第26回:貧困を考える月間② 豊橋サマリヤ会

会議レポート

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●日時:2020年12月15日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:26団体(運営8団体含む)
●参加人数:31名(運営スタッフ13名含む)

1.「貧困を考える月間」第2弾情報提供

■ゲスト紹介/コーディネーター・石黒

 先週のオアシスも全員ボランティアという団体だったが、今回の豊橋サマリア会さんも長くボランティアで活動している団体。三河を拠点にしているので地域的なことも聞いていただければと思う。

■豊橋サマリヤ会/代表・高島史弘氏

○活動のきっかけ

 活動のきっかけは1999年。私は豊橋に住んでいたが、出身地の岡山県にいるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者だった友人を訪ねに行く機会があった。その帰り、急に乗っていた電車が止まった。車掌から「あなたの座席の下にご遺体があり、車両を傾けないといけないので席を移動してほしい」と言われた。そのため岡山駅からの夜行バスに乗り遅れ、夜行列車で名古屋まで帰った。しかし豊橋までの電車がない時間帯だったので、名古屋駅の構内で過ごしていたらホームレスの人がいるのに気づき、声を掛けた。世間話をしていたら、その人が「自分は何のために生きているのか。もう死にたい」と言った。そのとき、前日の人身事故が重なり、天からの使命みたいなものを感じた。私はクリスチャンなので聖書の一節を引用して「あなたは大切な人ですよ。生きている価値はありますよ」と語り掛けた。それが私たちの働きの原点。

 その後、豊橋でキリスト教の布教のためのチラシを配っていると、3人のホームレスが手伝ってくれた。それから一緒に食事をしたり、服をあげたり、一緒にハローワークに行ったりするなどのつながりが始まった。週1、2回そうしたことをしているうち、2003年にホームレスの人たちと一緒に「サマリア会」という会を作った。名称は聖書で強盗に襲われた人を助ける良きサマリア人からとった。

○リーマン・ショック時の状況

 当時はホームレスが生活保護を申請しても、行政が受け付けてくれなかった。そこで、私たちでも住む場所を用意しようと、草刈りのボランティアに行った畑の傍らにある廃屋の一つを借りることができ、そこをホームレスたちの「家」として、一緒に住みながらの自立支援が始まった。生活保護をまったく取っていない人を支援する団体は愛知県内でも珍しかったようだ。

 2009年ごろはリーマン・ショックでホームレスが増え、私たちが支援する人たちも10名が20数名になった。そうした中で名古屋のささしま共生会に相談して弁護士の無料相談などにも参加し、豊橋でも「派遣村一日相談会」を開いた。それ以降、弁護士や司法書士とのつながりができたので、私たちの「家」を住所に設定するという形で初めて生活保護申請がとれた。それから各地の相談会などに協力し、オアシスの仲間たちとは「全国寄せ場交流会」でつながりができて、応援してもらっている。何か困ったら「反貧困ネットワークあいち」でつながっている弁護士に相談したり、「東海生活保護利用支援ネットワーク」に連絡したりしている。

○現在の活動とコロナ禍の影響

 炊き出しは少人数ながら毎日、20食分を用意する。食材はセカンドハーベスト名古屋に毎週1回、今はコロナ禍で2週に1回になっているが、豊橋から取りに行っている。豊橋でも東三河フードバンクが立ち上がったので、そちらにも2週に1回、食料を提供してもらっている。あとは、アパートに入れるように生活保護申請を支援したり、アパートに入った人のフォローをしたりするのが現在の活動。定期的にボランティアとして関わってくれている方は、月曜と水曜に弁当作りをしてくれる人、2週間に1回お菓子を持ってきてくる人など。他に教会の人たちが十数名、不定期に協力してくれている。

 コロナ後は、市民センターでしていた夜のカレーの振る舞いをやめた。室内で直接よそうような形だったので、高齢のボランティアを守らなければと気をつけなければならなくなった。また、「福音喫茶」も食事を出していたので、やめることになった。毎朝の炊き出しは屋外なので、マスクに手指消毒、ビニールの手袋をして弁当を配る形で続けている。ニーズは確実に増えていて、ホームレスだけなく、失業して自殺したいという人たちにも支援物資を届けて話を聞いている。派遣村のときとは、大規模集会や対面の相談を慎重にやらざるを得ないことが違う。

 今必要なのは、お金は後払いでいいと言ってくれる不動産屋や大家さん。さらに伴走型支援の研修や養成講座などを段取りしてもらえる人がいて、支援者や活動家を育てていければありがたい。市民後見人制度がうまく発展して、民生委員などと結びつけば、新たな支えになっていくかもしれない。

2.意見交換タイム~自分たちに出来る事を考える~

■各グループで何ができるかをグループで検討(ブレークアウトセッション。全6グループ)

○コーディネーター・石黒:毎日炊き出しをしているのは他がマネをできない活動。ホームレスの人たちが与えられるだけでなく、活躍の場にもなることを目指しているのがすてきだなと思った。

○コーディネーター・萩原:リーマン、東日本と比較してコロナでの急増の仕方や、支援のやりにくさは。

○豊橋サマリア会・高島:本当に残念だが、コロナでボランティア活動が抑制されている。自殺防止の団体も、電車利用を控えるなどの制約でボランティアが十分できていない。私のような責任者も、ボランティアにリスクがあってもやってくれとは言いづらい。

○名古屋市社会福祉協議会・野川:生活保護の窓口で断られることが多かったというが、名古屋では以前よりは厳しくなくなり、同伴者がいれば突き返されることはないという話もある。今の豊橋の状況は。

○豊橋サマリア会・高島:生活保護の窓口は市町村によって対応が違う。豊橋は、派遣村相談会の後は敷居が低くなった。しかし、それから10年が経ってまた引き締めが強くなっている。私たちのような支援者が伴走していけば、割とスムーズに行く。しかし、申請も相談から書類を書いて出すのに3、4時間は付き合わなければならない。それをやれる人がいるかは課題。自立支援法もあるが、最近は一時保護もなかなかしてもらえず、まず就労支援の方に回されてしまう。東京での仕事を斡旋された人が続かず、また豊橋に戻ってきて炊き出しを受けていたというケースもある。

○レスキューストックヤード・浜田:仕事はあるけれど生活が成り立たないという話があったが、どういう状況か。

○豊橋サマリア会・高島:それは金銭管理ができないケース。年金をもらっても消費行動に問題があり、お金を使い過ぎてしまう。成年後見人に近い自立支援が必要な人がある程度いる。

○愛知工業大学・久島:依存症の人というと男性をイメージしてしまうが、実際は。

○豊橋サマリア会・高島:今は女性もいる。実際は依存症だけでなく複合的な課題を抱えている人もいる。我々の支援を受け付けない人や、話の通じない人は女性でもいる。しかし傾向としては男性が多く、家庭が壊れて、孤立している人が多い。ホームレスになる前の生活状態の課題を抱えているので、生活をコントロールできない。

■ゲストから一言

豊橋サマリア会・高島:とてもいい機会を与えていただいた。本当に小さくやっているので、できていないことが多いが、こういう場所に参加させていただいて私自身もいろんな情報を得られた。SDGsを意識していて、そういう企業とのつながりもできたらいい。ホームレスになる前の段階で失業するような人が支えられるような「おたがいさま」があればいいと思った。

3.情報共有・次回の予定

情報共有

コーディネーター・萩原:金城学院大の非常勤講師で働くことをテーマに講義している。その中で40人ほどの学生に対して学生版のおたがいさま会議のようなことをやってきた。まず就活、キャンパスライフ、生活の変化についてアンケートを取り、学生間で話し合った。大学も越えてみたいという要望があったので、愛知淑徳大CCCの秋田さん、こどもNPOのインターンの学生たちも交えて12月5日に「コロナ就活最前線、コロナ時代の就活デザイン」というテーマで開催した。

 私自身はNPOで弱者に寄り添うというより、一般の人たちを対象にする活動だったので、コロナでライフラインの上にいる人たちが落ちてくる境目を意識していた。

 もう一つ、地域的におたがいさま会議を開きたいと、豊田での開催を画策している。12月17日に豊田市主催のSDGsパートナー会議があり、企業が100社以上つながっている。そこで私がやっている三河の山里コミュニティパワーと豊田青年会議所との連名で「おたがいさま会議豊田」をつくりませんかという提案をすることになった。これがどうなるかはまた報告する。

コーディネーター・小池:前回のオアシスさんがホームページにパンフレットのデータを掲載された。A4サイズなので家のプリンターでも印刷できる。もし配架などされるならこちらから活用を。

オアシス・山田:先週、データ掲載の提案をいただいたので掲載した。私どもではマルチカラーペーパーに両面印刷で3つ折りにしてパンフレットらしい形にしているので、もしカラーペーパー版が必要ならお渡しに時間は掛かるがお声掛けを。もう1点、社協さんには先週、パンフレットの配架を呼び掛けていただいているが、まだ私の手元からは発送されていないのでもうしばらくお待ちを。

■次回の予定
2020年12月22日(火)16時00分~17時00分

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