生活困窮者支援の現状(NPO法人ささしまサポートセンター)

現場の課題

Pocket

■NPO法人ささしまサポートセンター(石黒氏)

当団体は1970年代からホームレスの方々の支援を行っている。当時、名古屋駅前に野宿をしている方々が多かったため、おにぎりを配るボランティア活動から始まった。当時のメンバーは医者・看護師等の医療関係者が多く、いわゆる日雇い労働者やホームレスの方々にも医療が受けられるよう「ささしま診療所」を立ち上げ、健康相談や簡単な診療が受けれるよう支援を続けてきた。その中で医療だけでは支援が足りないと感じ、生活保護や住居の支援も視野に入れ、2012年に現在の「NPO法人ささしまサポートセンター」という形になった。

普段の活動として、月に2回、朝や夜間の巡回相談、炊き出し会場の一角を借りた医療相談窓口の設置、アパート訪問等を行っている。
炊き出し会場での相談では、生活保護や特別給付金等の手続きサポートを行っているが、住所地が遠方で手続きが難しい、転々と暮らしてきたため住所地が分からない方がおられ、中には手続きを進めると、失踪してからある程度年数が経つと除籍扱いとなることもあり、戸籍を回復させるため弁護士に相談して、手続きをお手伝いすることもある。
アパート訪問では、野宿から屋根のある場所で暮らせるよう生活保護受給やアパート入居のサポートを行った方でも、入居後、もともと当事者同士で一緒に公園で寝ていた環境から寂しさ・孤独を感じたり、ゴミ出しの方法が分からず地域住民ともめたりして、路上生活に戻ってしまう方は少なくないため、定期的な見守りを行っている。
その他、市から委託事業として、生活保護受給者を対象とした生活相談、子どもの学習支援も行っている。貧困支援で培ってきたノウハウを活かし、子どもだけでなく親の個別相談やケース会議を行う等、家族全体で課題を解決していけるような学習支援を行っている。

コロナの影響で、今年3~4月頃から相談者が増え始めた。事務所や炊き出し会場の他にメールでの問い合わせも多く、毎日新しい方からの相談が絶えない。
メールでは派遣切りに遭い、住居の退去せざるを得ない方や、すでに雇用契約が切れたネットカフェ難民のような状態の方からの相談が多い。
炊き出し会場では、ホームレスの方々はテレビや新聞、インターネットを使う機会がないため、コロナ自体を知らない方も多く、マスクを着用していない。マスクはこれまでも配布してきたが、ボランティアの看護師を中心に、感染症への知識や予防を説明し、マスク着用を呼びかけることで受け取る方が増えたという報告がある。そのマスクも一時期は入手が困難となり、RSYや名古屋市社協を通じて企業、ボラみみから提供してもらい助かった。

Q:みなみ災害V・伊藤氏:以前この会議で発表された徳林寺では、派遣切りで行き場のなくなった外国人を受け入れているというお話を伺った。空いている場所・施設を使い、孤独にならないよう複数人が一緒に暮らすシェアハウスのようなサポートも出来るのではないか。
A:ここ3~4年程度、名古屋市社協の助成を受け、当団体で空きアパートを借り、住まいのない方を緊急一時的に受け入れる取り組みを試験的に進めてきた。昨年度より名古屋市の事業となり、現在は社会福祉法人共生福祉会と協働して取り組んでいる。これまでホームレスの方々の受け入れを断る大家もいたが、当団体が間に入り、生活保護費からの家賃納入等事前に申し合わせをすることで、受け入れてもらいやすくなった。しかし、未だ住居は不足し、保証人や入居資金が足りない等の問題があるため、受け入れてくれる大家が増えてほしい。一方で、精神・知的障がい者は障がい者への理解が進んでいないことから、たまたま篤志家から3階建施設の提供の申し出があり、グループホームを作り、受け入れを始めた。

Q:コーディネータ・小池:外部からお手伝いできることがあれば教えていただきたい。
A:
ボランティアが不足している。職員も雇えればよいが、収入となるような事業がもともと少なく、人件費の確保は難しいのが現状。学習支援などの委託事業は、人件費が確保されているものの、炊き出し相談や見回り事業、事務所の相談事業は当団体独自のもので予算が確保できておらず、専任職員1名の給与を寄付金で賄っている状況。相談は10名程度のボランティアで回しており、市役所や病院への同行を分担して行っている。相談を受けた後、関係機関へ同行するアフターフォローが重要となる活動だが、対応出来るボランティアが少なく、どのように育て、増やしていけばよいのか悩んでいる。

Q:RSY・浜田:炊き出し支援の団体は、コロナの影響で炊き出しから弁当配布に切り替える等提供方法に変更はあったのか。またボランティア不足は、コロナの影響で減少したのか。
A:
共に活動する炊き出し団体は、提供方法に変更は見られない。コロナの影響で参加しなくなったボランティアもいる。それぞれの意志を尊重しており、コロナの影響が収まった後も常時活動は続くため、何かしらの形で関わり続けてほしいと願っている。

Q:コーディネータ・萩原:コロナ禍における相談が増加したことで、メールやネットカフェを使う方と、マスメディアの情報を手に入れにくい方の2種類の方がいるように感じた。層が変わってきているのか。
A:
野宿生活が長い70代くらいで建設現場を転々としてきた方は、自力で小屋を建てることが出来き、福祉や他人の世話にはなりたくない等の想いからたくましい方が多い。それと比べ、最近問い合わせが多いネットカフェ難民といわれる方々は、派遣や不安定な労働のためスキルが積みあがらず、心身の状態が弱い方々が多い。以前は「ホームレスも支援者も一緒に社会と闘う」という雰囲気が強かったが、現在は支援するという姿勢で関わった方がスムーズだと感じている。

Q:コーディネータ・栗田:コロナ禍において、仕事や住居を失う方々が増えているが、実際に野宿する方々は増加しているのか?また、岐阜の大学生らがホームレスの方に投石して殺害したという痛ましい事件があった。コロナ禍に関わらず、ホームレスへの偏見で、ボランティア参加することの壁の高さは現存しているのか。
A:
ホームレスの方々への差別は根強いものがある。正確な人数は不明だが、コロナの影響で派遣切りされた方は多いはず。現在は店舗等が休業補償や補助金で何とか繋いだところも、秋・冬の第2波では、徐々に支援が受けられなくなることも考えると、厳しい状況に陥る方は少なくないと感じている。

3.グループワーク~自分たちに出来る事を考える~

●グループ1
・至学館大学ではフィールドワークを推奨できない状況があるが、学生にも知ってもらう機会を設けられたらと思う。今回ささしまサポートセンターを初めて知った。ホームレスの方々が地域の中に方がいることは知っていたが、相談先(つなぎ先)が見つからなかったので、知れて良かった。

●グループ2
・組織だっての動きはすぐには難しいが、ボランティアの人手はあるため、何か出来ることはないか探りたい。被災者であれ、ホームレスであれ、困っていることに変わりはない。
・中間支援の立場から、ささしまサポートセンターから話を聞く機会を設けることで、社会の理解を広げる場をもっと増やしていけたらと思っている。

●グループ3
・被災地支援の中で炊き出しを行っており、ささしまサポートセンターの活動の役に立てないかと思うが、現場の状況や設備等が違うため、もう少し現場のことを知れたらと思う。

●グループ4
・コロナの影響で災害ボランティアは被災地に入ることが難しいため、ささしまサポートセンターの活動に協力できるかもしれない。ボランティアの募集内容をもう少し詳しく知りたい。

●グループ5
・ささしまサポートセンターではボランティア応募は多いが、継続して活動に関わってくれるボランティアは少ないという現状がある。「10円しかないけど、どうしたら…」という相談に戸惑う方もあり、ボランティア向けマニュアルを作成して、改善がみられている。
→石黒氏補足:昨年、ボランティア不足を少しでも解消するべく、新たに名古屋市社協の助成金をとり、「生活保護」「精神障がい者」について学ぶ連続講座を行った。参加者からいきなり現場で活動するよりも参加しやすかったと好感触だった。今年も助成金を確保し展開したいと思いつつ、普段の活動をしながら企画・運営は想像以上に負担が大きく、本来の活動趣旨と異なることもあり、疑問を感じている。そもそも連続講座で扱うテーマは会議に参加している団体も、同じように学びたい内容ではないかと感じており、各団体が持ち回りで担当することは出来ないか。

●グループ6
・ホームレスの方々の現状はフリーランス等収入が不安定な人から見ると他人事ではない。明日は我が身かもしれない。

★意見交換を経て、ゲスト石黒氏からの感想
当団体は活動年数が長い団体ではあるが、今回の会議で初めて知っていただけた方も多く、今後も自分たちの活動をもっと発信していきたい。会議形式では他の団体のことを知ることは難しいが、連続講座のような形であれば、各団体の若手スタッフも参加して、団体間の交流にも繋がるかもしれない。学び合う場は、団体同士の繋がりを強くすることもあるので、実現出来たらいい。・森脇氏:障がいのある方々が地域で当たり前に暮らせることを目標に活動している。コロナでさらに状況が厳しくなってしまったが、出来る限りのことをしていきたい。新作のフェイスシールド等、ぜひ活用いただきたい。

現場の課題