第15回:奥知久医師
●日時:2020年9月8日(火)16時00分~17時00分
●場所:WEB会議(ZOOM)
●参加団体:26団体(運営7団体含む)
●参加人数:31名(運営スタッフ10名含む)
1.今月の会議予定について(事務局:星野・コーディネータ:小池)
前回会議を経て、今後は各月でテーマを決め、コロナ禍において抱える課題だけでなく、さらにその背景や団体理念への理解を深め、会議参加者や市民が出来ることを考える場にしていきたい。そこで今月は、会議コーディネータでもある日本福祉協議機構を中心に、「福祉」をテーマに開催予定。今回は、状況が刻一刻と変わる国内外のコロナ事情に詳しい奥先生(医師・フリーランス)から第2波・3波に対処するためのポイント解説いただき、次回15日は介護現場に詳しい竹上氏(株式会社トーキング)をゲストに予定。次々回29日は未定のため、決まり次第、お知らせする。
2.前回会議からの進捗
■徳林寺のその後について/多文化共生リソースセンター・土井氏
天白区にある徳林寺では、コロナ禍で失業し帰国困難となったベトナム人を受け入れ、これまで80名が共同生活を送っていた。ベトナム政府は4月頃から2週間に1回、成田空港から緊急帰国用の便が用意され、大使館に2万人の申込みがあるものの、1便300人前後までしか帰国できず、宝くじに当たればという思いで徐々に帰国。市内にあるベトナム名誉領事館やNPOから大使館への要望を出していたこともあってか、9月より週1回に増便された。徳林寺では1便につき2~3名だったのが、9月には10名程度が帰国し、9月7日に残り2名に。しかし、徳林寺を希望する帰国困難者は40~50名おり、今日も新たに10名が増え、妊娠中の方へのケアや外国人の入れ替わりもあり、定期的に行っている支援者会議では、受入れのタイミング調整や入居1週間の個室での隔離などの対策が必要。
帰国後は軍事施設で2週間隔離されるが(政府負担)、隔離中に陽性が判明したケースもあり、さらに2週間の自宅待機が命じられている。今後は、軍事施設での隔離中の費用1人10万円程度、近隣のホテルでも受入れが始まると、最大で40万円程度を自己負担しなければならない。ベトナムでは、公務員の月収が3万円程度で到底負担できる金額ではなく、もともと帰国の片道航空券代9万円するのに加え、帰国後の費用負担10万円と考えると、さらに帰国へのハードルが高くなり、滞在期間が長期化する人が増えるかもしれない。
3.情報提供
海外のコロナ事情と日本での第2波対策/フリーランス医師:奥先生
昨年まで諏訪中央病院に勤務しており、今年からフリーランスとして、6都道府県の自治体と取り組んでいる。コロナの影響により、諏訪中央病院の鎌田先生の繋がりで、「公益財団法人 風に立つライオン基金」のプロジェクトの1つ「ふんわりチャンポン大作戦」に関わっている。国内の福祉施設を回り、各地の施設職員とコロナ対策の検討を行い、これまでの4か月で約40か所の現場に行き、オンラインも含めると約300か所で取り組んできた。また、「茅野あんしん認証」という取り組みを、茅野市の宿泊や観光業向けに、行政と連携して、コロナ対策の研修にも取り組んできた。その中で大切にしているのは、コロナ対策を理解するのは簡単だが、本来、職員が大切にすべき利用者の笑顔や健康、幸せな暮らしであり、感染症ばかりを意識しすぎない対策を考えられるように心がけている。
海外でもコロナの状況は刻一刻と変化しているが、皆さんが各分野で活動する際には、この変化に振り回されるのではなく、その労力をそれぞれが直面する現場でいかに対策するか、本当に重要なことに力を注ぐことが有益だと伝えたい。流行状況の把握も大切で、ジャックジャパン(https://jagjapan.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/641eba7fef234a47880e1e1dc4de85ce)というサイトで、最新の国内の状況が把握できる。
コロナの特徴として、若者は軽症で高齢になるほど致死率が高い。インフルエンザと比較すると、同等ないし少し流行性が高いと考えられ、致死率は高い。動物界という大きな括りでは風邪と捉えられるが、人間界では、大事に至らない人が大半いるものの、中には重症化する人もいるため、対策を軽んじれば社会の負担に繋がる。注意すべきポイントは、高齢者の感染で、特に高齢者の多い場所でのクラスター発生は最悪の状況である。ヨーロッパをはじめ世界的に見ても、死亡者の半数は高齢者施設で起こり、遺体の置き場所が不足し冷凍車で運ぶ事態となっている。それに比べ日本は、高齢者施設への入所者が少ないこともあり、数値には表れていない。ここから考えられるのは、活動中もコロナ対策を講じても感染者ゼロにするのは困難であるが、まずは高齢者施設や高齢者が集まる場での発生を避けなければならない。
国内外で理想とされている対策に「ハンマー&ダンス戦略」がある。対策を講じなければ感染者拡大は避けられず、平常時から医療キャパシティ(収容人数)は少ない現状がある。感染症が流行すると医療崩壊が起こり、助かる命も助からない状況となるため、ロックダウンや緊急事態宣言のようなハンマー機能が働く。その後も感染者ゼロは難しいため、医療のキャパシティを超えない低空飛行の状態(ダンス期)が目標になり、対策を緩めすぎた場合に第3波が起こる。日本の現状は、第2波が減少傾向に向かいつつあり、ワクチン開発が進んでいるが、効果が出るには時間がかかるため、第3波・4波の可能性が消えたわけではない。最新情報を追いかけすぎずに感染リスクを抑えながら生活する方法を見出してほしい。
福祉職員向けのコロナ対策で伝えているのは「非コロナ3原則」の「持たず」「広げず」「持ち込まず」が対策ポイントとなる。「持たず」は、ウィルスの主な侵入経路である、目・鼻・口に入る前に手指衛生をすれば、たとえ感染者と握手をしても感染予防が出来る。「ひろげず」は、3密・3経路に注意することで、空気感染を防ぐにはN95マスクの着用が必要となるが、一般人には現実的な対策でないため、空気感染が起こらない状況を作らないことが大切。密な状況とは、オナラをした状況をイメージすると、エレベーターでは臭ってしまうが、公園のような屋外では臭いに気づかれない。3経路「接触・飛沫・飛沫咳」のうち「接触」については、例えば右手の人差し指で触った机に便がついている場合、目の前にあるクッキーをどうやって食べるか想像すると、多くの人は触っていない指や左手を使い食べる、これが接触感染の仕組み。突然移動するものではなく、机や手の消毒をすることで対策が可能。飛沫では、唾が届かない距離をイメージし、2mを基準に人との距離を意識する、マスク着用(飛沫を遮蔽)することが対策になる。「もちこまず」は、そもそも同じ場にいる人達や物がウィルスを持っていなければ、現場にいなければ感染しない。だからこそ、体調チェックが重要になる。非コロナ3原則のいずれかが徹底されれば感染は起こらないが、人間は不完全のため、ウィルスの付着した手で鼻を掻いたり(もたず)、イベントをやりたいと企画したり(ひろげず)、「少し体調が悪いくらいなら…」と参加する人(もちこまず)がいたりするため、3つのバリアを重ね、工夫をこらすことが重要。この3原則が理解した上でやりたい事に取り組んでいただきたい。
□質問
・多文化共生リソースセンター東海・土井氏:徳林寺の共同生活では、入居開始2週間を個室で隔離した後、共同生活に切り替えるなど対策を行ってきたことで、受入れ開始から約5か月が経過しても陽性者が出ていない状況。しかし今後も避難を希望する方々がおられ、入れ替わりが激しくなるため、受け入れるタイミングの調整が必要となり、中の人が接触する際に注意すべきポイントがあれば教えてほしい。
→とても大切な問題。海外からの入国者に関する受入れガイドラインのような資料はなく、各分野で答えのない部分に突入することになる。リスクは0か100かではなく、どの程度までのリスクを受け入れるのか、最小限のリスクに抑えられるよう対策を考える必要がある。一方で、社会的な目もあり、田舎で陽性者1例目が出れば、引っ越さなければならない人も出るかもしれない。増してや、お寺の場合は地域との関係性も踏まえて、リスクを考える必要がある。それと合わせて、体調不良の際には報告しやすい環境を作っていくことが大切になる。ちなみに感染拡大が落ち着いてくるとは、1週間で10万人あたり0.5以下の発症数になると、一般的に流行終了と言える。
・コーディネータ・栗田:災害救援のNPOのため、令和2年7月豪雨など本来なら現地入りする災害だが、感染者拡大の時期と重なり、マスコミ・自治体から感染者が出た影響もあり、外部支援者側が体調管理と準備を徹底して要望を出した場合でも、現地が受入れられない状況となってしまった。これだけの大災害であれば、ボランティア10万人が活動する規模だが、県内募集で頑張っても3万人。奥先生の仰るような理解が社会全体に広まって、必要な支援を必要と言いやすくなる雰囲気になってほしい。
→風に立つライオン基金でも、熊本へ現地入りしたメンバーがいたが、活動が出来なかったり、ひっそりと活動していた。やはり感染者が出ていない地域は出入りの敷居が高くなる傾向にあり、これは世界的にも同様で、人間の心理的な部分。福祉施設での研修で提案しているのは、最初から受入れ側も感染リスクの度合いで層別化できれば入りやすくなるかもしれない。災害時のボトルネック効果のような、現地で采配する立場にあるコーディネータの作業量が現地で活動する団体の作業に比例してしまう場合もある。外部支援者は現地コーディネータを人材や物・情報面でいかに応援できるか、また平常時からネットワークをいかに構築できるかが大切。
・コーディネータ・小池:風に立つライオン基金をもう少しお聞きしたい。
→介護や生活困窮、障がいなど福祉系団体の技術研修を行っている。安心して仕事が出来るような環境整備を大切にしている。
・コーディネータ・濱野:団体内でもコロナへの認識・危機感が異なり、ウィズコロナで対策を考えるスタッフと、収束を待つスタッフで分かれることがある。
→コロナ収束の見通しはたっておらず、このまま何もしないという選択肢も難しい。恐れながら付き合っていくしかないと考える。危険とリスクは異なり、リスクは量的、確立で捉えられるもので、逆に危険は心理的なものを表す。漠然とした危険から、リスクに置き換えることが出来れば、認識を変えていけるかもしれない。
・コーディネータ・小池:以前のゲストで南医療生協の方からは、高齢者を抱える家族が、コロナの影響で介護スタッフを受入れられないという事例があった。スタッフと利用者家族で、リスクコミュニケーションのようなやり取りを進めることは難しいか。
→専門職や合意的に物事を進めなければならない人は、危険をリスクに変換する必要があるが、一般の方はそこまで理解してもらうのは難しい。自分の家族も同じ状況にあった際には、穢れに対処するための儀礼という形で、帰宅前に電話をし、帰宅後の行動や手の触れる場所を丁寧に説明し、説明の通りの行動し入浴するという手順を実践している。相手に合わせたコミュニケーションや手段を取り、対策を見せていくことが大切。
4.意見交換タイム~自分たちに出来る事を考える~
■各グループで何ができるかをグループで検討(ブレークアウトセッション。全5グループ)
・グループ1:少し前から日本人は清潔感やマスクの週間が身に付き、きっかけはスペイン風邪と聞いている。保育士の家族の話では、今年は風邪や体調不良の子どもがほとんどいなかったと聞いた。また、感染を回避出来ても、コロナ騒動(恐怖症)の影響が出てくるのではと別の方から聞いた。(佐藤)
・グループ2:感染後の差別や分断の部分もお聞きしたかった。(萩原)
・グループ3:奥さんとの折り合いの付け方は分かりやすかった。みんなで一緒にやる雰囲気が作りやすくなると感じた。機会があれば、秋冬にむけての対策についてもお聞きしたい。(関口)
■ゲストから一言
コロナがなければ、出会えなかった方々との出会いがあり、今日もその機会に恵まれた。コロナ対策においては、新しいことを積み重ねるというよりは、当たり前のこと(非コロナ3原則や、アルコール消毒の濃度は60%以上の効果があるものか等)を見直し、積み重ねていくことが重要。
5.その他
■「ポストコロナ社会で私たちができることを考える講座」の紹介(名古屋市社協・野川氏)
コロナにより地域社会で起こっている様々な課題を市民が知り考えるとともに、実際の活動の担い手を増やすことを目的としている。また、以前のおたがいさま会議ゲストで、ささしまサポートセンター・石黒氏から、「生活困窮者やNPOの各分野の当事者の現状・課題を、もっと多くの方に知ってほしい」という提案があり、会議としても協力いただけることとなった。第1回で現状・課題に触れ、2・3回で会議ゲストをお招きし、4回で今後の活動を考える流れを予定。ゲスト回はYouTubeでも限定公開するため、閲覧方法については時期が来たら、会議でもお知らせ予定。会議参加者の皆さんには、ぜひ受講者としても参加いただき、広報にもご協力いただきたい。
■ おたがいさま会議の情報発信や取り組みは、以下のURLよりご確認・ご参加ください。
ウェブページ:http://otagaiaichi.starfree.jp/
Facebookグループページ:https://www.facebook.com/groups/otagaisama.aichi
6.次回の予定
2020年9月15日(火)16時00分~17時00分
テーマ:介護事業所のコロナ事情
ゲスト:有限会社トーキング/竹上勝氏
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