第25回:貧困を考える月間① ボランティア オアシス
●日時:2020年12月8日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:28団体(運営8団体含む)
●参加人数:34名(運営スタッフ13名含む)
1.情報共有
○コーディネーター・小池:第23回(11/17)ゲストで、豊田市のブラジル人学校 エスコーラ・ネクターへ国際協力機構中部センター(JICA中部)が現地視察を予定。今後できることを模索していく。また進展があれば報告する。
○コーディネーター・濱野:技能実習生で賃金の未払いや長時間労働などの不遇なトラブルが続出。当団体で改善策を探っていたところ、JICA中部から連絡があり、今後連携して解決策を探っていく予定。
2.「貧困を考える月間」第1弾情報提供
■ゲスト紹介/コーディネーター・石黒
12月はホームレス状態や生活困窮の方々に関わる団体をゲストにお迎えする。「ボランティア オアシス」は、炊き出しや夜回りを実施している。全員ボランティアで、行政委託や助成金などは受けず活動している。若いメンバーも多く、いきいきと活動されているため、様々なお話が聞けると思う。
■ボランティア オアシス/事務局・山田彩乃氏
○団体紹介
ボランティア オアシスは、名古屋で活動するホームレス支援団体。主に白川公園南の高架下での炊き出しや名古屋市内の夜回り、緊急支援を行っている。設立は2000年、2006年に現在のリーダーに交代している。メンバーは、大学生~60代以上までおり、中でも社会人の参加が多い。都心で働くメンバーは、退勤後のスーツ姿のまま炊き出しに参加することも。私自身は18歳で活動に参加し、3年ほどになる。活動自体は、事前の連絡は不要。不定期の参加や年に一度の繋がりのボランティアもいる。ふらっと活動に参加できる、活動として敷居が低くあることを目指している。
○近年の出来事(クラウドファンディングなど)
近年の出来事として、1つ目は2017年にクラウドファンディングを行い、寝袋の購入資金を募った。レディフォーを活用して、寒さの厳しい冬を過ごす名古屋のホームレス状態にある当事者さんに、パンとシュラフを届けようと企画した。チラシを作成し、SNSやホームページ、メンバーの友人などに広報。当初は、12月末~1月までの45日間を期間としていたが、予想外にも開始4日目で目標達成し、第2の目標を設定し無事達成した。目標金額42万円を2倍近く上回る結果となり、追加で冬用下着も購入した。20~30個のシュラフ、冬物下着を段ボール3箱分購入し、夜回りや当事者同士の口コミを通じてお渡しした。大半がその年の冬に配布が終了し、翌年から毛布の配布も戻っている。
2つ目は、2018年秋、第1・3土曜日に別団体が実施していた炊き出しの継続が難しくなり、オアシスに合流することになった。サティヤ サイ オーガニゼーション(SSOJ)のセヴァという奉仕活動の一環。その中には、オアシスの立ち上げをサポートしてくれた方が、オアシスに加わる形で活動継続している。
○炊き出しについて
炊き出しは、毎週火曜日19時30分~、第1・3土曜日16時~の月に2回実施している。コロナ以前(主に毎週火曜の活動)は、毎回80~150人が並び、ボランティアはおおよそ15名前後が活動。パンやバナナ、カレー、中華丼、飲み物を提供。団体では、主にパン・バナナをドラッグストアや卸業者から購入し、その他の食事や飲み物は、メンバーの持ち寄り。ここ最近まで、パン・バナナ・お菓子の配布のみだったが、大鍋いっぱいの料理を作れるメンバーが加わり、炊き出しメニューが充実した。メンバーが週替わりで調理品を用意しており、それぞれで費用負担している。会場は、白川公園の南に位置する高速の高架下で、炊き出し時間中は駐車場も利用可能。月に1度、衣類も配布しているが、冬期は凍死の危険もあり、毎週配布するようにしている。
○新型コロナウィルス影響下での活動
新型コロナウィルスの影響で炊き出し方法を変更した。その場で配膳する丼や汁物などの食事提供を廃止。冬場の汁物は大変喜ばれていたが、おかわりなど滞在時間の長期化や容器の回収時の感染リスクは高く、廃止せざるを得なかった。調理担当のボランティアは、お弁当に切り替え、コロナ以前とほぼ同じ数を提供している。飲み物は、当事者が持参した容器にボランティアが持参した飲み物を注いでいたが、コロナ以前から衛生面で若干懸念があり、改善が必要だった。紙コップ導入も検討したが、滞在時間の短縮を最優先とし廃止した。衣類配布も押し合いへし合い状態になってしまうことが多く、何度も手に取り、戻す動作が繰り返されるため、廃止することとなった。しかし、衣類のニーズがなくなったわけではなく、夜回りや繋がりのある当事者にまとまった数を渡し配ってもらうなどしているが、炊き出し会場での配布数には及ばないため、現在も配布方法を模索している。
炊き出しで1巡し余った物資を希望する方に渡すことがあったが、滞在時間短縮のため、現在は「もらったら、すぐ帰る」を徹底している。余った物資は、他の団体に提供したり、当事者ボランティアとして活動した方とそのお連れさん、寝床を共にする方などへのお土産として渡すなどして捌いている。おたがいさま会議にも参加している「つなしょ」の活動が、オアシスの炊き出しの翌日・水曜日のため、来所する子どもたち向けの食品を渡したり、もらったりすることもある。配食希望者数は、流行前に比べ、ゆるやかに増加し、私たちの感覚ではコロナ以降、見慣れない方や若い方が増えていると感じている。当事者には、マスクの着用を必須化し、持っていない方にはお渡していたが、一時期入手が困難となった。新聞の取材を機に、多くのマスクを寄付いただくことができ、予備として配布する機会を2回ほどもつことができた。炊き出しの列についてもソーシャルディスタンスのルール化を図ったが、時間が経つにつれ危機感が薄まり、コロナ以前の状態に戻ってしまっている。
○夜回りについて
夜回りとは、当事者さんの寝場所を訪ね、食品や衣類を渡し、会話をする活動。主に2種類あり、鶴舞夜回り(第3火曜日22~23時・鶴舞公園を徒歩で回る・対象となる当事者5~10名)と、月末夜回り(最終週火曜日22~23時30分、名古屋都心部・金山を車で回る・対象となる当事者50名前後)がある。いずれも夜間の活動で終電近くになるため、炊き出しほどボランティアは確保できていない。今年はじめの数か月は特に人手不足で、月末の夜回り(最終週の火曜日)は、一晩で約50名の当事者のもとを車1台で回らなければならない状態が続いていた。今年後半は、炊き出し後に夜回りにも参加してくれるボランティアが多く、巡回の車も増え安定している。ただボランティアは、流動的なものでもあるため、いつ人手不足になってもおかしくない。夜回りは、日雇いの仕事や缶拾いなどで時間帯が合わない方、炊き出しのコミュニティーが苦手な方のもとを訪問できるメリットがある。他にも支援を受けるのが嫌いな方もおられ、訪問してもなかなか反応はないが、無理にコミュニケーションは取らないようにしている。持ってきたお土産を、その方の傍にそっと置いて帰ることもある。衣類は、大量に持っていくようにし、当事者さんとお話をしながら選んでもらっている、この時間が大変貴重なものになっている。
○緊急支援について
オアシスには、「今夜寝る場所がない」「しばらく何も食べていない」などの緊急連絡が入ることがある。ホームページで、名古屋の炊き出しリストを掲載しており、ウェブ検索でも上位にヒットすることから、ウェブページを見て、メールで連絡が入ることが多い。メールや電話で状況を聞き取りし、本人のもとに駆けつけることもある。食品を渡しながら、お話を聞き、夜間や土日祝であれば、オアシスが費用持出しでネットカフェなどを手配し、生活保護の申請窓口が開設される平日を待つケースもある。近年では、名古屋市暮らし・自立サポートセンターが市内に3か所あり、土曜日も開所しているため、勧めることが多い。対応自体は、ケースによって対応が大幅に異なること、対応頻度は月に1回程度であることから、マニュアルはなく、その時に動けるボランティアが対応している。緊急支援が必要な状況に陥ってしまう方は、社会保障や制度に詳しいことはほとんどなく、現代の日本では福祉にたどり着くにはスキルが必要。オアシスに連絡する方は、「炊き出し」「オアシス」という言葉しか知らず、やっとの思いで連絡してくるのだと思う。切迫したメールを日々確認することは、緊張が絶えない。たいていは、急を要する場合が多いため、取りこぼしのないよう注意を払っている。過去3年間の緊急支援の対応は、基本的にリーダーが仕事と並行しながら行っており、すぐに行けない時には、当事者の方にその場で待っててもらうこともある。緊急支援は、ボランティアの範疇をはるかに超えているが、私たちに助けを求める人がいる限り、動かざるを得ない。
○困っていること
緊急支援は、もう少し助力がほしく、対応できる数少ないメンバーにかかる過剰な負担を減らしたい。せめてリーダーの他にもう一人動ける人がほしい。何か良いアイデアがあれば、教えていただきたい。
物資の保管場所がなく、夜間の持ち出しも可能なメンバーの自宅に分散して保管している。活動前後に立ち寄れる立地にあり、夜間も取り出せる条件のスペースがほしい。
事務局は現在、私一人が担っているが、来年度からは活動頻度が減少するため、先々の不安がある。また、小規模な団体は一人メンバーが欠けるだけで、影響は大きく、他のメンバーにも様々な役割を知ってほしいと個人的に思っている。
団体パンフレットの設置場所や配布先を探している。希望される方は事務局までお問合せいただければお送りすることが可能。希望数が多い場合は、準備に時間がかかることをご了承いただきたい。
3.グループセッションでの意見・感想等(ブレークアウトセッション:全7グループ)
○レスキューストックヤード・浦野:「福祉サービスに辿り着くにはスキルが必要」という言葉が印象的だった。もう少し詳しくお聞きしたい。
→ゲスト・山田氏:貧困に関わる方は共通して感じていると思うが、福祉や制度は、当事者さんが自力でたどり着くのは意外と難しい。私自身も経験があり、手続きなど自分で対処することができたが、他の困窮状態に陥ってしまう方々が得意とは考えにくく、また得意な方でも困窮状態に陥ったことで出来なくなってしまう方もいると思う。行政側からアプローチして、拾い上げていかなれば、生活保護の捕捉率も上がっていかないと感じている。
○みどり災害ボランティアネットワーク・岡田氏:被災地で炊き出し支援を行っており、一人分の食材を入れたビニール袋を沸騰した鍋にいれ調理・温める方法があるが、炊き出しで活用できないか。
→ゲスト・山田氏:その発想はなかった。だた例えば、フードバンクの飲み物50~100名分を湯銭して提供するのは、人手や環境的に難しいのではないかと感じた。
○名古屋市社協・野川氏:パンフレットを市社協と名古屋市内16区の社会福祉協議会に置かせていただきたい。
→ゲスト・山田氏:ありがとうございます。対応します。
○コーディネーター・栗田:名古屋市東区に事務所があり、紙折り機やコピー機もあるため、パンフレットの用意する時にぜひ使ってほしい。物の保管もスペースがあるため受入れ可能、土日の対応は応相談。一方で、活発に活動をするほどメンバーの方の負担を増やすことにも繋がってしまうのが悩ましく、今後組織を継続させるにはどうしていくべきか。
→ゲスト・山田氏:パンフレットはぜひお願いしたい。組織として、ボランティアベースで継続しているのはリーダーの方針でもあり、夜回りや緊急支援のような活動でも、自分たちのように緩やかに関わることができるのだと示すことに意義があると考えている。確固たる組織にしたいという考えはあまりない。
→コーディネーター・土井:パンフレットをホームページでも公開してもらえると、それを見た有志で印刷し配布できるため、ご検討いただきたい。
→ゲスト・山田氏:検討したい。
○レスキューストックヤード・浜田:夜回りをする際は、当事者を探すポイントはあるのか。また、それぞれの団体の活動範囲のすみ分け・連携はあるのか。
→ゲスト・山田氏:居所は当事者からの口コミで教えてもらっている。他団体とのすみ分けはなく、活動範囲のマップもない。活動する中でそれぞれの活動範囲を把握している状況。
○コーディネーター・小池:ボランティアはどのような経緯で参加しているのか。
→ゲスト・山田氏:設立当初はそれほど活動者数も多くなく、2020年代は増加傾向で知人・ネット・メディアを通じて知る方が多い。また、物資を届けてくださった方が参加する場合もある。ボランティアの入れ替わりは激しい。感覚では、昨年参加した半数以上のボランティアは継続していない。自由に出入りできるという雰囲気も大切にしている。
○コーディネーター・濱野:最近の炊き出しで、若い世代の当事者が増えたと話があったが、性別比率を教えてほしい。家がない、性風俗産業に吸い込まれてしまう女性たちの支援をしているため、お聞きしたい。
→ゲスト・山田氏:炊き出しに並ぶのは男性が多く、コロナ以前から女性は100名中1~2名見かける程度で、路上で女性が暮らすことは厳しい。おそらく性風俗産業に取り込まれ、炊き出しにはたどり着かないのではないか。若い方の増加は、もともと不安定な仕事に就いていたり、ネットカフェ難民で、コロナの影響で困窮度が高まり炊き出しを利用する方が増加していると考える。
○コーディネーター・濱野:当事者の中で、社会とまた繋がりたいという方とそうでない方の割合は?
→ゲスト・山田氏:年配で長年ホームレスを続けている方は、今から行政と関わることへの面倒な気持ちもあり、路上生活を脱しようという方は少ない。逆に若者は、もとの暮らしに戻りたいと考える方が多い気がする。個人的には、6対4といったところ。
○中日新聞・大森氏:セイフティーネットの最後を支えておられ、活動に敬意を表したい。また、活動のために組織があるのか、組織のために活動があるのか、ボランティア活動の原点を突き付けられた思い。しかし活動の継続性を考えると、ボランティアベースでは限界があり、現状維持ももちろん良いと思うが、法人格の取得やマネージメントが必要ではないかと感じた。
→ゲスト・山田氏:個人的には全く同感。リーダーにも伝えたことがあるが、これまで15年以上継続してきた経験もあり、考え方が異なっている。
→リリオの会・今枝氏:自身の経験から、法人格を取得しない方がより柔軟な活動ができ、取得するとかえって実務に追われ、意思決定に理事会を通さなければならないなど煩わしさがある。ご参考になれば。
→中日新聞・大森氏:法人化が全てでないが、長年、市民活動を見てきて、「個人商店化」してしまう団体も少なくなく、問題意識がある。やはりマネージメントは必要ではないか。
→ゲスト・山田氏:リーダー一人のカリスマ性にかかってしまう、またはリーダー中心に物事がまわってしまう状態は懸念がある。現時点で、決定権が誰かに偏っていることはなく、おたがいにコミュニケーションを取りながら、活動できている。先々の心配はあるが、20年間続けてこられていることを有難く思いつつ、個人的にも実家のような居心地のよさがあるため、今後も出来る限り支えていきたい。
→コーディネーター・小池:気軽にボランティアができる良さと、一方で深夜の対応など一番厳しい状況にいる方々を支えておられ、アンバランスなこの2つを両立させるのは難しい。
□ゲストより一言/山田氏
活動に関心のある方は、ホームページにボランティアの集合時間など掲載しているため、ぜひご覧いただきたい。(https://j.mp/3mfpcAV)また、12月9日(水)朝7:45~5分程度、NHK総合「おはよう東海」でもオアシスの活動を放送予定。本日は、貴重な機会をありがとうございました。新型コロナウィルス感染症がなければ、会議に参加している皆さんに活動していただきたい気持ちでいっぱい。
4.その他ご案内・次回の予定
○コーディネーター・石黒:貧困を考える月間・第3弾(12/22)は、ささしまサポートセンターの活動を体験した方から感想を共有できる場になればと考えている。初めてでも参加しやすい活動のため、この機会に気軽に参加していただきたい。(見学も可)
【募集内容】
①炊き出し会場での生活・健康相談…生活や健康に関する困りごとのある方の相談活動。ボランティアで医師や歯科医師も参加。
・実施日時:毎週木曜日19:00~20:30頃
・集合場所:名古屋市中区栄5丁目(若宮大通 高架下)「生活・健康相談やってます」という看板が目印。
②オリーブの会 クリスマス会…元・野宿生活者の方などとの交流企画。ささしまサポートセンターの支援で野宿からアパートで生活を始めた方が、孤立せず地域社会で暮らすための一助となるような企画。
・実施日時:12月20日(日)13:15~
・場所:中村コミュニティセンター(地下鉄東山線「中村公園駅」徒歩5分)※参加費350円
○コーディネーター・土井:11/17ゲストのエスコーラ ネクターが「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞」で、大賞を受賞。アメリカで始まった取り組みで、女性起業家に授与される。2017年から開催され、外国人女性が受賞するのは初。
○名古屋市社協・野川氏:先日無事終了した「ポストコロナ社会で私たちができることを考える講座」の実践者からの講話がオンラインで来年3月までご視聴可能。おたがいさま会議でも登場した実践者の方からの話も含まれている。詳しくは名古屋市社協ホームページからご覧いただきたい。
(第2回)https://www.nagoya-shakyo.jp/post-4632/
(第3回)https://www.nagoya-shakyo.jp/post-4428/
【次回の予定】
日時:2020年12月15日(火)16時00分~17時00分
ゲスト:豊橋サマリヤ会/代表・高島史弘氏
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません