第22回:高浜市における多文化共生の取り組み

会議レポート

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●日時:2020年11月10日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:30団体(運営9団体含む)
●参加人数:34名(運営スタッフ12名含む)

1.「多文化共生月間」第1回
高浜市における多文化共生の取り組み

●ゲスト紹介/NPOおたがいさま会議コーディネーター・土井
2年前に新美さんたちの活動を知り、改めて「多文化共生は“外国人支援”ではなく、まちづくり」だと、実感した。新美さんのお話を通じて、“支援”という言葉に囚われず、共に暮らす地域の一員として受け止め、外国人の方々と一緒に出来る事を考える機会にしていただきたい。

●ゲスト:新美純子氏・公益社団法人トレイディングケア・代表理事

外国人だけの取り組みではなく「まちづくり」として取り組んでいる。今回お誘いいただいた際に、NPOおたがいさま会議の存在を知り、この会議の名称や考え方にとても共感した。

今年3月、高浜市と「多文化共生社会の推進に向けた連携協力に関する協定」を結んだ。そもそも高浜市は全人口の8%が外国人であり、全国的にも外国人の多い地域。とはいえ、外国人に積極的に関わる機会を設けているかというと、高浜市はまだまだこれからだと感じている。

(参考)愛知県 市町村別外国人住民数・住民比率(2019年末)

団体名に掲げる「トレイディングケア」は、トレードとケアを合わせた造語で、トレードは交換する・貿易する、ケアは世話をする・心を通わすという思いを込めている。日本で働き生活する外国人の方々と、地域の人々が共生していくサポートを行っている。厚生労働省の冊子にも紹介されている。今回は、多文化共生に焦点をあてお話する。

当団体では、ベルギーで行われている「バディ制度」を参考に、「バディシステム」を取り入れている。来日する外国人技能実習生が日本で円滑に生活できるように地域住民がサポートを行う取り組み。現在のバディは2歳~90歳までの約40名が活動。

(参考)安い労働力ではない 実習生見守るバディ

この取り組みは一見、外国人支援に思えるが、交流の場にもなっており、地域の小学校で、文化を伝えあう取り組みもしている。現在はコロナで取り組めていないが、地域を歩くスタンプラリーでは、外国人が参加者となり、日本人の子どもたちが案内する取り組みをしている。地域住民からも注目された。その他にも定期的に場を設け、みんなでインドネシアのチキンダンスを踊ったり、騒いだり、ごはんを食べたりと、子どもからシニアまで、老若男女ごちゃまぜのコミュニティ作りを行っている。日常からこうした取り組みをすることで、災害時など困った時に気軽に相談できるような関係性に繋がることを願っている。外国人ではない、同じ地域に住む住民として考えることが大切。

高浜市と連携した取り組みを4つ紹介する。1つ目は、防災に関する取り組みとして、今年3月に市・NPO法人レスキューストックヤードとでコラボした防災訓練を開催予定だったが、コロナの影響で中止となった。団体のみに規模を縮小し、災害時にもできる料理として、みんなでたこ焼きを作り食べながら、災害をテーマに話し合った。全体で27名、うち外国人の参加は18名だった。当日のサポートメンバーで、バディも参加していた。

2つ目は、外国人向けに特別定額給付金の書類作成をサポートした。それを機に、今まで関わることの少なかった永住ビザの外国人と出会い、必要な情報が届いていない現状を知った。2016年から団体として取り組んできたが、もっと自分たちから外国人に積極的に声を掛けて、現状を把握する必要性を感じた。その後、商業施設を利用する外国人を対象に、日本での暮らしに関する満足度をヒアリングした。ほとんどの方が「日本の生活に満足している」と答えた。

3つ目は、書類作成をサポートした外国人の中に、「ひらがなが読めるようになりたい」「もっと日本語でおしゃべりをしたい」という声があったため、生活者のための日本語教室を行った。飲食店での注文を取る時に役立つ言葉や日本人と会話を楽しむコツなど、参加者が学びたいことを学べる場所になるよう心掛けている。

4つ目は、多文化子育てサロンの実施。看護師資格のある日本語教師や保育士を中心に、ゆっくりとした時間の中で、日本語学びながら、子育て相談も行っている。なかなか人が集まらないのが現状で、移動手段がない、言葉が通じないことへの不安から参加へのハードルも高い。地域の中で、夫がいわゆる高度人材で入国した妻は、日本語が話せないことが多く、そんな中で妊娠・出産・育児の時期に入っている。頼れるのは夫だけのため、地域コミュニティの中にも入れず、家にこもっている外国人ママが多いのではないかと感じ、高浜市と連携して、4か月検診の会場をメンバーが巡回し、直接声掛けをする中で多文化子育てサロンに繋げている。なかなか成果に結びついていないが、今後も多くの人に知ってほしい。

今後の取り組みとして、企業と連携し「人育て」を進めていきたい。人材不足を補うのではなく、共に働く人材、仲間として、地域を共にする仲間として働ける環境を作りたい。

また、築80年の大きな古民家を「集いの場」としてきたが、コロナ禍により外国人技能実習生の入国がストップし、古民家の維持が困難になった。現在は入国が再開されたものの、入国後2週間の待機場所確保のため、部屋数がある元・社宅に拠点を移した。コロナ禍において場づくり自体が難しい状況だが、高浜市と相談し、高齢者・障がい者・子ども・大人等、より多様な方々がもう一度、気軽に集えるような「ごちゃまぜコミュニティ」を作っていきたい。 

地域の誰もが利用できる「場」、これこそが「多文化共生」。高浜市役所、まちづくり協議会、市内の小中学校高校、地域企業等、様々な人々と連携の輪を広げつつ、一方通行の関係ではなく互いに教わりあう双方向・多方向の関わりを大切にし、この関わりが点から線へ、そして面となっていくよう活動していきたい。

□質問

・多文化防災ネットワーク愛知・名古屋・椿氏:バディはどのようなきっかけ、繋がりで集まったのか。
→自身の地縁がある地域で立ち上げ、活動を展開しているため、地域のママたちや子どもたちの口コミから徐々に広がっていった。団体HPにも掲載しているが、やはり口コミが強い。(新美氏)

・レスキューストックヤード・浜田:外国人の方との共通言語はなにか?
→日本語。やさしい日本語も使う。Googleやポケトーク等の翻訳機も使う。そこからもっと話したい方は、日本語教室に通ってもらう。(新美氏)

・コーディネーター・栗田:拠点づくりはどうされていたのか、受益者はどのくらいか?
→以前から地域の空き家を活用したいという思いがあり、地域の古民家を借りていた。利用した地域住民や外国人からは、懐かしさを感じ、なんだか安心するという声も。これまで、地域住民・技能実習生100人弱が利用。もっと多くの人に知ってもらいたい。(新美氏)

・愛知工業大学・久島氏:地域企業との連携に力を入れていきたいのはなぜか。
→企業は、初めは志をもって外国人を受け入れていると思うが、中には外国人の受入れに慣れていくと、先輩・外国人に新人・外国人の人材育成を任せる場合が多く、せっかく日本語を話せても、母国語でやり取りしてしまい、他の日本人との交流が生まれにくくなり、地域住民として仲間としての感覚が薄れてしまう面がある。地域での孤立にも繋がり、ごみの捨て方が分からない、地域のイベントを知らないといった状況が生じる。改めて、企業と一緒に取り組んでいきたい課題。外国人が日本を好きになってもらえるようサポートしたい。(新美氏)

・コーディネーター・小池:コロナ禍の不況の中、どのような見通しを持っているのか。また、困っていることはないか。
→不況ではあるが、企業が動き始めている。困っている事があっても、活動を止めないが私たちの方針。3密を避けながら、withコロナで自分たちが出来る事、多文化共生のためのアイデアを出し合いながら進めていきたい。愛知モデルが作れたら、楽しいのではと感じている。

・高浜市役所・祖父江氏:トレンディングケアの皆様には、普段から高浜市と協力していただいている。これからもお互いの交流が深まってほしい。

・リリオの会・今枝氏:監理団体についてお聞きしたい。私が住む地域も外国人が多くいらっしゃる。建設業界にもいるため、日々の現場で外国人労働者の方々と顔合わせているが、建設業との関わりはあるのか。
→介護人材の受け入れが主のため、これまで建築業界の方と関わったことはない。

・佐賀大学 国際交流推進センター・布尾氏:介護の技能実習生に対する日本語教育はどのようにしているのか。生活者に対する日本語教室と異なるのか。
→技能実習生への日本語教育は力を入れている。2か月間、時間をかけてサポートしている。

□ゲストから一言(新美氏)

高浜市と協定を結ばせていただいたことで、さらに活動の幅が広がった。一時的に切り抜いたものではなく、日常から取り組むことを大切にしたい。多くの人と繋がることで、出来ることも増えていく。様々な人と繋がり情報交換しながら、多文化共生について話し合っていきたい。

2.次回の予定

【多文化共生月間 第2弾】2020年11月17日(火)16時00分~17時00分

■テーマ:今、ブラジル人学校で起きていること〜エスコーラ・ネクターの取り組み〜

■ゲスト:山家ヤスエ氏/ブラジル人学校エスコーラ・ネクター 日本語教育コーディネーター NPO法人希望の光 ファウンダー

■ゲスト紹介:愛知県内には約15校の「外国人学校」があります。 もっとも多いのはブラジル人学校で、 その一つ豊田市にあるエスコーラ・ネクターには、6〜18歳の子どもたち20人が学んでいます。 「ブラジル人学校って、どんなところ?」 「どんな子どもが何を学んでいるの?」 という素朴な疑問にお答えし、身近にある多様な教育現場の状況と、 子どもたちに襲いかかる新型コロナの影響について、考えてみましょう。

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