアリングシートを使って健康や住居、仕事、福祉サービス利用手続きの進捗状況、年末年始の過ごし方などを伺っていた。炊き出し参加者は、ホームレスもいれば、アパート住まいの人、障がい者、外国人、30代~70代くらいまで様々であるが、見事に男性ばかり。驚いたのが、家族から失踪届を出されて戸籍を失っている70才くらいの男性から聞いた話。失踪取消をしないと公共サービスを受けることができないため戸籍を回復したいが、そのためには住所が必要とのこと。しかし住所は公共サービスにアクセスしないともらえない。そのような非常に大変な状況を相談窓口の方々が数ヶ月かけてフォローアップし、様々なリソースにつなげて経過観察しながら応援されている。特別給付金をもらうにも今はマイナンバーが必要なようで、カード発行には住所が必要。住所がとれたら苦労はしない。何とか臨時の住所をとって、申請するための条件を回復して公的サービスを受けられるようにする支援もしていた。税理士や医師など、様々な方がボランティアスタッフとして参加しており、ヒアリングケースを最後に共有して活動終了となった。今後よりしんどい時期になるという話があり、特例貸付が終わってしまうのか、ホームレスにならないための支援が手薄になってしまわないかとの心配がある。
〇名古屋市社協・野川氏
特例貸付は昨年度3月から始まって延長を繰り返しており、来年3月までは延長が決まっている。最初に上限20万円の緊急小口を借りた後、総合支援基金に切り替えて3ヶ月借りることができる。更に生活が厳しい人は延長してもう3ヶ月借りられる。全て合わせると7ヶ月借りられるが、再延長はできない。最後まで借り続けた方に対する次の支援はないのかという問合せももらっている。また、コロナ第3波で厳しくなってきた人も増えていると思う。中区や中村区などの都市部では貸付申込がじわじわ増えてきている。
■体験談③/レスキューストックヤード・吉林
8月にささしまサポートセンターの健康相談に参加。お届け物資の衣類を持って行ったところ、あっという間に列ができ、一人ずつサイズを聞いて渡していった。サイズがわからないという人には、衣類を背中に合わせてサイズ確認した。初参加で緊張したが、集合場所や困りごとは先輩ボランティアに相談するなど、ボランティア向けに対応方法が記載された資料を事前いただいていたため、気負わず安心して参加できた。参加者は何日も衣類を替えていない人がいる一方で、身なりもしっかりしていて生活に困っているのかどうかわからない人もいて、見た目だけではわからないと感じた。生活保護を受けている人から、生活保護も受けられず路上生活されている人も来ており、様々な人が参加している。ボランティアからは、本当に必要な人に届けられているか不安があるという声があった。
■話題提供/自分たちが貧困を「生み出さない」ために、日々の生活や仕事、NPO活動で何ができるか(コーディネーター・石黒)
ささしまサポートセンターは、炊き出し会場の隅をかりて毎週相談活動をしている。相談に来た方に聞くことを書いたリストも作成し、誰でも相談を受けられるようにしている。社会保険労務士などもいて、住所の回復や障害年金受給に関するアドバイスもしてくれる。学生や医師のボランティアも毎週参加。炊き出し会場に来てもらう活動以外に、野宿者を訪れる巡回相談も実施。食料品などの物資を渡しつつ当事者と話したり話さなかったり。住所がないと非常に大変で、就職もできないし、生活保護や給付金の申請も困難となる。住所を持つためにアパートに入るにも、新規契約するには現住所が必要となる。住所をなくすと本当に厄介であるため、生活に困った時には住所をなくす前に相談に行った方が絶対にいい。
以前はボランティアが来ても定着しないという課題があり、名古屋市社協の助成金でボランティアマニュアルを作成した。相談対応等でスタッフが忙しく、新人ボランティアに構えないことがあるが、ボランティアマニュアルがあることで何をしたらいいかわかる。一時期は一人も炊き出し相談に行ける人がいないこともあったが、マニュアルを作成してからはボランティアが増え、今は常時10人程度来るようになった。ボランティア不足で悩んでいる団体は、マニュアルづくりをお勧めする。
相談会は、ボランティアが少なくても、コロナ禍であっても、何があっても毎週木曜に実施することをモットーとしている。相談に来ることは大変で、毎週来られる人ばかりではない。意を決して来る方もいるため、その人が相談しようと思った気持ちやチャンスを逃さないためにも、毎週実施しているという信頼が大切。炊き出しに来られる人はいい方である。皆さんは炊き出しのご飯を食べたことがあるでしょうか。自分のお腹が減った時に炊き出しに行こうと思うでしょうか。炊き出しに行くのは皆ができることではない。長い列に並ぶし、人の目も気になる、ご飯も大丈夫か不安があるなど、来るのが難しい人もいる。来られない野宿者への巡回相談も実施したり、サポートセンター事務所でも週2~3回の相談機会をつくっている。巡回相談ではボランティアが近づくと話しかけて欲しくないと離れてしまう人もいて、相談できる人ばかりではない。子ども食堂が流行っているが、炊き出しは元々大人食堂。ご飯を食べる場であり、毎週来ている人にとっては友だちに会える場、ボランティアの交流の場でもある。炊き出しに並ぶ人への整理券配りに協力してくれる野宿者もいて、活躍の場にもなっている。以前はギターを弾いて歌ったり、床屋をするボランティアなどもいた。
〇私が貧困問題に興味を持ったきっかけ
貧困問題に興味をもったのは、名古屋駅でビッグイシューを売るホームレスを見たことがきっかけである。ビッグイシュー販売は、ホームレスの人がアパートなどに入れるように、雑誌を売る仕事を与えて収入を得てもらうイギリスで始まった支援活動。世界で実施されており、本の内容も面白い。ホームレスは最初の10冊は無料で本を受け取れるが、その後は一冊220円で仕入れて450円で販売するため、230円がその人の利益になる仕組み。ビックイシュー販売は「私はホームレスです」と言って街頭に立つような仕事であるが、一冊ずつ地道に本を売って生きていく姿がすごいと思った。ビックイシューを販売しても大きな売り上げにはならないが、アパートに入れるようになる。それは、客と仲良くなっていくことで、客が良心的な大家を探してくれたり、布団やタンスをくれたりなどしてくれるようになるから。人とつながって幸せになる人もいる。一方で、学歴やお金、社会的地位のある人がちょっとしたことで自ら命を絶つこともある。その違いは何であるか。ホームレスに学ぶことがあるのではないかと考えた。東日本大震災が起きた時、避難所に最後まで残っている人はお金や頼れる人もなく、ホームレスが増えるのではと危惧した。また、明日津波が来るとしても当時勤めていたIT会社の仕事をしたいかと考えた時、そうではないと思い、会社を辞めて福祉の勉強をしながら貧困問題等に関わる仕事に就いた。
溺れる赤ん坊の寓話を紹介する。あなたは、川で流されている赤ん坊を発見したらどうするか。川に飛び込んで助けると思うが、助けたと思ったらまた何人も赤ん坊が流されてくる。必死に助けていくが上流を見ると、赤ん坊を川に投げ込んでいる人がいることに気づく。では、赤ん坊を川に落としているのは誰なのか。その問題を作り出す構造を考える必要がある。貧困問題も支援団体はたくさんあるが、それは溺れる赤ん坊を助ける活動で、どんなに頑張って支援しても切りがない。お金や住所、戸籍もなく、障がい等もある方がアパートにやっと入れたと安心したら、また同じような人が現れる。どうしたらいいのか。IT会社員時代は、顧客からの要望に応えるためにコストカットで派遣の人を切ったり、激務によりうつ病になって辞める同僚もいた。ホームレス支援をしている一方でホームレスを作りだしていると感じ、赤ん坊を川に落としているのは、自分だと思った。貧困は人災であり、ある程度は人の力で何とかすることができるはず。社会課題解決のためにNPOをしていると言われるが、自分こそが社会課題を生み出していて、自分課題の解決のためにやっているという意識がある。これからの福祉に求められることとして、まず政策策定や教育など元々川に落とさないようにすることが大切。人間は間違うし、社会の仕組みからこぼれ落ちる人もいるため、落ちてしまった時のセーフティネットづくりも大切である。それでも川に流される人はいるため、流された人をみんなで助ける仕組みづくりも必要。ささしまサポートセンターやオアシスだけだと大変であるため、ネットワークを形成したり、支援者の援助技術の向上や、川に落ちた人から発信できるようにするといった権利を侵害しないようにすることも大切だと思う。
私はフリーライターとして、貧困や福祉、医療に関する広報や記事を書いて伝えることを本業にしている。障がい者や高齢者、子どもなど福祉分野の問題には、世間の偏見があると感じる。老人ホームが足りない、このままでは介護は崩壊するといった人の不安を煽ったり、こんな政治はおかしいなどと怒りを前面にして社会問題を告発するかたちで書かれることがある。一方で、障がいがあってもこんなにひたむきに生きているといった美談として書かれる場合も。しかしそれではいつまで経っても他人事で、貧困や福祉課題を身近に思っていない人の方が多いと感じる。ライターとしてどう伝えるか迷っている。どんな情報があれば川に落とさない、または安心して川に落ちる社会をつくっていくことができるか。貧困を新たに生み出さないために、何ができるかを皆さんと一緒に考えたい。
2.グループセッションでの意見・感想等
(ブレークアウトセッション:全8グループ)
〇自分も含め世間の無関心が問題。SDGsに貧困をなくそうという項目もあり、認知度があがるとよい。ネットで間違った情報を入手する場合もあり、正しい情報を上手に伝えることの難しさも感じる。
〇制度が利用できる人は、制度につなげるために弁護士や医療系の専門家の支援が必要。その人が安心していられる場、尊重される場を作ることは、NPOやボランティアも手を出せるのでは。炊き出しの活動は、食事提供だけでなく、相談できたり、役割ができたり、交流を生んだりなど、様々なことができる。もっと何かできるのではと感じた。心の寂しさや友だちが欲しいという声に行政が動くことは難しいため、市民の力でやれるといい。
3.その他・情報提供等
■名古屋市社協・野川氏
〇「地域の困りごと解決応援助成事業」申請団体募集
地域の困りごと解決のため、3年間で30万円が使える助成金。住民の福祉ニーズに関わる活動で、3年間かけて行う活動が条件。募集期間は1月6日~20日まで。詳しくは社協ホームページ<リンク>を要確認。
■ボランティア オアシス・山田氏
〇オアシス炊き出し
12/22がオアシス今年最後の活動。個人の方からフライドチキン150個の提供があった。お肉を一人一個配れることは滅多になく、本当にありがたい。その後の年末年始は越冬活動に切り替わる。
〇越冬活動年末年始は日雇労働がなくなり役場も閉まり行き場がなくなるため、毎年、名古屋市内のホームレス支援団体が集まり一つの拠点をつくって活動している。今回は12/28~1/3まで中区の大津橋小園にテントを立てて、炊き出しや夜回り活動をする予定。例年だと賑やかに活動している。今回はコロナ禍でどうするか悩んだが、越冬活動がなくなると食事できない期間が長くなってしまうため、規模縮小で実施。生きるための活動であり、年末年始を楽しく過ごす場でもある。お米などを支援いただけると喜ばれると思う。
4.次回の予定
【災害月間 第1弾】2021年1月12日(火)16時00分~17時00分
■テーマ:コロナ禍における被災地支援~令和2年7月豪雨
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