重症心身障がい者通所施設の現状 (NPO法人風の会)

現場の課題

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■NPO法人風の会(山口氏)

当法人は、緑区で重症心身障がい者の通所施設をしており、現在10名が利用している。重症心身障がい者とは、身体と知的の障がいを持ち合わせている方のこと言う。新型コロナウィルス感染症の拡大は、利用者が感染した場合の重症化リスクが高いことはもちろん、職員が感染した場合も通所の受け入れが出来ず、利用者とその家族が拠り所を失う事態となってしまう。重症化リスクについては、家族からの心配が大変大きく、3~5月頃は通所を控える方も数名いた。障がいの特徴から、利用者のマスク着用を維持することが難しいため、その分、手洗いを徹底した。

通所する利用者の中には、週末を別の事業所のショートステイを利用している方もいる。4月頃、その方が利用した施設で、他の利用者が発熱し、感染した可能性があるかもしれないと連絡があった。施設としては、その方を継続して受入れたいと思いながらも、通所する他の利用者への感染リスクもあるため、その方にはショートステイの利用を延長していただくこととなった。しかし、利用者本人の心境を思うと、感染症への理解が難しいこともあり状況が呑み込めておらず、あまり慣れない環境での宿泊延長は負担が大きかったのではと考えている。幸い当施設では感染者が出ず、現在は通所を再開している一方で、定例イベント・企画の中止や、感染経路が見えにくくなる可能性からボランティアの受け入れも中止する等、これまで20年以上かけ築いてきた地域との繋がりが途切れてしまわないか懸念している。地域との繋がりは、障がいや利用者の存在を知ってもらう良い機会でもあるため、今回のように様々な分野の方々と情報交換できる機会をいただけて、有難い。

Q:コーディネータ・小池:ご本人の苦労はもちろん、ご家族への負担も大きいと感じた。万が一、施設が使えなくなった場合、家族はどんな状況に置かれてしまうのか。
A:
利用者は40代以上、その家族は70代が多い。施設を閉所しなければならない場合は、特に重症心身障がい者は受け入れ可能な施設はほとんどないため、ご家族への負担は大変大きくなる。

Q:NPO法人レスキューストックヤード・浦野:職員はどんな装備をされているのか。
A:
職員はマスク着用のみ。フェイスシールドを着用している事業所もあるが、当事業所は利用者が抵抗感があるため、未着用としている。食事は向かい合ってしていたが、時間差で取ったりなど。

Q:コーディネータ・小池:マスクなどの物品以外で、必要なサポートがあれば教えてほしい。
A:
利用者が楽しめるような企画やアイディアがあると助かる。これまでは、ボウリングやプール等の外出企画があったが、事業所にいても少し気分転換できるようなものがあるとよい。また、今日の会議のようにZOOMで他の施設と交流が持てたら、楽しめるかもしれない。

Q:コーディネータ・萩原:水害が心配な季節になってきた。どのような防災対策は行っているのか。
A:
災害発生時には、施設を避難所にし運営していくことを想定した防災訓練を毎年行っている。今年は、コロナ禍における災害発生を想定した防災訓練が出来ないか検討している。

コメント:つなぐ子ども未来・小塚氏:自分の住む地域で、つながりのある事業所と災害時の避難について話を伺ったことがあるが、風の会さんと同様に、事業所で災害時も受け入れできるよう環境整備にあたっておられ、共有の考え方だと分かった。また、普段は子ども食堂の活動をしているが、今日のご発表から、現在子ども向けに配布している弁当を、障がい者の家族にも渡すことが出来るかもしれないと感じた。検討したい。

Q:コーディネータ・栗田:新型コロナウィルスにより経営上の影響はあったのか?
A:
通所施設のため、利用者が利用した分、国から補助金が支払われる。緊急事態宣言の期間は、利用率が減少したものの、国の補償対象になるほどの減収ではなかった。しかし、今年度は施設建替えも予定しているため、費用が掛かる時期に新型コロナウィルスが重なってしまっている。

Q:名古屋市社会福祉協議会・野川氏:通常とは違うコロナの状況を、利用者やその家族はどう受け止めておられるのか。
A:
家族はただただ心配。もし感染したら、回復すら難しい利用者もいる。本当は外出したい等それぞれの思いはあるはずで、お話できる利用者は「残念。でも仕方ないよね」と我慢してくださっている様子。

Q:RSY浦野:受け入れルールを設ける等しても、ボランティアの受け入れ再開は難しいか。
A:
ボランティアには中止をご承諾いただいている状況。受け入れ態勢を整えたいが、職員でもそれぞれ思いが異なっており、無症状である場合も考えると受け入れが難しい。しかし災害も待ってはくれないため、防災訓練は何とか取り組める方法を探したい。

3.グループワーク ~自分たちに出来る事を考える~

●グループ1
・これまで重症心身障がい者との接点がなかったが、初めて障がい者の方々の現状を知ることができた。
・ZOOMを活用した交流は、演奏会やレクリエーション等が出来るとよいと感じた。

●グループ2
・この会議では県内の団体が集結し、様々な現場の声を聴く機会となっている。今日は、地域とのつながりの大切さを実感するご発表だった。ZOOMならば、繋がりのある専門家がいるので、何らかのサポートが出来ると感じた。

●グループ3
・障がい者の就労支援を行っているが、災害時の対策が整っておらず、風の会の防災の取り組みについて詳しく知りたい。
・避難することが難しい障がい者の方々は他にもいるのではないか、被災していない地域へ疎開するような形も考えられるのではないか。普段から他施設との顔の見える関係づくりが重要。

●グループ4
・あまり関わったことのない人は、障がい者の方々と接することにも難しさを感じている。一方で、普段の地域との繋がりが災害時にも活きてくるため、今日のように知る機会はとても重要。最近では、防災でも障がいについて学ぶ講座もあるらしい。

●グループ5
・児童館の指定管理をしているメンバーは、フランスのダンサーとZOOMで繋がり、レクリエーションをした経験があるため、コラボしても良いかもしれない。
・ZOOMを使って、地域自慢の景色を見せたり、ゆくゆくは現地ツアーも出来ると素敵ではないか。

●グループ6
・前回参加された「わっぱん」のように、販路が減少している団体が使えるような仕組みを考えていきたい。
・記者をしているため、記事を書くことで応援したい。

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