第21回:子ども月間④ 災害時における子どもの最善の利益とは

会議レポート

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  • 日時:2020年10月27日(火)16時00分~17時00分
  • 場所:WEB会議(ZOOM)
  • 参加団体:31団体(運営7団体含む)
  • 参加人数:37名(運営スタッフ12名含む)

1.「子ども月間」第4回情報提供
災害時における子どもの最善の利益とは~コロナ禍の今と東日本大震災の経験から~

●ゲスト:塚本岳氏(あいち森のようちえんネットワーク代表/よさみプレーパーク代表(リトルハウス副代表)

・子どもは「遊ぶ」ことを通して自ら育つ力を持っている。同時に、それは子どもにとっての権利でもある。しかし、災害を通してそれができない状態が続いている。
・子どもの遊びには「時間・空間・仲間」の「三間(三つの間)(※東北沿岸部名産のサンマを焼いた写真とかけあわせたPPT資料が提示された)が必要。現在、これらが保障されていないために遊び場やプレーパークが必要とされているともいえる。
・東日本大震災後、気仙沼に入り遊び場を作った。子どもたちと一緒に森を切り開いて開園。被災地では「時間」はたっぷりあって子どもたちは「ひま」であったが、空間や仲間がほとんどなかった。自分たちの支援は、この「時間・空間・仲間」のバランスを整え遊べる環境を作ること。
・気仙沼の遊び場では、「ものづくり」が流行った。避難所で何かを「与えられる」ことばかりだった日常とは違うコンテンツだった。
・被災地では「こんな時期だから」という雰囲気を、子どもたちも感じ取り我慢していたようだ。
・「地震ごっこ」「津波ごっこ」も流行った。怖がる子をフォローする以外は止めなかった。暴言や暴力、甘えが出る子もいた。子どもたちはそうした遊びを通して自分の気持ちを整理している。
・子どもたちに「お前ら(=ボランティア)もどうせすぐ帰るんだろ!」と言われ、できるだけ長期間続けるように体制を整えた。
・東北の他地域にもこうした遊び場がいるのでは?と考え、遊び場がどこでも開けるようプレーカー(車)で各地をまわった。現在は地元の団体が引き継ぎ、遊び場を維持・運営してくれている。

【2019年台風19号災害:長野】

・浸水による被害が甚大だった。車も流され、コンビニや公式の避難所への移動が困難。近所に施設の避難所を開設し近所の人を集めて炊出し、物資の提供、子どもの遊び場づくりなどを行った。
・大人は家の片付けに忙しく、子どもも片づけを手伝ったり、家の中でじっとしたりするしかない状態だった。
・ボランティアの仲間、団体の協力を得てプレーパークを開設。親も一緒に食事をするなどしてニーズを聞き取ったりした。

【現在のコロナ禍の状況】

・急に休校となり、全国的に子どもたちは「時間」だけがたくさんあり、「空間・仲間」がほとんどない状況となった。オンラインのコンテンツが増えるなど、それが快適な子もいたが、たくさんの宿題が出るなど、子どもたちへのプレッシャーは増大した。アルバイトができなくなり、経済的にピンチになる高校生も。24時間親子で一緒にいてしんどくなる家庭も。
・緊急時、危機のときでも「遊び」は絶対に必要。特に緊急時の「遊び場」はアウトリーチ、ヒアリング、個別支援、居場所などたくさんの機能を持っている。
・とはいえこれまでの遊び場はまさに「三密」。子どもたちと一緒に、どうしたら密を避けながら遊びができるかを考えながら児童館を開けた。外遊びを中心にする「お庭DE児童館」など。
・困りごとを抱えた子、居場所が欲しい子、エンタメ(卓球など他ではできない遊び)が目当ての子など様々なニーズを持った子など、普段の児童館にはいろいろな子が来る。コロナ後はエンタメの種類が減ったので、困りごとがある子、居場所が欲しい子が増えている。
・大人数で集まることが難しい今、小さな遊び場がたくさんあるのがよいのではないか。
・どんな状況であれ、子どもが遊べる環境を大人がどう整えられるかが問われている。
・学校が再開してからは、勉強の遅れを取り戻すため子どもは逆に時間が足りない。「空間・時間」はソーシャルディスタンスを保ちながらどうしていくかが課題。子どもたちからは「マスクを外して友だちと遊びたい」という要望が大きい。緊急事態宣言中よりも、今の方が子どもたちは苦しいのかも。家族や友達と、人が少ない公園などで思い切り遊ぶ時間などが必要ではないか。

□質問・意見

・名古屋市社協・野川氏:子どもと信頼関係を築きつつ、地元の人に協力してもらいながら子どもの遊び場を継続されていることが素晴らしいと感じた。大人の決めたルールで考えがちだが、子ども目線で考えることの大切さを感じた。

・NPO法人ゆめはーと・木全氏:社会的孤立をしている世帯にコロナ禍で深刻な影響があると考えられる。保護者同士で声を掛け合うためにどうしたらいいか。→コロナ禍以前から児童館には困りごとがある子が来ていた。でも、来てもらわないことには何もできない。しかし「困っている人は来てください」では来づらいので、少しでも入りやすいよう「誰でもどうぞ」の場であることは心掛け「支援臭」を出さないようにしている。(塚本氏)

小幡緑地冒険遊び場の会 つなしょ・中村氏:今、「反抗する子ども」が減っていると思う。「まあ仕方がないか~」みたいな感じ。がまんして、自分を傷つけてしまう子もここ1~2か月で増えていると感じる。
→気仙沼の話で「暴言が出てきた」という話をしたが、それはプレーパークができてきた。子どもたちが思いを表出できるようになってきたのだと思う。発散できる場所があることがいいのではないか。(塚本氏)

・NHK名古屋放送局・田中氏:コロナ後、学校に行けなくなった子がいる。やはり緊急事態後のほうが子どもたちにとってつらいのかもしれない。
→学校での感染対策が子どもにはつらいのではないか。給食も無言で食べなければいけないとか。大人よりも厳格なルール下にあるのかも。学校に行っていても「苦(く)登校」になっている子もいるのでは。(塚本氏)

・コーディネータ・根岸:不登校の子を持つ親御さんからの相談が増えている。親は「子どものために」と学校に戻したがるが、親御さんには「まずは今のお子さんの心の中を見つめませんか」と話している。学校に戻すだけでなく、いろいろな関係者が集まり子どもにとって最善の利益となるにはどうしたらいいかをじっくり考えていくことが大切ではないか。

・NHK名古屋放送局・田中氏:児童館に行き慣れていない子もいる。人の目が気になるのであれば、遠くのプレーパークに行ってみるのもいいかもしれない。

・小幡緑地冒険遊び場の会 つなしょ・中村氏:コロナの影響で、学校でも家でも何でも自粛…となってしまっている。そんな中、誰にも相談できない、自分だけ・子どもだけでなんとかしようとする子が増えていることを危惧している。大人に話してね、と子どもたちには伝えている。子どもたちの悩みをじっくり聞くことが大事だと思う。

・リリオの会・今枝氏:大人が子どもの遊ぶ権利を侵害している状態だと思う。子どもたちに対して大人がもう少し優しいルールを提案できないだろうか。

・ゲスト・塚本氏:屋外で遊びのとき、熱中症の危険があるときはマスクを外すなど臨機応変に対応すればいいと思う。しかし正解がないことであるし、もし感染してしまったらと考えると難しいところ。

・小幡緑地冒険遊び場の会 つなしょ・中村氏:子どもたちと老人ホームでBBQをした。コンロの位置や一台あたりの人数を工夫したり、食器を各自で持ち込みにするなどして行った。
→工夫すればできる一方、食器持参だと困難を抱える家庭の子が参加しづらくなるということも考えられ、難しい面もある。(塚本氏)

・一般社団法人子どもアドボカシーセンターNAGOYA・奥田氏:海外の子どもたちも同じような状態を経験していると思う。日本ではいま中村さんが言われたように、自分たちでいろいろ考えて工夫して楽しみを作るということが不足しているのではないかと思う。

・コーディネータ・栗田:「支援臭を漂わせない」ような、誰でも来られる場を作る姿勢に共感。一方、そこにも来られない子もいる。「苦登校」という言葉も非常に腑に落ちた。大人としてどうしていくか本当に考えさせられた。こうした課題を私たちがしっかりと受け止め自分に何ができるか考えていきたい。

・コーディネータ・根岸:子どもにかかわる人にお願いしたいのは、PTAでもどこでもルール作りをするときに、子どもをメンバーに入れる、子どもの意見を入れるということをしてほしい。困っている子どもがいたら、どこでもいいので関係機関に声をかけてほしい。子どもと一緒にこの困難をどうしていくかを考えていきたい。

・ゲスト・塚本氏:コロナ禍で何が正解かは分からないが、子どもにとって明らかな不正解・不利益はあると思う。それを排除、解決していけたらと思う。最後に、この地域は南海トラフ地震への警戒も叫ばれている。NPO同士の協議の場も必要だと認識している。RSYやおたがいさま会議のネットワークも活用して、一緒に考えていきたい。

2.次回の予定

11月は「多文化共生」がテーマです!
・日時:2020年11月10日(火)16時00分~17時00分 ※11月3日はお休みです。
・テーマ:高浜市における多文化共生の取り組み
・ゲスト:新美純子さん(公益社団法人トレイディングケア・代表理事)

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